キュートエリア・メグミニラの街を出て、ハロモニアへの道を目指すサキ達… ハロモニアの道中、馬車に揺られながら、サキは考えを巡らせた… トールの推測で、なんとなく、りしゃこが狙われる理由はわかったような気はするが… メーグルの目的が見えてこない… かつての仲間ではあるが、もし、それが誤った道ならば、袂を分かつしかない…ただ、それだけの非常になりきれる覚悟が、今の自分にあるのか…? …答えが出ない… すると、考え込んでいるサキを邪魔するかのように、急に馬車が止まった… 「ちょっと!何があったの!?」 と、馬車を操縦していたマァに聞いてみる 「敵がいる…、とゆいたい…」と答えるマァ… 「ちょっと待って!」とすぐさま馬車の前方へ移動するサキ… 目の前には、七、八人の盗賊のような男達が、道を塞ぐ格好で立っていた その身なりや仕草で、まず友好的でないことはわかる… 「…どうする?とゆいたい」と問うマァだが、まるでサキの言うだろう答えを待っているようだ… 勿論、サキの答えは… 「やっちまいますか!!」 ハロモニアへ向かう道中、盗賊の群れに行く手を阻まれるサキ達… どうやら、獲物を前にして穏便に物事を済ますつもりは無いらしい… 「ヒャッハー!!ここは通さねぇぜ!!」と盗賊の中のモヒカン野郎が騒ぎ立てる… つられて周りの盗賊共もゲラゲラと下卑た笑い声をあげる… が、その笑い声が悲鳴に変わるのにはそんなに時間は要らなかった― モヒカン野郎の顔が一瞬にして風圧によって歪み、やがて、身体全体が吹っ飛ぶ…。ダークエルフ・チナリの風の魔法だ― 度肝を抜かれた盗賊の群れに次々と風の刃が襲いかかる…。これはサキの魔法―「てめえ!!この野郎!」と馬車に近づく盗賊共に突如として地面が隆起し、身体の至るところを打ち抜く!!マァの魔法だ― そして、盗賊共の足元には、いつの間にか蜘蛛の巣のように水の糸が張り巡らされていた… そこに無情にも、ユリーナの雷の魔法「ピリリ」が打ち込まれる…!! 一部でも水の糸に接触していた盗賊共は悉く感電し、動けなくなった― サキ達の、電光石火の勝利だった― 喧嘩をふっかけてきた盗賊共を相手に、圧倒的な力の差を見せつけたサキ達… 手早く盗賊共を縛り上げ、その内のモヒカン野郎を叩き起こす… 馬車内にいたトールが出てきて、モヒカン野郎に詰問する 「何故、僕達を尾け狙った!?」 サキは耳を疑った 「…この人達、私達を尾けてたんですか!?」 「そうなんだ。馬車内からずっと不穏な気配を感じてたからね」と、トールがサラリと答える… その会話中、なんとか逃げ出そうと必死なモヒカン野郎…。その慌て振りに警戒を強めたトールが答えを急ぐ… 「言え!何故、僕達を狙った?」 と、その時!! サキ達に捕らえられたモヒカン野郎がたまらず叫ぶ… 「おかしら〜〜!助けて〜〜!」 すると、どこからか地響きがする… 警戒し、辺りを見回すサキ達…だが、何もない… と、思いきや、突然、目の前の道が隆起し、それが徐々に、「ある形」をあらわす… 数十秒後、出来上がった「モノ」にサキ達は驚愕する… 「…なんてことだ…。まさか、『禁忌』を使う術者がいるなんて…」 トールが思わず天を仰いで呻く… 土くれから出来上がったのは「人形」…そう、ゴーレムだ… 古の時代、このハロモニアで猛威を奮った痛みも疲れも感じない『究極の兵隊』… あまりにも非道であるが故に、今では『禁忌』の魔法とされているのだ… その、恐るべき『破壊兵器』がサキ達の前に立ち塞がっている!! 