ノノタンとの別れから3日後― 

ようやくりしゃこ一行はハロモニアに戻ってきた… 

戻ってきたりしゃこ達の精悍な顔つきを見て、メーグル達も驚く… 
「…みんな、随分と変わったわね」と、メーグルが呟く… 
「うん!ウチら結構頑張ったもんね!」「うん!うん!」と明るく振る舞ってみせる… 

ノノタンとの別れをいつまでも引きずっている訳にはいかない… 
何せ、魔導大会まで、あと3ヶ月なのだ… 

メーグル達との挨拶を済ませ、ヤグーの部屋に向かう… 
「よっ♪みんなお疲れちゃん♪大丈夫だった♪」と、ご機嫌ちゃんな挨拶をするヤグー… 
「…ええ、無事終わりました…」と、みんなを代表して、サキが返事をする… 
みんなのテンションの低さが気になり、 
「どしたの、みんな〜♪何かあったの〜♪」と、明るく振る舞うヤグー 
「…長官…これを…」と、言って、今度はモモが、ノノタンからの手紙をヤグーに差し出す… 

怪訝な顔をしながら、手紙を手に取り、目を通すヤグー…



サキ達から差し出された手紙を読むヤグー… 

始めはにこやかだった顔も徐々に笑みが消えてゆき、読み終えた頃には険しい顔になっていた… 

そして、みんなに精一杯の笑顔をつくって、 
「…みんな、大変だったんだね…ご苦労さま」と、言った… 
「…あの、何かないですか?」と聞くサキに対して、「…ん、何もないよ。みんな、明日からしばらくオフにするから、身体を休めといてね」とだけ答える… 

少しヤグーの様子を不審に思いながらも、 
「…失礼します!!」と、言って退室するサキ達… 


部屋で独りになったヤグーは、目を閉じて、自問自答を始めた… 
(…ホントにこれで、よかったのかな?…オイラ、間違ってないかなぁ…)



ノノタンからの手紙を読んで、自分のやってきたこと、やろうとすることに疑問を感じ始めるヤグー… 

(…ホントにこれで、よかったのかな?) 

そんな物思いに耽っている時に、誰かがドアをノックする… 
面倒くさそうに、 
「…開いてるよ…」と、だけ言うヤグー… 
「失礼しま〜す!…アラ、ヤグーさん?いつもの元気がないですね〜!ど〜したんですか〜!」 
…猫なで声がする… 

「あ〜コンちゃんか〜、あ〜ゴメン!オイラ、ちょっと元気ないんだ〜」と、目を閉じたまま返事をするヤグー… 
「あ〜っ!もうヒドイですヤグーさん!…折角、元気が出る情報を持ってきたんですよ〜!」 
「ん〜!…また今度でおねがい〜」 
「もう…」 

そう言うと、声の主はドアを閉め、どこかへ立ち去っていった… 

ヤグーはまた、自問自答を始めた…



ヤグーから当面のオフを言い渡され、どう時間を過ごそうか?と考えるりしゃこ達… 

「やっぱり特訓だね!」と言い出したのはミヤビ 
「…今のままだったらこの先、勝ち残れるかわかんないし…」と、不安がる… 
「でも、休養も必要よ?」と、サキがミヤビのオーバーワークを心配する… 
「…うーん…わかってるんだけど…」と、ミヤビも休養の必要性を感じているようだが、早く強くなりたい気持ちもある… 

「…じゃあさ、みんなで見世物にでも行かない?」と、今度はチナリが提案する… 
「あ〜っ!それ!ナイスグッド!」とユリーナが乗っかり、 
「なんだかワクワクするもん!」と、りしゃこも賛成する… 
あれこれと意見が少しずつ出てくるが、 

「…でもよ、もっと面白いものがあるぜ!」と、いう声がする… 
りしゃこ達が振り返ると、マイミンが壁にもたれかかって立っていた…



オフをどう過ごそうか?の話し合い… 
いろいろ意見が出てきたが、間に割って入ってきたのがマイミン… 
「…もっと面白いものがあるぜ!」と、自信ありげに言う… 

つい、気になって、 
「…ねぇねぇねぇ?一体なになになに?」と、食い付いてきたのが、意外やサキだった… 
「…教えて欲しい?」と、勿体ぶるマイミン… 
「教えて教えて教えて!」と、最早おねだりする犬状態のサキ… 
「…ちょっと、サキ!」と、モモにたしなめられて、「…ゴホン…」と咳払いして冷静になるサキ… 

