ところ変わって… ここ、『魔術師の館』では、EXーZYXによる最終特訓が行われていた… その中でも、サキとマイミンが本番さながらに決闘することに… 「…いい?決してムチャをしないこと。あなた達は、明日、活躍してもらわなくちゃいけないんだから… 最低限、怪我しないようにね…。審判は私がやらせてもらうわ…」 と、メーグルがルール確認をする… 「…わかった」 「…わーってるよ!」 「…じゃあ、…始め!」 メーグルの合図とともに、サキは呪文の詠唱に入り、マイミンは間合いを詰めに入る… こうなることはわかっていた… 魔法使いタイプのサキと、戦士・格闘家タイプのマイミン… 互いにベストの間合いを求めるのは当然のことだ… マイミンが健脚を飛ばしてサキに拳を振り上げる… それを、愛用の錫杖で弾き、反らし、躱すサキ… その間に呪文の詠唱を終えたサキが先に仕掛ける… 呪文の詠唱を終えたサキが先に仕掛ける… 「…いくわよ!新魔法『スウェットフォール』!」 サキの両手に『水の気』が集まっていくのがわかる… その『気』が徐々に、サキの愛用の錫杖を伝っていくのがわかる… そして、先端部分に留まる… 「…さて、準備完了!…今度は…コッチの番よ!」 と言って、サキがマイミンに対して肉弾戦を挑み始めた! 予想外のサキの行動に、驚くマイミン… だが、すぐに冷静さを取り戻し、 「…へっ!わかったよ!…だけど…後悔、するぜ!」 とサキの攻撃に応戦する… しばらくは互いに有効打が決められなかった… 状況としては、マイミンの攻撃をサキは食らうことはなかったが、 その代わり、その猛攻の前に、呪文の詠唱も出来なかった… そんな中、初めて攻撃をクリーンヒットさせたのは魔術の方だった! 拳の連撃を上半身に集めたところに、隙をついて放った水面蹴り(下段足払い)がヒットしたのだ… 綺麗に転んでしまうサキ… 追い討ちをかけるべく、宙を舞うマイミン… だが、それがサキにヒットする前に、マイミン自身がサキの錫杖による一撃を食らってしまったのだ! サキに攻撃をクリーンヒットさせたマイミン… だが、その代わり、追い討ちをかける際にサキの錫杖による一撃を食らってしまった… しかしながら、サキもマイミンもダメージ自体はそれほど受けてないように思える… 「…けっこうやるじゃないの?…オレに一撃食らわせるなんて…」 「…これでも、オールラウンドプレイヤーのつもりなんで…ね… それよりマイミン…あなたの心配をした方がいいわよ…」 「…それは…コッチのセリフ…だ!」 そう言い終わるなり、再びサキに向かってダッシュしたマイミン… だが… 不意に足がもつれて、片膝をついてしまう… 「…な、な…」 突然の身体の変化に、動揺するマイミン… その隙をサキは見逃さなかった… マイミンに考える余裕を与えさせず、錫杖による連続攻撃を繰り出すサキ… 力強さはないが、的確に相手の急所を狙ってくる マイミンもなんとか錫杖を捌いて攻撃を躱すが、それだけで精一杯だ… (…どうしたんだ、オレの身体!?…動け…動け!) 急に身体の動きが鈍くなってしまったマイミン… そこへ、サキが錫杖による怒涛の攻撃を見せる… いつものマイミンならば躱せる攻撃も、身体の自由が効かずいくつかの打撃は受けてしまう… 気のせいなんかではない… 修行から帰ってきたばかりで疲れていたからなんかではない… 明らかに身体がおかしくなっているのだ… だが、その謎がわからない… その間も執拗にサキの攻撃が繰り出される… 攻撃を躱す内、地面に足を取られてしまった… と、いうより、足を滑らせてしまったのだ! 床を触ってみる… 水…いや、汗だ…! ふと、身体を触ってみるマイミン… 汗? マイミンの身体中からすごい量の汗が… 「…気付いたようね…。あなたの身体から汗が吹き出してるのよ…」 「…てことは…?」 「…そう…水分の消耗…脱水症状で動きが鈍っているのよ!」 「…脱水症状…だって!?」 マイミンが唖然としている… 「…そうよ…。人間は身体の水分を失うと、その身体能力は急激に落ち込む…というわ…」 「…くっ!…だからか…。油断した…」 「…マイミン…あなたの体力が底なしなのは知ってる…だから、その体力を奪わせてもらったね… あの新魔法を宿らせた錫杖に突かれたら、身体中から滝のような汗が出るのよ…」 「…わかった…御託はもういい…今度はコッチの番だ!」 「…ううん!