ミヤビの頭の回転がハッキリしだしてから、リカサークが爆弾発言を行う―

「…おはよう!ワタシの可愛い妹ちゃん!」 

… 

全員、開いた口が塞がらない… 
特に、付き合いの長いヨッシーノでも初耳だったらしく、大きな目が、さらに大きく開いてしまってる… 

言われた本人のミヤビは、最初は訳がわからず、キョトンとしてたが、事の重大さに気付いて、 
「きゃ〜〜〜〜!!」と、叫んでしまう… 

そのショッキング度合いは(…おい!そこは『きゃ〜!』じゃなく『え〜〜!』だろ!?) 
とのツッコミが入らなかったぐらいショッキングだった… 

程なくして、『きゃ〜!』に気付いたリカサークが、「…お前も『美勇団』に入れてやろうか…!?」と、ボソリと呟く… 
(※『美勇団』とは、リカサーク、エローカ、ユイヤンの私的騎士団だが、陰ではπの大きさから、『美乳団』と言われている…) 

ちょっとした言い間違いに気付いたリカサークが、すかさず訂正する… 
「…んーとね、正確には、『従妹』なんだけど、ね」



リカサークの『従姉妹』発言で大論争が始まった… 

似てる派のチナリが言う…「似てる〜!だってアゴがそっくりジャン!?」 
次の瞬間、チナリは消し炭のように真っ黒くなってしまった… 

同じくユリーナが、 
「そう言えば、『美勇団』のメンバーは従姉妹同士なんですか?」と質問する… 
代表してリカサークが、 
「アラ?違うわよ?それがどうかしたの?」と、答えると、 
「…おっかしいな〜。だってみんなアゴが…(ry」次の瞬間、チナリの後を追うように、ユリーナも美勇団の面々からフルボッコにされた… 

(…気になってたけど、言わなくてよかった…とゆいたい)は、マァの心の声… 
同じく似てる派のヨッシーノが言うには、 
「…結構似てると思うYo!!可愛いところとか…」 
それを聞いたリカサークが「…もう〜♪恥ずかしいじゃな〜い♪そんな当たり前のコト、大声で言わないでよ〜♪」と、勘違い発言… 
…すっかり、場が白けてしまった…



すっかり白けてしまった場を収拾させるべく、 
「…と、ところで、リカさんとミヤビが『従姉妹』って言う根拠は…?」と、尋ねてみたサキ… 

「アラ?この『美貌』という最大共通項じゃ、根拠にならなくて?」と、予想通りのお寒い答え… 
呆れ果てたヨッシーノが、リカサークの頭をスリッパでスパーン!と叩いてしまった… 

「…い、痛いわ!ヨッシー、何すんの!」とプンスカ怒るリカサークに、 
「…お・前・の・ギャ・グ・が・寒いんじゃ〜!!」と、キレて首を絞めるヨッシーノ… 

…数秒後、落ち着きを取り戻したヨッシーノが、 
「…ゴメンゴメン!…つい、カーッとなって、やっちまった…」と、リカサークに平謝り… 
「…もう!信じられない!」とご立腹のリカサーク… 
ここで、エローカとユイヤンが割って入り、 
「…で、結局のとこ、根拠は何なん?」と、ズバッと切り込むユイヤン… 
エローカがみんなにこっそりと耳打ちをして、 
「…あの二人の仲直りのイチャイチャが見たく無かったから、ゴメンね…」と、割って入った理由を伝える… 


