『何が可笑しいかって?フフフ・・・』 ひとしきり笑った後、マヤザックはファターケの怒号に答える姿勢をみせる が、依然その表情には余裕があり、含み笑いすら浮かべていた 「・・・・・・」 マヤザックの態度に憤り、苛立つ3人。唇をギュッと結んだまま、射抜くような目付きでマヤザックを睨みつける しかしマヤザックは至って涼しい顔。3人の険しい表情をじっくりと眺めると、ようやく問いかけに答えるのであった 『答えは簡単だ。お前達が儂に勝つ気でいることが可笑しくて仕方ないんだよ』 「そんなに可笑しいことですか?」 ファターケに代わって、今度はマコが訊ねる 「あなたは強い。だけど、今回手合わせしてみて改めてわかったことがある それは・・・今のあなたは決して我々が倒せない相手ではないことだ!」 「そうだ!あんたは強かったが、以前よりは確実に弱くなってる その原因は・・・あんた自身が一番わかっているだろ?」 タイセイも続けた。その言葉はマヤザックを動揺させる揺さぶりなのか? 否、違った 『なるほど・・・な』 2人の言葉に同意するかのような返事をするマヤザック 『確かに“この身体”では本調子とは言えんからな』 マヤザックの指す“この身体”とは、本来の身体を失ったマヤザックが仮の器として使用している女王・ユーコの身体のことだ 『この身体はどうにも勝手が違って困る 細くて軽い上に、ガタがきてるせいかお前等ごときに力負けするしな 早く“元の身体”に戻りたいものだ』 そう言ってマヤザックは自嘲気味にフゥ、とため息をつく しかしそれでもマヤザックの態度からは焦りや動揺の欠片も感じられない それは何故か? そんな中、不意にファターケがマヤザックに問いかけた 「マヤザック・・・あんたまさか“元の身体”に戻れるなんて、思ってないよなぁ〜?」 その語気は今までの怒気を含んだものから一転、まるでマヤザックを挑発するかのようなものであった 『?・・・どういうことだ?』 ファターケの問いかけに怪訝そうな表情を浮かべ首を傾げるマヤザック その様子をとぼけている風に受け止めたのか、ファターケはかさにかかって言葉を続けた 「おいおい、言葉の通りだよ。あんた・・・まさか自分の身体が五体満足に還ってくるとでも思ってんのか?」 『お前こそ、何を訳の解らんことを言っている?』 この問答が単に互いに腹の内を探り合っているものか?それとも言葉がすれ違っているだけなのか?― その答えを待たぬ間に、突然の闖入者が現れた 「ファターケ様っ!」 大広間の入り口から、不意に大声がした 振り返ってみると、そこには一人の軽装の兵士が立っていた 身軽な格好を見る限り、さしずめ伝令役、といったところであろうか 「どうした?何か変化があったか?」 名を呼ばれたファターケが兵士に向かって問い質す ファターケの言葉からして、この兵士はファターケの命を受けて何かの見張り役をしていたようだ そして兵士の口からは、ファターケの待ち望んでいた言葉が発せられる 「ハッ!報告致しますっ!たった今、一の塔付近にてガキシャン殿、アベナッチ殿が魔物を撃破しましたっ!」 「何っ!?それは、確かなんだな?」 待ち望んだ吉報とあってか、ファターケの声も今までの荒々しいものから一転、喜色が窺える それは報告する兵士も同じであった 「ハッ!現場の伝令の者からそう報告が上がっております! なお、ガキシャン殿、アベナッチ殿ともに大事はなく、現在こちらに向かって帰還中とのことですっ!」 興奮のせいか声が幾分か上ずり、早口になっていたのだ 「そうか。ご苦労だった」 ファターケは努めて感情を圧し殺しながら兵士に労いの言葉をかけると、今度はやおらマヤザックの方を向き直り、開口一番叫ぶ 「おい、聞いたかマヤザック!