これからも…ずっとサキのターンなんだよ!」 そう言って、今度は水流を宿らせてマイミンを狙い打つサキ… あくまでも、懐にマイミンを入れずに撃退するつもりだ… サキから放たれた水流を避けようとするも、そのいくつかは、身体が動かず受けてしまう… そして、そのうちの一つをモロに顔面に受けてしまった! だが、様子がおかしい… 水撃を顔面に『受けた』のではなく、『受けにいった』ような感じなのだ… ダメージを受けても、再び立ち上がるマイミン… そして、マイミンの口から出た言葉が… 「…水分補給…完了!」 サキの新魔法によって、脱水症状を起こしたマイミン… だが、非情にも、サキのターンは続く そのうち、サキの水撃がマイミンの顔面を直撃した! 一度は片膝をつく…が、そこから元気に立ち上がったのだ! マイミンの口から出た言葉は… 「…水分補給、完了!」 そして、再度、サキに襲いかかる! 「…ムダよ!あなたの体力は根こそぎ奪った…!?」 迎撃しようとしたサキに、衝撃が走る… 先程までの弱々しいマイミンではなく、決闘前の、力強いマイミンに戻っていたからだ… 「…くっ、このぉ…!」 マイミンに向かって水撃を繰り出すサキ… だが、マイミンの素早いステップで避けられてしまう… マイミンの急激な体力の回復… 唖然とするサキ… それでもマイミンはサキに接近していく! 「…ち、ちょっと…来ないでよ!」 パニック状態になったサキがむやみやたらと水撃を発射するが、マイミンには当たらない… むしろ、心理面で有利になったのはマイミンの方だ 「…サキ…お前は、オレが何故、体力を回復できたのか?がわからず、パニックになってる…そうだろ?」 と、問いかけるマイミン… だが、サキには返事する余裕がなかった… 「…教えてやろう!…出ていったものは、吸い込めばいいのだ!」 と、マイミンがタネ明かしをする… その一言を聞いて、二人以外のメンバーはハンマーで頭を殴られたような衝撃を受けた… (…まさか…サキの水流を飲んで、脱水症状を回復したの!?) あまりの破天荒ぶりに開いた口がふさがらなかった… タネ明かしが済んだところで、いよいよマイミンが仕掛ける! すっかり動揺しているサキの水流を掻い潜るのは容易い… そして、間合いは0距離! 「『究闘不敗』の奥義、見せてやる!」 と、吼えるマイミン! その発言に、ハッと気付いたエリカンが、 「…マ、マイミン…まさか…あの『技』を出すの!?…止めて!危険過ぎる!…サキが壊れちゃう!」 と、制止に入ろうとする… 二人の決闘を傍から見ていたモモやメーグルも、エリカンの狼狽ぶりを見て心中穏やかでない… だが、制止するには時間が無さ過ぎた… マイミンの手に真っ赤な炎が宿る! 「…オレのこの手が真っ赤に萌える!勝利を掴めと轟き叫ぶ! キング・オブ・キュートの名にかけて… 必殺!ゴォォォッド!フィンガァァァー!!」 その拳がサキにヒットする!! ガクガクブルブルと震え出すサキ! 「…イート・エンド!!」そう言って、サキから拳を離すマイミン… 糸の切れたマリオネットのように、その場に崩れ落ちるサキ… サキに、『奥義・ゴッドフィンガー』を炸裂させたマイミン… 糸の切れたマリオネットのように、崩れ落ちるサキ… 「…勝者、マイミン!」 メーグルが勝利を宣告したことで、すぐさまサキに駆け寄るモモ達… サキの様子が心配だ… 何せぐったりとしてるのだ… 心配そうにサキの顔を覗き込む… サキの顔は…苦痛の顔ではなく…恍惚の表情をしていた… 「…あーあ…やっちゃった…」 と、呟くエリカン… 「…それって…どういうこと!?」 と、モモがエリカンに尋ねた… 「…いや…あの技はね…相手にダメージを与えるんじゃなくて…あの…」 と、歯切れの悪いエリカン… 「…まさか!」 何かを悟ったようなメーグル… フルフルと首を振りながら、 (…聞かないで!)