―最終章― 
『この地球に、愛を…』 

いよいよ、10年に一度、ハロモニア女王が優勝者に願い事を叶えてくれる、という『魔導大会』まであと1ヶ月…となった… 

今日はオフの日…りしゃこは人の行き交う大広場の公園で、一人ぽつんと青空を眺めていた… 
そして、今までの約一年間を振り返ってみる… 

いろんな出会いや別れがあった…楽しいこと、悲しいこともあった… 

初めて旅立つ時はミヤビ、サキと、たった3人で不安だったのを覚えている… 

それが… 

街へ向かう道中、行き倒れのモモが無理やり仲間になって… 
マイハの導きで、妖精の森の中、マァ=サに出会えた…ヘイ!ダーリン! 
霊峰・クマイ岳では、何故か全身鎧を着込んだユリーナと遭遇…そのストーカーのチナリも出現… 

(…そんなことも、あったんだもん…)と、流れる雲をボーッと眺めながら、思いを巡らせる… 


そして、今は… 

「あ〜っ!いたいた!」「もう〜!どこいってたの!」「ミヤ、心配し過ぎ!」「まぁ、いいじゃん!迷子じゃなくて!」 

「…で、りしゃこ、ここで何してたの?」 
「…考えてたの!みんなのこと!」



りしゃこはみんなと連れ立って、大広場を離れていった… 

この大広場…つい2ヶ月前は、ゴーレムによる侵略があった場所だ… 
そのゴーレムどもを退治したのが、『暁の乙女』のメンバー達… 
あっという間にゴーレムを撃破したのを目の当たりにして、自分達の実力不足を痛感したのが2ヶ月前… 


あれから再び、りしゃこ達は特訓に明け暮れた… 
どんなタイプの相手が来てもいいように…と、個人技、合体技、接近戦、遠距離戦…と、いろいろ取り組んだ… 
足りないところはお互い補いあって、少しずつ、力を蓄えていった… 

時々、メーグルやマイミン、エリカンも特訓に付き合ってくれた…自分達で出来ることにも限界があるからだ… 
オフの日も、居候しているヤグーの目を盗んでヨッシーノやリカサークのところへ出稽古に行ったりもした… 

2ヶ月前には無かった、人一倍積んだ努力で身につけた自信が、今はある… 

今日はいつも身体をイジメ抜いている分、思う存分遊ぶ日だ… 

「今日はさ、日頃の疲れを吹き飛ばして、リフレッシュしましょう!」 
「「「オー!!」」」



日頃の疲れをリフレッシュするべく、大広場を離れて、まずはぶらぶらと散策を始める… 

いつもはヤグーの屋敷の中で練習に明け暮れていたから、9ヶ月経った今でも、まだ道を覚えられないでいる… 
メーグルから貰った地図を片手にキョロキョロしながら歩いていくものだから、田舎者丸出しだ… 

すると、向こうの方からも、りしゃこ達と同じように、地図を片手にキョロキョロしながら歩いてくる集団があった… 

「…何だか、ウチらと同じだね!」と、ミヤビが言うと、みんなが笑いながら頷く… 

すると、向こうは、こちらが笑っているのを『バカにされた』と、思ったのか、怒りながら近づいてくる… 
ニャーニャー言いながら…



地図を片手にキョロキョロしながら歩いていくりしゃこ達… 
そして、ちょうど道の向こう側にも、りしゃこ達と同様、地図を片手にキョロキョロしながら歩いていく集団がいた… 

「ウチらと一緒だよね!」と、りしゃこ達は笑いあってたのだが、向こう側の集団は、『笑われた!』と、思ったらしい… 
急に、りしゃこ達の方に近づいてきた…ニャーニャー言いながら… 

「…何がそんなにおかしいニャ!?…って、りしゃこ!?」 
「…レイニャ!?」 


「…いやぁ、奇遇だニャ〜♪お散歩してたら目の前にりしゃこ達がいるんだニャ〜♪」 
「…ホント、すごい偶然だもん!」 
「…でも、ハロモニアは大きくて、すぐ迷子になるの…!少し面倒なの…」 