果たして、勝算はあるのか!? サキ達の前に突然、立ち塞がった『禁断の生命体』・ゴーレム… サキ達はごくり、と唾を呑み込む… 「…あの、トールさん…これって…」 「…ああ、あのゴーレムだよ…」 「…こういう場合…どうしたらいいんですか…?」 「…弱点がない、わけじゃない…」 「…弱点、あるんですか!?」 「ああ。まず、動きが鈍い…。だから、ゴーレムと遭遇したら逃げればいい」 「…でも、ここ…一本道…ですよね…?」 「…だから、厄介なんだ…。だとすれば…」 「…だとすれば?」 「…『核』を狙う!!それを破壊出来れば、奴はただの土くれと化す…」 「…じゃあ…」 「作戦がある…」 トールには、打倒・ゴーレムの策がありそうだ… だが、そんなことはお構い無しにゴーレムは襲いかからんとしている よくよく見ると、体長は10mくらいはあろうか…。そんな化け物は、自然界には、まずいない… 規格外の化け物がサキ達に迫ってくる…。そして… 「グォォォーーー!!」と、側にいる人間に振動が伝わる程の咆哮をあげるゴーレム… そして、大きく手を振り上げたかと思うと、その巨大な両の手で、馬車を鷲掴みにして持ち上げようとする!! 「危ない!!逃げろ!!」トールの掛け声とともに、逃げるように馬車から飛び出るサキ達― 馬車から飛び降りた面々は、素早く四方八方に散らばる…動きの鈍いゴーレムに的を絞らせないためだ… ところが、的を絞れないハズのゴーレムが、ある一点のみを目指してゆっくりと、歩を進める…そして、その先にいるのは… アイリーナとアイリーネ…トールの双子の娘だ! ゴーレムは誰でもよくて襲撃してるのではなく、双子を狙っていたのだ!! いくら魔法の腕が優秀とはいえ、双子の実戦経験不足は否めない… 事実、二人の足元は小刻みに震えている… 巨大なゴーレムに狙われてることを知り、動揺する双子達… 昔、トールから聞いた忌まわしい化け物がいるのだから動揺も致し方ない… 震えがおさまらない双子にゴーレムが歩を進める… 迫りくる“壁”の前に、『蛇に睨まれた蛙』状態の双子…。このままでは捕まってしまう… その時だ― 「“おまじない”を思い出せ!!」 声の主は二人の父・トールだった! その言葉で我に返った双子は、まだあどけなさの残る顔をキュッ、と引き締め、呪文を詠唱し始める… だが、ゴーレムは一歩、また一歩と近づいてくる… そのゴーレムの目の前にサキが立ちはだかり、詠唱し終えた魔法を解き放つ!! ヒュッ!!ヒュン!!ヒュン!!… 周囲の空気を切り裂く音を立てて、無数の風の刃がゴーレムの無防備な顔面に命中した!! 「やった〜〜〜!!」 思わず歓声をあげるメンバーたち… だが、その喜びも、すぐに落胆へと変わってしまった… ゴーレムは、何らダメージが無く動き続けているからだ… 再び、振り上げた腕を、今度は横に薙ぎ払う!! そして、その先にいるのはサキ!! 魔法を解き放ったばかりで無防備のサキを、巨大な“ハンマー”が薙ぎ倒さんとする!! 小柄なサキでなくても、一撃食らえば、もう瀕死だろう… だが、サキは身動きが取れない!! 皆がインパクトの瞬間を思わず目を背ける… ドカッ!! 何かが吹っ飛ぶ音がした… 恐る恐る目を開いてみると、サキのいた場所には壊された土の柱が立っていて、その側にサキとモモがうつ伏せに倒れている… 「…なんとか、間に合った…とゆいたい」と、安堵の表情を浮かべているマァ どうやら、マァの土魔法で防御壁を作り、同時にモモがサキをしゃがませ、ゴーレムの一撃を回避したのだ… いよいよ反撃開始だ! 