そして翌日― 今日もオフだったので、再度『魔術師の館』へ足を運ぶことにしたりしゃこ達… 今日はメーグル達が図書館で調べものをする…ということで別行動となった 昨日同様、地図を片手にキョロキョロと街を探索する… ヤグーの館がやや閑静な地域にあること、朝の早い時間だったこともあって、今、りしゃこ達が通っている道は人通りがまばらである… そんな中、道の向こう側から、大きくて、豪華な造りの馬車が1台やってきた… (…どんな人が乗っているんだろ?)と、興味心でスレ違い様に中を覗いてみた… すると、中の人は悪人相でこちらにメンチを切っていた…もとい、優しい微笑みを湛えたハロモニア女王・ユーコが! あっけにとられるりしゃこ達に対して、 「あなた達に用事があるから、この馬車に乗りなさい…」と、手招きをする… 突然のことで戸惑っているりしゃこ達を、誰かが後ろから背中を押す… 「…ほらほら、早よチャッチャと乗りーや!コッチはちょっと急いどるねん!」 やや年増のおばちゃん?に背中を押されて、りしゃこ達は馬車に乗り込んでしまった… ハロモニア女王・ユーコの乗る馬車に無理矢理連れ込まれてしまったりしゃこ達… そして乗り込んだと同時に馬車が急な勢いで走りだす… お城へ向かう道中、ユーコはずっと黙ったままだった… 沈黙が続く馬車内の空気が重たく感じる… その沈黙を破ったのがサキだった… 「…あの、女王様…何故、ワタシ達を…?」 それに対して、ユーコは 「…ぶっちゃけて言うけど…あんた達に伝えたいことがあんねん」と答えた… そして「あんたらが持ってる『護神石』について…な」続ける… それを聞いて動揺するりしゃこ達… 「…どうして…それを…!?」と、サキがユーコに尋ねるが、ユーコは何も答えなかった… そして再び、馬車内の沈黙した空気が続く… しばらくして一行はお城に到着した… だが、何故か正門から入らず、裏門からこっそりと入っていった… やはり、お城への入り口も正面からでなく、裏口から入っていった… 衛兵達が、女王に向かって黙礼をする… 場内も女王のユーコ自らが先導して一室に案内する… そして、全員が部屋に入ったところで、ユーコが話を切り出した… 急にりしゃこ達をハロモニア城にまで引っ張っていったユーコ… そして、城の一室に着くなり話を切り出した… 「…実はな、あんたらの持ってる『護神石』について、今から話そかと思うんよ…ただ…」 「…ただ?」 サキが聞き返す… 「…教えてもええけど…あんたらにひとつ、聞きたいことがある…」と、ユーコが答える… 「…聞きたいこと、って…何ですか?」 やや緊張しながらサキが尋ねる… 他のメンバーも、ユーコが発するであろう質問に身構えている… ユーコが発した質問は、 「…あんたら…この世界のこと、好きか?」だった… その質問に元気よく、 「ハイ!好きです!!」と、真顔で即答したりしゃこ達… 「…ほな、聞くけど、この世界を護るために…生命張れるか!?」と、再度、ユーコが質問する… りしゃこ達は互いの顔を見て、意思確認をした上で、「…この世界のために、捧げます…」と、静かに答えた… しばらく沈黙が続いた後、決心してユーコが、 「…よう誓ってくれた…。わかった!今から『護神石』について話すわ…」と言った… ユーコが遂に、『護神石』について話す決心をした… 「…もう察しはついてると思うけど…自分らが持ってる7つの『石』は、全部、本物の『護神石』や!」と、ユーコが話し始める… 「…でも、すごい偶然やわ…。ウチがヤグに頼んで自分らをハロモニアに集めようと思うてたんよ… 正直、集めるのに1、2年はかかると思てたけど予定よりずっと早かったもんな…」 ここで以外だったのは、ユーコがヤグーに、りしゃこ達をハロモニアに集める勅命を下していたこと… ひょっとしたら、旅の道中でマイミン・エリカンやメーグルと遭遇したのは、りしゃこ探索の途中だったのかも知れない… 「…と、言うのも、ウチもトシやなぁ〜って思うようになったからやねん…」と、寂しそうな顔をしてユーコが話す… 「…この『魔力』を維持するんは精神的にも肉体的にもきついから、ウチも引退しようかな?