オ・カール一家が去って、りしゃこ達もベリーナイスを後にすることにした 

結局、戦力補強がうまくいかなかったので、滞在する理由が減ったのだ 

また、モモが『夜の仕事』をしてくれたおかげで資金的なゆとりが出来て、次のキュート地域に旅立つ準備が出来たのだ 

「ねぇ〜?これからど〜するのぉ〜!?」 

今までの居候の立場はどこへやら、すっかり仲間のポジションに収まったモモがサキに訪ねる 

「とりあえず、この森を抜けた方が近道だと思うの」 
と、サキが地図で森の位置を指す 

サキの指した場所をみて、モモが血相を変えて大反対した 
「そこは『妖精の森』。だけど、今では『迷いの森』なのよ〜」 

モモが言うには、最近になって妖精の森で遭難者が多発してると… 

ただ、大人のサキを説得できても、「妖精さんに会いた〜い!!」と駄々をこねるりしゃこを説得するのはさすがのモモでも無理だった… 

りしゃこ一行は妖精の森へと進路をとった―


モモの助言をスルーして妖精の森へ向かうりしゃこ一行 

かく言うモモも内心、妖精には興味があった。むしろ、誰よりも妖精さんに会いたい、と思っていたのだ― 
わざと、逆の助言をして妖精の森に進路をとらせてしまったモモ、さすがプロである― 

森の入り口の段階で、妖精話で盛り上がるりしゃこ達 
「ねぇねぇ、妖精さんってどんな格好してるのかな?」とミヤビ 
「いろんな妖精さんがいるらしいよ」とサキ 
「けっこう美しい、って言うよね〜」と再びミヤビ 
「可愛い妖精さんがいいもん!」とりしゃこ 

「でもぉ、ムキムキマッチョの妖精さんだったらヤですよぉ〜ウフフ」とモモ 

一瞬、想像して凹んでしまうりしゃこ達 

「モモ〜!そんなこと言わないでよもう!」とせっかくの妄想が台無しになり、ちょっぴりご立腹のミヤビ 
「ホント、夢が無いわねぇ〜」とサキ 

「でも強そうだもん!」とマッチョもまんざらでもないりしゃこ 

そんな調子で妖精の森に入り込んだ―


妖精の森は『迷いの森』のイメージと違って、木漏れ日の差し込む、おとぎ話に出てきそうな森だった 

妖精さん見たさで森に入ったりしゃこ一行にすれば、妖精どころか動物一匹すら出て来ない森にはガッカリしていた 

「…妖精さん、出て来ないねー」 
「…うん」 
「せっかく楽しみにしていたのにー」 
「モモもですぅー」 
「あんたは反対しとったやん!?」 
「えへへ、やっぱりモモも見たかったですよぉ〜」 

そんなおバカな会話の中、ずっとりしゃこが黙り込んでいる― 

異変に気付いたミヤビが 
「りしゃこ、どうしたの?気分が悪いの?」と問いかけるが、 
「…ううん」と首を横に振る 

「お腹が空いたの?」とサキの問いかけにも首を振る 
「じゃあ、どうしたの?」とモモが優しく問いかけると、我慢しきれなくなって 
「…りーちゃん、おしっこ!!」と恥ずかしそうに言った…