「…じゃあ、わかった!みんな、静かに聞いてね!」



気を取り直して、リカサークが語り始める… 

「…ヨッシーだったら、知ってるよね?ワタシん家が名門の魔導師一家ってコト…」 
「…あぁ、知ってるYo!結構キビシイんだろ?」 
「…うん、そうなの…。で、ワタシもママから聞いた話だから、よく知らないけど、ミヤビちゃんのママは、ウチのママのお姉さんなの…」 
「…ふーん…」 
「…でね、今、家督を継いでいるのはウチだけど、ホントは、ミヤビちゃんのママが後を継ぐ予定だったみたい…」 
「…何で、ミヤビちゃんのママが後を継がなかったんだYo?」 
「…叔母さんには好きな人がいたんだけど、ウチのお婆ちゃんに反対されて…。ワタシには優しいけど、ママや叔母さんにはとても厳しかったの」 
「…なるほどね…」 
「…もうわかった、と思うけど、叔母さんは結局、ある日突然、好きな人と駆け落ちしたの…」 
「…だろうね…」 
「家督はママが継いで、叔母さんは『絶縁』されたみたい…」 

リカサークが語るミヤビの身の上話にその場の空気が重たくなる…



そんな重たい空気の中、リカサークは語り続ける… 
「…お婆ちゃんは叔母さんには厳しかった… 
でもね、ワタシも今、『美勇団』のリーダーだからわかるんだけど、優しくすることだけが、愛情じゃないってコト… 
お婆ちゃんは叔母さんの魔法の腕前を一番買っていたから、後を継ぐ叔母さんに厳しく接してたんだ…って思うの…」 

周りが静まりかえったところで、またリカサークが口を開く… 
「…でも、そんな厳しかったお婆ちゃんも去年、亡くなったわ…。失踪した叔母さんのことを心配しながら… 
『いつでも、帰ってきてもいいのよ…』って…」 

「…それはわかったんですけど、何でミヤビはりしゃこと一緒に孤児院に居たんですか?」と、サキが素朴な疑問を口にする… 
「…その、叔母さんがミヤビを育てればよかったんじゃ…」 

「…それには、二つ理由があるの… 
一つは、叔母さん達夫婦が、『時空の歪み』の研究者だったの…だから、もしも、のことを考えて、ミヤビちゃんを預けたの… 
もう一つが、預けられたミヤビちゃんを、お婆ちゃんが育てなかったの… 
ねぇミヤビちゃん、覚えてる?あなたが小さい頃、あの孤児院にお婆ちゃんシスターが居たけど…あれがお婆ちゃんなのよ」



リカサークが、ミヤビが孤児院に預けられた理由について語った… 

実は、孤児院にいた年老いたシスターが、ミヤビのお婆ちゃんだったなんて… 

サキはひどく驚いていた…。シスターとミヤビがお婆ちゃんと孫の関係だなんて知らなかったからだ… 
月にたった3日ぐらいしか来なかったから不思議には思ってはいたが… 
もう3年前ぐらいから来なくなったのも合点がいく… 
一方のミヤビは、 
「…うん…覚えてる…」と、答えた 
「…いつも優しくて、でも、寂しそうだったから、よく覚えてるの…」 

「…そっか。お婆ちゃん、幸せだったんだろうな…孫に覚えてもらってるんだもの…」 
「…あの、リカサークさん…」 
「『リカサークさん』だなんて…。他人行儀過ぎるぞ!『リカちゃん』でいいよ!」 
「…リカお姉さん、アタシ、最後にシスター…いえ、お婆ちゃんからこれをもらったんですけど…」と言って、ペンダントを手渡す… 
それは、りしゃこの持ってるそれの色違いのものだ…



ミヤビがリカサークに手渡したペンダント… 
それを見た瞬間、リカサークが声を失う… 

しばらくして、ようやく気持ちの整理がついて、出てきた言葉が 
「…それは…『護神石』…。…きっと、お婆ちゃんがあなたのために、あげたのね…。無くなった、ってみんなで大騒ぎしてたんだけどね…」 

「『護神石』!?」 
「そう…家宝なのよ…。特殊な力があるらしいんだけど、まだ、解明出来てないの…」 
「…どうして…それを…ワタシなんかに…?」 
「…きっと…あなたのことが不憫だったのね…。幼い頃から両親と離ればなれで暮らすあなたのことが…せめて、幸せに育って欲しい…と」 

