「うおあああああーっ!」 再び咆哮したアヤヤの身体が、突然波打ち始める 「なっ!?」 その変化に、間近にいたチッサーとマイは驚きの声をあげる だが、その間にもアヤヤの変化は止まらない 「おおおおおおーっ!」 やがてアヤヤの身体、特に上半身が膨張し、筋肉が隆起し出す もはやアヤヤの肉体からは女性特有の柔らかい曲線美が消え、ゴツゴツとした男性的なそれへと変わったのだ そして何より、アヤヤの身体に最も驚くべき変化が現れた 「な・・・何?」 「ウソだろ・・・?」 アヤヤの変化をずっと見ていたチッサーとマイが呆然と呟く その理由は―アヤヤの肌から金色に輝く体毛が生え、それが全身を覆い尽くしていったのだ そう・・・アヤヤは普通の人間などではなかった ミキ帝と同じ、“半獣人”だったのだ! そして、“半獣人”として覚醒したアヤヤは驚愕の行動に出たのだ 「うおりゃあああっ!」 かけ声とともに、突如全身を後方に反らした。かと思うと、 なんと、あの体長20m近くはあろうかという大蛇アヤンキの巨躯をぶん投げてみせたのだ ズゥゥゥゥン!! 強烈な地響きとともに、大蛇が叩きつけられた地面からはもうもうと土煙が舞い上がる 『グギャアッ!?』 思いも依らぬ反撃を受けた大蛇アヤンキは奇妙な悲鳴をあげ、巨躯を波打たせながら地面をのたうち回る 「マ・・・マジ?」 「す・・・すげぇ・・・」 獣人化したアヤヤの怪力に、チッサーとマイは目を見張った まさか、こんな能力を今の今まで隠していたとは・・・ ただでさえ強いアヤヤが獣人化してパワーを全開にしたら、果たしてどこまで強くなるというのだろうか? そして、驚愕する2人に、またも衝撃が襲った 「でやぁぁぁーっ!!」 アヤヤはアヤンキの口に挟まったままの如意金箍棒を握りしめると、 今度はそれを握り柄にしてアヤンキの巨躯を横に振り回し始めたのだ ズズズ・・・ アヤヤが渾身の力を振り絞りアヤンキの身体を引き摺り回す すると、アヤンキの身体が徐々に動いたかと思うと、その身体は次第に宙に漂い始めた やがて― 「うおおおおーっ!!」 ブゥン!!ブゥン!! 完全に勢いのついたアヤンキの身体は遠心力も加わり、どんどんスピードを増していく そしてアヤヤは頃合いを見て、握っていた如意金箍棒を突如手放す ブオン!! 一段と強い風切り音とともにアヤンキの巨躯はハンマー投げのハンマーよろしく、遥か彼方まで飛んでいったのだ ズウウウン!! アヤンキの身体が地面に激突し、再び地面からはもうもうと土煙が舞い上がった 激しく身体を地面に打ち付けたアヤンキは、身体をピクピクと痙攣させている 「うおーっ!すげぇ!マジすごくね?」 「うん!すごぉい!」 今までの劣勢を一気に逆転させたアヤヤの奮闘ぶりに、チッサーとマイはすっかり興奮し、歓喜する が、当のアヤヤは浮かれることなく涼しい顔のままだ しかし、それでもアヤヤに緊張した素振りは一切なく、むしろまるで勝利を確信したかのようですらあった それは何故か? アヤヤが大蛇アヤンキを放り投げてわずか十数秒後― 『シャアアアアッ!!』 アヤヤに一方的に攻め込まれたアヤンキが目を血走らせ、アヤヤに襲いかかっていく そこには先程まではあった、相手をなぶりものにするといった余裕など無く、闘争本能のみが迸っていた だが、アヤヤは慌てない そして、一言ポツリと呟いた 「アヤンキ・・・お前の敗因はただ一つ、相手が悪かっただけだ」 そう言うと、アヤヤは襲いかかるアヤンキを然と見つめたまま、その場から動こうとしなかった 否、正しくは『動く必然性がなかった』のだ その訳は、アヤンキの腮がアヤヤの眼前まで迫ったその瞬間に明らかになる 「寒いから出たくない…」どこからか、澄んだ声が聞こえてくる 「寒いから冬だもん!」 