… 

… 

…うっすらと目が開く… 
視界に白い天井が入ってくる… 

まだ、頭がぼーっとする… 
身体に少しのだるさを感じながら、サキは目を覚ました… 
そして、ようやく、今、自分がベッドに横たわっていることに気がついた… 
まず、自分が何をしてたのか思い出そうとしてみる… 
(…確か…今日は最後の特訓の日…わたし…ええと…マイミンと勝負…してたんだよね? 
…で、追い詰めて…そしたら、マイミンが急に復活して… 
そっか…負けちゃったんだよね…) 
ようやく、気を失う前のことを思い出したサキ… 

負けてしまったことで、少し気分が落ち込んでしまう… 
ため息をつくサキ… 

だが、そんな不幸なサキに、さらなる不幸が襲いかかる…



マイミンとの勝負に負けて、気分が落ち込んでしまうサキ… 
思わずため息をついてしまう… 

だが、そんな不幸なサキに、さらなる不幸が襲いかかる… 


…目を覚ましてから、どこかずっと、違和感を感じているのだ… 
まだ少し、身体にだるさと火照りがある… 
それでも、ぼーっとする頭をシャキッとさせる… 

違和感の原因がはっきりした… 
下半身に違和感があるのだ… 
それも、何故か下半身が濡れているのだ…! 

ふと、濡れている下半身に手をやってみる… 
微妙な湿り気とともに、水の感触がする…! 

ガバッと飛び起きるサキ… 
考えたくはないが、まさか…お漏らし…!? 
その結論に、愕然とするサキ… 

まずはシーツを調べてみる… 
よかった…幸い、シーツは濡れていない… 
どうやら、パンツ止まりのようだ… 

だが、ホッとしたのも束の間、突然、部屋の扉が勢いよく開く!



下半身の違和感に狼狽えるサキにさらなる不幸が… 

急に部屋の扉が勢いよく開いた! 
「…おーい!サキー、大丈夫かー?」 
「…大丈夫な訳ないでしょ?あんな技食らって…」 
「…サキが再起不能になったら、マイミンの所為だかんね!」 
入ってきたのは、マイミン達、EXーZYXのメンバー… 
サキのことが心配で様子を見に来たのだ 
だが運悪く、その時サキはパンツの着替え中だった… 
… 

マイミン達とサキ、互いの目があってしまった… 
しばらく固まってしまう… 
…そして、我に返ったサキが、 
「…きゃあ〜!いやぁぁぁ〜!」 
と、錯乱したように叫ぶ! 
「…わ、わ、わ!」 
慌てて部屋を飛び出すマイミン達… 


しばらくして、部屋に静寂が訪れる… 
そこで、部屋の扉をノックし、 
「…入るわよ…」 
と言って、メーグルを先頭に部屋へと入っていく…



サキの籠もる部屋へと入っていったメーグル達… 

案の定、というべきか、サキは布団をすっぽり被ったまま、嗚咽を繰り返していた… 
無理もない… 
恥ずかしいところを見られたのだから… 

泣きじゃくるサキに、真剣な顔つきのマイミンが、 
「…サキ、ゴメン!…オレが悪かった!」 
と、部屋に響くような声で謝罪した… 

「…ワタシからも謝るわ…。マイミンが勝手なことしてゴメンなさい…」 
と、相方・エリカンも続いて詫びる… 


しばらくの沈黙の後、嗚咽が止んだ… 
そして、布団から顔を出すサキ… 
やはり、泣きじゃくっていたので、目が真っ赤になっている… 

「…あの、今回の件は、マイミンが全面的に悪いから… 
ほら、マイミン!サキに謝りなさい!」 
と言って、メーグルがマイミンに再度、謝罪を促す 

「…サキ…オレが悪かった!ゴメン!」



素直にサキに謝罪したマイミン… 

サキにしてみれば、突然、部屋に入って来られて、着替え中の恥ずかしい姿を見られたのだから、謝罪は当然なのだが、どこか腑に落ちない… 
謝罪にしては、かなり大袈裟なのだ… 