って思うて…」 次第にみんなが無口になっていく… そしてユーコが思い出したかのように、 「…あ、そやった!『護神石』について話さなあかんかったな!」と言う… そして、ユーコが『護神石』について話す… 「…自分らの持ってる7つの『護神石』はこの世界の安定化のために創られた『石』らしいんよ…」 りしゃこ達は先程から微妙な違和感を感じていたが、その理由がわかった… それをモモが口に出す… 「7つの『護神石』って言われてますけど…アタシ達は8つ『護神石』を持ってますよぅ〜?」 その質問に、ユーコが答える… 「…いや、『護神石』は7つやで…」 「…でも…アタシ達8人で8つ『護神石』を持ってるんだから…?」 「モモちゃんの言う通り、『石』は8つや!でも、『護神石』は7つ…じゃあ、残りの1つは…」 「…残りの1つは…?」 「『賢者の石』…」 ユーコが初めて口に出し、た『賢者の石』という言葉… 耳慣れぬ言葉に戸惑うりしゃこ達… その様子を見ながらも、ユーコは話を続ける… 「…『賢者の石』は7つの『護神石』を統べる石なんや…」 その後、サキ達を指差し、「…自分らの持ってる『石』には7つの色がついてるけど…」と言い、 りしゃこを指差し、 「…りしゃこ…あんたの持ってる『石』が透明なんはな… 7つの『護神石』が集まって初めて色が現れるんよ…。とっても綺麗な『虹色』が… その7つの色は、この世界を構成している元素の色…それを統べる、ということは、大袈裟な話…この世界を統べる、ということと一緒や!」 『護神石』が元素を統べていることも驚きだが、りしゃこの持つ『石』が、更にそれらを統べる『賢者の石』とは思わなかった… もはや、スケールの大き過ぎる話にただただ聞いてるしか無かったりしゃこ達… 「…だから、自分らの手に世界がかかってるんや…その力…正しく使ってや…」 りしゃこ達の持つ、『石』の秘密を話し終えたユーコ… その『石』の持つ重みに、改めて責任の重さを感じ取るりしゃこ達… 会話も一段落したところで、ユーコが、 「…長くなってもうたなぁ〜!ほな、みんな、茶でも飲むか?」と、声をかける… 「…では、お言葉に甘えて…」とサキが答える… 「…じゃあ、ゆっくりしていき!…アッちゃん、お茶出したって〜!」と、ユーコが大声を出すと、 「へい!お待ち!」とユーコの後ろの本棚が横にスライドして、ティーセットを持った、ちょっと若作りのおばちゃんが現れた! 予想外の場所からの出現に、りしゃこ達は目が点になった… 「…ちょっと、アッちゃん!子供達をびっくりさせてどーすんの!?」 「…いや、忍者らしいとこ見せとかんと、近頃の若いモンにナメられるから…ガツンと行っとかんと!」 …そんな変な会話がユーコとおばちゃん?の間でやりとりされる… 「…あ、あの〜」と、申し訳なさそうにサキが声をかけて初めて我に返る二人… 「…あ、ゴメンな〜!これ、ウチのお庭番・『太陽と月組』のアツコさん…」と、ユーコが紹介する… ユーコから紹介されたのは、若作りのおばちゃんっぽい風貌の『アツコ』という忍者… とはいうものの、登場の仕方から、ユーコとの掛け合いから見るに、忍者というより、コメディアン…の方が正しいような気がしないでもない… そんな空気を察知してか 「…こう見えても、アッちゃんは歴代『暁の乙女』の武術指南役だったんよ」と、ユーコが言う… …が、さっきまでのやりとりを見ていて、武術指南役と信じろ!という方が無理な話だ… 疑いの眼差しで見ているりしゃこ達に対して、 「…じゃあ、手合わせしたら実力がわかるやろ?…誰かアッちゃんと手合わせしたい子はおらんか?」と、ユーコが呼び掛ける… その呼び掛けに反応したのは意外にも… 「…モモがやる…」と、モモが名乗りを上げた… 実利が絡まないとモモは闘わない…と、誰もが思っていただけに、りしゃこ達は少しざわめいた… 「…何よ!失礼ね!アタシだって普通に自分の実力を試したい時だってあるのよ!」