そして、『魔導大会』の前日を迎えた… 明日から一週間、勝ち抜きのトーナメントが始まる… 明日の事を考えて、この日はまるまるオフにする―と、ヤグーからお達しが出た… それを前の日に聞いていたりしゃこ達は、 (明日、何をしようか?)と、ずっと考えていた… 最後の休息… ひょっとしたら、ハロモニア世界が『破壊』されたとしたら、ホントの最後の休息にも成りかねない… だから、悔いが残らないよう過ごそう…と、そう考えると、りしゃこ達はなかなか寝付けなかった… そして、りしゃこ達はいかに最後の休息を過ごしたのだろうか…? 最後の休息… サキはいつものように朝6時に目を覚ました しばらくベッドでじっとしてから、ゆっくりと身体を起こす… サキの場合、既にやる事は決まっていた 明日のために、最終調整をすること… 昨日の時点で、りしゃこやミヤビに誘われてたが、断ったのだ… ホントは3人でゆっくりしたかったが、みんなをまとめる『キャプテン』という立場上、やるべきことをやっておきたかったのだ… 特に、治癒の『白魔法』の修得をしておきたかった… 今度の『魔導大会』では過酷な勝ち抜き戦… 怪我や体力を消耗した仲間にとって、サキの『白魔法』は心強い支えになるだろう… 特に、『魔力』を解放した場合の、りしゃこの身体への負担は激しいものが予測出来る… そのためにも、サキはやれることはやっておきたかったのだ― りしゃこ達もそんなサキの気持ちを察してか、サキを無理に遊びに誘うことはしなかった… (…りしゃこ、ミヤビ…ゴメンね…) 支度をしてる間中、サキの頭の中は、二人への申し訳なさで一杯だった そして、サキは、みんなより一足早く、最後の休息を過ごすことにした みんなに黙って、一人で最終調整に向かうサキ… サキが向かった先は『魔術師の館』― 一人で集中して魔法特訓をするには、うってつけの場所だ… 朝一番なら、誰の邪魔も入らないだろう… 許可証を提示して館内に入り、一番大きい訓練場に足を踏み入れた… だが、そこには先客が… 「待ってたわよ♪」 訓練場の真ん中で、モモが立っていたのだ… まさか、モモがいるなんて思ってもなかったサキは、しばらく固まっていた… 硬直したままのサキに近づいていくモモ そしてサキの頬を軽くつまんで引っ張り上げる… 「…あ、あいたたた…!…ちょっと、モモ!何すんのよ!」 「お仕置きよ、お仕置き♪何もアタシに黙って、一人で特訓に行くコトないじゃない!?」 と、珍しく真顔でモモがサキを見つめる… その顔つきにドキッとするサキ… そして、サキをつねっていた手を離すと、くるっと後ろを向いたモモ… 「…アタシ達、コンビなんでしょ?どうして何でも一人で背負い込もうとするの? …コンビの良いところはね…、辛い時は二人で辛さを分かち合って、 嬉しい時は二人で二倍、喜びあえるコトないじゃないの!?」 と、サキの肩をポーンと叩いてみせる… モモに言われて気付かされたサキ… いつの間にか、自分の心の中の、見えない重圧に潰されそうになっていた… 『キャプテンだから…』という気負いが、それに拍車をかけた… だが、今までを振り返ってみれば、サキ一人の“力”で解決した事って、あっただろうか… 否、一人じゃなかった… いつも側に、りしゃこが…ミヤビが…そして旅で出会った仲間達がいて、初めて色んな出来事が解決出来たのだ… 辛い時は、みんなで助け合い、嬉しい時は、みんなで喜んだ… その『事実』を思い出した… もう、迷わなかった… サキはモモの手を掴んで、ぎゅっと握りしめ、 「…これからも、よろしくね!モモ…」 と、言った… 「…何クサい事言ってんの!」 