これでお前の野望もオシマイだ!」 ファターケが待っていたもの、それはマヤザックの追撃に向かった“討伐部隊”の結果報告であった “肉体”の封印を解きに向かったマヤザックの“分身”討伐に成功したとあれば、それは即ちマヤザックの完全復活を阻止したことになる その待ちに待った報告が伝令役の兵士によって伝えられたのだ 「頭の良いアンタならすぐ察しがつくだろ?もうアンタの“器”となる肉体が揃うことは無くなったんだ それくらいわかるだろ?」 マヤザックをしっかりと見据え、強い口調でファターケは問いかける それに対し、マヤザックはというと、意外なほど冷静であったのだ 『なるほど・・・な。我が分身がやられたか』 淡々とした口調で呟くマヤザック 今の不完全なマヤザックにとって、“肉体”の封印を解放して“完全体”となるのは悲願であるハズ その完全復活を絶たれたとあれば、当然動揺するであろうハズ だが、マヤザックからは動揺している素振りは全く感じられない 何故か? その答えはマヤザックのひとつの問いかけによって明きらかとなる 『ところで・・・おい、そこのお前!』 マヤザックは突然、伝令役の兵士に向かって呼びかける 「ハ・・・私、ですか?」 怪訝そうに答える兵士 『そうだ。お前だ。お前以外に誰がおる?』 反応の鈍い兵士に若干呆れながらもマヤザックは兵士に問うた 『お前は儂の分身が討ち取られた、と報告したが、ひとつ聞きたいことがある その後、儂の分身はどうなったのだ?』 「ハ・・・ハァ・・・」 マヤザックの問いに伝令役の兵士は困惑する それもそのハズ 「さ・・・先程も申し上げました通り、魔物は討伐されたとの事ですが・・・」 兵士はまた怪訝そうにマヤザックに向かってそう答えた 兵士にしてみれば、何故、マヤザックが答えのわかり切っている質問を繰り返すのか、その意図が皆目見当がつかないのだ しかし、マヤザックの質問の意図は兵士の回答とは微妙に違っていた 『バカ者!それは先程聞いた 儂が聞きたいのは討伐の成否じゃなく、儂の分身そのものがどうなったのかを聞いておる!』 そう言われて、伝令役の兵士はようやくマヤザックの質問の意図を理解する そして、マヤザックの質問に今度は正確に答えてみせた 「ハッ!失礼しました! 討伐された魔物は・・・その後跡形もなく消滅した、との事であります」 兵士の回答に、マヤザックは微かに笑みを浮かべる そして兵士に念を押す 『そうか・・・それは、確かなんだな?』 「ハッ・・・確かであります」 女王・ユーコの姿を借りたマヤザックに睨まれ緊張しながらも、兵士はしっかりと答えてみせた そうしてマヤザックは兵士からの質問を終えると、その表情は微かな笑みから満面の笑みへと変貌していた 『おい、お前達。聞いたか?今の言葉を・・・』 振り向くなり、マヤザックがファターケ達3人に向かってそう言った その表情は腹立たしいまでに余裕たっぷりで、不気味であった 「ハァ!?」 訊ねられた側のファターケは、というと、呆れた感じでぶっきらぼうにそう返事する それはそうであろう。ファターケにしてみれば、マヤザックが何故、同じ答えを二度訊く必要があったのか、さっぱりわからないからだ しかし、残るマコとタイセイは直情的なファターケとは違い、慎重な姿勢を崩さずにいた 果たして、あのマヤザックの質問の意図は何だったのか?それを頭の中で反芻し、懸命に探っていたのだ ファターケ以外の2人が疑問を持っている様子なのを見てとったマヤザックは満足そうに、言葉を続ける 『ファターケ。何の違和感も感じてないのはお前だけのようだぞ』 「あぁ?」 名指しでバカにされたファターケはいきり立つ そんなファターケはお構い無しにマヤザックが核心を告げる 『いいか、お前達。伝令役はこう言った。