その声、いや、その歌声の主はミキ帝だった 一体どういうことなのか? 今が勝負の瀬戸際だと言うのにミキ帝は澄ました顔で歌っているではないか? 「お、おい!?暢気に歌ってる場合じゃないだろっ!?」 「そうだよ!歌ってもどうもこうもならないよミキ帝!?」 親友・アヤヤの眼前には、アヤンキの大きく開いた腮がまさに一呑みせんと迫ってきている なのに暢気に歌うミキ帝に2人が叫ぶ しかし、ミキ帝は歌を止めない そして遂には歌を歌い終えたのだった 「希望の花を美しく咲かせてみる 何かの時は友達に甘えるとしましょう そう 私 白いスノードロップ」 するとどうだろう 曇天からひらひらと、白い花びらが宙を舞い、地に降り注いできたではないか? いや、白い花びらと思われたものは、チッサーやマイの手に触れると、スーッと消えていった そう、白い花びらと思われたものは雪だったのだ 「そうか!」 「えっ?」 チッサーとマイの傍で、いつの間にか目覚めたショージが何かに気付いたようだ 「あの、何が・・・?」 すかさずチッサーがショージに訊ねる するとショージは満足気な表情を浮かべ、嬉しそうに語り始めた 「ああ、あの歌はミキティーが大好きな、故郷の歌なんだ 冬になったら一面が真っ白な銀世界に変わる、そんな北の国の歌だ ミキティーがこの歌を歌うと、いつもこうやって綺麗な雪が舞い散るんだよ」 「・・・でさ、それが一体どうしたのよさ?」 ショージの勿体ぶった言い方が気に召さなかったチッサーは唇を尖らせて言う それに対し、傍らのマイは小さく 「あっ!そっかぁ!」 と叫ぶ どうやらマイには、ショージの呟きの意味に気付いたようだ 「へっ!?マイもわかったの!?」 一人取り残されたチッサーは慌てふためく そんなチッサーの様が可笑しかったのか、ショージとマイは二人してプッと吹き出してしまう それが気にくわなかったのかチッサーは 「おいちょっと何だよ!?オレ一人だけ仲間外れかよっ!?」 と言うなりプイッとあさっての方を向いて拗ねてしまう 「あ、ああゴメンゴメン・・・」 機嫌を損ねたチッサーに謝りながら、ショージは自身の推論をチッサーに話していくのだった 「ミキティーはあの歌を歌うことで雪を降らせることに成功した でも、雪が結晶化するにはそれなりに寒くならないとムリだ。だけど、雪はこうして降ってる・・・ ということは、もうこの一帯は、既に寒くなっている・・・ってことだよ」 ショージに言われ、チッサーはハタと気付いた 確かに雪は降り続いている。言われてみると、先程より随分と肌寒くなっている そして、肌寒さに頭が刺激されたか、ようやくチッサーにもショージが言わんとしていることに気付いたようである チッサーが何かに気が付いた時、大蛇のアヤンキは大きく広げた腮でアヤヤをまさに呑み込まんとしていた が、しかし、アヤンキはその構えからピタリと動かなくなってしまったのだ 『キシャアアアッ!!』 アヤンキは敵意剥き出しの目でアヤヤを睨みつけるものの、悲しいかな、意思とは裏腹に身体が動いてくれないのだ 悔しいであろう。目の前に標的がいるのに身動き一つ取れず、手をこまねいているだけなんて 怨嗟の念で見つめるアヤンキに、アヤヤが言う 「人間の“理性”を失ってまでアタシ達を殺ろうとしたその執念、見事だったよ だけど、お前は怒りに任せて人間を棄て、蛇に身をやつした時点で負けてしまったんだよ 寒いだろ?お前のその蛇の身体じゃ否が応にも寒さに身体が勝手に動かなくなるんだ。“冬眠”ってやつだよ」 アヤヤの言葉を聞いたアヤンキは、大きくカッ!と目を見開く それはアヤンキが、己が罠に嵌まったことを悟った瞬間でもあった 言葉を失くし、呆然とするアヤンキにアヤヤが憐憫の情を込めて語りかけた 「これも戦の定めだ。