「…実はさ、ちょうど今日から、『暁の乙女』による『公開練習』があるんだよ!」 
「…何それ?」 
全員の頭に?マークがつく 
「…今回の『魔導大会』の目玉として、急速、『暁の乙女』の参加が決定したんだよ!と語るマイミン… 
「え〜〜〜〜っ!?」と、みんなの悲鳴ともつかない叫び声が部屋中にこだまする… 
『暁の乙女』が出場すれば、間違いなく、優勝候補の筆頭だ… 

「…だけど、『暁の乙女』の出場が不公平と思われるのを嫌がった王室の側近が『公開練習』を行って 
多少、『暁の乙女』の手の内を明かしてくれる…って訳さ!」



巧妙なマイミンのプレゼンテーションに、りしゃこ達の気持ちは「『公開練習』の見学」に決定した… 
(勿論、プレゼンのレジュメはメーグルが用意してた訳だが…) 

早速、馬車でハロモニア城前の大広場に向かうりしゃこ達一行… 
もう結構な賑わいだ…。目聡い商売人などは、既に出店まで開いている… 
人々の注目の的は勿論、ハロモニアの守護神・『暁の乙女』達…。 
なんでも、欠員が出たらしく、新メンバーが加入する…との噂も流れている… 

「…ったく、すげぇ人気だな…」と、マイミンが呆れ返る…。無理もない…。『暁の乙女』はハロモニアでの国民的アイドルだ… 
今でも、『暁の乙女』に志願する少女は少なくない… 
「マイミン!こっちこっち!!」と、聞き覚えのある声がする…。エリカンだ…。どうやら先回りして、席を確保してくれてたようだ… 
「エリー、ありがと!」と、お礼を言うマイミン… 
「あら〜♪お礼なら身体で払ってねん♪」と、ホントかジョークかわからない切り返しをするエリカン… 
いつ見ても、二人のイチャイチャ振りには胃がもたれる…



エリカンが席取りをしてくれてたお蔭で、最前列で観ることが出来るりしゃこ達… 
そんな中、ふと、横を見てみると、見覚えのある姿が…。向こうもりしゃこ達に気付いて近づいてくる… 
「りーちゃん!」「お久しぶり!」…声の主はアイリーナとアイリーネ、双子の天才魔術師(の卵)だ… 
りしゃこも、 
「久しぶりだもん!」と、再会を喜ぶ…。たった半年ぐらい会っていなかったが、双子も以前と違う雰囲気が漂っている… 
勿論、りしゃこ達も十分過ぎるほど成長している…。双子もそれに気付いて「…なんだかみんなも強くなったみたいだね!」と答える 
そのりしゃこ達と双子のやりとりを見ていたマイミン、エリカンが、 
「…あら♪可愛い子♪…ジュル…」「…ホント♪美味しそう♪…ジュル…」と、物騒なことを口走る… 
二人の会話をスルーしておいたサキだったが、 
「…オレ、あっちの生意気そうな方♪…ジュル…」「…ワタシ、こっちの天然ちゃんの方♪…ジュル…」と、犯行予告になったので 
サキはモモに『眠りの毒針』で二人を眠らせるように命じた…



物騒なマイミン、エリカンを眠らせてる間に、いよいよ、『暁の乙女』が登場する時間となった 
否が応でも雰囲気が盛り上がる… 
「ねぇ!いよいよだね!」と、サキが言えば、 
「案外、知ってる人が出てくるかもね!」と、モモも言う 
他のみんなも胸のドキドキを隠せない…。一体、どんな子たちなんだろう?…興味は尽きない… 


そして、『暁の乙女』が登場した!大広場から一斉に歓声が上がる! 
一列に並んでサキ達の目の前を通過していく…。初めて見るが、いろんなタイプの子がいて、個性的だ… 
サキ達も出店で売っていたトロピカルジュースを飲みながら『暁の乙女』の行進を見ていた… 

