ベリーナイスの街を探索する一行 

まずは宿探しだ 

旅をする以上、今までの教会生活のような寄付や差し入れが無くなったわけなので、安くあげる必要がある 
5〜6軒の宿を回っていると、子供のりしゃこやミヤビは豪華な宿に泊まりたい、と駄々をこねだす 

何せ質素な孤児院育ちだから豪華な宿に泊まりたがる気持ちはわかる。でも、節約しなきゃならない― 

サキが宿選びで迷っていると突然、モモが「あそこにしましょ」と指を差す 

その先には普通ランクの宿だった 

「ちょっと待ってて」と言うなり一人で宿に入っていくモモ 

5分後、嬉しそうな顔をしたモモが戻ってくる 

「えへん!あの宿に決まりました!」 

サキとしてはもうちょっと安い宿を考えていた 

そんなサキの気持ちをお見通しなのか、 
「なんと半額ですよぉ〜ウフフ」と言う 

サキはびっくりした…予想以上に安くなったからだ 

サキも快諾し、宿の部屋へ向かう 

…宿屋の人達が憐れみの目で一行を見ていたのは少々気になったが…


宿も決まって取り敢えず部屋でくつろぐ4人… 

サキは胸のモヤモヤを取り除きたくてモモに聞いてみた 

「何故、宿代が半額になっちゃったの?」 

「…ここだけの話ですけどぉ…あたし達、孤児院のシスターとその子供達、という設定なんですよぅ〜」 

偶然とはいえ、ほんの数日前までの生活に逆戻りだ 

「シスター役のサキちゃんが暴力をふるうダンナに愛想を尽かして子供達と一緒逃げてる、って涙ながらに話したら、宿屋のおじさんが半額にしてあげるって…」 

「だから皆さんそのフリをして下さいねぇ〜」 

…憐れみの目だったのはこのことか… 

聞かなきゃよかった…と後悔するサキ 

でも、GJ!!


ベリーナイスにたどり着くまでは厄介者と思っていたモモが、宿屋代を値切って、意外に役に立ったのを満足するサキ 

でも、まだ気を許せないのは確かだ… 

それでもこの街でしなきゃならないことは沢山ある… 
取り敢えず、サキはモモを一人にする訳にいかず、4人で食料の買い出しやギルドでの仕事探しのために外出をすることにした 

4人で街をしばらく練り歩いていると、人だかりが出来ている― 

なにやらケンカのようなので、トラブルに巻き込まれたくないサキは近づかないようにした 

が、モモがいない― 

いつのまにか野次馬となっていたようだ… 

モモの野次馬根性に呆れるものの、放っておく訳にいかず、サキたちも人だかりの中に割って入った 

すると、大の大人が子供達相手に罵声を浴びせている…一人の少女は泣きべそをかいており、男の子の方は大人に食ってかかっている…


「おい、厚化粧のクソババァ!オレの妹に何しやがんだ!」 

「ンマー!!ワタクシのことをクソババァですって!!ンマー!!」 

「クソババァをクソババァって言って何が悪いんだ!!それよりオレの妹に謝れよ!!」 

「ンモー!堪忍袋の緒がキレたザマス!!」 

男の子に罵倒された厚化粧のオバサンは手にした扇子を男の子の顔面めがけてフルスイング!!そしてクリティカルヒット!! 

男の子も反撃を試みるがオバサンの飼ってる毛むくじゃらの大型犬に阻まれ反撃できない… 

「オーホッホッホッホッ!!何も出来なくて悔しいザマスか?クソガキ!!」 

オバサンになじられ、みるみるうちに泣きべそ顔になる男の子 

「あの男の子、かわいそうだゆー」 
「ホント!許せない!!」 
りしゃことミヤビが憤る 

トラブルは避けたいサキだったが、さすがにオバサンを許せなくなってきた 

と、その時!!