と、みんなの心の内を見透かしたかのように、モモが言う… (…アタシの実力がどこまで通じるか、試させてもらうわ!) モモの闘志は、静かに燃えていた… 女王・ユーコも実力を認める、忍者・アツコ… そのアツコに挑むのは、意外にも、モモ… モモの胸中では、静かな闘志が燃え上がっていた… 「…まぁ、こんなところで闘われへんやろうから…」と、言われて、ユーコに案内されたのは、 城の北側に位置する兵士達の訓練場だ 「…ここなら気兼ね無く闘えるやろ?…じゃあ、ウチが審判な!」 そう言って、ユーコが仕切り始めた… 「…ねぇ、サキ…。モモ、大丈夫かな…?」 と、ミヤビが不安がる… 「…大丈夫だよ…。モモならきっと、あっと驚く『秘策』でもあるんじゃないの?」 と、サキがミヤビに言い聞かせた…。と、いうより、サキ自身に言い聞かせていた… なぜ、モモがアツコとの手合わせをうけたのか?がわからないまま、勝負の時を迎えた… いよいよ、モモとアツコの手合わせが始まる… 「はじめ!」 のユーコの掛け声とともに、互いに距離を取りながら円を描いて移動するモモとアツコ… 互いの手の内を探りながら、出方を伺っている… 1分近く様子見が続いた後、モモが仕掛けた! 懐から金属製の暗器を取り出し、アツコに投げつける! それを忍者刀で弾くアツコ… また、モモが懐から暗器を投げつけて、アツコが忍者刀で弾き返す… こんな攻防がしばらく続いた後、モモが玉をアツコに向けて投げつける! 先に動いたのはモモ… 懐に忍ばせた暗器を取り出し、アツコに投げつける… その暗器を、アツコは忍者刀で一つ残らず弾き落とす… しばらくはそんなやりとりが続いた… 未だに仕掛ける素振りのないアツコに対して、モモは暗器ではなく、玉を投げつけた! それも、忍者刀で弾いてみろ!と言わんばかりに 遅い速度でアツコの上半身から顔を狙って…だ アツコは、 (玉に仕掛けがある!)と、瞬時に判断し、今度は忍者刀で弾くことをせず、 上体を弓なりに反らす『躱し身・稲葉上(いなば・うわ)』で切り抜けた… 「なんや?こんなもんなん?…まるで子供騙しやな!」 と、挑発するアツコ… それでも、ポーカーフェイスで再度、玉を投げるモモ… スピードが早い訳でもなければ、際どいところを狙ってる訳でもない… ただ、アツコの上半身目がけて投げつける… そんな状況にじれたのか、飽きたのか、 「…ほな、今度は…こっちの番や!」 と言って、アツコがモモに襲いかかる! ただ、遠い間合いから暗器や玉を投げつけるだけのモモに失望し、 「…ほな、今度は…こっちの番や!」と、言い放ち、モモに襲いかかるアツコ! モモの投げつける玉を、上体を反らす『稲葉上(いなば・うわ)』で躱しつつ、接近する! 接近するアツコを迎撃すべく、今度は暗器を足元へ投げつけるモモ… それを開脚ジャンプ『大開下(おっぴろげ)』で躱しつつ、飛び込み前転をしてさらに間合いを詰めた! そして、体勢を立て直すと忍者刀を抜き、モモに斬りかかる! あまりの斬撃の速さに、モモも一対の忍者刀・『右小指』『左小指』を抜き放ち、アツコの攻撃を受ける! カキィィィーン!! 刃と刃がぶつかり合う音… 間合いがほぼゼロになったことで、接近戦に持ち込むアツコ… モモに、小賢しい暗器を使わせないための戦略だ… 何より、アツコは接近戦における斬り合いが得意だった… あっという間に自分の土俵にモモを引きずりあげたのだから、負ける要素は…まず、ない… 土俵に引きずり込まれたモモは、アツコの斬撃の前に防戦一方となっている… 傍らで見守っているりしゃこ達も、自然と手を握りしめる… カキィィィーン!! キュイイイーン!! … 幾度となく、刃と刃がぶつかり合う金属音が鳴り止まない… モモの懐に飛び込んでからは、アツコの攻勢、モモの守勢が続く… 正確無比なアツコの斬撃を、なんとか凌いでいるモモ… だが、攻撃をしないことには主導権を握れないし、それ以前にアツコが攻撃をさせてくれない… りしゃこのような素人でも、モモが劣勢を強いられていることがわかる… ぎゅっと握りしめた手に、汗をかいている… 「ホラホラ!こんなもんか!?」 アツコが煽ってくる だが、モモは挑発には乗らない 自分の流れでない時は、相手のミスを待って、流れがくるのを待つか… 若しくは、自分で相手のミスを誘い、流れを引き寄せるか…しかない モモがとった行動は…ズバリ後者! 