だが、よくよく見ると、個性派揃いにも程があることに気がついた… 
猫耳、メイド服、チャイナドレス…一歩間違えればキャバクラじゃないか?という格好のものもいる… 

が、そのうち数名は見覚えがある…もしや?と思い、よくよく見つめてみる… 

数秒後、サキ達はジュースを吹いた…



『暁の乙女』の行進を見ていたサキ達だったが、見覚えのある姿を発見して、思わずジュースを吹き出してしまった… 

猫耳、メイド服…非常に見覚えがある…あの子たちだ… 

内心、知り合いが『暁の乙女』に入っていることは嬉しい反面、『魔導大会』では敵として闘う可能性があるだけに、素直に喜べない… 
(…あの時はなんとか勝てたけど、今はどうかなぁ…)などと思ってしまう… 
それにしても、メンバーが思った以上に若かったのが印象的だった 

行進が終わり、整列の号令がかかる… 
「只今より、『暁の乙女』の新メンバー加入式典、ならびに、公開練習を行います!!」 

大広場にやや、緊張感が漂う… 

「まず、はじめに、『暁の乙女』新メンバーの紹介!!新メンバー、前へ!!」 
「「「ハイ!!」」」



今回、『暁の乙女』に選ばれた新メンバーが、前に出て、みんなの前でお披露目される… 

「まずは、向かって右から 
『キャメイ』、『サユミン』、『レイニャ』、『コハ』、『ミッツー』、『リンリン』、『ジュンジュン』、総勢7名!! 
本日を以て、『暁の乙女』に入隊し、使命を全うすることを命ずる!!」 

「「「ハイ!!」」 

サキ達にとっては、『キャメイ』、『サユミン』、『レイニャ』は以前に拳を交えた仲だ… 
その後、互いに情報交換をしていなかっただけに、何故、3人が『暁の乙女』に入れたのかが、わからなかった…



新メンバーの紹介が終わり、次に現メンバーとの対面だ… 

登場した現メンバーは、たったの二人… 
元・『暁の乙女』のメンバーが、『時空の歪み』の探索に奔走している…とは言え、二人ではあまりにも少なすぎる… 

(…だから、急遽、新メンバーの補充が必要だった訳か…)と、冷静に分析するメーグル… 
ただ、メーグルにも、今回の新メンバーの大量補充が何故、可能だったか?がわからなかった… 
(…これはウラを取る必要がありそうね…) 

そして、現メンバーも紹介される… 
「現・『暁の乙女』親衛隊隊長・『アイオーラ』!!同じく副隊長・『ガキシャン』!!」 
「「ハイ!!」」 

現メンバーと新メンバーが向かい合って、互いを見つめ合っている…やはり、新メンバーの方が硬くなっているようだ… 

詰めかけた観衆がメンバーを見守っている時に突然、 
ゴゴゴゴゴ… 

地鳴りがする… 

折角の晴れ舞台が何者かによって台無しにされようとしていた―



『暁の乙女』新メンバー加入式典の最中に突然、地鳴りがする… 

最初は(地震かな?)という程度のものだったが、それにしてはおかしい…震源が、少しずつ、移動しているのがわかる… 

大広場の南側から、やがて大広場の真ん中へ…震源の移動とともに、揺れも収まった…観衆も一安心する…が、次の瞬間! 

…『奴ら』が現われた!! 
土くれの巨躯…生気のない顔…出来ることなら、二度と見たくなかった… 
感情、意思を持たない、『魔導兵器・ゴーレム』… 
奴らが大広場の真ん中からいきなり出現した! 

りしゃこ達も以前に闘ったことがあるのでわかる…何故、ゴーレムが『禁断の兵器』と呼ばれるのかを… 
並外れたパワーがあり、且つ、疲れ知らずで、痛みを感じない、相手を攻撃することに、何の躊躇いもないことだ… 

そんな化け物と闘うのは嫌だ…。だが、目の前に立ち塞がる以上、倒さねばならない… 
ましてや、今、この大広場には、多くの観衆がいる…何とかして護らねばならない… 

いつの間にか、りしゃこ達は武器を手に、ゴーレムに立ち向かっていた…



大広場に突如出現した『魔導兵器・ゴーレム』… 

大勢の観衆がいる中でゴーレムが暴れ出すと、多くの人々の生命が失われるのは想像に難くない… 
いつの間にか、りしゃこ達は武器を手に、ゴーレムに立ち向かっていった… 

が、りしゃこ達よりも早く反応してゴーレムに立ち向かっていく人影が! 