と、近況の話をしていたが、みんなが気になる『あのこと』について、モモが切り出した 
「…ねぇ、3人はどうして『暁の乙女』に入れた…というか入ったの?」



誰もが知りたがっていた、レイニャ達の『暁の乙女』への新メンバーとしての加入の経緯… 
レイニャの口から語られたのは意外なものだった 
「スカウトが来たんだニャ!『暁の乙女』に入らないか?って!」 
―今までの『暁の乙女』の加入条件は、厳しい実力査定の『合宿』を受けないといけないのだが… 
いくつか疑問が残る… 

「そうなの!…きっと、サユミンの美貌が『暁の乙女』に必要だったの!」 
「違うよ!キャメの美貌が必要だったんだよ!」 
と、言い争っているキャメイとサユミンを押し退け、「ところで、メイドの仕事は?」と、尋ねるユリーナ



『暁の乙女』に加入した3人に対して、 
「ところで、メイドの仕事は?」と尋ねるユリーナ 

元々はメイドとして働いていた3人が『暁の乙女』に加入する以上、メイドを辞めざるを得ないのは当然だ… 
その、当たり前のことを聞いてくるユリーナに、皆、首をかしげる… 

が、しばらくして、モモが質問の『真意』を見抜いた 
「…ふぅーん」 
「…な、何?」 
「…ウフフ、そんなに気になるんだぁ〜♪」 
「…な、何が!?」 
「…うろたえちゃって、可愛い♪…でも…羨ましいなぁ〜」 
「ちょ、何だかよくわかんない!」 
「そうだもん!よくわかんないもん!」 
「…そうだよね〜。モモ、ニタニタして、気持ち悪いよ!」 
「…エヘヘ!だってぇ〜、ユリーナはぁ〜、愛しい『あの娘』のことが気になって仕方がないんだもん♪」 
愛しい『あの娘』!? 
そう言われて、みんなが一斉にに考え出す… 


そして、 
「「「あ〜〜っ!!」」」と、みんなが一斉に大声をあげる…



ユリーナの質問の『真意』がわかった途端、全身が大声をあげる… 

「「「あ〜〜っ!!」」」 
そして、みんなしてニタニタしながらユリーナを取り囲む 

「…な、何よ、みんな…。ど、どうしたの!?」 
と、ユリーナが焦りながら尋ねると、 
「…ふぅーん」 
「…やっぱり、気になるんだ!」 
「…大事にしろよ、とゆいたい」 
と、冷やかされる始末… 

そんな中、チナリだけは膨れっ面でユリーナの腕を、ぎゅ〜〜〜っと、つねるのだった… 

「…ちょ、い、痛い!チー!やめてよ!」というユリーナの訴えも、嫉妬にかられるチナリの耳には届かなかった… 

涙目のチナリが、 
「…もうー!ユリーナのバカ!!」と、つい、叫んでしまう… 
「…ま、待ってよ、チー!…ウチが何をしたってゆうの!?」と、恋する乙女心に気付かないユリーナ… 

「…ウチのことより、ナッキーのことが心配なんでしょ!?」



チナリの口から洩れた『ナッキー』という言葉に、あからさまにうろたえてしまうユリーナ…本当に分かりやすい性格だ… 

そのうろたえた表情や素振りを見て、 
「…やっぱり…」とだけ呟くチナリ…。いつの間にか、涙目を通り越して泣き出しそうになっている 

それを見て、 
「…あーいけないんだもん!(棒読み)」 
「…ユリーナちゃんって、ひどいー!(棒読み)」 
と、からかうミヤりしゃ… 
面白がって、 
「女の子を泣かせちゃダメですよ?」 
「…ダメなの!ダメなの!浮気はダメなの!」 
「…軽蔑するニャ!」と、ノッてくるメイドトリオ 

「…い、いや、あの…そのー…ホ、ホラ!ウチにとって、初めて出来た人間のお友達だし…」と、やや、強引に躱すユリーナ… 

その発言に誰も何も言わなかったので、ホッと胸をなでおろした… 


のも、つかの間、 
「…じゃあ、ウチらは友達じゃなかったんだ…」 
「…寂しいよね…」 
「ユリーってひどいもん!りーちゃんガッカリ…」 
「…モモちゃん…スネていい?スネちゃおっかなぁ〜♪」 
と、今度はミヤりしゃサキモモから集中攻撃を浴びてしまったユリーナ…



