そして翌日― 朝靄のかかった中で“決闘”が行われることになった― 今回は立会人がトールである…。アイリーナ達双子にとっては相当のプレッシャーだ… ミヤりしゃも勝たなきゃならない戦いなので、いつもよりもつい、緊張してしまう… ピリリとした緊迫感の走る中、タイミングを見て、トールが合図する― 「それでは…始め!!」 合図と共に、4人とも呪文の詠唱を始める… と思いきや、何を血迷ったか、りしゃこが猛然と双子に向かってダッシュする!そして、杖で殴りかかろうとするではないか!! ギャラリーは勿論、立会人のトールも口をポカーンと開けてしまっている… 双子達も完全に虚を突かれている… 何を血迷ったか、りしゃこが肉弾戦を挑もうとしてる… 虚を突かれた双子達はうろたえている… そして、りしゃこの魔法が炸裂した!! 州*‘ o‘リ<ふぁいやーばとん!! 州*‘ -‘リ⊃┫ブンブンブンブン… 突然、杖の両端に火が点き、それをりしゃこがブン廻す…。そして、双子達を追いかける… 案の定、キャーキャー言って逃げ回る双子達… その隙にミヤビの呪文の詠唱が完了した!! 「いくわよ!ほのまら・改!!」 ミヤビの杖を媒介にして、大きな炎が沸き起こる…。それを前方にかざすと、炎が長く、一直線になって双子達に襲いかかる! ミヤビの魔法に気付いた双子達… だが、幸いなことに炎のスピードはそれほど速くはない… そう分析した双子達は直線的に向かってくる炎を、パッと二手に別れて最小限の動きで躱した… 隙の出来たミヤビにカウンターを食らわせるためだ… だが、それが裏目に出た― ミヤビの『ほのまら・改』を二手に別れて躱した双子達… だが、それが裏目に出た! ノノl∂∀∂'ル<かかったわね!! 二手に別れた双子の州´・ v ・)の方を炎が追いかける!! 「イヤーン!なんなの!?なんなのコレ!?」と逃げ惑うアイリーネだったが、抵抗空しく炎に絡めとられ、捕獲されてしまう… その様子を見て、気をとられた洲 ` v ´)も、りしゃこに追いつかれてしまう… 「もう、観念したら?」と勝ち誇ったような笑みを浮かべるミヤりしゃ― だが、アイリーナは不敵な笑みを浮かべている… 「…ずいぶんと余裕ね?」ミヤビの問いかけに対して「何も…ゼイゼイ…秘策があるのは…ゼイゼイ…アナタ達だけじゃないのよ…ゲホッ!!」 と咳き込みながらも、強気のアイリーナ… そして、ミヤりしゃは、数秒後に、アイリーナにとどめを刺さなかったことを後悔する… 「さぁ、いくよ!出でよ!!…」 不敵に笑うアイリーナ… そして、叫ぶ… 「出でよ!!おカッパ様!!」 シーン… しかし、何も起こらなかった… ノノl*∂∀∂'ル州*‘ー‘リ 「ざまぁないわね…!」と勝利を確信したミヤりしゃ… だが、その背後には… 「ケー!!」 ミヤビの魔法で拘束されていたハズのアイリーネだった!! が、様子がおかしい… 「…あ〜…失敗しちゃった…」と落胆するアイリーナ… 顔に手をあてて「…あちゃー…バカが…」と呻くトール… どうやら魔法が失敗したらしい… それでもお構い無しに火の玉の魔法を連射するミヤりしゃ ところが、それら全てがアイリーネの魔法・水の壁によって防がれてしまう… トールがりしゃこ達に向かって叫ぶ 「キミ達危ない!!コイツは“カッパ憑き”だ!」 哀れ、“カッパ憑き”の憂き目に遭ってしまったアイリーネ… トールが危険を察知して、りしゃこ達に「逃げろ!!」と警告する… だが、りしゃこ達は逃げなかった… これでも魔術師のはしくれ、宮廷魔術師には及ばない…。が、力を合わせればそこそこ役に立つ自信はあった… 「トールパパ、りーちゃん達もお手伝いするもん!」と、カッパ退治を志願するりしゃこ 「…ダメだ!関係ないキミ達を巻き添えにする訳には…」 というトールの言葉を遮り「いや、もう、十分関係者デスよ…。傷を治してもらった恩もありマスし…」 と、りしゃこ達は譲らない トールは決心した― 「わかった…。でも、みんな無理はするなよ?」 「「オー!!」」 かくして、カッパ退治が始まった― いよいよ、りしゃこ達のカッパ退治?