そう言って、リカサークは手渡されたペンダントを、そっとミヤビに返す… 
「…もう、一人じゃないのよ…。アタシもいるし…ここにはお婆ちゃんもいるから…ね?」 
と、言って、ペンダントの『石』を指差す…



リカサークの優しい一言に、ミヤビは思わず泣きだしてしまった… 

ずっと、独りぼっちだと思ってた…両親に捨てられた…と思ってた 
そうじゃなかった…両親も、祖母も、自分を護ってくれている… 
孤児院に生活してたから、運命の巡り合わせで、りしゃことも、サキとも、みんなとも出会えた… 

とめどなく涙が溢れる…それを優しくリカサークが包み込む… 
その様子を、みんながじっと温かく見守っていた… 


その温かい雰囲気から、突如、一際大きな歓声が上がった… 

りしゃこ達も歓声のする方へと向かって行く… 

そこには、『暁の乙女』の隊長・アイオーラと副隊長・ガキシャンの二人が並んで立っていた… 
そして、二人が対峙するのは一体のゴーレム… 
二人の佇まいと闘気からか、ヨッシーノが、 
「…こりゃ、久しぶりに『面白いもの』が見れそうだYo!」と、みんなに呼び掛ける… 

ヨッシーノの言う、『面白いもの』とは?



ヨッシーノがしきりに、 
「こりゃ、久しぶりに『面白いもの』が見れそうだYo!」と言って、大はしゃぎしている… 

りしゃこ達も、魔導大会で当たるかも知れないライバルに注目する… 


アイオーラとガキシャン…二人が腰に帯びた、儀礼用と見紛うような煌びやかなサーベルを抜く… 
そして、同じ構えを取り、二人同時にゴーレムに斬りかかる!! 

「…たぁ〜〜〜〜!!」 

ゴーレムに向かって一直線に突っ走る二人… 
アイ・コンタクトで目標を定める… 
さらに加速してゴーレムに突入!すれ違い様にゴーレムの右足を一閃!! 
動きの鈍いゴーレムが振り返る頃には、再度加速してまた、右足を一閃!! 
それを幾度となく繰り返す… 
りしゃこ達が見た、マイミンの一点集中攻撃と何ら変わりはないのに… 

「どうだ…すげぇだろ!?あの二人の、練習量に裏打ちされた、無駄の無い動き…。なかなか出来るもんじゃねーYo!」 
ヨッシーノが誇らしげに言う…。可愛い後輩達の立派に成長した姿に目を細める…嬉しくないわけがない 

「さぁ、そろそろ来るYo!しっかり見なYo!」



ゴーレムに対して、一点集中攻撃を続けるアイオーラとガキシャン… 
その攻撃速度がどんどん速くなっていく… 
もう、ゴーレムも重みに耐え切れず、バランスを崩す… 

そこへ、一気呵成に攻め込む二人… 
サーベルを振るう合間に呪文を詠唱している! 

「「…いくよ!『合体魔法・トワイライト』!!」」 

アイオーラとガキシャンがサーベルを地面に突き刺すとつむじ風が巻き起こり、やがて、竜巻へと変化する!! 
よく見ると、ゴーレムの足元には魔方陣が!! 

重力に逆らうように、上空に舞い上がるゴーレム… 

ゴーレムの後を追うように、空高く跳躍するアイオーラ… 

サーベルの切っ先に、真っ赤な空気の渦が球体になって膨張していく! 

ゴーレムが落下していく!地面に激突するか、という瞬間に、ガキシャンがサーベルを地面に突き刺す! 

地面が隆起して、ゴーレムを突き上げる! 

そこへ、アイオーラのサーベルに宿った空気の渦がゴーレムを押し潰す! 