「…わかったわよ…」 
と、サキが一言こぼす… 
それを聞いて、 
「…ハハッ!ゴメンな!」と、抱擁をするマイミン… 

だが… 
「…で、気持ちよかったか?」 
と、耳元で囁くマイミン… 
「…何?『気持ちよかった?』って?」 
と、マイミンの言葉の真意がわからないサキ… 

サキの返事に、突然、サキの下半身をまさぐり出すマイミン! 
あっという間の出来事に、防御すらままならないサキ… 
しっかりと、マイミンに『大事なところ』を触られてしまった… 

マイミンは『大事なところ』の手触りに、 
「やっぱり気持ちよかったんだな」 
と一言洩らす… 

「…ち、ちょっと!何すんのっ!」 
と、慌てるサキだが、時、すでに遅し… 

サキには、マイミンの言葉の意味がわかってなさそうだったので、 
代わりにエリカンが、気まずい顔をしながら、サキにこっそりと耳打ちをする… 

「…!」



エリカンの耳打ちを聞くなり、顔を真っ赤にするサキ… 
そしてまた、布団をすっぽり被ってしまった… 


「…ちょっと!サキ!」 
サキの態度の急変に動揺するマイミン達… 

「…こら!マイミン!なんてこと言うの!?」 
と、珍しくメーグルが怒り出す… 
「…そうよ!デリカシーがないんだから!」 
と、メーグル同様、モモも怒りを隠せない… 
サキは布団をすっぽり被って出てこない… 
正に、最悪の事態だ… 


この惨状を見るに見兼ねたエリカンが突如、マイミンの首根っこを捕まえて、 
「…ちょっと、コッチいらっしゃい…!」 
と、部屋から引っ張り出す… 

「…エ、エリー!?」 
メーグルが呼び止めようとするが、エリカンの『寄せ付けないオーラ』が強すぎて、言葉が続かなかった… 

バタン!という音が隣から聞こえる… 
続いて、パァン!と乾いた音が… 
きっと、エリカンのビンタだろう… 
次第に、二人の口論が聞こえてくる… 

不安になって、互いの顔を見合わせるメーグルとモモ… 

(…止めにいった方がいいんじゃない?) 
(…でも…もうちょっと、様子見よう?)



サキへの暴挙?を巡って、エリカンとマイミンが別室でケンカを始めたようだ… 
パァン!と乾いた音がした後、口論が聞こえてきた… 
さすがに不味いと思ったのか、顔を見合わせて、止めに入るかどうかを検討したメーグルとモモ… 


だが、状況は急転直下を迎える― 

突然、ドサッ!と何かがベッドに倒れ込む音がした! 
その後も、取っ組み合いのケンカでもしてるのか、ベッドがギシギシと、軋む音を立てている… 
やがて、口論が聞こえなくなり、代わりに、呻き声ともつかない声が聞こえるようになった… 

そうなると、壁越しの声が気になって仕方がない… 
いつの間にか、メーグルとモモは、壁にピッタリと耳を当てて、二人の会話を聞き入るのだった… 


だが、様子がおかしい… 

まともな会話が聞こえないのだ! 
「…あっ!」とか「…いやっ!」とか、そんな単語しか出てこないのだ… 

メーグルとモモがまた、互いの顔を見合わせて、 
「…あーあ…」 
「…なんでこうなるのかなぁ…」 
と、ボヤき始めた… 


ここでまた異変が― 

さっきまで、布団にすっぽり被ったままのハズのサキが、いつの間にかメーグル達同様、壁に耳を当てているではないか!



隣の部屋で、ケンカ?をおっ始めるエリカンとマイミン… 
気になって仕方がなくて、聞き耳を立てるメーグルとモモ… 

だが、いつの間にか、布団に籠もっていたハズのサキまで聞き耳を立てているではないか! 


「…何してん…の!」 
と、ツッコミ代わりのチョップをするモモ… 
「…え!?…あ、あの、ほら!やっぱり…二人のことが心配だから…さ?…アハ…」 
と、笑ってごまかしたつもりのサキ…だったが、メーグルとモモがそれを許さない 

「…何言ってんのよ!」 
「…このむっつりスケベが!」 
と、厳しいチェックが入る… 


しかし、急に隣の部屋が静かになった… 
何事か?と、またもや壁に耳を当てて、聞き耳を立てるメーグル達… 

すると、突然、部屋の扉がガチャリと開いた! 