「…でやぁぁぁぁー!!」 
ガキィィィン!! 

ゴーレムの表皮に刃物で斬り付ける音…レイニャだ!自慢の鉤爪でゴーレムに襲いかかったのだが、刃が食い込まなかったらしい… 

「…チキショー!コイツ結構硬いニャ!」 
「…ちょっとダメですよ〜?ちゃんと連携プレーでやっつけないと!」 
「そうそう!1対1じゃなきゃダメ、ってワケじゃないと思うの!」 
レイニャの後を追いかけて、キャメイ、サユミンが援護に回る… 

「この日のために練習した、『合体魔法』、試す時が来たと思うの!」 
「キャメもそう思う〜」 
「…わかったニャ!じゃあ、3人でいくニャ〜!」 

3人の会話を聞いて、りしゃこ達はドキッとした… 
(…まさか!?あの子達も『合体魔法』が使えるワケ!?)



レイニャ、キャメイ、サユミンの3人が『合体魔法』を使う、と言う… 

ホントに使えるのか?が気になって、少しだけ様子を見るりしゃこ達… 

動きの素早いレイニャが囮になってゴーレムを引き付ける… 
単調な動きしか出来ないゴーレムの攻撃は、俊敏なレイニャにとって、あまりにもスローモーだ… 
但し、レイニャはパワーがないので、ゴーレムにダメージを与えることが出来ない… 
そこで、キャメイ、サユミンが手助けをする…という段取りだ… 

ようやく呪文の詠唱を終えたキャメイ、サユミンが魔法を解き放つ― 
「「いくよ!『合体魔法・油地獄』!!」」 

…何も起こらない… 

それでも二人は詠唱を止めないし、レイニャもまだ囮を続けている… 

ゴーレムの身体に変化が現われたのは、それから1分後だった… 
ゴーレムの身体がどんどんドス黒くなっていった…と、同時に、大広場全体に鼻を衝く刺激臭が漂う… 
これは…石油だ!! 
ゴーレムが石油まみれになっている… 

そこへレイニャがゴーレムめがけて呪文を放つ! 
「…行けぇ〜!!『かまいたち』!!」 

レイニャから一陣のつむじ風がゴーレムに向かって飛んでゆく!!



キャメイ、サユミンの『合体魔法・油地獄』で油まみれになったゴーレムに、レイニャが『かまいたち』で追撃する… 

「…決まったニャ!!」とキャハるレイニャだったが、ゴーレムは全くダメージを受けていない… 
りしゃこ達も、3人が、何をしたいのか?が理解出来なかった… 

「…レイニャ!火ですよ?火!」と、キャメイがツッコミを入れる… 
「…あ!忘れてたニャ!」 
…どうやら、油を染み込ませたゴーレムを丸焼きにするつもりだったらしい… 

見ていたりしゃこ達も呆れ果てて、見兼ねたミヤビがゴーレム目がけて火炎魔法・『ほのまら!』をぶち込んだ 
火力が強かったせいか、あっという間に燃え上がるゴーレム…水分がなくなったところからぼろぼろと崩れ出す… 
そこへレイニャがもう一発『かまいたち』をお見舞いする 
さらに火力が強まり、水分がなくなったゴーレムは四肢が崩れて、バランスを保てなくなり、地面に伏して動かなくなった… 

とりあえず、ゴーレム一体を始末したレイニャ達は、火を放った方向を振り返る… 
りしゃこ達は気付いたレイニャ達に手を振ってみせる… 

だが、まだゴーレムは沢山残っている…



無事、ゴーレムを撃破したレイニャ達…余程、嬉しかったのか、りしゃこ達に向かって手を振っている… 

だが、その場にいた人間は大変なことに気付いた… 

「…か、か、火事になりますよ!?」とキャメイがパニクる… 
「…そ、そうだったニャ!危ないニャ!」 
「…こんな時は…逃げればいいと思うのー!!」 
と、後先のことを考えてなかったレイニャ達… 