と、言いつつ、サキの胸をドーンと軽く突いてみせるモモ… ただ、その表現は、どこかはにかんでいた… 改めて、互いの気持ちを確認し合ったサキとモモ… だが、二人のすぐ背後から、 「…全く、恥ずかしいくらい…クサいわね…」 と、声が聞こえてくる… 振り返ると、そこにはまた一人… 「…責任感が強いのがサキの取り柄かも知れないけど… 何でも一人で背負い込むのはよくないわね!」 「…メーグル!」 「…ワタシだけじゃないわよ!」 と、メーグルがさらに後ろの扉を指差すと、突然、扉がバンッ!!と勢いよく開いた… 「…あら?ひょっとしてアタシ達は仲間外れかしら、マイミン?」 「…んなわきゃねーだろ!?オレ達『EXーZYX』の絆は永遠なハズだぜ、エリカン!」 …騒がしいのが二人、帰ってきた… 「…マイミン…エリカン…」 「魔法の特訓すんだろ?…オレも修行の成果を試してぇから、少し付き合えや!」 「…どうして素直に『手伝ってあげる』って言えないのかねぇ…」 「…全く!でも、そんなマイミンが一番可愛いよ!」 「…うるせぇ…」 …何はともあれ、EXーZYXが揃って最後の休息を過ごすことになった… 最後の休息の日―朝 柔らかい朝の日差しがカーテンの隙間からこぼれ、 その光が、一人の少女―ユリーナの顔にかかり始める… 「…う、ううん…」 目覚めが悪いのか、朝の日差しがまぶしいのか、しかめっ面をしながらユリーナは目を覚ます… それでも、今日は爽快な朝になるハズ、だった… だが、いつもと違ったのは、丸まった姿勢のユリーナの背中に、違和感があること… やけに、生ぬるい… ぼんやりとした頭をゆっくりと回転させて、身体の感覚を少しずつハッキリさせていく… やがて、背中の生ぬるい違和感が、人のものであることに気がついた 耳を澄ませば、息遣いも聞こえてくる… 誰かがユリーナのベッドに潜り込んでいるのだ! 先程の寝起きの悪い状態から一転、バッと後ろを振り向くユリーナ… その振り向いた先には、幸せそうな顔をしたチナリが… ユリーナが起きたことに気がつくと、 「…ん、…ふぁぁ〜。オハヨ、ユリー♪」 と、笑顔のチナリが… …だが、次の瞬間、その笑顔が恐怖に怯えた顔に変わった… 最後の休息の日―朝 柔らかい朝の日差しがカーテンの隙間からこぼれ、 その光が、一人の少女―ユリーナの顔にかかり始める… 「…う、ううん…」 目覚めが悪いのか、朝の日差しがまぶしいのか、しかめっ面をしながらユリーナは目を覚ます… それでも、今日は爽快な朝になるハズ、だった… だが、いつもと違ったのは、丸まった姿勢のユリーナの背中に、違和感があること… やけに、生ぬるい… ぼんやりとした頭をゆっくりと回転させて、身体の感覚を少しずつハッキリさせていく… やがて、背中の生ぬるい違和感が、人のものであることに気がついた 耳を澄ませば、息遣いも聞こえてくる… 誰かがユリーナのベッドに潜り込んでいるのだ! 先程の寝起きの悪い状態から一転、バッと後ろを振り向くユリーナ… その振り向いた先には、幸せそうな顔をしたチナリが… ユリーナが起きたことに気がつくと、 「…ん、…ふぁぁ〜。オハヨ、ユリー♪」 と、笑顔のチナリが… …だが、次の瞬間、その笑顔が恐怖に怯えた顔に変わった… 寝起きを襲われたユリーナは、布団を頭からすっぽり被ってしまった… 罪悪感を感じつつ、 「ね、ねぇ…ユリー?」 