どこからともなく卵が飛んできて、厚化粧のオバサンの顔面に見事に命中!!続けざまに2個、3個とさらに命中していく 

一瞬、何が起きたかわからなかったオバサンだったが、卵が顔面にぶつけられたことに気付き、 
「ンマ〜〜〜〜〜!!!」と雄叫びをあげる 

「おばちゃま、子供相手に暴力なんてサイテーですよ!!」 

声の主はモモだったが、いつものぶりっこ口調でなく、明らかに怒っている声だ… 

悔しがるオバサン。 
「チャールズ!!あのバカ女に噛み付いてしまいなさい!!」と傍らにいた大型犬に命令する 

即座に飛び掛かるチャールズだったが、モモが再び小袋をチャールズの顔面にヒットさせる! 

次の瞬間、チャールズが悲鳴をあげて、地面をのたうち回っている… 

「さすがに胡椒を食らったら、ひとたまりもないですねぇ〜」 

チャールズを尻目にオバサンに近づくモモ 

卵まみれのオバサンの顔を見て「プッ♪」と吹き出すモモ 

最大限の侮辱に怒りに震えるオバサン 

「厚化粧、崩れてますわよぅウフフ」とトドメをさすモモ… 

厚化粧が崩れたと聞いて、慌てて顔を隠し、逃げていくオバサン


一目散に逃げていくオバサンを尻目に子供達に駆け寄るモモ。そして、男の子に「…もう大丈夫よ。痛くなかった?」 

と優しく声をかける 

男の子は黙っている…。きっとオバサンに何も出来なかった悔しさで何も言えないのだろう… 

先ほどまで泣いていた女の子は、オバサンが逃げたのに気づいてようやく泣き止んだ 

と、突然、周りの野次馬達から拍手が起こった… 

キョトンとするモモ… 

同じく、キョトンとしてる子供達… 

さらにキョトンとしてるりしゃこ達… 

その時、何か閃いたのか、モモが手持ちの布袋を口を広げた状態で置き、拍手する野次馬達に両手をあげて歓声に応える 

そして、スカートの裾をつまんで、可愛くお礼のポーズをとる― 

すると、どこからともなく、コインが飛んできた… 

おひねりだ!! 

この異様な光景を、子供達やりしゃこ達はポカーンと眺めているのだった…


しばらくして周りにいた野次馬達も少しずつ立ち去り始める 

おひねりをかき集め、子供達に再び駆け寄ると、まず、女の子に「もう大丈夫!!」と優しく抱きしめる 

泣き止んだ女の子も元気になって「うん!」とモモに言った 

次に、男の子のところに行き、「…よくやったぞ!えらいよお兄ちゃん」と男の子の頭を撫でてやった 

すると男の子がモモの頭を撫でている手を払いのける 
最初は照れ隠しかと思ったが… 

リ#・―・リ<オレは女だ!オ・ン・ナ!! 

ポカーンとするモモ 
とりしゃこ達 

でもしばらくすると、女の子が 

ノソ*・―・リ<ありがとうお兄ちゃん!! 

と言うではないか!! 