儂の分身は『跡形もなく消滅した』と 何か・・・大事なことを忘れてないか?』 「大事な・・・こと?」 そう問われて3人は瞬時に考えを巡らせる。マヤザックの言う“大事なこと”とは― そして、程無くしてマコが悲鳴をあげた 「・・・まさかっ!?」 何かに気付いたマコは思わず手を口元に当て、狼狽する 「おいっ!マコッ!どうしたっ!?」 悲鳴に気付き振り返ったファターケは、突如冷静さを失ったマコに詰問する が、マコの口からその答えを聞くよりも早く、またも悲鳴があがった 「しまったっ!」 今度はタイセイだ。タイセイもマヤザックの言う、『何か大事なこと』に気が付いたようである 現状で何かに気付いていないのはファターケ、ただ一人 答えに気付かぬ自らの鈍感さと、気付いた二人が絶句し、返答しないことへのもどかしさから、ファターケは声を荒らげる 「おいっ?何だよ?何がおかしいんだ!?答えろよ?」 だが、マコとタイセイは無言のまま。それだけ気付いてしまった“事実”が深刻だというのか? 「おいっ!どうなんだよっ!」 二人の沈黙から不安に駆られたのか、吠え続けるファターケ すると、ようやくマコが絞り出すように言葉を発した 「“器”は・・・どこへ行ったんだ?」 “器”―その言葉を耳にして、初めてファターケは事の重大さに気付く 「あーっ!?」 『フッ・・・ようやく気付いたか愚か者め!』 狼狽える3人を傍観していたマヤザックがたしなめるように口を開いた 同時に、一瞬でも勝利を確信した3人を冷ややかにたしなめたのだった 『お前達は・・・儂の分身を倒したことで復活を阻止した、と思い込んでいたようだが、勘違いしてもらっては困る 封印を解かれし我が肉体は、すでに胎動を始めておるぞ!』 「!!」 予想だにしないマヤザックの言葉に、3人は一瞬、言葉を失う その様子が余程おかしかったのか、マヤザックは勝ち誇ったかのように高らかに笑ってみせたのであった 『ハーッハッハッハッ!どうだ?勝ったつもりでいた気分は? 所詮、お前達の浅知恵など最初からお見通しだった訳だよ!残念だったな!』 「くっ・・・!」 マヤザックの高笑いに、3人は返す言葉もなかった マヤザックの分身さえ仕留めれば、マヤザックの心を折ることが出来る・・・そう思っていた しかし、現実はその逆。3人の思惑のさらにその上を、マヤザックは実行していたのだ 結果として、心を折られそうになっているのは、策を仕掛けたハズの3人の方である 無念さのあまり、唇をギュッと噛みしめ、マヤザックを憎悪の目でみつめる3人 だが、3人には、いつまでも悔しがっている時間などなかった ひとしきり笑い飛ばすと、ふとマヤザックがこぼした 『おい?いいのかお前達?我が“肉体”は、もうすぐここまでやってくるぞ』 「!?」 マヤザックの言葉に、3人は我に返った 封印が解かれた“肉体”がやってくる・・・? その言葉の意味を反芻する間もなく、城外から突然、大きな爆発音がした バゴォォォォォン!! つんざくような轟音。そして直後、今度は激しい大気の震えが、堅固なハロモニア城に襲いかかってきた ビリビリビリビリ!! 「うおっ!?」 「うわっ!?」 予期せぬ大爆発の“衝撃”に、ファターケら3人は思わず取り乱してしまう いくら3人が相応の腕を持つ武芸者だとはいえ、 “空気の振動”という肉眼では見えないものからの不意討ちにあっては格好を崩してしまうのも致し方なかろう そして不意討ちを受けたのは、3人とマヤザックのやり取りを傍観していた伝令役の兵士、また、アイリーナとアイリーネも同様だった 「わわっ!?」 「きゃっ!?」 