はたまた一方のりしゃこ達は?というと… 


ハロモニアの街を出発して、北部の『双子山』付近の高原に来ていた… 
ちょうど天気も快晴で、絶好の行楽日和だ… 
今日の目的、りしゃこのお絵かきにはうってつけ、とも言える… 

「…さぁ〜!着いたよ〜♪二人とも〜!早く降りて〜♪」 
かなりハイテンションな様子のヤグー… 
そのヤグーのテンションそのままに、 
「…えーい!」 
「…でやー!」 
と、馬車から飛び降りる… 
「…ほら!ここがオイラのお気に入りの場所なんだ!ここから見渡すハロモニアの景色がサイッコーでさー!」 
と、興奮しながらまくし立てる… 

ヤグーに言われた通りに、小高いところからハロモニアの街を見下ろす… 

すると、ハロモニア城を中心に、綺麗な幾何学的模様に並んだ街並みが、とても美しい… 
「…すごい…!」 
「…ふあああ…!」 
と、感動してる二人に、 
「…でしょ!?でしょ!?でしょ〜♪」 
と、同意を求めるヤグー… 
「…うん!」 
「…うん!」 
と、頷く二人… 

二人の反応に満足そうなヤグー…



最後の休日…ヤグーに連れられて、気分転換に遠出をしたりしゃこ達… 


小高い丘からハロモニア城を見下ろす景色は、とても美しい… 
どうやら、ヤグーのお気に入りの場所のようだ… 
「…どう?とっ〜ても良いところでしょ!?」 
と、問いかけるぐらいなのだ… 


そして、ようやくりしゃこのお絵かきが始まろうとしていた… 

「…約束通り、まずオイラから描いてよ♪」 
と、早速リクエストをするヤグー… 
「…うん…」 
と、頷くりしゃこ… 

そこで、ハロモニア城をバックにヤグーを描くことにした… 

…ただ黙々とヤグーと背景を見ながら絵を描き続けるりしゃこ… 
手持ちぶさたなミヤビが絵の進み具合を後ろから覗き込む… 

普通なら、後ろから覗き込まれたりしたら集中力が切れるのだが、全く意に介さず描いていく…



ミヤビが後ろから覗き込むのも構わずに、抜群の集中力で絵を描くことに没頭しているりしゃこ… 


そして30分後― 
ようやくりしゃこが絵を描き上げた… 

ただ、描いたりしゃこは不満そうな顔をしている… 

「…へぇ〜、どれどれ…」 
ヤグーがりしゃこの描いた絵を手に取ってみてみる… 
最初は嬉しそうな顔のヤグーだったが、次第に表情が曇っていく… 
その様子をみたミヤビが、ヤグーの手に持った絵を覗き込んでみる… 

…ミヤビも怪訝な顔になってしまった… 


ヤグーが、つい、 
「…ねぇ…りーちゃん…ちょっと、これ…ひどいよ〜!」 
と、洩らしてしまう… 

と、言うのも、りしゃこの描いたヤグーは、まるで昆虫のように、目が大きかったからだ… 
しかし、その反面、背景の丘から見下ろすハロモニア城などは、とても上手に描けていた… 

白亜の城壁、赤いとんがり屋根、そして、澄んだ青い空… 
その色使いがとても美しいのだ… 

ヤグーも、背景の美しさがあっただけに、しばらく呻いていた…



りしゃこの絵に呻いているヤグーを尻目に、再び、絵を描き始めるりしゃこ… 

黙々と描き続ける… 

りしゃこが絵を描いている間、手持ちぶさたなミヤビは、しばらくりしゃこの傍で様子を見守っていた… 

すると、ミヤビの傍に、ヤグーがちょこん、と座る… 
「…けっこう…ヒマだよね〜」 
「…ヒマですよね…」 
「…どうしよっか…?」 
「…そんなこと言われましても…」 