「…ね、ねぇキャメ?確か雨降らせること、出来たよね!?」「…む、無理無理無理無理…」「どうするニャ?どうしようニャ?」 
詰めの甘い3人… 
「…そうニャ!お天道様にお願いするニャ!」「…ヤなの!ヤなの!そんなの効くワケないの!」「…もう時間のムダ、ですよ?」 
「…るてるてずーぼ!だニャ!」「…何言ってるか、わかんないの…!」「…あー、諦めも肝心ですよ?」 
そんなコントみたいな3人のやりとりが天に通じたのか、ポツ…ポツ…と、雨が降り出す! 

「やったニャ!雨が降ったニャ!お天道様のお陰だニャー!」と、奇跡に喜ぶレイニャ…と、 
信じられない…といった表情のキャメイ、サユミン…




ゴーレムを燃やしたせいで、火事になるところだったレイニャ達…。ところが運良く?雨が降って、徐々に火は消えていった… 

「…よかったニャー。一時はどうなることやら…と、思ったニャー。お天道様に感謝だニャ!」 
「…じゃあ、お天道様には何でもしなきゃね!」「うん!そうだニャ!お天道様に何でもするニャ!…って!?」 

レイニャが後ろを振り返ると… 


洲*` v ´)州´・ v・)<じゃあ、アタシ達の下僕になって貰おうか? 

不敵な微笑みを浮かべた悪魔の双子が立っていた… 

「…じゃあ、早速、この『下僕契約書』にサインを…」と言って、羊皮紙とペンをレイニャの前に差し出す双子… 
「…え?な、何のことだニャ?」とワケがわかっていない様子のレイニャ… 
「この雨は、アタシ達が降らせたの!」「だから、猫ちゃんはアタシ達の下僕♪」と、えげつないことをサラリと言う双子… 
「さっき、『お天道様に何でもする』って言ったよね?」「で、雨を降らせたアタシ達が『お天道様』になるよね?」と、理詰めで攻める双子… 
「ウニャ〜〜〜〜!!」と大声をあげて、レイニャは卒倒してしまった… 

「…冗談なのにね!」「…面白いね!」



火遊びをしていたレイニャにお灸を据えて、ギャフンと言わせた悪魔の双子… 
だが、緊急事態にイタズラが出来るのは余裕のあらわれか? 
そこへ、タイミングよく、ゴーレムが登場した… 

以前のりしゃこ達だったら慌てふためいた相手だ…。だが、今は倒せるだけの『力』はある… 
それは双子も同様なのか、不敵な笑みを崩さない… 

りしゃこ達の存在に気付いた双子が、 
「ねー、みんな!」「アタシ達と賭けをしない?」と、持ち掛ける… 
「…面白そうね…で、賭けの対象は?」と、モモが真っ先に乗っかる 
「アタシ達二人が…」「3分以内でゴーレムを倒せるか?」と、驚きの条件を提示した 

(…あの3人でだいたい5分くらいかかっていた…。2人でそれより短く倒すのは…まず、不可能!!) 
「…わかったわ!乗った!…じゃあ、『倒せない』方に…あれ?何賭けよっか?」と、賭けの質草を決めてなかったモモ… 
「もし、アタシ達が勝ったら…」「…ミヤビお姉様はアタシ達のもの♪」と、とんでもないことを言い出す双子… 
「…いいわ!…じゃあ、ウチらが勝ったら?」と、聞き返すモモ…



悪魔の双子が持ちかけた『賭け』…。条件は3分以内でゴーレムを倒すこと… 

レイニャ達3人で5分くらいかかっていたので、モモはミヤビを質草に、賭けに乗った! 