アヤンキ、お前に敬意を表してアタシの・・・いや、アタシ達の最終奥義でこの戦いの幕を引くことにするよ!」 「行くよアヤちゃん!」 歌い終えたミキ帝の声が響く 「オッケェ〜♪」 阿吽の呼吸でアヤヤが答える すると2人は大蛇・アヤンキの前に並び立ち、瞬く間に複雑な印のようなものを次々と結んでいく そして一瞬、静止したかと思うと、2人は向かい合い、一言 「「合体!!」」 と叫んだ 次の瞬間、2人の身体から強烈な閃光が放たれ、辺り一体が真っ白になった 「うわっ!?」 「きゃっ!?」 事前に何も聞かされていなかったショージやチッサー達は閃光に目が眩み、しばし動けなくなる 「な・・・なんだよぅ・・・」 ようやく閃光が収まったのを感じた3人が恐る恐る目を開けてみると、 眼前には2人立ち居並んでいたハズのあの2人の姿が1人減っていたことに気付く そして同時に、その1人の姿があの2人よりも一回り、いや、二回りほど大きいことにも気付いた そう、2人は最後に言い放ったかけ声通り、『合体』を果たしたのである 驚く3人を余所に、合体した2人は眼前の敵・アヤンキに向かって言い放つ 「「これがアタシ達2人が今まで誰にも見せたことの無い秘奥義・・・ 名付けて『GAM(合体!アヤヤ&ミキ帝)』!!」」 “合体”を果たしたアヤヤとミキ帝、いや、今は『GAM』と呼ぶべきか― “2人”は目の前の敵・アヤンキを眼光鋭く睨みつけた かと思うと、2人の武器が合体した新しい得物『方天画戟』を轟音を鳴り響かせながら振り回してみせた そして突然静止したかと思うと、“2人”の姿が今までいた場所から忽然と消え失せてしまう 「えっ!?」 事の成り行きを食い入るように見ていたチッサー達3人ではあったが、突如姿を消した“2人”の行方は皆目見当がつかないようだ そしてそれは直接対峙していたアヤンキとて同じだった 満足に動かぬ身体に鞭打ち、“2人”の姿を追うべく四方八方に首を振る しかし、アヤンキの眼が“2人”の姿を捉えることはなかった そして、長きに渡った両者の戦いは、突然幕切れとなった “2人”を発見せんと周囲を見回すアヤンキの頭上に、不意に影が差す そして次の瞬間― ドシュッ!! 貫通音とともに、アヤンキの頭頂部から上体は突如天から襲ってきた『方天画戟』によって串刺しとなったのだ 『・・・!』 焼けるような激痛が身体を貫いたその時―アヤンキは自らが串刺しになったことに気付く だが、激痛を感じたのも刹那、アヤンキは悲鳴を発することなく、そのまま静かに息絶えた 「終わった・・・」 突如天から降ってきた『方天画戟』によってアヤンキが絶命したのを確認すると、ショージが万感の想いをこめてそう呟いた 長かった― 邪神『マヤザック』の傀儡となったアヤヤを救出せんと親友に刃を向けたミキ帝 しかし、親友のアヤヤは自らの意思でミキ帝に決闘を挑んでいたという悲しい事実 生死の境目で2人は愛憎渦巻く感情を激しくぶつけ合った その果てに待っていたのは落とし穴―深い絶望 絶望の淵へと嵌まっていくミキ帝の窮地を救わんと命懸けで飛び込んだチッサーとマイ、2人の若き未来の希望 そして―愛は時空を越えて真の奇跡を呼び起こす 愛する人を守るべく現れたショージ やがて真実の愛はさらなる奇跡を起こし、ミキ帝とアヤヤ、2人の親友の絆を修復させる ついに正体を現した黒幕を相手に全員が互いを信頼し合った末に訪れた勝利― こんな一生に一度あるかないかのドラマティックな出来事の数々がこの僅かな時間の中で起きたのだ ショージが感慨深げに呟きたくなるのも無理はない と、そこへ、ショージの目の前に何かが落ちてきた いや、正確には『飛び降りてきた』と言うのが正しいか ドスン!! 