と話しかけるチナリ… だが、返ってきた答えは 「…もぉ…ひどい…信じられない…」 という言葉… 「…ウチ…寝起きの顔ひどいのにー…見られたくなかったのに…ヒーン…ヒーン…」 と、すっかりすねてしまったユリーナ… 今まで見たことのないユリーナのすねた姿が見れたチナリ… その仕草が実に可愛らしい… だが、機嫌を損なわれたままだと、今日の計画… 『ユリーナと丸一日、二人っきりで過ごす』 ことが出来なくなってしまう… 朝から前途多難なスタートとなった… 見られたくない寝起きの顔を見られてすねてしまったユリーナ… チナリとしては、何とかしてユリーナの機嫌が良くならないと、 チナリが思い描いていた、二人っきりで休息を過ごす計画がパァになってしまう… そこで、チナリがとった行動は… 「…ねぇ、ユリー?」 「…何よ?」 「…見て…」 「…!や、やだぁー!…何やってんのー!」 と言うなり、再度、頭から布団をすっぽり被ってしまった… 「…ちょっと…チー、何でハダカなのぉ…」 「…だってぇ…アタシ…ユリーの恥ずかしいところ見ちゃったから… お詫びにアタシの恥ずかしいところ…見せようと思って…」 「…変態…」 ユリーナが呟いた一言に、かなりショックを受けたチナリ… 「…そんなぁ…アタシ、ユリーのために脱いだのにぃー!…ひどい…シクシク…」 今度はチナリが泣き出してしまった… 頭から布団をすっぽり被っているユリーナの耳にも、チナリのすすり泣きが聞こえてくる… 傍から見れば、異様な光景に違いない… が、タイミング悪く、部屋の扉が急に開いた― 寝起きでひどい顔つきのユリーナと、何故かハダカのチナリ…という異様な修羅場… そこへ、タイミング悪く、部屋の扉が開いた! 「…ユリー、どうかしたのか?とゆいたい」 扉を開けたのはマァだった… そのマァも、布団を被ったユリーナと、何故かハダカのチナリが一緒にいる光景を見て絶句する… また、マァの後ろから 「…ねぇ、ユリー…」 と、ヒョコっと顔を出したマイハも恥ずかしがって、すぐ顔を引っ込めてしまう… 新たな二人の『招かざる客』にハダカを見られてしまったチナリ… 「…いやぁぁぁー!」 と叫んで、恥ずかしさのあまり、ユリーナの布団へ潜り込むが、 今度は、ハダカのチナリが飛び込んできて、 「…きゃあぁぁー!」 と、布団から飛び出るユリーナ… そのユリーナも、マァやマイハに寝起きのひどい顔つきを見られて、うずくまってヒーンヒーン…と泣き出してしまう… すっかりカオスの空間が出来上がってしまった… すっかりカオスの空間になってしまった部屋に立ち尽くす4人… (何とかして、この雰囲気をどうにかせねば!)と、考える4人… とりあえず、 「…何でこんなことになったのか…とゆいたい」 と、尋ねるマァ… ユリーナが、 「…だって寝顔を見られて恥ずかしくて…布団を被ってたの…」 チナリが、 「…ユリーの恥ずかしいところ見ちゃったから…アタシの恥ずかしいところ、見せたの…」 と、告白する… 二人の言葉に思わず吹き出してしまうマァとマイハ… 少し雰囲気が和んだところで、 「…で、何でマァはここに来たの?」 と、ユリーナが聞く… 「…実は、マイハと一緒に街に行こうと思って…せっかく元の姿に戻ったんだし…」 と、マァが答える… 少しもじもじしながら、マイハが頷く… 「…あ、それいいね!」 と、ユリーナは即座に賛成する… が、面白くないのはチナリ… せっかくの計画が音を立てて崩れていく… 騒ぎも一段落し、街へ繰り出そうとする4人… みんながはしゃいでる中、チナリだけは不機嫌だった… ユリーナと二人っきりで休日を過ごす計画が、マァとマイハが増えて、4人になったからだ… 別にマァやマイハが嫌いなワケじゃない…むしろ、同じ妖精の森の仲間だ… ただ、今日一日だけは…邪魔をしないで欲しかった… そんな中、マァ達と能天気にはしゃぐユリーナに、チナリは 从#´∇`从<イラッ! と、キテた… その欲求不満の捌け口として、こっそりユリーナをつねりあげるのだった… そして街中― まだ慣れないハロモニアの街中を、4人は地図を片手に歩いていく… マァはマイハに向かって 「…どこか行きたいところはないか?