のジェスチャーをするエリカン… そのやりとりを見て、顔に手を当てて、天を仰ぐモモ… どうやら、モモも悟ったようだ… 「…悪ぃ…手加減ナシだったから、しばらくは腰が抜けて、立てねぇだろうな…」 と、ポリポリと頭をかくマイミン… 一方… ユリーナ達はマイハの買い物のため、街へ繰り出していた 今まで、人型でなかったため、ファッション好きなマイハはおしゃれが出来なかった それを不憫に思ったマァがマイハの思い出作りに協力するのを決めて、ユリーナ達も便乗することになったのだ だが、チナリにしてみれば、二人っきりで休日を過ごせなくなったので、内心穏やかでない状態だ そこにきて、ユリーナも買い物にノリノリときてるので、チナリはイライラが爆発しそうになっていた まずは、服屋に立ち寄ってみる… 妖精の森にはないような、最新のデザインが取り揃えてある… 少しもじもじしながらも、店内を歩き回るマイハ… その背中を微笑ましく見守るマァ… そして、チナリは…というと… けっこう買い物にハマっていた… やはり、チナリも誘惑には弱かったのだ それと同時に、チナリには、ある考えがあって、買い物に夢中になり始めたのだ… 意外と買い物にハマっていたチナリ… それには、ある動機が… 「ねぇねぇ、ユリー!コレなんかどぉー?」 チナリがユリーナに選んだ服の良し悪しを尋ねている… 「…うーん…いいんじゃない…」 と、ややうんざり気味に答えるユリーナ 仕方がない…。何せ、これでチナリがユリーナに尋ねる回数が10回目なのだ… 始めのうちは、チナリの機嫌を良くしようと思って、あれこれ答えたり、アドバイスしていたが、 流石に度を過ぎるとうんざりもしてくる… 「…ねぇねぇねぇねぇ!」 「…何…?」 顔には出さないが、うんざりしているユリーナ… 「…じゃーん!…ねぇ〜、ユリー…。この服着てみてよ!」 と、言って、ユリーナに自分が選んだ服を渡すチナリ… 「?…これは?」 突然のことに戸惑うユリーナ… 「…エヘヘ…秘密…ひ・み・つ!」 と、何かを企んでいる様子のチナリ… チナリの勧められるままに服を試着するユリーナ… パッと見た感じのデザインも悪くないし、サイズも気味の悪いくらいピッタリだ… 「…ねぇねぇねぇ!コレ、買っちゃいなよ!」 と、やけに勧めるチナリ 店員に何かお金でも握らされているんじゃないか?と、勘繰りたくなるくらいだ… 「…わかったよ、チー。この服買うよ」 チナリの下心を疑いつつも、熱心な勧めに根負けして服を買うことに決めたユリーナ… 「エヘヘ!やったー!」 まるで我が事のように喜ぶチナリ それもそのはず… ユリーナが買い終わった後、チナリが一つの袋を取り出す… そして、 「…じゃーん!なんと、ユリーの服と、アタシの服はお揃いなのでしたー!」 と、ようやく服を勧めた理由を明かすチナリ… …あーあ、やっぱり…というような表情を浮かべるユリーナ 要はチナリはペアルックをやりたかったのだ… 作戦がうまくいってニコニコ顔のチナリだったが、次の瞬間には、その笑顔が消えていた… 「…おーい!買い物は済んだのか?とゆいたい」 「…けっこう素敵な服、見つけたの…」 マァとマイハの服装が、ユリーナ達のそれと、全く同じだったのだ… せっかくのペアルックがユニフォームになってしまったチナリ… やはり、人を欺こうとした天罰が下ったのか? あんまりな結末に、思わずうずくまって呻いてしまった… 訳が分からず、キョトンとしているマァとマイハ かなり気の毒に思えてきたので、チナリを優しく抱え上げるユリーナ そして、ユリーナの肩を借りてふらふらと店から出ていくチナリ… 服装が終わったので、次はアクセサリーを見に行くことにした4人… 一人でよろよろと歩くものの、明らかに元気がないチナリ… (…ま、まだ、ユリーとアタシだけのお揃いグッズを買うチャンスはあるわ…) と、執念を見せるが… 「…あ。ユリーナ!」 聞き覚えのある声がする…すぐさまユリーナが 「…あ、ナッキー!久しぶりー!」 と、手を振りながら答える… 『泣きっ面に蜂』とは、正にこの事だ… ここに来て、ライバル・ナッキーが登場したのだ… 密かに闘志を燃やすチナリ… せっかくの二人っきりのデートの予定が、次から次へと邪魔者が増えていく…という悪循環に頭を痛めるチナリ… 加えて、恋のライバル・ナッキーが登場… 負けてたまるか!と、静かに闘志を燃やすチナリ… そんなチナリとは裏腹に 「…ねぇ、ナッキー?今日は仕事はどうしたの?」 「…うん。お休み頂いたの!」 「へぇー!で、今日は一人なの?」 「そうなの。…せっかくだから、みんなに会いたいな…って思って…」 と、かなりいい雰囲気なユリーナとナッキー… (…何が『みんなに会いたいな…』だよ!