まるで、噛み砕かれたかのように、ゴーレムは核ごと粉々になってしまった…



見事な連携で、ゴーレムを殲滅したアイオーラとガキシャン…さすが、『暁の乙女』の親衛隊長・副隊長と言わざるを得ない… 

「…久々にいいもの見せてもらったYo!」と、後輩達の活躍に、ヨッシーノもご満悦だ…。ご機嫌ついでに 
「あの『合体魔法・トワイライト』はさ、オレが『暁の乙女』を卒業する時に、作ったヤツなんだって!」と、嬉しそうに話す… 

トワイライト…黄昏時…。きっと、夕日の沈む地平線、という光景に見立てて作ったのだろう… 

ご満悦のヨッシーノと違って、目の前で、あれだけの大技を見せつけられて、りしゃこ達は意気消沈しそうになる… 
そんなりしゃこ達をリカサークが勇気づける… 
「…まだ、本番まで3ヶ月あるし…あの子達だって、入ってきた時は、てんでダメだったのよ…素質はあったけど…」 

確かにそうだ…。あれだけの大技が、思いつきや閃きだけで出来るものではない…。地道な鍛練があってこそ… 
そう思うと、気が楽になった…が、気を抜いてはいられない…。改めて、訓練を積み重ねていくことを心に誓ったりしゃこ達だった…



ゴーレム出現から小一時間が経過した 

どうやらこれ以上、ゴーレムが出現する気配がなく、避難していた観衆も大広場に戻ってきた… 

改めて、式典の再開だ… 

だが、『公開練習』は、すでに新旧『暁の乙女』のゴーレム退治で間近で見ることが出来た訳だから必要ないだろう… 

そうこうしているうちに、大臣・ヤススが現れた…。彼女も元・『暁の乙女』の一員である… 

「『魔導大会』まであと3ヶ月、となったワケですが、ちょっとだけルール変更がありますので…」と、アナウンスする… 

「実は…今回、新加入になったメンバーの中には、半獣人と妖精がおります。なので、参加資格を広げたい…と思います!」 
そのアナウンスに、最初は戸惑いを隠せない観衆だったが、 

「今回の危機を救ってくれたのは、他でもない、彼女たちです!」と、ヤススが訴えかけると、観衆も、歓声でもって、新メンバーを迎え入れた…






―某所― 

今、目の前にある水晶玉には、新メンバーの加入式典の様子が映し出されていた…。無論、ゴーレムとの戦闘シーンも…である… 

「…ふぅん…けっこうやるわね…」 
「ま、こんなもんでしょ?でも、あの子達、あんま成長してないじゃん?…全く、責任者出て来ーい!」 
「…て、タンがリーダーだったじゃないの!?」 
「あ、そうだっけ?昔のことだから忘れちった♪」 
「…つい、1年前のことでしょ?」 
「…エヘへ、そうでした〜♪」 
「でも、良かったですよね〜♪新メンバーの戦力データも入手できたし♪」 
「コンちゃん、エライ!エライ!」 
「エヘヘ〜♪照れますよ〜♪」 
(…へっ!チョロいもんだぜ!やっぱ『〇〇とハサミは使いようだな…♪せいぜい、アタイの『駒』として、頑張ってくれよ!)






新メンバー加入式典を終えて、家路につくりしゃこ達… 

ライバル達との実力に意気消沈しているか?と、思いきや、みんなで議論している… 
「…ホント、みんなスゴかったよねー!」 
「だよねー!まさか剣を振り回しながら呪文が使えるなんて、びっくり!」 
「りしゃこは相性悪そうだよねー、ああいうタイプ。接近戦に持ち込まれるとマズいよねー!」 
「…護身術、覚えよっかな…。すごく不安になってきた…」 
「でも、純粋な魔法力だったら、いい勝負になるんじゃない?」 
「うん!負けないと思う!今まで一生懸命練習したんだもん!」 
「おぉー!りしゃこ、大きく出たね!」 
「…エヘヘ♪」 
「ま、ウチらの役割は『りしゃこの優勝のお手伝い』だもんね!…出来れば、ウチらとりしゃこ達とで…決勝戦、やりたいな!」 
「そうだね!」 

すっかり、明日を見据えて動き出すりしゃこ達… 


いよいよ、魔導大会まで…あと、3ヶ月!! 


―第3章・完―