「準備はいいか?」 トールの問いかけに 「うん!」「おっけ〜!」と、返事する双子 「せ〜の!!」 「雨・雨・降れ降れ母さんが〜♪」 「蛇の目でお迎え・嬉しいな〜♪」 「ピッチ・ピッチ・ジャブ・ジャブ・ラン・ラン・ラン〜♪」 「るてるて♪」「ずうぼ〜♪」― 双子が呪文?の詠唱?を終えて、両手を天にかざす… すると、白いフードを纏ったような『モノ』がゴーレムの頭上10mくらいの中空を浮いている… そして突然、ゴーレムの頭上だけに一斉に集中豪雨が降り始めた!! するとどうだろう…。ゴーレムの乾いた表面が水分を吸い込んで徐々に弱くなっているように見受けられる… 「次は僕の番だな…」と言って、トールが杖を取り出し、小さな球をいくつか地面にばらまく… 「!?」 皆がトールの杖を見て、全員が不思議そうな顔をする…。何故なら、その杖は棒状ではあるが、先端に握り拳大の瘤がついている… それに、小さな球を足元にばらまいているのが解せない… 双子はというと、 「パパァ〜!あの魔法…やっちゃうんだ!!」「パパァ〜!頑張って〜♪」 と、やたら大喜びだ… 「ねえ…今から…何が始めるの?」とサキが聞くも、「まあまあ♪」「それは見てのお楽しみ♪」と教えてくれない… 果たして、宮廷魔術師・トールの秘技とはいかに…? 双子の、魔法の集中豪雨で動きの鈍ったゴーレムを前に、秘技をお見舞いしようとするトール… だが、地面に小さな球をばらまくだけで、何ら特別なことをしていない… 果たして、上手くいくのか…? トールが地面にばらまいた小さな球の前に立ち、少し深呼吸をする… そして何を思ったか、杖を頭上まで振り上げ、腰の回転を使って思い切りスイングさせて小さな球を前方に弾き飛ばす!! 小さな球は目にも止まらぬスピードで、ゴーレムの右肩辺りにめり込んだ!! 「よし!次!!」と言っては次々と小さな球をゴーレムに命中させる… 一方、一時的に豪雨で勢いが止まったとはいえ、再び、双子に向かって前進を始めるゴーレム… だが、トールは動じない…。むしろ、ゴーレムを呼び込んでいるようだ… ゴーレムが眼前に迫った時、トールが呪文を解き放つ!! 「…フンッ!!」 トールの掛け声と同時にゴーレムの四肢の辺りからまばゆい光が溢れ出し、大きな爆発音とともに身体が崩壊を始める!! 光が溢れ出した場所は、そう、トールが小さな球をめり込ませた場所だったのだ!! トールの秘技によって、四肢が崩壊し始めたゴーレム… しかし、それでも標的に迫る執念…まさに『禁断の兵器』と呼ばれる所以だ… 「やはり“核”を破壊するしかないか…。サキ、チナリ、君達の出番だ!」 「…ふぉえ!?…でも、ウチの魔法は効かなかったんデスけど…?」「どーすればいいの〜?」と口々に言うサキ達に 「こうしてくれ…」と耳打ちするトール… 「へぇ〜!」「スゴそうジャン!!」と言ってすぐ呪文の詠唱に入る二人… その間もての空いてる人間でゴーレムの足止めをする… 「よし!」「いっくべぇ〜〜〜〜!!」 「「合体魔法・“のにゅのにゅキャノン”!!」」 二人同時に魔法を放つ!!術を放った二人が大きくのくぞり吹っ飛ぶくらいの衝撃だ… 大きな空気の砲弾がゴーレムのどてっ腹に炸裂する!!…砲弾が着弾した場所には大きく抉れ、そこに何か光る球状の“モノ”があった… 「みんな!!