ユリーナ目当てのくせに!) と、すっかりやさぐれた考えのチナリ… どす黒いオーラのチナリに気付いてか、 「…さぁ、次のお店に行くよ、とゆいたい」 とみんなを引っ張っていくマァ… 混沌を孕みつつ、5人の休日が続いていく… 一方のりしゃこはというと… 王都・ハロモニアの街中にいた… 「…うーん…オイラもそういったお店はあんまり知らないからな〜」 と、こぼすヤグー… 「…ねぇ、何のお店?」 と、ミヤビが聞いてみるが、りしゃこは 「…えへへ、ひ・み・つ!」 としか言わなかった 「…あーっ!あったあった!ここよここ!」 とヤグーが騒ぎ出す… りしゃことミヤビがヤグーの指差す先を見てみると、そこには、雑貨屋があった… 「…ありがとう!ヤグーさん!」 とお礼を言うなり、店の中に入っていった… 「…ち、ちょっと待って!」 慌ててミヤビも後を追いかける… ヤグーに見つけてもらった雑貨屋に、喜び勇んで入っていったりしゃこ… あまりに突拍子もないりしゃこの行動に、 「…ち、ちょっと待って!」 と、慌てて後を追いかけるミヤビ… ヤグーも二人の後を追う… ミヤビとヤグーがさほど広くない店内を探し回っていると、すぐにりしゃこが見つかった りしゃこがある商品をジーッと眺めている… それをミヤビとヤグーも覗き込む… りしゃこが物欲しそうに見てたもの… それは、この世界でも珍しい『絵の具』だった… その『絵の具』をジーッと眺めては、ちょっとため息をつくのだった… 何せ、この世界でも珍しい『絵の具』だから、ちょっと値が張るものなのだ 加えて、りしゃこは殆んどお小遣いのようなものはもらっていない… つまり、りしゃこにとって、『絵の具』は高嶺の花なのだ… そんなりしゃこを見て、不憫に思ったミヤビが声をかけようとするが、ヤグーが制する… そして、口元に指を当てて、りしゃこに近づく… 雑貨屋の『絵の具』をジーッと見つめるりしゃこ… ただ、残念ながら、『絵の具』は、このハロモニアでも珍しいものなので、りしゃこのお小遣いで買えるような代物ではなかった… 不憫に思ったミヤビが声をかけようとするが、ヤグーが制して、りしゃこにそっと近づく… 「…『絵の具』かぁ〜」 ヤグーの声に後ろを振り替えるりしゃこ… 「…りーちゃんは、お絵かきが好きなんだ〜?」 と、ヤグーが尋ねる… こくり、と小さく頷くりしゃこ… ちょっと考えるフリをしてヤグーが、 「…じゃあさ、お絵かき…しに行こっか?」 と、りしゃこに聞いてみる… ヤグーの問いかけに頷きながらも、 「…でも…道具が…」 その言葉を遮るように、 「…よし!オイラが『絵の具』、買ったげるよ!」 と言い放ったヤグー りしゃこの顔が笑顔になるが、 「…でも…こんなに高いもの買ってもらったら、サキに怒られちゃう…」 と、心配する… 「…何言ってんの!?子供が大人に甘えるのは『子供の特権』なんだから! それに…サキがもし、何か言ってきたら、オイラが言ってやるよ!」 と、鼻息の荒いヤグー… 『絵の具』を欲しがるりしゃこに、「買ってあげる」と申し出たヤグー りしゃこは遠慮するが、ヤグーは軽く受け流す… 「…ほら、オイラが買ったげるよ!」 と言って、りしゃこの頭をクシャクシャに撫でるヤグー 「…えっ?でも…」 と、言うりしゃこを尻目に 「…おばさん!これいくら?」 と、すっかりお買い上げモードのヤグー… 結局、ヤグーに押し切られる形で、『絵の具』セットを買ってもらったりしゃこ… 「…ハイ!これ、オイラからのプレゼント!」 と、ヤグーから『絵の具』セットを手渡される… なかなか受け取らず、もじもじしていると、 「…ほら!せっかくのヤグーさんのプレゼントなんだから…お礼を言いなさい!」 と、ポン!とりしゃこの背中を叩くミヤビ… 少し躊躇した後、 「…ヤグーさん、ありがとう…」 と、照れくさそうにお礼を言うりしゃこ… 「…いいのよ!…でも、たった一つ…オイラからお願いがあるんだ!聞いてくれる?」 とりしゃこに尋ねるヤグー… りしゃこに『絵の具』を買い与えたヤグー 突然のプレゼントに戸惑っていたりしゃこだったが、照れくさそうに喜んだ… そのりしゃこに、お願いがあるというヤグー 「…あのさ、その『絵の具』でオイラの似顔絵…書いて欲しいんだ」 と、持ちかけた ヤグーの言葉にキョトンとするりしゃこ… 「…オイラの似顔絵を描くってことで、『絵の具』代はチャラってこと!」 と、続けたヤグー りしゃこが気を使わないようにしたのだ… それを聞いて、大きく頷いたりしゃこ… 「…じゃあ、絵を描きに行こっか!?」 と、号令をかけるヤグーに、りしゃことミヤビはついていくのだった…