することがなくて困っているヤグーとミヤビ… 

「…あの、前から気になっていたんですけど…ヤグーさんって魔法、使えるんですか?」 
「…ちょっと…何よ?…まさか、オイラが魔法を使えないとでも?」 
「…あ!…い、いえ…魔法を使ってるとこ、見たことないんで…」 
「…使えますよ!使えますってば!」 
「…へぇー!…じゃあ、見せて下さい!」 
「…ダメだって!…だって、疲れるし…」 
「…え〜っ?…見たいなぁ…。ヤグーさんの魔法…。…カッコいいんだろな〜」 
この会話のやりとりに、すっかりおだてられて、気分のよくなったヤグー… 

「…んじゃあ…やりますか!?」



ついついミヤビにおだてられて、魔法を使う気になったヤグー… 


「…それじゃ、やってみよっか!?」 
と、すっかりやる気モードになってる… 

「…その前に…りーちゃんの邪魔しちゃ悪いから、ちょっと離れた場所でやろっか?」 
と、けっこう神経の細かいヤグー… 


りしゃこのお絵かき現場から100mくらい離れたところで、いよいよヤグーが準備を始める… 

いつものにこやかな顔から、真剣な表情へと変わり、ゆっくりと呪文を詠唱する… 
やがて、ヤグーの周りを取り巻く空気が張り詰めていくのがわかる… 
凄まじいプレッシャー… 
元・『暁の乙女』は伊達ではなかった… 


だが、ヤグーを邪魔するかのように、乱入者が現れた!



ヤグーが魔法を詠唱中に、突如として現れた乱入者… 

それは…フードを被った『二体の人型の生物』… 
現段階では、それが人間なのか、それとも妖精のような亜人種なのか、判別がつかない… 

唯一つ、わかっていることは、ヤグーに対し、悪意を持っていること… 
『二体の人型』が、手に『処刑人の剣(エグゼキューショナーズ・ソード)』を持っていることからわかる… 
…ヤグーを『処刑』するつもりなのだ…! 

ヤグーとミヤビは乱入者の出現に、唖然とするしかなかった… 
こんな、何もない高原に、突如、暗殺者が現れるなんて…考えられなかった… 

だが、唖然としていても仕方がない…相手はこちらを襲おうとしているのだ… 
降り掛かる火の粉は払わねばなるまい… 

そう決心したヤグーは、魔法の標的を、『二体の人型』に絞った… 
(…オイラだって、痩せても枯れても、元・『暁の乙女』の親衛隊長!…後悔させたげるよ!) 

無防備に、『二体の人型』がヤグー達に近づいてくる… 
一歩一歩、間合いを詰めてくる… 
間合いが10mぐらいになった時、『二体の人型』が、ヤグー達に向かって突撃してきた!



ヤグー達の前に、突如として現れた『二体の人型』… 
そして、ヤグー達に向かって突撃してくる! 


勿論、ヤグー達も手を拱いてやられるほど、お人好しではない… 
すでに、存在に気付いてからの迎撃体勢は整っていた… 

「…でやぁぁぁー!」 
ミヤビが手に持った杖を真一文字に水平に振り抜く! 
杖の振り抜いた残像を追いかけるように、炎が草花を薙いでいく… 
そう…近距離格闘用魔法・『キラーソー』だ… 
炎の鋸が『人型』を直撃する…! 

「…!」 

…確かに手応えはあった…だが、それにも構わず『人型』達は突進を止めない! 
『人型』達の突進を、辛うじて躱すミヤビ… 
だが、その後ろには、ヤグーがいるのだ! 
呪文の詠唱中で無防備な状態であれば、いくらヤグーが歴戦の強者でも、タダでは済まないだろう… 

次第にヤグーと『人型』達との距離がほぼゼロになった… 


だが、ヤグーは不敵になった微笑む… 
「…よし!準備完了!」



ヤグーの生命を狙って、迫りくる『人型』達… 

だが、ヤグーは不敵にも微笑む… 
「…よし!準備完了!」 


『人型』達が至近距離からヤグーに『処刑人の剣』を振り下ろす! 
そもそも、処刑囚の首を刎ねるためだけに作られた、禍々しい剣だ… 
少しでも当たれば、タダでは済まないだろう… 