顔が上気立って、色っぽいエリカンと…ややげんなりして、生気が薄くなったマイミン… 

「…ほら、マイミン!もう、あんなこと…しないのよ!」 
とエリカンが言うと、 
「…わかったよ…」 
と、呟くのが精一杯のマイミン…



隣の部屋でケンカしてたハズのエリカンとマイミンが戻ってきた… 

すっきりした顔つきのエリカンと、生気が抜けたような顔つきのマイミン… 
サキに向かって 
「…ゴメンなさい」 
の謝罪をするのが精一杯の様子… 

メーグル達は、マイミンがどんな恐ろしい目にあったのか?が気になったが、エリカンが恐くて、とても聞けなかった… 

涼しい顔をして、大胆な事をしでかす…正に『クールビューティー』の通り名にふさわしい振る舞いだった… 


「…ま、サキも体調が戻ったみたいだし…特訓、再開すっか!」 
メーグルの掛け声とともに、再び訓練場に戻っていくメーグル達… 

訓練場に戻る最中、エリカンがサキの肩をポン!と叩いて、 
「…サキの仇はとったわよ!」 
と、こっそり耳打ちをしたエリカン… 

サキはマイミンから受けた仕打ちを、つい、思い出して、顔が真っ赤になるのだった…



そして一方、ユリーナ達は、というと… 


アクセサリーを買いに来ていた… 

だが、ナッキーの参加で、更に混沌に拍車がかかってしまった… 
特に、チナリがナッキーをライバル視するものだから、ギクシャクした空気が流れていた… 

その雰囲気のまま、アクセサリー屋に雪崩込んだ… 


「…へぇ〜!けっこう広いんだね〜!」 
と、能天気に驚くユリーナ… 
その陰で、“女の戦い”が繰り広げられているとは知らずに… 

「…ねぇねぇねぇねぇ!コレなんて、どうどうどうどう!?」 
と、チナリが、手に一杯のアクセサリーを持ってユリーナの下に駆け寄る 
「…ちょっと…こんなにたくさんはいらないよ…」 
と、チナリをたしなめるユリーナ… 

「…ねぇ…コレって…どうかな?」 
と、ナッキーもいくつかアクセサリーを持ってきたのだが… 
「…」 
「…ねぇ…ユリーナ…?…どうしたの?急に黙り込んで…」 
「…ちょっと…コレは…どうかな…アハハ…」 
と、力なく笑うユリーナ… 
仕方ない…ナッキーの持ってきたアクセサリーは、何故か髑髏や目玉のデザインだったのだ… 

(…まさか、こんなのが好みなの!?)



アクセサリー屋に買い物に来たのはいいが… 
チナリが山ほど商品を持ってきたり、 
ナッキーの選んだ商品が、強烈なセンスだったり… 
と、なかなかまともな買い物になってないのが現状だ… 
当の本人達が至って真剣なだけに、止める訳にもいかない… 


そんなこんなで、かれこれ1時間くらいは経っただろうか… 
かなりのんびり屋のユリーナも、二人のアクセサリー選びに辟易し始めていた 
また、マァとマイハも店内で別行動をとってから、今まで顔を合わせていない… 
次第に、苛立ち始めるユリーナ… 

そんな中、マイハが戻ってきて、 
「…あの…コレ…」 
と言って、ユリーナにアクセサリーを手渡す… 

手にとって見てみると、幾つかの『石』を埋め込んだ、ロザリオのネックレスだ… 
それを、チナリにも手渡している… 

「…あの、コレは?」 
と、ユリーナが尋ねると 
「…お守りなの…」 
とマイハが答えた…



1時間くらい経って戻ってきたマイハが、ユリーナやチナリに、ロザリオのネックレスを手渡す… 

マイハが言うには、『お守り』だと… 

そこへ、少し遅れてマァも戻ってきて、 
「…けっこういい出来映えだとゆいたい」 
と、顔をほころばせている… 

続けて、 
「…ユリーナ、このネックレス、マイハが作ったんだ…とゆいたい」 
と、驚きの事実を語る… 
「…マァ…そんな…大袈裟だよ…」 
と、照れくさそうに答えるマイハ… 
「…でも、デザインしたのはマイハだとゆいたい」 
と、マァが言う… 