リ;・―・リ<… 

思わず黙り込んでしまう『お兄ちゃん』


そんなコントみたいなやりとりに 

本日2度めのおひねり!! 
中には「いいぞ!」「もっとやれ!」と煽る野次馬もいた… 

りしゃこ達はその場から一旦そそくさと立ち去って 

モモと兄妹?は前回同様お礼のポーズを決めて退場していった… 



モモと兄妹?が人だかりから離れてしばらく歩いていると、りしゃこ達がモモ達に駆け寄ってくる 

「モモちゃんカッコよかったもん!!」 
「すっごくスーっとしたよ!!」はしゃぐりしゃことミヤビ 

「…わたしは恥ずかしかったわ…」とサキ。表向きはそう言うものの、表情は怒ってるどころか誇らし気である― 

ちょっと照れくさそうに「…見てたんですかぁ〜?恥ずかし〜ですぅウフフ」とモモが言う 

「でもぉ、モモに惚れたらダメですよぉ〜ウフフ」 

またもポカーンとするサキ 
「ほれちゃったもーん!」「わたしもわたしも〜!」とモモの策略にハマるりしゃことミヤビ 

女の子がモモに向かって 
「お姉ちゃん、ありがとー!!」と元気良くお礼を言う 

お兄ちゃん?も「…ありがとう…」とボソッと言う。照れてるのだろう 

二人を見て、笑顔のモモ


そんな微笑ましい雰囲気をぶち壊す出来事が― 

…ぐぅ〜きゅるるる〜… 

みんな一斉に音のなった方向へ向く 

「…アハハ…ゴメ〜ンチャイ!」よりによってサキだった 

みんなの気を反らすため、「ね、ね、みんなご飯にしよ?おなかペコペコじゃない!?」 

と言ったところでみんなのおなかも 
ぐぅ〜〜〜〜きゅるるる〜と条件反射のように鳴り出す… 

みんなで顔を見合せて大爆笑した 



しばらくして、食堂に入ったご一行、モモが「お金ならコレがあるから」とおひねりの入った袋を取り出す 
お言葉に甘えて遠慮なく食べまくるご一行 

次から次へと皿が重なっていく様はかえって清々しい 
ようやく食べ終えてから、モモが兄妹?に事の顛末を尋ねた 

すっかり警戒心の溶けた兄妹?は自己紹介をする 

「オレの名前はチッサー=オ・カール。で、妹がアッスー=オ・カールって言うんだ。ヨロシク」


みんなで食事をした後、チッサーが事の顛末を話し出した 

オ・カール一家はこのベリーナイスに商売のために来た、と言う 

キュート地域の街で小さいながらも地道に食料品のお店をしている、と。そこそこうまくいっていた、と。 
ただ、最近ハロモニアから大きな総合販売店「マコーレ」が来たため、売り上げが落ちて苦心してるのだ、と言う 

世間を知ってるサキとモモは「マコーレ」のことはよく知っていた。女王御用達の総合販売店として有名だ。確かに、客をとられて大変だろう… 

幼いオ・カール姉妹は何故ベリーナイスに来たかの理由は知らない 

店を閉めてまでここにくるのだからかなり深い事情があると思われる… 

ちょっとしんみりしかけたところで、例のオバサンとの話を聞いてみた 

そこで驚きの事実が… 
聞けば、その厚化粧のオバサンこそ、「マコーレ」の大店主・ピーマッコ婦人だという… 

どうやらケンカの発端は、アッスーが大通りの曲がり角でピーマッコ婦人にぶつかったのが原因だ 

気位の高いピーマッコ婦人が汚らわしい子供、とアッスーを罵倒して泣かせてしまった、と。それに怒ってチッサーが食ってかかった―という訳だ


ピーマッコ婦人の仕打ちに憤るサキとモモ 

子供心によくわからないがなんとなく怒るりしゃことミヤビ 

「絶対仕返ししてやるんだ!!」と鼻息の荒いチッサー 

いつしか日も暮れようとしたので食堂を出ることにした 

先に会計を済ませるために店主のところへ行くモモ 

モモが会計を済ませたのを確認して店を後にするご一行 

宿屋同様、憐れみの目で見られるご一行… 

サキは理由を知っていたが敢えて何も言わなかった… 
店でお別れの時、モモが急に「ギルドで仕事探しをしてきます〜ウフフ」と足早に一人立ち去っていった― 

ここ数日のモモの働きをみて、信頼することにしたサキ 

そしてりしゃこ達は宿屋へ帰って行く 

が、何故かオ・カール姉妹もついてくる… 

(きっと、途中までの道が偶然一緒なんだ…)と思い、すたすた歩いていくりしゃこ達… 

だが、姉妹と別れることなく、宿屋に着いた… 

「あれ?ねーちゃん達もここの宿屋なの?」 
「…ひょっとして、チッサー達もここなの?」 

偶然にも、同じ宿屋だったようだ


そこでチッサーが両親を紹介する、という 

隣の部屋に駆け込む。しばらくして人の良さそうな夫婦が出てきた。オ・カール夫婦だ 

オ・カール夫婦はサキに丁重にお礼を述べ、立ち話もなんですから、とサキを部屋に招き入れた 

その間、りしゃこ達は子供達同士で遊ぶことにした 

オ・カール夫婦が言うには、ベリーナイスには、特産品『霊峰キノコ』を仕入れにやってきた、という。「マコーレ」に売り上げを奪われているが、『霊峰キノコ』だけはオ・カール夫婦店だけしか扱ってなかった 
が、しかし、ピーマッコ婦人が仕入れ先を嗅ぎ付け、『霊峰キノコ』を二倍の値段で買い上げる上に独占契約を結ぼうとしてるのだ― 
商売の世界は弱肉強食の世界だが、「マコーレ」には黒い噂も少なくない… 