ゴゴゴゴゴ… 

馬車から降りて用を足そうとしたりしゃこだったが、突然の地鳴りに少し先走ってしまった… 

ようやく地鳴りが止んで、あらためて用を足して、ホッと一息つくりしゃこ 

と、その時、茂みががさがさっと揺れた 

尻もちをついてアバるりしゃこ 

だが、茂みから出て来たのは、可愛いらしい、栗鼠のような生物だ 

思わず、その栗鼠のような生物の後を追いかけるりしゃこ 

りしゃこの帰りを待ちわびるサキ達 
あまりに遅いのでりしゃこを手分けして捜すことにした―


栗鼠のような生物を追いかけているうちに、馬車から離れてしまい、帰り道がわからなくなるりしゃこ― 

街とは違って、道を尋ねることは出来ないし、目印になる建物もない… 

見渡す限り、樹木ばかり… 
心細くなり、サキ達の名前を叫ぶが返事が返ってこない… 

途方にくれて座り込み、泣きべそをかくりしゃこ― 



どれくらい、独りぼっちで泣いたのだろう… 

ふと、気がつくと、りしゃこが追いかけていた栗鼠のような生物がりしゃこの傍に近寄っていた 

すがるような思いで栗鼠のような生物に手を差し出す― 

栗鼠のような生物は、しばらくはりしゃこを警戒していたが 

その後、りしゃこの肩の上に飛び乗り、座り込んだ 

懐いたのだ 

顔をすり寄せてくる栗鼠のような生物 

和んでいたのもつかの間、再びりしゃこの前に予期せぬ来訪者が現れた―


茂みから、一際大きな物音がする― 

さっきの生物の比ではない… 

りしゃこの肩に乗っていた生物もりしゃこから飛び降り、再び茂みの中へ消え去ってしまった… 

また独りぼっちになり、不安が募る 

茂みからの物音がだんだんりしゃこに近づいてきているのがわかる… 

今までりしゃこは魔法を生きてない対象物に使ったことはあっても、生き物相手に使ったことはない… 

誰よりも寂しい思いをしているから、誰よりも優しい子なのだ 

茂みの向こうの生き物に魔法を使うのはしたくない― 
でも、使わなきゃ自分の身が危ないことは本能でわかる― 

初めての実戦での魔法に足元が震えるが、りしゃこは決心した 



茂みからの物音がもうすぐ側まで来ている 

ようやく物音の主が顔を出した


茂みから顔を覗かせたのは全身毛むくじゃらのゴリラみたいな化け物だった 

その毛むくじゃらの化け物がりしゃこに無防備に近寄ってくる 
その威圧感にアバってしまうりしゃこ 

さっき用を足したばかりなのにおもらしをしてしまいそうだ… 

だが、りしゃこは無我夢中で化け物に火の玉の魔法を放つ― 

化け物に一直線に飛んでいった… 

成功した! 

見事に化け物にヒット! 



したかに思えたが、なんと化け物はりしゃこの魔法を素手で払いのけた 

打つ手がなくなったりしゃこ。思わず脱力して、その場にへたり込む… 

化け物は一歩、また一歩とりしゃこに近寄ってくる… 
もうダメだ…りしゃこに大声で泣き叫ぶ暇すらなかった 

化け物がりしゃこの頭をむんずと掴む―


りしゃこの頭をむんずと掴んだ化け物 

りしゃこの頭の中では、きっとこの化け物が、りしゃこに味噌かマヨネーズでもつけて、頭からボリボリ食べると思っていた 

このままだと死んでしまう…ママにも会えなくなる… 
頭を化け物に掴まれたまま、りしゃこは大声で泣き叫ぶ 

すると、化け物が予期せぬ行動に出た 

りしゃこの頭を掴んでいた手を降ろし、りしゃこをぎゅっと抱き締める― 

泣きじゃくっていたりしゃこが化け物の胸に収まった格好だ 

化け物を通じて伝わってくるぬくもり― 

ふと、りしゃこは 
「…ママ…」と口にした… 
それを聞いた化け物が以外なことに 
「…ママが恋しいのか?とゆいたい…」 
と人間の言葉をしゃべるではないか! 

呆気にとられるりしゃこ…


人間の言葉をしゃべる化け物にびっくりしていれりしゃこに対し、 
「…ちょっと待てとゆいたい」といって、抱きつくりしゃこを一旦離し、なにやら呪文を唱える化け物… 

すると、一瞬、化け物がまばゆい光に包まれたかと思うと、あっという間に人間に早変わりした― 

突然の出来事にまたもアバってしまうりしゃこ 

「びっくりしたか?とゆいたい」と元・化け物 

うなずくりしゃこ 

続けて「…ウチの名前はマァ=サ。妖精の一族。今後ともよろしくとゆいたい」と元・化け物が自己紹介をした 

はからずも、『妖精さんに会いたい』という希望が叶ったりしゃこ。ご丁寧にムキムキマッチョの条件も満たしている… 

「…迷子になったのか?とゆいたい」とマァが尋ねると、黙ってうなずくりしゃこ 

「ちょっと待つがいい、とゆいたい」 
いつの間にか、マァの傍に例の栗鼠のような生物が待機していた 

「マイハ、頼んだ、とゆいたい」というと、栗鼠のような生物・マイハは茂みの中に再び消えていった― 

「大丈夫、とゆいたい」といって、また優しくりしゃこを抱き締めるマァ


一方、りしゃこを手分けして捜しているサキ達 

お互い声を掛け合いながらの作業だったので、りしゃこのようにはぐれることはなかった 

「どう?手掛かりは?」 
「…ううん、何にも…」 
「ホントにどこ行ったのかしら?」 
「見つけたら、モモがくすぐりの刑にしてやるんだから!」と重い気分を紛らわせながら捜索作業を続ける 