今度はミヤりしゃサキモモから集中攻撃を浴びてしまったユリーナ… 

もうダメだ…と観念した途端、いじけてしまう… 
「ハイハイそうですよ…どうせ、ウチはナッキーのことが心配ですよ…」 
勿論、ポーズなのだが… 

その言葉を聞いて、 
「…やっぱり、ウチよりナッキーのことが大事なんだ…」と、今度はチナリがいじけてしまう… 

やることなすこと裏目に出てしまうユリーナ…。逆に、ここが勝負どころとみたチナリが、 
「…じゃあ…『好き』って言って!」 


州*‘ ー‘リ<♪好きと 

ル*’ー’リ<♪好きと 

ノノl∂_∂'ル<♪好きと 

川*T∇T)|<♪好きと 

「「「「♪言いなさい〜!」」」 

从#´∇`从<♪So!こ・の・場・で!! 


完全に追い詰められたユリーナ… 

が、ここで、救いの女神が現れる!



チナリの求愛攻撃に防戦一方のユリーナ…。別にチナリが嫌いじゃないのだが、人前で言うのは恥ずかし過ぎる… 
(…なんとかうやむやに出来ないか…?)と、考えていたところに、救いの女神が現れる! 


「あ、みんなー!」 

その声に誰もが振り向く…。噂をすれば影…。噂の人・ナッキーが現れた! 

「…もう、遅いニャ!」と、ボヤくレイニャに、 
「ごめんなさい!初めての場所なんで…」と、屈託のない笑顔を浮かべるナッキー 
以前は自信の無さからか、少し弱々しいところがあったが、今はすごく明るく元気だ… 

仕事仲間のレイニャに挨拶を済ませたナッキーがりしゃこ達に気付く…と、同時に目で何かを追っている… 
ようやく視線が止まったところは、やはり、ユリーナだった… 

「あ!ユリー!」 
そう言って、ユリーナの元に駆け寄るナッキー



ここにいるハズのないナッキーの出現… 

一番驚いたのは他でもない、ユリーナだった 
「…ナッキー?…どうしてここに…?」 
「…あ、うん。ご主人様が『レイニャ達の応援に行こう』って…」 
(…ここで言う『ご主人様』とは、ハロモニア有数の富豪・アリ氏のことである…変な意味では無い) 

「…それで、キャメイさんやサユミンさん、レイニャさんと待ち合わせしてたんですけど…道に迷ってしまって…」 
「…ホント、しっかりしてくれニャ!」 
「…と言うレイニャも方向音痴なの!」 
「ニャ!ニャ!それを言っちゃダメニャー!」 
「アラ、アラですよ?」 

すっかり話題はナッキーと、その近況に移っていく… 
「…じゃあ、アリさんもここに?」と、サキが尋ねる… 
以前、ここにいるメンバーは、みんなアリ氏のお世話になったり、逆に、娘のカンニャの捜索を引き受けたり…で、全く知らない間柄ではないのだ 

「…ええ、来てます!娘さんと一緒に!」と、嬉しそうに答えるナッキー 
「…せっかくだから、みんなで挨拶しに行こっか?…ナッキー?大丈夫かな?」「…ええ、多分喜ばれると思います!」



恩人・アリ氏へ挨拶しに向かうりしゃこ達… 

楽しいハズの道中なのに、一部、空気が重たい… 

チナリだ… 

まさかのライバル再登場に焦らないワケがない… 
そんなチナリの乙女心を知ってか知らずか、二人一緒に並んで歩いてる…ときた 
イライラしているチナリに、ポンと肩を叩いたのはモモ… 
(…いくらナッキーでも、ウチらと一緒に寝泊まりは出来ないわよぅ!ガマン、ガマン!)と、こっそり耳打ちをした… 
(…どういう風の吹き回し?)と、思いながらも、応援者が増えて喜ぶチナリだった… 
一方、応援したモモは、 
(…もうホント『青春』よね〜!)と思いながら、恋のライバル争い激化の予感にほくそ笑むのだった… 


そうこうしてるうちに、待ち合わせ場所のカフェテリアに到着した 
街のメインストリート『青春大通り』に面していて、とても景観がいい… 
加えて、珍しいオープンテラスなので、けっこう繁盛してるみたいだ… 