やりきれない気持ちのサキ 
隣の部屋ではそんなことも知らず、無邪気に遊んでいる子供達 

もし、今回の仕入れに失敗したら、オ・カール一家はどうなるだろう? 

サキは小さな胸が締め付けられる思いに駆られた―


長居をしたつもりだが、いつのまにか窓の外はすっかり暗くなっていた… 

重い空気が漂う部屋の中、(自分に何かこの一家にしてあげられる事はないだろうか?)と考え込むサキ 

ふと、窓の外で街の灯りをぼーっと眺めている内に閃いた― 

「ちょっと待ってて下サイ」と言うなり、部屋に戻るサキ 

遊んでいるりしゃことミヤビに手招きして呼び寄せる 
「どうしたのサキちゃん?」「何か用かもん?」 

せっかく遊んでいたのを中断されてちょっとご機嫌ナナメなミヤビとりしゃこ 

「あのね…」と二人に耳打ちするサキ 

「へぇ〜いいジャン!!」「何か面白そうだもん!」 
とサキの考えにノリノリの二人 

二人の意志を確認すると、オ・カール一家を呼び寄せるサキ 

「これからオ・カールさん達にお見せしたいものがありマス」 

と言うと、一家を街の外れに連れ出すサキ 

そして誰もいない森の原っぱにくると、 
「これからステキなショーが始まりマス!!」とサキが言った 

だが、何もない原っぱで『ステキなショー』と言われて訝しがるオ・カール一家


ショーの始まりを告げた後、サキも森の中へ消えていく… 

しばらくして 

暗いはずの夜空が明るく照らされた… 

花火だ― 

滅多に見られない花火が次から次へと打ち上げられていく… 

花火なんてとても高価なので、大きな祭ぐらいでしか使われない代物だ 

興奮状態のオ・カール一家 
そして10分ほどの短いショーが終わった後、汗だくのサキやりしゃこ達が森から帰ってきた 

「わぁー!とってもステキー!!」 
「りしゃこ、お前スゲーな!!」チッサー達も興奮醒めやらない 

「でもどうやって花火なんて出来たんだ?」と聞くチッサー 

事も無げにサキが 
「…みんなにナイショだけど魔法だよ」と姉妹に耳打ちをする 

「!!」言葉を失うオ・カール一家 

それもそのはず、この世界では魔法が存在するとはいえ、使える人間はごく一握りだ。 
そのため、王都・ハロモニアでは魔法の使える子供達をスカウトするという― 

そんな珍しい魔法が見られたのだ―


オ・カール一家が元気になったことで森から街へと帰り道をたどるりしゃこ達ご一行 

ちょうど街の入り口に差し掛かってきた時だった 

りしゃこがモモの存在に気付いた 

そしてモモを呼び止めみんなで宿屋へ向かった途中チッサーから花火の話を聞いて本気になって梅しがるモモ 

それよりモモが驚いたのはり3人が魔法使いだったことだ 

今までナイショにされてたことに拗ねていたが、秘密を打ち明けてくれたことは素直に喜んでいた 

サキはモモにギルドで仕事が見つかったか聞いてみた 
「見つかったんですけどぉ、夜のお仕事なんですよぉウフフ」 

と嘆いているのか嬉しいのかよくわからない返事だった 

宿屋に帰ってきたりしゃこ達は魔法の使い過ぎに疲れたのかベッドに寝転がるなり寝息をたて始めた… 

サキは寝付いたりしゃことミヤビをじっと見つめて、これからの旅のことなど物思いに耽っていた