「ち、ちょっと!何で賭けの質草がウチなの?信じられない!!」と、狂乱するミヤビ… 
「…ちょっと眠って貰うわよ!」と、ミヤビに吹き矢を打ち込み眠らせたモモ…。結構、やることがえげつない… 
「…でさ、ウチらが勝ったら?」と余裕綽々の双子に聞き返すモモ… 
「負けるワケないけど…」「負けたら、さっきの猫ちゃんをあける♪」と、双子が返事する… 

「…いらない!!」と、即答したモモ… 

そして、その一言に… 







全米が泣いた… 
ウワァーン!!。・゚・(ノД`)・゚・。





モモが賭けの質草を放棄した… 

唖然とする、双子達…りしゃこ達…キャメイ達… 
その場の空気が一瞬にして凍てついた… 

そんな場の空気を読み取って、 
「…ヤですよぅ〜!…冗談ですよぅ!じょ・う・だ・ん!」と、モモが訂正をしたが、周りの白い目は変わらない… 

「と、とにかく!賭けに乗るから!早くスタートしてちょうだい!」と、強引に話題を反らすモモ… 
「…じゃあ、賭けは成立ね?りしゃこ…タイムを計って!」と、言い残し、ゴーレムに立ち向かう双子達… 

「待たせたわね!」「でも、お別れだよ!」と大見得を切る双子… 
そんな高飛車な態度が気に食わなかったのか、咆哮をあげて、いきなり双子達に襲いかかるゴーレム… 

ゴーレムの動き自体は成長がない…が、双子の動きには大きな成長があった… 
予想以上の俊敏な動きでゴーレムに的を絞らせない…それも、呪文を詠唱したままだ… 

「りしゃこ!あなただけが!」「『合体魔法』を使えるワケじゃないんだから!」「見せてあげる!」「新しい『合体魔法』!!」 

本気になった天才双生児の実力や、如何に!?



本気になった天才双生児が新しい『合体魔法』をお披露目する、という… 

3分のタイムリミット中、1分が経過し、残り2分… 
もう、双子は呪文の詠唱は終えているようだ… 

「そろそろいくよ?」「準備はOK?」「それじゃあいくよ?」「コイツでKO!」 

「『合体魔法・瞬殺ベクトル』!!」 

と、言って、両手を天にかざす双子… 
すると、大気中の水分が凝縮して、次々とある『形』を成していく… 

大きな、丸い球体だ…その所々に小さな、丸い皿のようなものが付いている…言うなれば、ミラーボールのような形状だ 
その球体の中にゴーレムがすっぽりと納まっている… 
勿論、この状態では何も起こらない… 

次に、双子が詠唱を終えると、その球体の上空に丸い、分厚い皿のようなものが出現した…これも、成分は『水分』のようだ… 

その『分厚い皿』を、双子が念じてゆっくりと移動させる… 

そして、突然、 
「『ベクトル』、発射!!」と、叫ぶ双子… 

りしゃこ達には、何が何だか、さっぱりわからなかった…が、その後、とんでもないものを見ることになる…



双子の『合体魔法・瞬殺ベクトル』がベールを脱いだ…が、見た目はゴーレムを巨大なシャボン玉の中に閉じ込めただけに見えた… 

だが、双子が球体の上空にある『分厚い皿』を動かすことによって、恐ろしいことが起きた! 

「『ベクトル』発射!!」の声とともに、太陽の光が『分厚い皿』を経由して、球体の中に注ぎ込まれる… 
さらに、球体の中で太陽光が乱反射を始める…その集約された太陽光が、ゴーレムの身体をいとも簡単に貫く… 

「まだまだぁ〜〜!!」と、言って、双子は再び、2つ、3つと『分厚い皿』を造り出す… 

ようやくりしゃこ達は気がついた… 
『分厚い皿』とは、水分で出来たレンズのことであり、太陽光を球体の中に導く役割を果たしている… 
そして、球体の中の『小さな丸い皿』とは、鏡であり、それが球体の中の太陽光を乱反射させる役割があったのだ… 

2つ、3つとレンズが増えるごとにダメージを受けるゴーレム… 

とうとう、『水の檻』から抜け出すことも出来ず崩れ落ちたのだった…



双子が見事にゴーレムを撃破した! 