確かに両手はふさがっているが、両足だって、頭だって動かせる! アツコの斬撃を防ぎながらも、モモは頭をフル回転させていた… だが、そこに隙が出来てしまった! 斬撃の合間に、アツコがモモの腹部に蹴りを見舞ったのだ! 勢いよく後方へ吹っ飛ぶモモ… 距離が離れたので、再度、間合いを詰めるアツコ… モモを応援していたりしゃこ達も、思わず天を仰いでしまう… アツコの強烈な蹴りを食らって、大きく後方へ吹っ飛ぶモモ… さらに、追い討ちをかけるべく、再度間合いを詰めるアツコ… なんとかモモが立ち上がった!…が、足元がおぼつかない状態だ… そこへ無慈悲にも、アツコの袈裟斬りが襲いかかる! …だが、ここにきて初めてアツコに隙が出来た! 通常の斬撃と比べ、やや大振りの袈裟斬りはモモにとって絶好の攻守逆転のタイミングだった! モモは最小限の動きで斬撃を躱し、次に、モモの動きを捉えようと顔を向けたアツコの顔面に毒霧を噴射! 予期せぬ一撃に、思わず怯んでしまうアツコ… だが、そこは百戦錬磨の猛者…すぐにモモの攻撃を避けるべく、大きく距離を置いた… モモにしてみれば、追い討ちをかける、絶好の好機を潰されたことになる… 「…残念やったな!せっかくのチャンスやったけど、追い討ち出来んかったのが運のツキ…やったなぁ!」 と、言ってみせるアツコ しかし、モモの口から出た言葉は、 「…チャンスを潰した、と思ってるみたいだけど…それはこっちの計算通り…!」 奇策でアツコを怯ませたものの、追い討ちが出来なかったモモ… さぞかし悔しがっているかと思いきや、 「…計算通り!」と、いうモモの発言… 「…ほう…言うてくれるなぁ…。じゃあ、その『計算通り』とやらを見せてもらおか!」 と、言い終わるが早いか、モモ目がけて間合いを詰めにいこうとするアツコ! だが、モモは、 「…ねぇ…何か匂わない…?」と、アツコに問い掛ける… その場にいた全員が、よく匂いを嗅いでみる… なんか微かにマッチ棒のような匂いがする… 「…火薬の匂いだ!」 アツコが答える 「…ご名答♪…さっきアタシが投げた玉は、時間がくれば殻が溶けだすものだったの…。 モチロン、中身は火薬…。今、この辺の空気は、火薬が微量だけど含まれてる…」 「…それがどうしたんよ?」と、じれたアツコが聞いてくる… 「…今、この空間はモモのステージ、ってコト!…さぁ、お楽しみの、始まりよ!!」 一瞬の隙を作り出すことに成功したが、間合いを取られ、アツコを倒すチャンスを逃したモモ… だが、モモ曰く、 「お楽しみはこれから!」だと言う… 暗器とともに投げつけた玉の中に、火薬を忍ばせていたモモ… 周囲の空気には火薬の粉が充満している… 「…ここで、一つ問題なんだけどぉ〜」 「…何よ?」 「…火薬の傍で火花を起こしたら、ど〜なるでしょ〜か?」 「…アホかあんた!?…火ぃ点くに決まってるやろ!?」 「…ご名答♪…今まで黙ってたけど、実は… アタシの刀って、非常に火花が飛び易い材質で出来てるのね♪ …ってコトは…?」 「…何や?言いたい事あったら早よ言いや!」 「…この、火薬の充満した場所で、もうチャンバラは出来ない、ってコト☆」 モモの答えに、一瞬言葉を失ったアツコ… まさか、そこまで読んでいるとは思わなかっただろう… 「…だから、これからはモモちゃんの楽しいショータイムの始まりよ!」 …モモがニヤリと微笑む… 火薬の充満した場所では、火花が飛ぶと引火してしまう… それを足枷に、モモはアツコの剣術を封じ込めた! 「…さぁ〜て、ここに取り出しました暗器…やっぱり火花が発生しやすい材質で出来てます!」 そう言うと、アツコの方を向いて、ニヤリと微笑むモモ… 「…では、It's Show Time!!」 と、言うや否や、次々とアツコ目がけて暗器を投げつけるモモ! 先程の玉よりも格段に早い速度だ! この場で暗器を忍者刀で弾くのは、空気中の火薬に引火する恐れがあるので出来ない… 仕方なく、その暗器の数々を『稲葉上』、『大開下』、『稲葉下』で次々と躱し続けるアツコ… だが、次第に危うい場面も出てきた… (…このままではマズい…!) そう思ったアツコは頭をフル回転させた… そして、今までになかった名案が閃く! 