と、3人の前にマイハが現れ、手招きをするではないか― 

道をひょいひょい進むマイハの後をついていく3人


栗鼠のマイハの後をついていくと、やや大きめの広場で、りしゃこと見知らぬ女性が抱き合っているのを発見する3人… 

りしゃこを見つけた嬉しさから、思わずミヤビが 
「りしゃこ〜!!」 
と叫ぶ 

ミヤビに気付いたりしゃこも顔をくしゃくしゃにして「みや〜!!」 
と叫ぶ 

そして抱き合って、大声で泣き出す… 

サキとモモは敵ではないと思ってはいるが、用心のため、女性に素性を尋ねた 

マァが妖精である、と明かすとサキとモモは不謹慎にも 
「プッ!」 
と吹き出してしまった… 
みんなで会話してたムキムキマッチョの妖精が、本当に実在してたからだ… 

みるみるうちに機嫌の悪くなるマァ… 

やがて 

从#゚ー゚从<お前ら、マヨネーズをつけて頭からボリボリ食べてやるぞ!とゆいたい 

とへそをまげてしまった…


へそをまげてしまったマァ 
申し訳ない気持ちのサキとモモ 

そんな時、 

ぐぅ〜〜ぐぅ〜〜〜〜〜 

と大きな腹の虫が聞こえてきた… 

サキとモモは思わず 
『誰だ!?ここで石臼をひいているのは!?』 

とボケようとしたが、味噌をつけられて、頭からボリボリ食べられたくなかったので必死にスルーした… 

从o゚ー゚从<…腹がへったとゆいたい 

とマァが言ったので、絶好の仲直りの機会だと思い、一緒にお昼ご飯を食べることにした―


早速、お昼ご飯を用意することにした 

妖精のマァにすれば、街の食材などは珍しいものばかりだった… 

いざ、ご飯となると、人一倍どころか二倍、三倍の食欲のマァ… 

あっという間に一日分の食料がマァの胃袋に消えていった… 

すっかり機嫌が良くなったマァが自分のこと、森のことを話し出す


マァが言うには、この『妖精の森』には、複数の妖精の種族がお互いの利点を活かしあって生活してる 

マァの種族は魔法よりかは身体能力に優れているため、守人みたいな役割だと言う 

また、森に入ってきた人間に危害を加えるつもりがないので、わざと化け物の姿に変化しているのだ―と 

「へぇ〜!わたし、てっきり化け物の方が本物って思ってたの!」 
とうっかり本音を言ってしまったモモ 



その直後、モモにマヨネーズが塗られたのは言うまでもない…


気を取り直して、再び話し出すマァ 

ただ、最近では妖精の中でも人間の生活に興味を示して、人里に降りてくるものも少なくないと言う 

かく言うマァも、人間の食べ物に興味があり、一度は人間の生活をしてみたいのだ―と熱く語る 

「別にいいんじゃないのぉ〜?」とマヨネーズを拭きながらモモが言う 

「そうはいかない、とゆいたい」とマァが答える 

なんでも、マァは意外なことに、一族の長の娘だったのだ― 

「じゃあ、さしずめマァ=サ王だよね、マァ=サ―王…」 

華麗にギャグが滑ったサキ… 



その直後、サキの頭の上に味噌がのっけられたのは言うまでもない―


とりあえず、長に一度、人間の生活をしたい―と直訴することにしたマァ 

お昼ご飯のお礼に、マァはりしゃこ達を一族の里に案内するという 


マァが道案内をして、馬車がそのあとを追う― 

10分ぐらい歩いたところで大きな木が一本だけ生えてる原っぱに到着した 

マァが呪文を唱えると、大木の根っこの部分に大きなな穴が浮かび上がってきた… 

「こっちだとゆいたい」 
りしゃこ達を案内するマァ 
穴をくぐり抜けると、急に視界が拡がった― 

先程までの森と何ら変化はないが、今までなかった石畳の道が続いている 

ずんずんと先へ進むマァ 
後をついていくりしゃこ達 

やがて、村に到着した


村に到着したりしゃこ達だが、妖精の姿が見当たらない― 

マァ曰く、「警戒してるから出てこない」のだそうだ 
構わずマァは村の奥へ進む 
ほどなく、ひと回り大きな屋敷が出てきた 

「長の家だ。入ってくれとゆいたい」 
と、りしゃこ達を招き入れるマァ 


大広間には一族の長がマァを待ちかねていた 

「ただいま、とゆいたい」 
「お帰り、とゆいたい」 