天からアヤンキを討った『GAM』が震動を響かせ地面に舞い降りたのだ 地上に舞い降りた戦女神『GAM』は大蛇アヤンキを討つ使命を終えると、やがてまばゆい光に包まれ、その身を2つに別つ そしてその半身―ミキ帝がショージを見つけるなり、飛び込んでいく 「ショージ!」 「ミキティー!!」 熱く抱擁する2人。その様子をアヤヤ達はただ温かく見守っていた それから程無くして、抱擁を交わしていた2人はアヤヤの方へ向き直り、2人して頭を垂れる 「ごめんねアヤちゃん!」 「ゴメン!ホントにゴメン!」 大蛇アヤンキとの戦闘中に赦しを得たとはいえ、改めて頭を下げたのは2人なりのケジメなのだろう それを見たアヤヤは2人の生真面目さに呆れ、やがて顔を綻ばせた 「もう、いいよ・・・さ、顔を上げて!」 その言葉に顔を上げる2人。と、そこへアヤヤは2人に言葉を投げかけた 「ショージさん、ミキたんを末長く愛してあげてくださいね! ふつつか者ですが、よろしくお願いします」 「あ・・・ああ。約束する。必ず幸せにする!」 「ミキたん・・・アタシが恋しくなったらいつでも帰ってきていいんだぞ!」 「え・・・ちょ、ちょっと何よそれ!?」 「冗談よ・・・おめでとう!」 「・・・ありがと」 「なんか、いいよな・・・ああいうの」 「・・・だね。でも、クサイ台詞禁止」 ミキ帝とアヤヤ、そしてショージの3人の清々しいやり取りを見ていたチッサーとマイはそう呟いた 3人の愛憎入り雑じった三角関係がいつしか男女間を越えた美しい友情へと昇華していく様に感動を覚えたのである チッサーとマイがとても嬉しそうな3人に目を細めていると、急にミキ帝が踵を返して2人の元へ歩み寄り始めた 「な・・・なんだよっ!?」 急にミキ帝が来たので慌てる2人。まさか先程の会話を聞かれていたのか?と思い動揺する あの“狂犬”ミキ帝のことだ。いきなり因縁をつけて噛みついてくるかも知れない 2人が緊張して身構えていると、ミキ帝は全く予想外の行動に出たのだ 「ちょっ・・・」 無言のまま接近するミキ帝から無意識の内に逃れようとしたチッサーとマイではあったが、 2人が逃げるより早くミキ帝の腕は2人をガッチリと掴んで離さない 「きゃあ!?」 「や、やめろ!」 もがく2人であったが、ミキ帝の腕力は思いの外強く、逃れることは出来なかった 殴られる・・・2人がそう観念した刹那、不意に痛みではなく、優しい温もりが伝わってきた 「・・・ありがと。2人が居なけりゃアイツには多分勝てなかったよ」 チッサーとマイを掴んだ腕を手繰り寄せ抱きしめた後、そう耳元で囁いたミキ帝 思いもかけぬミキ帝の優しい感謝の言葉に、2人はすっかり格好を崩した 「ま・・・まぁな。へへ・・・」 「べ、別に大したことじゃないから・・・アタシ達も助けられたんだし」 それと同時に、2人の中のミキ帝に対する畏怖や恐怖心というのはすっかり霧消してしまったのだ それどころか― 「なぁ、ミキ帝?今度、オレに技を教えてくれよ!オレ、もっと強くなりてぇんだ!」 「えっ?」 「アタシも・・・強くなりたい!」 突然2人がミキ帝に“弟子入り”を志願したのだ 「ちょ、ちょっと待ちなよ!?なんで急に?」 「オレだってもっと強くなりたいんだよ!自分で・・・大切なモン守れるくらい強く! なぁ?いいだろ?」 「悔しかった・・・アタシ、自分が強いつもりだったけどアイツらに全然歯が立たなかった だから、もっともっと強くなりたい!」 ミキ帝の圧倒的な強さを目の当たりにしたチッサーとマイは、今の自分達の力不足を痛感したのだろう だからこそ2人の懇願は今までにない熱を帯びていた 戸惑いを隠せないのはミキ帝である 何せ今まで他人からその強さ故に恐がられることこそあれ、自ら飛び込んでくる―ましてや弟子入り志願など受けたことなどないのだ 前代未聞の出来事に言葉を失い、考え込むミキ帝 そして― 「あーもう!