「…モモ、あんたええ気になってるようやけど…それも、もう終わりや!」 と、モモに告げるアツコ… 「ホラホラ!ず〜っとモモのターンだよ!」 と言いながら、暗器を次々と投げつけるモモ… 防戦一方のアツコだったが、名案が閃く! (…そのためには、多少なりと、モモの隙を作らんと…) そう考えたアツコは忍者刀を手に取る… その様子を見て、 「…アツコさん!さっきも言ったじゃないですかぁ〜?それで弾くと引火するって!」 と、忠告するモモ… 「…これは弾くために持ったんやない…」 「…じゃあ、何のつもりで持ったんですかぁ〜?」 「…それはやなぁ…、こうや!!」 いきなり、手に持った忍者刀をモモ目がけて投げつけるアツコ! 大きく横回転しているので、モモも大きく躱さざるを得ない… そこに一瞬の隙が出来た! すかさず間合いを詰めるアツコ! 「…刀で弾いて火花が出るなら、答えは簡単…殴ればいい!」 得物・忍者刀を捨てて、拳一つの勝負に賭けたアツコ! アツコの投げた忍者刀を避けて、体勢を崩したモモに飛びかからんとする! モモもアツコに気付き、後ろへ飛ぶように逃げるが、アツコの追いかけるスピードの方が、僅かに速い! あと5mのところまで、間合いを詰めたアツコ… だが、モモを追いかけるアツコの前に、突如、視界一面に大きな火柱が立った! 急に止まれず、顔を覆って火柱の中に飛び込んでいったアツコ! その勢いのまま、地面を転げ回り、消火する… そして、アツコが消火を終えた頃、首元に金属の冷たさを感じた… それを何か悟ったアツコは静かに両手を挙げる… 「…大したモンや!…ウチの負けや…」 と、潔く敗北を認めるアツコ… それに対して、 「…本気を出されてたら、アタシの方が負けてました…」 と、答えるモモ… 「…ま、そういうコトにしとこか!」 と、アツコは頭を掻きながら言った その一部始終のやりとりを見て、ユーコが 「…勝者…モモ!」 と、宣言した! アツコとの手合わせに、まさかの勝利を収めたモモ… その勝利を見守っていたりしゃこ達が祝福する… 「…モモ!すごかったよ!」 「…ホント!カッコよかった!」 などと、りしゃこ達は手放しで喜ぶ… だが、モモは、 「…まだ、あの人は手の内を隠していたから勝てたのよ」 と、言った… 「…どうして?」と聞くりしゃこ達… 「…アタシは『術』を使ったけど…あの人は使わなかった…」 「…ウソでしょ!?」 「…ウソじゃない…。多分、『別の相手』にも手の内を見せたくなかったのよ…」 「…『別の相手』!?」 りしゃこ達がつい、声をあげてしまう… 「…しっ!…全員後ろを振り返っちゃダメだよ!」 と、モモが注意する… 「…みんなも聞いてるでしょ、内部に『裏切り者』がいるんじゃないか?って話…」 と、モモが問い掛けると、りしゃこ達は黙って頷く… 先日、富豪のアリ氏が自分のメイドを、内部調査のためにハロモニア城に送り込んだのはみんな知っていた… 「…手合わせしてる最中に気づいたんだけど…みんなの後ろの『物見の塔』から、不自然な光がチカチカ見えたの…」 アツコとの手合わせには勝ったが、本気を出されていなかった…というモモ… りしゃこ達は首を傾げるが、モモが言うには、 「『物見の塔』からアツコの様子を伺っている『奴』がいる」のだ… 恐らく、それが原因でアツコは本気を出さなかった…と、モモは推測した… その推測が当たっているか確かめるべく、モモはユーコと話をしてるアツコに近づいた… 「…あの、アツコさん…。知ってたんですか?」 「…ああ、例の『裏切り者』やろ?…さっきから覗いとるんが丸分かりや!」 やはり、モモの推測は当たっていた… 「…じゃあ、早く捕まえに行かないと…」 「…それやったら大丈夫や…。ウチの『弟子』に行かせとるから!」 「…『弟子』ですか?」 「…そや!自分らもよく知ってる娘や!けっこういい素質持っとるから期待してんねや!」 (…誰だろう?)