「?」 

サキが何かの拍子に目を覚ますと窓の向こうの屋根づたいにピンク色の物体が走り抜けていくのを目撃した…ような気がした 

しかし、屋根を移動する動物なんてネコぐらいしかいないし、ましてやピンク色のネコなんて見たことがない… 

…サキは気のせいにすることにした… 

ほどなくして、モモがこっそりと物音を立てずに帰ってきた 

真夜中の仕事とは聞いていたが、こんなに遅いのにはびっくりした 

「ふぁぁ…遅かったわね…一体、何の仕事だったの!?」 

サキが起きてたのに驚いたモモ 

そして酒場で働いていたことを明かす… 

モモが無事帰ってきたことで急に猛烈な睡魔がサキに襲いかかってきた… 

目を覚まして、気がつくと、サキのベッドにモモが潜り込んでいた― 

夜遅くまで働いていたモモを労って寝かしてやることにしたサキ 

だが、その時すでに事件が起きていた―


目が覚めたサキは宿屋を出て、散歩がてらに朝のベリーナイスの街並を散策することにした 

サキ達の宿屋のある東地区から一番の繁華街の中央地区まで歩く。8時だというのに賑わっている 

この街で一番豪華な宿屋に差し掛かってきた時だ― 

「ぎゃああああ〜〜〜〜〜!!」 
とこの世のものとは思えない叫び声が聞こえてきた 

豪華な宿屋からだ! 

事件の匂いとお金の匂いを感じとったサキは宿屋のお手伝いさんをスルーしながら叫び声の元へと急いだ 

そして部屋を探り当て、挨拶も無しに飛び込んでいった― 

そこには笑撃の光景が広がっていた 

叫び声の主・ピーマッコ婦人だが、厚化粧がグロテスクなものになっている上に、額に何故か『肉』と書かれていた― 

きっと、朝一番に鏡を見て悲鳴をあげたのだろう… 

笑いをこらえるのに必死なサキ 

きっと、盗賊が入ったのに違いない… 

根っからの商売人のピーマッコ婦人は素早く他に被害がないか、部屋の中をキモい厚化粧を落とすことなく調べてまわった― 

そして、またしてもピーマッコ婦人がこの世のものとは思えない叫び声をあげた―


すぐさまサキがピーマッコ婦人のところへ駆けつける 
「…チャールズ!!チャールズ!!」 

サキが見たのは、変わり果てたチャールズの姿 

ふさふさだった自慢の毛並みは無惨にも羊のように刈り取られ、まるでチワワのようだ 

「…一体誰ザマス!?ワタクシにこんなことする愚か者は!?」 

鼻息荒く、報復を誓うピーマッコ婦人 

ここでようやくサキの存在に気付いたピーマッコ婦人 
早速、サキに 
「あらアナタ!いいところにいたわ!ワタクシのチャールズをこんな目にあわせた犯人を捜し出して頂戴!!」とヒステリックに言い放つ 

笑いをこらえるのに精一杯のサキだが、ちゃっかり 
「じゃあ前金で…」と応酬する 

「ンモー!!がめつい子ね!!いいわ!!これで十分ザマショ!?」と金貨の袋を投げてよこす 

「毎度あり!!」と中身をあらためる現金なサキ 

だが、途中で笑顔が鬼の形相に変化する―


サキがピーマッコ婦人に 
「…オバサン、こんなのいらないわよ」と貰った金貨の袋を足元に投げてよこす 
「…アラ、これでは不満なの?どんだけがめついのよ!?」と言いつつも、金貨の袋を拾うピーマッコ婦人 
が、何かおかしい… 