長は思いの外、りしゃこ達を快くもてなしてくれた 

とりわけ、恥ずかしがり屋のりしゃこをいたく気に入ったようだ… 

りしゃこをひざの上にのせてやる長… 

その時、ふと、りしゃこの首にかかっていたペンダントに目がいった… 

急に長がマァに向かって、「この娘さんは誰の子だ?とゆいたい」 
と尋ねる 

長がペンダントに目がいったのを知っていたサキが、素直にりしゃこの生い立ちから今に至るまでを話した… 

すると長は 
「マァ、この子を守ってあげなさい、とゆいたい」 とマァに命じた 

長の言葉に戸惑いを隠せないマァとりしゃこ達―



長はマァ達に語り始めた… 
「この子はハロモニア王家に縁のある子だとゆいたい。胸のペンダントがその証だとゆいたい」 

一同は驚きを隠せなかった…。 

サキは、りしゃこがハロモニアの重要人物の子供とは聞いていたが、王家の子供とは思ってもいなかった… 
言われてみれば、ちょっとアフォな顔立ちも凛々しく見えてくる― 

ミヤビは何だか寂しかった…。ずっと妹のように暮らしてきたりしゃこが、まるで自分と住む世界が違う人間だと思うと胸が痛かった… 

二人とは正反対に俄然ヤル気の出てきたモモ… 

思わぬかたちで人間の生活をすることとなったマァ… 

そして、長の提案で、村に一泊してから次の目的地に向かうことにしたりしゃこ一行…



長の粋な計らいで、妖精の村で一泊してから次の目的地に向かうことにしたりしゃこ一行 

夜はちょっとした宴になった 

はじめは警戒していた妖精達だったが、元来、陽気でお祭り好きなので、宴は大いに盛り上がった 

そしてその夜遅く… 


ミヤビはなかなか寝付けないでいた― 

今まで妹のように可愛いがってきたりしゃこが、王家の血縁者と知って、距離を感じてしまったのだ― 

物思いに耽るミヤビ… 


しばらくして、ミヤビは背後に気配を感じた 
いつの間にかサキがいた― 
眠れないミヤビを心配して…そして自身もりしゃこの知られざる血縁の秘密になかなか寝付けなかったのだ― 

同じ気持ちとは思いつつも、サキはミヤビにりしゃこの件を聞いてみた― 

ミヤビは頭の中で考えていたことをサキに打ち明けた― 


しばらく沈黙が続く… 

そんな二人の背後にりしゃこが立っていた―



寝付けないでいる二人の後ろにりしゃこが立っていた 
寝付けないのはりしゃこも一緒だった… 

幼心にながら、自分が王家の血縁者だと知って、ミヤビ達と離ればなれになるんじゃないか…?と思うと眠れなかったのだ… 

急に二人がいなくなり、心配してついてきたりしゃこ… 

だが、いつの間にかりしゃこのそのまた後ろにはモモが立っていた… 

「…もぉ〜、明日は早いから〜、もう寝なきゃダメですよぉ〜ウフフ」 
と能天気におどけてみせる… 

ちょっとみんなが気が軽くなったところで続けて言う 

『王家の血筋かも知れないけど、りしゃこはりしゃこだよね?』 

頭のモヤモヤが吹き飛んだ3人… 

そうなんだ 

今、目の前にいるのは、自分達のよく知ってる 
泣き虫で 
怖がりで 
恥ずかしがり屋で 
甘えん坊の 
りしゃこなんだ… 

いつまでも、りしゃこなんだ… 

たとえ、王家の血筋であっても、3人で暮らした日々は変わらない― 

いつの間にか、3人、いや4人の顔は笑顔に変わっていた―



素晴らしい朝が来た 
希望の朝だ 

だが、りしゃこ一行もマァも思い切り爆睡中である― 
りしゃこ達は寝付けなかったせいで 
マァは酒の飲み過ぎで… 

マァの友達の栗鼠系妖精のマイハに起こされ、眠い目をこすりながら支度する 

りしゃこはいつになく上機嫌だ 
ミヤビとサキも珍しくハイテンションだ 

唯一、モモだけはくさいセリフを吐いてしまい、ちょっと後悔している 


マァも長とのしばしの別れを告げて、妖精の村を旅立った―



〜次回予告〜 
(エヴァンゲリオン風に) 

妖精の森を旅立ったりしゃこ達… 

しかし、無情にも、りしゃこ達を巨大な山が行く手を阻む!! 


次回『黒魔術師りしゃこ』 
『決戦!!霊峰クマイ岳!!』 

乞うご期待!!