が始まった 実は、アイリーナは今までにも“カッパ召喚”の術に失敗しては、アイリーネに憑依させてしまってたのだ… なので、トールも封印の仕方は心得ている ただ、呪文の発動には時間を要するため、足止めが必要だ そこで、りしゃこ達の出番なのだ 気をつけなくてはいけないのは、カッパに憑かれたアイリーネは生身の人間なので、強すぎる魔法は使えない…ということだ トールが封印の呪文を詠唱し始めた と、同時にりしゃこ達も援護用の呪文を詠唱する が、そんなヒマを与えてくれる程、カッパもバカではない… りしゃこ達に向かって走ってくる!! その行く手を、マッチョ妖精・マァが立ちはだかった カッパ(アイリーネ)の前に立ちはだかるマァ… 猛然と突っ込むカッパを受け止め、ロックアップの体勢に入った! 両者譲らない…が、まずはカッパが挨拶代わりのアームホイップ! 綺麗な受け身をとったマァが突進してくるところを、前転で躱して振り向きざまに、マァの胸板にドロップキックをぶち込むカッパ! 素晴らしい攻防に思わずギャラリーがため息と歓声を漏らす… 気をよくしたカッパはマァに向かって再度突進する… が、今度はマァのカウンターのベアハッグが待っていた!! 捕獲されたカッパ… ただ、トールの呪文がまだ詠唱を終えていない!! その隙にカッパはマァにサミング(目潰し)を食らわせ、ベアハッグから、脱出した! 難関をクリアして、トールの封印を阻止せんと、りしゃこ達のところに向かってくる!! 最強の関門・肉の壁―マァをクリアして、なおトールに向かって突き進むカッパ… だが、既に次の攻撃準備は整っていた!! 「前方一斉射撃用意!!」サキがミヤりしゃに号令をかける… 「撃てーーー!!」 号令とともに、ミヤりしゃがカッパの足元めがけ、火の玉を打ち込む!!アイリーネの身体を傷つけず、時間を稼ぐ絶好の手段だ… だが、カッパもバカではない…。次第に冷静さを取り戻し、ミヤりしゃに向けて水撃をお見舞いする!! 威嚇射撃のミヤりしゃと、殺る気マンマンのカッパでは背負うものがないカッパに軍配が上がった― 見事、水撃でミヤりしゃを打ち抜いたのだ!! 「弾幕薄いぞ!何やってんの!!」と、サキ… 最早この女、かなりノリノリである… 狙撃兵・ミヤりしゃを打ち抜かれ、手薄になってしまったサキ陣営… 再びダッシュしてくるカッパに対して、為す術はないのか? 「…くぅ…。これは使いたくなかったが…主砲、撃てーーー!!」 その号令とともにチナリが一歩前に出て、得意の空圧魔法・「のにゅ!!」を発射した!! 撃った本人も反動で吹っ飛ぶくらい、凄まじい空圧がカッパに襲いかかる!! …ハズだった チナリの魔法は残念ながら手元が狂って足元に暴発、哀れチナリはロケットのように上空を飛んでいくのだった… いよいよ砲撃手が居なくなったことで、司令塔・サキまであとわずかなところ―まで迫ってきたカッパ… このままでは最終防衛ラインを突破されてしまう… 思わず爪を噛んでしまうサキ… もう打つ手はないのか!? いよいよ最終防衛ラインまで迫ってきたカッパ… 封印の呪文を詠唱するトールをガードするため一歩も動けない!! 万策尽きたか…? だが、サキとカッパの目の前に立ちはだかった人物がいた… 今回のカッパ騒動の張本人・アイリーナだ 一言、 「アイリーネちゃん…ゴメンね!!」 と言うと、杖から水流が飛び出し、それがカッパと化したアイリーネに、まるで大蛇のように絡み付く… 「ク、クケッ!?」 身動きが取れず慌てるカッパ… しかしながら、カッパの力は強い…。そんなに長くは持ちそうにない… 「パパァ〜!!早くして〜!!」 「もう少しだ、アイリーナ!それまで持ちこたえてくれ!!」 額に玉のような汗を浮かべながら詠唱を続けるトール サキも最悪の場合を想定して呪文の詠唱を始めた… アイリーナも頑張っているようだが、もう限界のようだ… アイリーネに憑いたカッパを封印するため、呪文を詠唱するトール… それを阻止せんと立ち向かうカッパ… トールを守るべく、カッパの前に立ちはだかるサキ…カッパの動きを止めるのに精一杯なアイリーナ… ふと、サキは気が付いた… サキの隣でユリーナがボーッとしていたのだ その姿を見て、 「ち、ちょっとユリーナ!ボーッと見てないで助けてよ!!」と苛立った声でサキが呼び掛ける 「うーん…。別にいいけど…。知らないよ?」とユリーナは言う 「どうなってもいいから、早く助けて!!」と、サキが加勢を促す! 