あまりの轟音と振動に、思わず耳を塞ぎ、よろめいてしまう そんな人間達の無様をマヤザックはただ薄ら笑いを浮かべて見ているのだった しばらくして― 「止んだか・・・」 爆発音と振動が収まると、ファターケら3人はようやく従来の落ち着きを取り戻す そしてすぐさまマヤザックを再び睨みつけ、ファターケが吠えた 「おいマヤザック!さっきの言葉の意味!あれは一体・・・どういうことなんだっ?」 するとマヤザックは若干驚いたような表情を浮かべてこう言ったのだ 『ハァ?さっきも言っただろうが!我が“肉体”が、ワシを迎えに来るのだ それ以上でもそれ以下でもない そして我が“肉体”がここまでたどり着いた時―その時がワシの“完全復活”の時なのだ!』 時をほぼ同じくしてハロモニア城・大正門前― 邪神マヤザックがハロモニアの民の前に姿を現して以降、空には暗雲が重苦しく立ち込め、渦巻いていた その暗雲がマヤザックの“勝利宣言”の直後からにわかに厚みを増していき、太陽の光を遮って一段と辺りを灰色に染めていく 次第に風が強くなり、嵐の気配が漂ってくる そんな中、ハロモニア城・大正門前の広場に、突如、一条の大きな光の矢が降り注いだ バゴォォォォォン!! 光の矢が地面に衝突して轟音が響き渡る 地鳴りがし、建物を震わすとともに、辺りの空気をも激しく震わした 衝撃の大きさからして、何か巨大なものが上空から落下してきたのは確かなようだ ただ、それが一体何なのかはまだ窺い知ることは出来なかった その落下地点には、地面に衝突した際に穿った石畳から舞い上がった粉塵がモウモウと立ち込めていた やがて時が経つにつれ、その中から巨大なもののシルエットがゆっくりと浮かび上がってくる 岩のような、どことなくゴツゴツした輪郭。これは空から降ってきた隕石なのか? 否― はじめは隕石かと見紛うほどのそれは、よく目を凝らして見ると、驚くべきことにドクンドクンと脈打っているではないか? そう、突如空から降ってきたそれこそが、邪神マヤザックの“肉体”そのものだったのである ドクン・・・ドクン・・・ 空から降ってきたマヤザックの肉体は、その場から動くことなくただ静かに脈動を続ける ドクン・・・ドクン・・・ 何の変化もなく、ただ静かに脈動するマヤザックの肉体 その静けさが、まるで嵐の前の静けさのようで空恐ろしくもあった それから程なくして― 「おいっ!あそこだっ!」 「おっ!本当だ!急げっ!」 「おいっ!何か見えるか?」 「いや、煙で視界が遮られて何も見えねぇ!」 あちこちから、男達の大声があがる 実は、先程の巨大な衝突音を聞きつけたハロモニアの兵士達が数名、様子を見に慌ててマヤザックの肉体の降下現場へと急行したのだ 辺りを見回し、衝突音の正体を探る兵士達 すると、ようやく辺りに立ち込めて視界を遮っていた土煙がスーッとゆっくり晴れていく その中で、彼らは空から降ってきた“災厄”の姿を発見するのだった 「おいっ!あったぞ!」 「どこだっ!?」 「こっちだ!早く来いっ!」 姿を見つけた兵士達がマヤザックの肉体の元へと駆け寄っていく そこで兵士達は、自分達の想像していた以上の落下物に目を見張り、しばし絶句した 「・・・・・・」 誰もが呆然と佇む中、突如、その落下物がビクッと激しく脈動したことで兵士達は慌てて我に返る 「お・・・おい・・・何だこりゃ?」 「わ・・・わかんねぇよ・・・」 兵士達の率直な反応は当然であろう。何しろ、兵士達自身、今まで見たこともない巨大な生命体とおぼしきものと対峙しているのだから そして、その巨体が時折一際強く脈動する度、兵士達はえもいわれぬ恐怖に駆られ、呆然とその場に立ち尽くしてしまうのだった 駆けつけた兵士達がマヤザックの肉体と対峙してどれくらい時間が経ったのだろう ほんの数分なのか、それとも数十分なのか すると、兵士達の後方から叫び声がした 「おーい!みんな、どないしたんや?」 