不審に思った婦人が袋の中身をあらためる 
みるみると顔色が青ざめていく― 

袋の中身は全部鉄クズと石ころだった― 

慌てて他の袋の中身もあらためてみるピーマッコ婦人 
予想通り、残りの金貨の袋もがらくただった― 

「ムキー!!」と言うなり、泡を吹いて倒れてしまったピーマッコ婦人… 

『金の切れ目が縁の切れ目』とピーマッコ婦人の部屋を後にするサキ…


ピーマッコ婦人が泥棒にあったことを早く言いたくて、早足で宿屋に戻るサキ 

ちょうど、ミヤビとりしゃこが目を覚ましていた 

「…ねぇ、チョット、聞いて聞いて!!」と人の不幸を嬉しそうに話すサキ 

ピーマッコ婦人に天誅が下ったことに大喜びするりしゃことミヤビ 

早速、二人は隣のオ・カール一家の部屋へ飛び込んでゆく 

朝っぱらから迷惑をかけては…と二人の後を追って部屋に駆け込むサキ 

ちょうど、オ・カール一家も目が覚めたところらしい 
「チッサー、ニュースニュース!!」と嬉しそうにしてる二人 

ただ、興奮のあまり、何を言ってるのかわからない… 
仕方なく、目撃者のサキが事の顛末を話すことにした 
思わぬ吉報に早速、身支度を整え、仕入れ先へ向かうオ・カール夫婦 

その間、チッサー姉妹はりしゃこ達と遊んで待つことにした― 

2時間後、満面の笑みを浮かべたオ・カール夫婦が帰ってきた 

予想通り、霊峰キノコの仕入れを契約できた、と言う 
オ・カール一家の苦労を知ってるだけに、りしゃこ達はまたも大喜びだ


大喜びのりしゃこ達だったが、いつの時代も出会いがあれば別れもある― 

ピーマッコ婦人の盗難騒ぎで大逆転したオ・カール一家がすぐさまキュートの街へと戻る、というのだ― 

商売の世界は弱肉強食、とサキは理解できても、子供達には理解できるものではなかった… 

夕方にはベリーナイスを発つ、ということで、サキと子供達とで街に遊びにいくことにした― 

一方、モモもようやく眠い目をこすりながら起きてきた 

サキがオ・カール一家とのお別れの件を伝えて、最後に子供達と街へ遊びにいくのでモモを誘ったのだが、「仕事が残っているからゴメン」と断ってきた 

仕方なく、子供達と遊びにいくサキ 

お腹いっぱい思い出いっぱいみんなで遊び回った 



そしていよいよお別れの時がきた―


沢山の霊峰キノコを積んだ馬車がベリーナイスを発とうとしている 

りしゃこ達とオ・カール一家はたった2日間だったが、とてもステキな時間を過ごすことが出来た 

名残惜しむ両者 

不意にモモからチッサー姉妹にプレゼントがある、という 

「わあっ!とっても可愛い!!」「可愛いじゃん!」 
それは手作りのピンクの熊のぬいぐるみだった 

(仕事が残っているから、ってこの事だったのね…)とサキは感心する


そしていよいよ本当にお別れの時がきた 

「今度はオレん家に遊びに来いよ!じゃあな!!」 

「うん…きっと遊びに行くもん!!」 

子供達同士の可愛いらしくてまぶしい友情物語― 

みるみるうちに馬車が遠く…そして見えなくなっていく… 

いつしかりしゃこの目に涙が光っていた… 

「ねぇ泣いてるの、りしゃこ?」とミヤビが声をかける 

「…泣いてないもん!泣いてたらチッサーたちが帰れなくなるから泣かないもん!!」 

ちょっと強がっているりしゃこがいじらしくて、ミヤビは何も言わず、ぎゅっと抱き締めた… 

強がっていたりしゃこも寂しかったのをこらえきれず、ミヤビの胸で泣き始めた… 

そんな光景を見て、お母さん気分のサキ


「…行っちゃったね…」 
とポツリと言うモモ 
「あのぬいぐるみ、大事にしてくれるかな…?」 

「…大事にしてくれるよ、きっと」と答えるサキ 

「そうだよね!?そうじゃなかったらチャールズも浮かばれないものね!!」 

「チャールズ?」 

「…ううん、独り言独り言…」 

怪訝そうな顔をするサキ 



一方、その頃、オ・カール一家の馬車の中でも、とんでもない事件が発生していた― 

街へ帰る道中のオ・カール一家が野宿をしていると、食料袋の中から小さな重い袋が4つ出てきた 

早速、中身をあらためてみると金貨がぎっしり詰まっていて、ピンク色のメッセージカードが入っていた― 


『M.P参上』―