それも、完封だ… 
『水の牢獄』に閉じ込めてしまい、その中で乱反射する太陽光でゴーレムの身体を崩壊させたのだ… 
幾重にも乱反射して威力を増す光の方向(ベクトル)…誰もが思いつかない独創性溢れる合体魔法だ… 

その場にいた全員が、初めてみる幻想的な光景に、ただ、ボーッと眺めているだけだった… 

「…ちょっと!」「…ちょっとちょっと!」双子がりしゃこに話しかける… 
「アタシ達の…」「タイムはどうなの?」 
そうだった…今回のゴーレム退治はタイムトライアルだったのだ… 
早速、りしゃこは手元の時計を見てみる… 

タイムは…ジャスト3分! 
「…ねー、これってどうなるのかなぁ…」「3分ぴったりだったら?というの…考えてなかったね…」「もう、引き分けでいいジャン?」 
と、外野が騒ぎ出す…。勿論、モモは『どうでもいい派』だ…



双子がタイムトライアルの結果をやたらと気にする… 
タイムは3分ジャスト 

ただ、3分ジャストの勝ち負けについてはどちらの勝利かを話し合ってなかったんで、双子とモモの間でひと悶着があった… 

「…もう…面倒くさいから、引き分けでいいジャン?」と、主張するのはモモ… 
「やだ!」「やだ!」と、主張する双子… 

「…でもさ、何でミヤビじゃなきゃダメなの?…例えば…モモちゃんとか!」と、モモが問いかけるが、 
双子は 
「それは…」「ない!」と、即答した 

即答にキレそうなモモをなだめながら、今度はサキが尋ねると、 
「だって…」「カッコいいし…」「可愛いし…」「…親近感が沸くんだよね♪」と述べる双子… 

勿論、嘘八百ではあるが…



双子がミヤビを狙う、真の意図は別にあった… 

それはゆくゆく明らかになることだが… 


賭けの話でひと悶着している間に、まだゴーレムが大広場で暴れ回っている… 

そのゴーレムに、なんと!素手で挑んでいるチャレンジャーがいた… 
りしゃこ達は目を疑った…素手で闘っていること自体異常なのだが、互角以上に渡り合っているのが、もっと異常だ… 

そのチャレンジャーの名をりしゃこ達はよく知っている… 

チャレンジャーの名は…マイミン!! 


「うおぉぉぉぉー!!」 
雄叫びをあげて、拳の連打をゴーレムの膝に叩き込む… 

「…ねぇ…、大丈夫かなぁ…?」と、りしゃこが心配そうに言うが、モモは毅然とした口調で、 
「…多分、大丈夫よ…殺しても死なないタマだし、体力バカは今に始まったことじゃないわ…」とまで言い切った…



素手でゴーレムと互角以上に渡り合っているマイミン!! 

雄叫びも勇ましく、拳の連打をゴーレムに叩き込み、ゴーレムの攻撃は素早く逃げ出す、ヒット&アウェイを徹底していた… 

「ねぇ、マイミン!お昼ご飯で手助けしてあげよっか?」と、モモが手を差し伸べるも、たった一言、 
「…断る!」 
…と答えるマイミン。返す刀で、 
「…オレはゴーレムの弱点を見切ったぜ!こんな泥団子じゃ、練習台にもならねぇぜ!」と、言い切る… 

(ゴーレムの弱点を見切った!?)これにはりしゃこ達があっと驚いた… 
「…まぁ、見てなって」と、自信満々に言うマイミン… 
だが、大見得を切った割には、地味にヒット&アウェイを繰り返すマイミンにブーイングが飛び始める… 

「…昔から、『乙女の一念、岩をも貫く』って言うだろ?それを見せてやるよ!」と、ブーイングに対して答えるマイミン 

「そういうあなたが乙女…」「じゃないと思うんですけど…」と、絶妙のツッコミを双子が入れると、りしゃこ達は大爆笑!! 