そこの、やや奥まったところから、りしゃこ達に向かって手を振る集団が…



洒落たカフェテリアにナッキーと一緒に向かったりしゃこ達… 

待ち合わせ場所には、りしゃこ達に気付いて手を振る集団が… 
浅黒い肌の富豪のアリ氏と、その娘・カンニャが目に飛び込んできた…が、他に二人、女の子がいる… 

サキがナッキーに、 
「…ねぇ、アリさんって、あんなに娘さん、いたっけ?」と、小声で耳打ちをする… 

すると、ナッキーが急にケラケラと笑いだす… 
「…な、何がおかしいのよ!?」と、真顔で怒るサキ… 
だが、サキの言葉に、一同吹き出してしまった… 
「…な、何よ!?アタシ、何かおかしいこと言った!?」と、再度真顔で聞き返す… 

だが、謎はすぐに解けた 
「おーい、りしゃこー!」「りしゃこお姉ちゃーん!」 
…どこか聞き覚えのある声…ゆっくりとサキは思い出してみる… 
ところが、サキが思い出す前に、 
「チッサー!アッスー!…来てたんだー!」と喜ぶりしゃこの声… 

旅の途中で知り合った、チッサーとアッスーのオ・カール兄妹…改めオ・カール姉妹だ… 

自分の物覚えの悪さに愕然とするサキだった…



三度、再開を果たしたりしゃこ達とオ・カール姉妹… 
相も変わらず元気なようだが、何故、二人がここにいるのか?が、気になる… 
それはりしゃこも気になったようで、 
「ねぇ、チッサー?どうしてここにいるもん?」と、尋ねる… 
それに対して、待ってました、とばかりに、 
「…へへ、実はあれからアリさん家で『メイド』として雇ってもらってるんだ!」「そうなんだよ!」 
と、自慢気に、そして、嬉しそうに話す… 

「…そうだよ!二人はナッキーの弟子なんだ!けっこう頑張ってるよ!」と、ナッキーも二人の頑張りを褒める… 

「まぁ、レイニャはよくお皿を割ってたんでクビにしたんだけど」と悪戯っぽく笑いながら話すアリ氏… 
「…ひ、非道いニャ…」 
「ハハハ…冗談だよ!…ところで、キミ達も『魔導大会』に参加するんだろ?」と、話題を変えるアリ氏 

「…ええ、そうです!」と、りしゃこ達全員、胸を張って答える… 

「…だとしたら、ちょっと気になる話があるんだ…」と、急に声をひそめるアリ氏… 

そして、アリ氏の口から語られたものは?



『魔導大会』に参加する、と言ったりしゃこ達に、 
「ちょっと気になる話があるんだ…」と、注意を促すアリ氏… 

「…実は、このハロモニアを『破壊』しようと、暗躍している組織があるらしいんだ…」 
りしゃこ達はすでに、ヤグーが『時空の歪み』を利用して、他世界との融合により、世界の『破壊』を目論んでいることは知っていた… 

だが… 

「…最近、このハロモニアで出没しているゴーレムを操っている奴らがそうらしい…」 

思い返せば、ヤグーがゴーレムを操っている素振りは全くなかった… 
と、なると、全く別の勢力が世界の『破壊』を行っていることになる… 

ゴーレムは『魔導兵器』…当然、操っている魔術師がいるに決まってる…薄々は気付いていたが、考えたくはなかった… 

そして、アリ氏が衝撃的な発言をする… 

「…実は、ハロモニアの元老院からの依頼を受けて、内偵調査を行っている最中だ…」 

「…それって、どういうことですか?」と、恐る恐る聞いてみるサキ… 
アリ氏から返ってきた答えが、 
「…あまり考えたくはないんだが…」と、前置きしながらも、 
「…恐らく、ハロモニア内部中枢に『裏切り者』がいるようだ…」