あれが“核”だ!!早く破壊しよう!」 トール、サキ&チナリの波状攻撃で崩壊し始めたゴーレム…。傷口から“核”が見えてきた! 「あの〜、何でウチらの魔法が効いたんですかぁ?」と尋ねるサキ… 「チナリの空気の“砲弾”を、サキの“風の螺旋気流”がアシストして破壊力がアップしたんだよ」と、トールが解説する 「へぇ〜〜!」「スゴいスゴい!!」というサキ達に「そんなの常識だよね〜♪」「そうだよね〜♪」とからかう双子達… 「もぉ〜〜!!」 と、ちょっと膨れっ面をするサキとチナリ… そのやりとりを遮るように「…まだだ!まだ油断するな!」と警戒するトール… トールの指摘した通り、徐々にではあるが、ゴーレムが“再生”をし始め、傷口が塞がってゆく…! 「…不味い!一気にカタをつけるぞ!」 トールの檄を受けるが速いか、二つの影が飛び出す! 今まで傍観していたモモが動いた!! 「火傷するわよハニー!『百花繚乱・桃色のファンタジー』!!」 懐から小さな炮烙玉を取り出し、次々と再生し始めたゴーレムの傷口に命中させる!! 鮮やかな閃光とは裏腹に、傷口から“核”が、さらに剥き出しになる… 「じゃあ、後は頼んだわよ!」 「じゃあ、後は頼んだわよ!」 モモの言葉を受けて、飛び出したのはユリーナ! モモが両手を組んで足場を作り、ユリーナがそれを踏み台にして大きく飛び上がり、腰から愛用の細身剣を抜く… 「伸びろ!『ニョキニョキチャンピオン』!!」 細身剣が持ち主の意思に反応するように、刀身が通常の二倍に伸びる… そしてゴーレムの防御を掻い潜り、見事に“核”を刺し貫く!! 「ピリリッ!!」 ユリーナが細身剣で貫いた後、さらに電撃魔法で追い討ちをかける!! “核”は電撃に耐え切れず、亀裂が走り、そして砕け散った… 「わーい!やったー!!」 口々に喜びの言葉を発するサキ達… 皆が勝利に浮かれる中、トールは慎重に、砕け散った“核”を拾い集めていた… 「ねえねえパパァ〜?」「何やってんの〜?」 「この“核”の破片を持ち帰って『アカデミー』で分析するんだ…」 トールの言葉をきっかけに、浮かれるのをやめて、破片探しを始めるサキ達… そして、全部拾い終えた後に、トールから 「よくやったな!全員合格だ!」と労いの言葉をかけられ、一同は改めて、喜びを爆発させる― 一方、その頃― 某所にて― 「え〜〜っ!?アタシらが作った究極兵器・ゴーレムが壊れちゃったぁ〜〜〜!!ショック〜〜〜!!」 「結構やるじゃん!あの子供達も♪」 「そうやって簡単そうに言うけど、アレ、すっごく作るのに時間かかったんだから〜〜〜!!」 「ぶきっちょだから仕方ないじゃん♪あのゴーレム、子供の方が、上手く作れるよ♪」 「あ〜〜っ!!もう!!そうやってバカにする〜〜〜!!イライラする!!」 「もう…怒り過ぎだよ♪ホラ、笑って♪」 「ダメダメダメ…もうダメ!!やってらんない…」 「…ホラ、落ち着きなって♪せっかくの可愛い顔が台無しだよ♪」 「…うーん…」 「よしよし♪」 「あーーーっ!!もう!!子供扱いしないでっ!!」「…もう!世話の焼ける子なんだから…!」 「!!…あっ!!ちょっと!やだ!やだやだやだ!!何すんの!?」 「何って!?駄々っ子にはお仕置きよ♪」 「な、ちょ、ダ、ダメ!!そこ触っちゃ!!アタシがそこ弱いの知っててやってるでしょ!?」 「エヘ♪…あったり前じゃ〜ん♪うりうり♪」 「あーもう…やん……あん……うぅん………」