(…この、噂以上の『悪魔の双子』め…!ゴーレムを片したら、お前らの番だからな!)と、内心思うマイミンだった…



ゴーレム相手に地味なパンチ連打とヒット&アウェイを繰り返すマイミンにギャラリーから『つまんない!』と、ブーイングが飛び始めるが、 
マイミンはそのスタイルを止めるどころかピッチを早める… 

そして、見守っているりしゃこ達に、こう言った… 
「…ゴーレムの最大の弱点は、『痛み』を感じないこと、だ!」 
その言葉に、双子が異論を唱える… 
「…でも、ゴーレムは痛みを感じないから、ひるまないんだよね?」「…怖いものナシだから、強いんだよね?」 
その返事に、マイミンが返す… 
「…痛みを感じないのは、有利な反面、限界がわからない、ってことだ…。ホレ、見な!」と、言って、マイミンがゴーレムの膝を指す… 

さっきから性懲りもなく、ひたすらパンチ連打してた箇所だ…。だが、よくよく見ると、そこにはヒビが! 
「…つまりは、こういうこった…!」 
そう言うと、パンチ連打を止めたマイミンが、呼吸を整え出す… 


「みんな、待たせたな!『究闘不敗之必殺奥義』を見せてやる!!」



(…つまらない小パンチ連打を止めて、ようやく『昇〇拳』かよ…)状態のりしゃこ達… 

マイミンが呼吸を整えてる… 
「オレの拳が光って唸る!お前を倒せと輝き叫ぶ!必殺!『ゴォールデンフィンガァー!!』」 
一気に加速をつけて、ゴーレムの膝めがけて拳を放つ!! 

崩撼突撃!!マイミンの拳がゴーレムの膝を大きく穿つ!! 
片足を失ったゴーレムは、その巨体の重さに耐えかねて、バランスを崩し、地面に這いつくばる… 

「…こうなれば、奴らは自力で起き上がれねぇ…ってワケだ…」 

マイミン老師の素晴らしい演舞に、いつの間にかギャラリーが集まり、おひねりが飛び交う… 

よせやい…とスカしたポーズを取るマイミンだったが、照れながらもおひねりを受け取ることにした… 

「…じゃあ、みんな!ゴーレムのとどめは任せた!」…と、言って、爽やかに立ち去るマイミン… 

後片付けを任されたりしゃこ達は、地味にゴーレムを始末するだけだった…勿論、おひねりは、ない…



やるだけやって、後はほったらかしのマイミンを恨みつつ、ゴーレムを始末したりしゃこ達… 

大広場を見渡してみると、ほとんどのゴーレムが綺麗に片付いていた… 
そのあちこちで、りしゃこ達を呼ぶ声がする… 

「…結構やるじゃない!」と言ったのは、エリカンとメーグル…。二人ともゴーレム退治に奔走してたようだ… 

「Yo!!…お久しぶり!ちゃんとメシ食ってるかYo!!」と、声をかけてきたのは『輝く女神』のリーダー・ヨッシーノ… 
ヤグーの手前、なかなか会えなかっただけに懐かしい… 
「そういや、この子がりしゃこちゃんか〜?けっこう可愛いじゃんかYo!!」 
男前・ヨッシーノの一言に、ちょっぴり顔を赤らめるりしゃこ… 

「こら〜!そうやって女の子に『可愛い、可愛い』って声をかけるから、みんな誤解をするじゃない!」と、怒り口調なのはリカサーク… 
その側にはエローカとユイヤンも控えている… 
(…でも、ウチのボスって、スゴい嫉妬焼きだよな…)(…ホンマ、スゴい欲求不満なんやろ?ヨッシーノはん、ちゃんと『夜の相手』せんと!) 
「…何か言った!?」 
「いえ…」「何も…」



女の子に『可愛い、可愛い』と、声をかけては、次々と誤解を招いてしまうヨッシーノをたしなめるリカサーク… 

そのヨッシーノが『可愛い』と言っていたりしゃこ達に目をやるリカサーク…。そして、一人の少女に目が止まった… 
「…アラ、この子…ひょっとして…」 
「…リカ、どうしたんだYo?」と、ヨッシーノが素早く声をかける… 
「…ホラ、この子…」と、言って、指をさしたのが、モモの吹き矢で眠らされていたミヤビ… 

リカサークがミヤビを起こし始める… 
「…ん?…うぅん…」 
ちょっと色っぽい声を出して目を覚ますミヤビ… 
「…おはよう!ミヤビちゃん!」と、おねむな顔が可愛らしいミヤビに目を細めながら声をかけるリカサーク… 
「…ん、…あ…おはようございます…」と寝呆けて挨拶をするミヤビ… 

ミヤビの頭の回転がハッキリしだしてから、リカサークが爆弾発言を行う―