ハロモニアの元老院からの依頼で、内偵調査を行っているアリ氏が言うには、 
「内部に『裏切り者』がいるようだ…」 

続けて、 
「…今回、この3人を『暁の乙女』に加入させた…いや?加入できたのは元老院からの推薦だったんだよ 
謂わば、『囮捜査』というヤツだ…」 

驚くべき内幕を話すアリ氏… 

「…どうしても、商売人は情報に聡いから、こういう『内偵調査』のような仕事も、たまに請け負うんだよ…」 

何故、この時期に『暁の乙女』の新メンバーの大量加入があったのか?が理解出来た… 
あとは、気になる『破壊を目論んでいる組織』のことだが… 

「…それが、全く目星がついてないんだ…」



謎の破壊組織について、まだ詳細がわからない、と言うアリ氏… 

世界の存亡に関わる一大事に巻き込まれて、りしゃこ達の気分は自然と重くなる… 

全く手掛かりはないものか?…と、その時、 

「…アラ!何だか難しい顔して…どうしたの?」 
そう言って、りしゃこ達の会話に乱入してきたのはメーグル達… 

「せっかくの休みだから一緒に遊びに行こう!と思ってたのによぅ!」「そしたらみんなで遊びに行ったっていうじゃない!」 
「…で、後を追いかけて来たワケね!」 
「「その通り!」」 

サキがアリ氏にメーグル達を紹介する… 
メーグル達も、りしゃこ達と同じ、『世界の破滅を阻止する同士』ということを伝えると、積極的に会話に参加してきた… 

アリ氏からの情報を聞いて、推測をまとめるメーグル…EXーZYXに『切れ者』とあだ名された『頭脳』が急速に働き出す… 

そして、 
「…内部の人間に違いないわね…」という結論を弾き出した…



かつて、EXーZYX随一の切れ者・メーグルが犯人像を割り出した 
「…やはり、『黒幕』は内部の人間に違いないわね…」と、結論づける 

「…どうしてそんなのわかるんだ?」と、絡むマイミンに、 
「…いい?今回のゴーレムは、まるで『新メンバー加入式典』に合わせたかのように出現したわ…」 
…言われてみれば、そう言えなくもない… 

「…それと…本来の『無差別破壊』じゃなくて、『魔導大会』出席者を狙ったような感じがするの…」 
「…そうかなぁ〜」 
「そうよ…だって、あれだけ暴れたら死傷者が出て当たり前…だけど、今回は死傷者がゼロだったの!…こんなの意図的だわ!」 

「…恐らく、『魔導大会』の出場者の戦力分析…が目的だったと思うの…文字通り、『高みの見物』でね…!」 
そう言って、メーグルはある方向を指差す… 

その先には、ハロモニア城の『物見の塔』があった! 
「…きっと、当日、あそこに立ち入った人間こそ、『重要参考人』よ!」



数少ない情報で、犯人像をものの見事に絞り込んだメーグル…その頭のキレは流石という他ない… 

「…流石だな…じゃあ早速、元老院に報告しよう!」と先走るアリ氏を制したメーグル… 
「…まだです…まだ『決定的な証拠』がありません。そんな状態で捕らえても『疑わしきは罰せず』で、罪を問えないのがオチです 
…恐らく、『向こう』の狙いが『魔導大会』であるとしたら、必ず、大会中にアクションを起こしてきます!…それまでの我慢です」 
しばらく考えて、メーグルの作戦に同意するアリ氏… 
「…全く、末恐ろしいものだな…」と、ポツリと洩らす… 
「…では、内偵調査は引き続き行うとして、また、行き詰まったら、キミに相談するよ!」と言って、メーグルに握手を求めるアリ氏… 

幾分か、対応策が講じられそうなことがわかり、緊張した空気が和らぐ… 
その矢先に、お腹の虫があちこちから鳴り出す… 

アリ氏が苦笑いを浮かべながら、 
「…せっかくだから、一緒にお昼にしようか?」と、申し出て、 
「ごちそうさまです!」と、飛びっきりの明るい笑顔で答えるりしゃこ達だった…



緊張がほぐれた瞬間、急にお腹の虫が鳴り出したりしゃこ達…ちょっと早いが、お昼ご飯を頂くことに… 


「…ほら、好きなのをたのみなさい」と、言ってメニュー表を差し出すアリ氏 

みんな一斉に、メニュー表とにらめっこを始める… 
そして、あれやこれやと井戸端会議が始まる… 
そんな様子をニコニコと目を細めて見ているアリ氏 
彼女達にとって、『何食べよっか?』と考えることが一番楽しいひとときに違いない… 
いろいろと相談しながら次々とメニューが決まっていく… 