「も、もうアタシも限界…」とアイリーナも言う やれやれ、といった感じでため息をつくユリーナ… そして決意して、アイリーナのところに近付き、カッパを捕らえた“水蛇”に手を触れて、一言、 「ピリリ!!」と言った! すると、電流が水蛇をつたってカッパに見事に命中!! …だが、当然、術者のアイリーナにも命中!! 両者KOとなってしまった! カッパ対りしゃこ達の結果は、何ともあっけない幕切れとなった― 痺れて動けないカッパをマァが羽交い締めにして、呪文を詠唱し終えたトールがカッパをお皿に封印する― そして… カッパを封印されたアイリーネは元通りになった 「…もう、アイリーナちゃんなんか大っ嫌い!!」と、拗ねてるアイリーネに対して 「ゴメンね…ゴメンね…!!」と必死に謝るアイリーナ… いつもの生意気ぶりが鳴りを潜めている格好だ… トールもアイリーナにあきれ果てて、 「帰ったら、また“お仕置き”だな…」と、ぽつりとこぼす それを聞いたアイリーナ、「…ねえ、パパァ…反省してますから許してぇ〜!」とすっかり大人しくなった… トールは今回の件でりしゃこ達に迷惑かけたことを詫び、その罪滅ぼしで、りしゃこ達に魔法を特訓してくれる…というのだ こうして、魔法の杖を巡る双子との争いは終結した― そして翌朝― 魔法の特訓を受けるため、みんなして待ち合わせ場所の広場に向かった… 既にトール達は到着していて、もう特訓を始めていた 双子達が水の入ったバケツに念を送っている… 『物質の具現化』の練習なのだろう… そういえば、双子やミヤビが、水や炎を生き物のように操っていたのをりしゃこ、ふと、思い出す… りしゃこは新しい修行に胸を膨らませた… そこへ、双子の父親・トールがやってくる 「やぁ、おはよう。昨日は済まなかったね…」と、気さくに挨拶をする 「おはようございます!こちらこそ、よろしくお願いします!」と、礼儀正しく挨拶を返すサキ… 「じゃあ、せっかくだから、『具現化』のトレーニングからはじめようか?」 といって、経験の浅い、と思われるミヤりしゃをトールが付きっきりで特訓することとなった… まず、特訓を始める前に、トールが実践する 水が入ったバケツに杖を浸して、何やら目をつぶって念じるトール… wktkなミヤりしゃ… だが、しばらくして、トールは杖をバケツから抜いて一言、 「今日は調子が悪かったみたいだ…」と苦笑いする… 後日談だが、宮廷魔術師・トールは実力にムラがあり、調子が悪いとからっきしだが、絶好調だと国内でも5本の指に入る実力者であると… そのため、ミドルネームの『ボンバー』は爆発力をあらわす…という さて、調子の悪いトールをほっといて、バケツの水を使ってミヤりしゃも修行しようとするが、不思議なことにバケツの中の水はピクリとも動かない!! 慌てるミヤりしゃを見て、にっこり微笑むトール… 杖で一度、バケツを小突くと水が噴水のように吹き上がった… 二度ビックリするミヤりしゃ… 要はトールのイタズラだったのだ― すっかりトールの魔法の虜になるミヤりしゃ… トールの魔法を見ていたミヤりしゃは大喜び!! …しているヒマはなかった 自分たちが特訓して、会得しなければならないからだ トールの 「…よーし!じゃあ始めるぞ!」の掛け声とともに、ミヤりしゃもバケツの水に集中して具現化を試みる… 5分経過… ミヤビのバケツの水には水面に波紋が出たりしたが、りしゃこのバケツの水には一向に変化が見られない… 首を傾げるりしゃこ… 10分経過… ミヤビはコツを掴んだのか、水面に渦巻きが出来たり、水が跳ね上がったりしている だが、りしゃこのバケツの水には変化がない… 全然変化のない水に対して苛立ちを隠せないりしゃこ… そんなりしゃこの様子を察して、トールがりしゃこの頭をポン!と軽く叩いて 「よーし!りしゃこ…いいかい?今、りしゃこの魔法に欠けているのは二つ…『イメージ』と『意志』なんだよ」 「『イメージ』と『意志』!?」 トールに尋ねるりしゃこ… 「…そうだよ。例えば…りしゃこは何のために魔法を覚えたり、使おうとしてるんだい?」と問い掛ける… 「えーと…」 不思議と答えがすぐ出てこない… 「…そこが大事なんだよ。例えば、目の前に化け物がいるとする…そうしたら、りしゃこはどうする?」 「火の玉の魔法で追っ払うもん!!」 「そうだよね…。