とゆいたい」 と、尋ねてみる… 「…服やアクセサリー…見に行きたい…」 と、答えるマイハ… そういえば、昔、マイハは人間の街の服装にすごく興味を持ってたことがあったのを、3人は思い出した… 今までは、動物の姿で過ごしていたから、せっかく街に立ち寄っても好きな服を着ることがなかった… そんなマイハの意を汲んで、4人は、まず、服屋巡りをすることにした そして… ミヤビはぐっすりと眠っていた… ずっと昨晩から、明日、何をしようか?と考え過ぎて、夜更かししてしまったからだ… その、ぐっすりと眠っていたミヤビだが、身体の振動を感じて嫌々ながら目を開ける… 視界に飛び込んできたのは、ちょっぴり不安げな顔をしたりしゃこ… 「…みやー、起きてー」 と、ミヤビを揺さ振っていたのだ… うっすらと、今日が最後の休日ということを思い出して、ミヤビは眠い目をこすりながら起きた… 服を着替えている間、りしゃこに、 「…ねぇ…みんなはどうしたの?」 と尋ねてみる… りしゃこが寂しそうに、 「…みんな…いないの」 と、返事をする (…みんな…朝早くから出掛けたのかな…?) と、考えながら、支度を済ませる… そして、りしゃこを連れて、食堂へと降りていった だが、その食堂にはみんなはいなかった… その代わり、今までこの食堂で顔を合わすことのなかった人物と出くわした… みんなが出ていったあとの食堂を訪れたりしゃことミヤビ… 当然、みんなの姿はそこになかった… が、今までこの食堂で顔を合わすことのなかった人物と出くわした… 「…お!久しぶりじゃ〜ん♪おはよう!」 ヤグーだった 一応、ご厄介になってる手前、無視する訳にもいかない… 「…おはようございます!」と二人揃って挨拶をする… 「ん〜♪元気がいいねぇ〜♪」 と、ヤグーは朝からハイテンションだった… そこへ、急にヤグーから 「ねぇ、二人とも!今日、どっか行きたいところはない?…お姉さんが…連れてってあげる!」 と、二人の休日の支援を申し出たのだ… あまりに突然だったので、ポカーンとしている二人… そんな様子を見たヤグーがポツリと、 「…ほら、二人はすごく頑張ってるじゃん?…ここにきて数ヶ月経ったのに… オイラ、みんなに何もしてあげてないし…だから、罪滅ぼしに…と、思ってさ!」 と、ヤグーは明るく振る舞っているが、どことなく寂しさも入り交じった感じがした… りしゃことミヤビが顔を見合わせる… 何も言わなくても、互いの気持ちがわかる… 二人の出した答えは… 「よろしくお願いします!」だった… りしゃこ、ミヤビに珍しくヤグーが同行することになった 出発前にヤグーが 「…ところでさ、二人が行きたいトコってない?」 と、リクエストを聞いてきた 「…うーん…特に…」 と、答えたミヤビ 「…アタシ…行きたいところがある…」 と、答えたりしゃこ 「…へぇ〜!…で、どこなの?お姉さんが連れてってあげる!」 と、ヤグーが言うと、 「…あの…りーちゃん…ゴニョゴニョ…」 と、ヤグーに耳打ちをする… それを聞いたヤグーは、 「…へ?」 と、驚くも、 「…うーん…わかった♪…ちょっと難しいけど…何とかする♪」 と、答えた… ミヤビが、 「…ねぇ、りしゃこ…あなた、どこ行きたい!って言ったの?」 と、聞いてみたが、 「…うん、ナイショ♪」 と、りしゃこは少しはにかんで答えるだけだった…