「!?」 独特な言葉遣い。“声の主”にピンときた兵士達は声のする方へと一斉に振り返る 「「アツコさん!?」」 そう、声の主はお庭番・アツコであった 街を襲うゴーレム討伐に行ったきりだったアツコが、ようやく城門にまで戻ってきたのだ アツコが戻ってきた、ということは、見事ゴーレム討伐を終えての帰還、ということになる しかも、アツコの後ろには、数人の勇者達の姿も見える それを見た兵士達の顔から少しずつ笑みがこぼれてゆく 当然であろう。 マヤザックが登場して以来、常に不安と恐怖と怯えてきた兵士達にとって、歴戦の兵・アツコ達の帰還は何より心強いものである だが、喜んでばかりはいられない いち早く伝えねば・・・兵士達は一目散にアツコ達の傍へと駆けてゆき、口々にこう言った 「アツコさん!ちょっと見てくださいよ、アレ!」 「ん?」 どことなく不安げな様子の兵士達に促されるまま、アツコは指差す方へ視線をやった そして程なくアツコの目に飛び込んできたのはとてつもなく巨大な塊 「・・・あぁん!?」 沈着冷静、平素であれば少々のことでは動じない肝っ玉の持ち主のアツコではあったが、思わず唸り声をあげてしまった 正門前広場に突如として現れた物体の、あまりの巨大さに度肝を抜かれてしまったのだ それはアツコと共に帰還していた『女流怨…』の面々やレイニャ達とて同様であった 「おおっ!?」 「うわっ!?」 「な、何よコレ・・・?」 驚嘆の言葉がつい口をついてしまう。それも致し方あるまい 数々の修羅場を潜り抜けてきたアツコ達であったが、これほどまでに大きな生物とは未だかつて遭遇したことがなかったからだ アツコ達にとって、今は一刻も早くりしゃこ達や三賢者、その他の仲間達と合流して打倒・マヤザックに急ぎたい しかし然りとて、この巨大な物体をそのまま無視して放っておく訳にもいかない 何故なら、この得体の知れない物体が、アツコ達に脅威をもたらす存在である可能性が極めて高いからだ そうアツコの本能が直感したのだ さて、どうしたものか・・・? 正体がわからない以上、とりあえず調べてみないことには何も始まらない 『虎穴に入らずんば虎児を得ず』― そう判断したアツコは、無言で動揺する兵士達や仲間達を制し、単身でゆっくりと巨大な塊に向かって歩を進めていく もちろん、いつその巨大な塊が動き出しても対処できるように武器に手をかけながら― 一歩、また一歩・・・。徐々に、そして慎重にアツコは距離を縮めていく 自らの危険省みず、強い使命感を持って謎の生命体に近づくアツコの姿を、 兵士達は唾を呑み込み、息を潜めてその様子を静かに見守る ザッ・・・ ザッ・・・ 静まりかえった辺りに微かな足音だけがする ザッ・・・ ザッ・・・ えもいわれぬ緊張感の中、程無くしてアツコは謎の生命体の元に無事たどり着いたのであった 「フゥ・・・」 とりあえず巨体に接近する、という第一関門はクリアした いつ不意を突かれて襲いかかられるか?そんな重圧から解放されたことで、アツコは天を仰ぎホッと一息ついた しかし、安心するのはまだまだ早い。アツコ達にはやるべきことは残されている まず、目の前の巨体が一体何なのか?また、巨体を調査した上でその処遇をどうすべきか?それを考える必要がある さて、どうしたものか・・・。少し考えてはみたものの、何しろ初めて見る“モノ”だ 悩んだところで名案が出るとは思えない。『三人寄らば文殊の知恵』、か― そう判断したアツコは巨体が動き出す気配がないことを今一度確認した上で、 辺りに待機している仲間達に無言のまま手招きをし、呼び寄せる その動作を見た仲間達のうちの年長者、サイトー=サンが 「いくぞ」 と、小声で皆に呼びかけ、先頭を切ってアツコの元へと歩き始めた