みんなが決まったのを見て、ウェイトレスにメニューを頼んでいくアリ氏… 

「…それでは、以上でよろしいですか?」と注文の品を確認するウェイトレス 
「…ええ、それで」



お昼ご飯をオーダーし、料理が出てくるのをしばし待つ…この、料理が出てくるまでの間も食事の楽しみだ… 

談笑しながら待ってると、「お待たせしました!」と言って、ウェイター、ウェイトレスが次々とメニューを運んでくる… 

「以上でご注文の方はお揃いですか?」 
「ええ」 
「…では、ごゆっくり…」 
見事に並んだ料理の数々…だが、数量があっていない…明らかに二つ…多いのだ… 

それに気付いたサキが、 
「…アリさん、料理の数が合わないんですケド…」と、指摘する… 
ところが、アリ氏は気に留めていない様子で、 
「いいんだよ。これはこれで…」とだけ言う… 

次の瞬間、サキが突かれる… 
ふと、後ろを振り返ると… 

洲*` v ´)州´・ v ・)



『悪魔の双子』の登場に、つい、身構えてしまうサキ… 

だが、何をするでもなく、静かに着席する… 

そして、アリ氏の方から 
「…この度は、ウチの娘をよろしく頼むよ!」と、挨拶をしている… 

!? 

その場にいた全員がそう感じたに違いない…何が『よろしく』なのか… 

驚いているみんなに対して、アリ氏が説明する… 
「…カンニャを、ウッドベルさんのところに預けようかと思ってね…調べてみたら、どうもカンニャに、『魔法使い』の素質があるようで… 
そこで、レッスンプロ…じゃなくて、『宮廷魔術師』として名高いウッドベルさんに指導して貰おうかとね… 
ちょうど、トシの近い娘さんがいることだし、人見知りしがちなカンニャには勉強しやすいかな、と… 
いつも留守がちな父親だから、そういった意味でも良い選択だったんじゃないか?と思うんだよ」 

最初は唐突な話で驚いていたりしゃこ達だったが、次第に納得していく…



ウッドベル家(=トール)のところに留学が決定したカンニャ… 

アリ氏としては、今回の件は願ったり叶ったりだが、りしゃこ達はカンニャのことを心配していた… 

長い間、父親とのふれあいが少ない生活…つい最近起きた家出事件…果たして、上手く順応出来るのか? 
ましてや、トールの娘は『悪魔の双子』だ…。いびられないか…それも気がかりだ… 

「…じゃあ、カンニャ…挨拶なさい…」 
双子への挨拶を促すアリ氏… 
言われた通りに双子の傍に近づくカンニャ… 
だが、その時、事件が起きた! 


双子に近づくなり、ガシッと抱きつき動かないカンニャ… 
突然の意表を突く行動に固まってしまう双子… 
その後、何をするかと思えば、双子の首筋の匂いをクンカクンカ嗅いでいる… 

「…わ、わ!」「…きゃあ〜!」 
たまらず双子が暴れ出す… 
必死の思いでカンニャを振りほどいた双子…そこにはいつもの生意気な表情は消え、引きつっていた… 

一方のカンニャは一言、 
「…いい匂い…合格♪」とだけ言った… 

いつも双子にしてやられてるみんなは、双子のうろたえる様に大爆笑するのだった…



アリ氏の一人娘・カンニャに突然クンカクンカされてうろたえる双子… 
日頃見られない双子のうろたえる様に大爆笑するりしゃこ達… 

だが、日頃欲求を抑圧してきたカンニャが暴走し始めた… 

まずは、一際大声で笑っていたマイミンに近づいて、クンカクンカする… 
今度はマイミンがうろたえる番だ… 
「わ、わ、わ!」 
目をウットリさせて、恍惚の表情を浮かべながら一言、 
「…いい香り…スキ♪」 
と、言い出す… 

「…ち、ちょっと何するの!?」と、慌てて割って入るエリカンにもクンカクンカ… 
「…うーん♪いい匂い♪」 
あまりの豹変ぶりに、アリ氏も慌てて、 
「…コラ!カンニャ!お客様に失礼だぞ!」と、叱ってみせる 

そこで初めて我に返ったカンニャが 
「…ごめんなさい…」と、顔を少し赤らめてみんなに謝る… 

マイミンもエリカンも落ち着きを取り戻し、 
「…あ、あぁ…」 
「…ええ、大丈夫よ…気にしないで…」と答えた 

りしゃこ達もカンニャの『暴走』が収まり、ホッとする… 

ただ、双子の顔は引きつったままだった…