わかったわかった!だからそんなすがるような目で見ないで!」 チッサーとマイ、2人の強くなりたいという意思がミキ帝の心をついに動かしたのだ 「えっ?マジで!?」 「ウソ!?」 めんどくさがりに見えるミキ帝から出たまさかのOKに2人も半信半疑だった そこでミキ帝に念を押すために再度訊ねてみる 「ねぇ、これってウソじゃない・・・よね?」 「『な〜んちゃって♪』とか・・・言わないよね?」 すると、信用がないと思ったのか、ミキ帝の顔つきがにわかに険しくなり始めた そして2人にこうも言い出す 「あっそ・・・せっかく鍛えてやろうと思ったのになぁ〜!」 慌てたのは2人 「え?あ、ゴメンゴメン!だってホントに良いのかな〜?って思ったもんで・・・」 「そうそう!だってミキ帝って冷たいカンジだったからさぁ〜」 そう言って取り繕う2人に、突然ミキ帝からゲンコツが降ってきた ゴツッ! 「タメ口は禁止!それと『様』をつけろよこのデコスケ野郎!」 そう言うと、先程まで険しい表情だったミキ帝がプッと吹き出す ゲンコツを喰らって涙目の2人の顔が面白かったのだろう 「あー!ひっでぇ!メチャんこ痛ぇじゃねえか!?」 「もう!この暴力女!鬼!悪魔!」 そう言いつつも、ゲンコツを喰らった2人も機嫌の良くなったミキ帝を見て、内心ホッとしたのであった 激闘後の勝利の喜びに浸っていた5人 ところが、事態は一気に急変する ドカーン!! 突然、どこか遠くから大きな爆発音が聞こえてきた 「!!」 全員が音のした方角に一斉に視線を走らせる すると、目に飛び込んできたのは、平和と栄華の象徴であるハロモニア城の塔から黒煙がモウモウと立ち上っている光景 国民の拠り所であり、誰もが愛して止まないその場所が一人の心ない蛮神によって汚されてしまったのだ 「・・・・・・」 決してあってはならないことが・・・そのあまりにも衝撃的な光景を目の当たりにしたミキ帝達5人は呆然となってしまう ただただ立ち尽くす5人 しかしそんな中、ハロモニアとは縁の薄いショージだけがいち早く我に返り、未だ呆然とする4人を揺さぶって正気に返す 「おい?みんな?しっかりしろ!」 懸命に叫ぶショージ。だが、幼少の頃からハロモニアに慣れ親しんできた4人にとってはそう簡単に立ち直るなんて出来ようか が、次にショージが発した言葉に皆の心が揺り動かされる 「なぁ?今、あのお城には沢山の人達が避難してるんだろ!? その人達を守らなくていいのか!?みんな、しっかりしろよ!」 ショージの熱い訴えかけに、ミキ帝達4人は静かに目を閉じ、各々が守らねばならない人達を思い浮かべていった 「父ちゃん・・・母ちゃん・・・アッスー!」 「メグ姉ちゃん・・・」 「アイちゃん、ガキさん・・・ゴメン!今すぐ行く!必ずアイツをぶっ飛ばしてやるから!」 「ゴッちん!アベさん!それから『女流怨』姉さん!アタシ達もすぐ向かうよ!だから・・・もう少しの辛抱だよ!」 それぞれが決意を口にすると、誰からともなく目を開き、互いの顔を見合わせ頷く そして皆がショージを見つめ、代表してミキ帝が声をあげた 「ショージ・・・ありがと。もう大丈夫。さぁ急ご!」 そう言うなりミキ帝はショージの腕を取り、一気に駆け出した 「うわっ!?ちょ、ちょっ!」 力一杯引っ張られ、引き摺られるように後をついていくショージ 「プッ♪」 「あれじゃあミキたんの尻に敷かれるのは確定だな♪」 「・・・だね♪」 不恰好なショージを3人がクスクスと笑っていると、ミキ帝から罵声が飛んできた 「ちょっとぉ!?何ボサッとしてんのよ?早く行くよ?」 ちょっぴりご機嫌ナナメか・・・?そう感じたアヤヤ達3人は慌ててミキ帝とショージの後を追って駆け出していく 「わかった!すぐ行くからぁ〜!」