つまり、このネックレスのデザインはマイハのものなのだ… 
そして、よくよく見ると、ロザリオにはめ込まれている『石』の色は、七色と透明の合わせて八つだ… 
ここで、ユリーナはふと思い出す… 
自分達の持つ、『護神石』の色の数と一緒なのだ… 

「…ひょっとして、コレ…」 
ユリーナの問いに軽く頷くマァ… 
「…明日の『大会』にはすぐ側には居られないけど…『側にいるよ』との願いを込めて…作ったの…」 
と、少し恥ずかしそうに話すマイハ…



自分でデザインしたアクセサリーをみんなに手渡すマイハ… 
その一つ一つに想いを込めながら… 

受け取ったネックレスをじっと見つめるユリーナとチナリ… 

そして… 
「…ありがとう!…きっと…大事にするから!」 
と言って、マイハをギュッと抱きしめたユリーナ… 

『プレゼント』は誰だって嬉しい… 
それも、そこに『想い』があったならなおさらだ… 
マイハのネックレスには、『仲間』という、見返りを求めない、純粋な想いと願いがあった… 

だから、ユリーナは嬉しかった… 

「…ありがとう…あたしも喜んでくれて嬉しい…」 
と、マイハも少しはにかみながら微笑んだ… 


そんな二人の姿を見て、チナリは思い知らされた… 
いつも、自分はユリーナに見返りを求めてばかり… 

そう思うと、自分が情けなかった… 
そして、手に一杯持ってきたアクセサリーを、元の位置へ戻そうとしている自分がいた… 

『自分の想いを伝えよう!』と、走り回った… 

チナリが姿を消して15分後…



チナリが突然姿を消して15分後… 


「…遅いね…チー…」 
と、マイハが呟けば、 
「…心配だとゆいたい」 
と、マァがこぼす… 

「…きっと大丈夫だよ」 
と、楽観的に見てるのは、意外にもナッキーだった 
「…どうして…そう思うの?」 
根拠を聞いてみるユリーナ… 
「…ん、何となく…。でも、あの子…見かけによらず、けっこう負けず嫌いだと思うから… 
ユリーにスゴいアクセサリーを持ってくるって、予感がするの…」 
と、ナッキーは言った… 


そうこうしてる内に、 
「…ひゃあ〜!おまたせ〜!」 
と、息を切らせてチナリが駆け込む… 

「…ハイ、ユリー!…コレ…受け取って!」 
と、手に持った小さなアクセサリーを手渡す… 

ユリーナが手を開いてみると、そこには鎖の付いた『鍵』が… 


意味がわからず唖然とするユリーナ… 
「…何これ?…これでウチにどうしろと?」 
と聞くしかなかった…



突然チナリから、鎖の付いた『鍵』を手渡されたユリーナ… 
チナリの行動の真意を理解出来ず、ユリーナは唖然とするしかなかった… 

唖然としてるユリーナに、チナリが解説をする… 

「…実はね、その『鍵』は、これとペアなの!」 
と言って、懐から鎖の付いた『錠前』を取り出した… 
「…アタシ、おバカちゃんだから、あまり上手く言えないけど…」 
と、前置きしながらチナリが語る… 
「…明日から、大事な『魔導大会』があるじゃん? 
ぜぇ〜ったい!勝たなきゃいけないから、弱いアタシにサヨナラするの! 
…で、これはおまじない。アタシの弱い心を扉の中に閉じ込めて、『鍵』と『錠前』で封印するの! 
…だから、その『鍵』を、ユリーに預かってて欲しいの…」 
最後まで話終えたチナリは、すっかり息が切れていた…それだけ一生懸命だったのだ… 