化け物を追い払う、という『意志』が働いて、火の玉を『イメージ』して発射する…という手順を踏む…」 「うん!わかるもん!!」 「…だから『イメージ』と『意志』が必要なんだよ」 「うん!!」 「さっき、僕はキミ達を驚かせよう、喜ばせようと思って『噴水』をイメージしたんだ…。だから、りしゃこも出来るよ…」 「うん!わかったもん!」 トールのアドバイス通り、精神を集中させてイメージを思い描く… 今までにないくらい真剣に集中する… いつしかりしゃこの額にはうっすらと汗がにじんでいた… 集中すること5分…10分… だが、バケツの水には何の変化もなかった… 首を傾げるりしゃことトール… 「…僕の教え方がまずかったのかな…」 それを聞いてガックリするりしゃこ… 「…まぁ、誰にでも飲み込みの早い遅いはあるからね…。さぁ、もう一回頑張ろう!」とトールが励ます そして、トールがバケツの方に目をやると、やはり水には変化がなかった… が、とんでもないことに気付き、トールは目を疑った… そして、りしゃこを呼ぶ… そこには… りしゃこの魔法特訓がうまくいかず、トールは一度休憩してからやり直そうと考えた… そこで、特訓用のバケツに目をやると、とんでもないことが起きていた! バケツ自体や、中に入っている水には何の変化もなかった… が、バケツの周囲に生えてる草花が、著しく伸びていたのだ!! トールはりしゃこに、 「さっきの特訓では、何をイメージしたんだい?」と尋ねる りしゃこは、 「みんなをビックリさせたかったから、水でできた『お花』と作ろう、って…」 トールは心底驚愕した… 生物の成長を促進させるのは『高等魔法』だ… トール自身、修得したのは青年期だし、双子の娘も『天才』とは言われるものの、そこまでのレベルではない… それをりしゃこがやってのけたのだ… トールは予感した… 『きっと、この娘はスゴい魔術師になるだろう…』と りしゃことトールがマンツーマンで特訓している間、みんなも特訓していた… ミヤビは具現化の特訓の後、炎の魔法の操作に取り掛かっていた 『ほのまら』の操作がちょっとスムーズになってご満悦のようだ… サキも鍛練に余念がない…。二人がかりとはいえ、『水の壁』の前に歯が立たなかったのは事実だ… 大きな岩に向かって風の魔法を反復練習する… 双子は双子で、特訓に飽きたのか、水の球をぶつけ合いっこしている…。これも修行の一環なのか… 小一時間すぎ、そろそろみんながひといき入れる頃だ… それでもりしゃことトールは黙々と特訓を続ける… そして、さらに一時間後…りしゃことトールが突然、歓声をあげた! 何事?と思い、駆け出す一同… 黙々と特訓を続けていたりしゃことトールが歓声をあげた!! 何事?と思い、集まった一同の目の前なは… 小さな水の塊だった… しかも、どこかしら形がいびつだ これくらいのレベルであれば、ちょっと熟練した魔術師でも出来るだろう そう思った双子あたりから「…ねえ、これの、どこがスゴいの…?」と質問が飛ぶ… 「ちょっと見てごらん」とトールが指差すと、小さな水の塊がぴょこん、ぴょこんとジャンプする… 「…うわっ!可愛い!」 と一同、歓声をあげる… 「…で、これ…何なの?」とサキが尋ねると、 「水で作った『小鳥』さんだもん!!」とりしゃこが答える 「でも、これじゃあ、『小鳥』というより『ひよこ』だね!」と言いながらも、嬉しそうなミヤビ 「別にアタシ達もそれぐらい出来るもんねー!」「そうだよねー!」と対抗意識を燃やす双子達… それから後も魔法の特訓は続いたのだった― トールのアドバイスのおかげで魔法のスキルが格段にアップしたりしゃこ そんな姿を見て、魔法を使うメンバーは対抗心を燃やして術の鍛練に打ち込み始める… そして夕方― りしゃこは魔法の小鳥『ぴーちゃん』とやらを水だけでなく、火でも具現化出来るようになった ミヤビは『ほのまら』の追尾精度とスピードを上げることに成功した サキは風の魔法を極限まで圧縮することで、なんと岩に傷を一撃でつけれるようになった そして、アイリーナとアイリーネの双子の姉妹はというと、やはり成果はあったようなのだが、 「競争相手なんかには教えられないもんねー!」「そうだよねー!」 と、いうことで教えてもらえなかった みんなで楽しんだトールの魔法特訓も無事終了したのだった