ひとしきり、チナリの話を聞いたユリーナはクスリと笑って、 
「…わかった!…これ、大事に預かるからね!」 
と、言った…



明日の『魔導大会』に向けて、弱い自分にサヨナラする決意をしたチナリ… 
チナリはおまじないの『鍵』をユリーナに託し、ユリーナはそれを笑顔で引き受けた… 

「…ユリー!ありがとう!」 
嬉しくて、思わず抱きついてしまったチナリ… 

そんな二人を見て、羨ましく思ったのか、 
「…いいなぁ…」 
と、こぼすナッキー… 

それで、何かを閃いたのか、急にナッキーの顔が明るくなった



明日の『魔導大会』を控えて、気持ちが一つになったユリーナとチナリ… 

そんな二人をとても眩しく、そして羨ましく思っていたのは、他ならぬナッキーだった… 
(…アタシだって、ユリーに何かしてあげたい…。でも…) 


すると、その時、ナッキーの頭に閃きが… 

「…ねぇ、ユリー!…アタシもユリーの…ううん、みんなの応援をさせて!」 
と、立候補する… 

突然のことに、全員が驚く… 
だが、ナッキーは至って真剣だった… 
「…みんなが明日から『魔導大会』で頑張るのに、ワタシも何かしたいの…」 

みんなの顔がほころぶが 
「…ナッキー、ありがとう!…ウチら、頑張るけど…でも…」 
と、言いかけたところで 
「…大丈夫だよ!…ワタシだって、魔法が使えるもの!」 
と、言い放つ 

みんなが唖然とする… 
ナッキーが魔法を使えるなんて、聞いたことがないからだ… 
驚く一同に 
「…まぁまぁ、だったらみんなついてきて!」 
と、ナッキーがみんなを引っ張っていった…



明日から『魔導大会』を控えているみんなに、魔法でおもてなしをする、と言ったナッキー… 

だが、その場の勢いで言ったものの、本当は魔法なんか使える訳がなかったのだ… 

(…どうしよう…?) 
と、平静を装いながらも、内心ハラハラ状態のナッキー… 

と、そこへ、ナッキーに声をかける人影が… 


「…おーい!ナッキー!…どうしたんだ?今日はデートじゃなかったのかい?『 
声の主は、ナッキーのご主人様・大富豪のアリ氏と、娘・カンニャ、メイド仲間のオ・カール姉妹だ 

「…今日はユリーナくんとデートだった…」 
「…あ!わ、わ、わ!」 
慌ててナッキーがアリ氏の言葉を遮る… 
「…『ユリーナくんとデート』…って何のこと?」 
と、チナリに突っ込まれるナッキー… 

「…え?な、何の事?」 
と、しらばっくれるナッキー… 
「…偶然を装ってユリーを待ち伏せしてたんだ…」 
のマイハの突っ込みに、 
「!…そ、そんな事ないってば!…ア、アハハ…」 
と、明らかに動揺しているナッキー… 

(…図星みたいね!) 
声には出さなかったが、ユリーナ達全員はそう思った…



偶然を装って、ユリーナに会いに来たことがバレたナッキー… 

しかし、その場にいた誰もが、ナッキーの涙ぐましい努力に突っ込まなかった… 

そんな周囲の考えとは裏腹に、まだ動揺しているナッキーは、何とか話題を変えようと必死だった… 
(…ええと、ええと…) 

何か話題転換できるものを探すナッキー… 

「…あ、あの、ご主人様…今日はどちらまで…?」 
ふと、アリ氏達の方に目をやると、カンニャやオ・カール姉妹の手には、袋で一杯だった 
「…あぁ、今日はみんなで食事をしようと思ってね…。そこで食材を買い込んでたんだよ」 
と、アリ氏が答える… 

(…食材!?) 
何かを閃いたナッキー… 
すぐさま、チッサーの元へ行って、 
(…ねぇ、チッサー?…コレと、コレと…あと、コレとコレ…って、今日の食材の中にある?) 
と、耳打ちする… 
「…うん!あるあるあるある!」 
と、嬉しそうに答えるチッサー… 

それを聞いて安心したナッキーが、 
「…ねぇ、みんな!…どうやらワタシ、魔法が使えるみたい!…だから、楽しみにして!」 
と、ユリーナ達に向かって、自信たっぷりに話す…