だが、『人型』達の剣は空を切ってしまう! 
代わりに待っていたのは、ヤグーからの魔法のプレゼントだ… 

「…いくよ!『トラップ・バイン!』」 
呪文を発して、地面に手をつくヤグー… 

すると、信じられないスピードで、地面の草花が成長し、『人型』達に絡み付く! 
やがて、蔦が全身にまで絡み付き始めた… 

どうやら、ヤグーの魔法は、植物を意のままに操るタイプらしい… 


「…一体、誰の差し金か…吐いて貰おうか!」 
いつも明るく振る舞っているヤグーとは違う、怖いヤグーが、そこに居た… 

「…早くしないと、首根っこを締め付けるよ!」 
と、自白を促すヤグー… 

だが、『人型』達からは、何の返事もなかった…



ヤグーが『植物を意のままに操る魔法』で、『人型』達を捕えた! 
そして、拷問さながらに締め上げていき、自白を促す… 

だが、『人型』達は、全く自白する様子も素振りもない… 


「…いいの!?…このままいくと、首の骨が折れちゃうよ!?…それでもいいの!?」 
無駄な殺生をしたくないのか、ヤグーは最後まで、自白を促し続けた… 
しかし、『人型』達は、ヤグーの提案を受け入れる様子がない… 

「…!?」 

説得を続けていたヤグーの脳裏に、嫌な予感がよぎった…! 

「…ミヤビ!…コイツらを燃やして!」 
ヤグーが、より、残酷な『処刑方法』を言い渡す… 
当然、ミヤビは、 
「…えぇ!?…そんな…生きた人を丸焼きだなんて…そんなの…出来ない…」 
と、答える… 

ミヤビの答えは、至極当然だ… 
誰だって『殺人者』にはなりたくない… 
例え、自分の生命を狙うものだとしても…だ 

ずっと立ち尽くすミヤビに対し、 
「…バカ!早くしないと!」 
と、再度、丸焼きを促すヤグー… 

「…そいつらは人間じゃないんだ!!」



暗殺者・『人型』達を魔法で捕獲したヤグー… 
そして、『人型』達を「丸焼きにしろ!」と、ミヤビに命じる… 

ためらうミヤビに、 
「…そいつらは人間じゃないんだ!!」 
と、叫ぶヤグー… 


ヤグーの、その言葉を聞いた途端、いきなり暴れ始めた『人型』達… 
ヤグーの魔法により、全身にまで絡み付いた蔦を、徐々にながら引き千切っていく…! 

「ミヤビ!早く!」 
ヤグーが再度、ミヤビに丸焼きを催促する… 
ヤグーの魔法の蔦が引き千切られたのを見て初めて、『人型』達を丸焼きにする決心をしたミヤビ… 

だが、どんどん魔法の蔦が引き千切られるスピードが早くなっていく… 
魔法の蔦を操っているヤグーとしては、一分一秒でも『人型』達を丸焼きにして欲しいところだ… 

「…いくよ!火炎魔法・『ほのまら』!!」 
ようやく、ミヤビがヤグーのリクエストに応えて魔法を『人型』達に食らわせた! 

寸分違わず『人型』達に火炎魔法はヒット!…無惨にも、『人型』達は燃え始めた… 

だが、信じられない光景をヤグー達は見てしまうのだった!



ヤグーの生命を狙う『人型』達を『火炎魔法・ほのまら』で丸焼きにしたミヤビ… 

だが、ヤグーとミヤビは信じられない光景を見てしまう! 


燃え盛る炎の中、動き続ける『人型』達… 
そして、身の回りを覆っていた衣服が燃えてなくなったあとに出てきたのは…、人間にそっくりな傀儡…マネキンだ! 

そこで、ヤグーが頭を働かせる… 
ヤグーの計画にそぐわないゴーレム達の出現… 
そして、傀儡のマネキン… 
きっと、同一犯に違いない… 
ゴーレムもマネキンも、大小はあれど、『傀儡』という点では全く一緒だ… 
しかも厄介なことに、ゴーレムと違って小回りが利くところが性質が悪い… 


そんな中、マネキン達を縛っていた魔法の蔦が燃えてなくなってしまった!



ヤグーを狙っていた暗殺者が、マネキンだったことが明らかになった… 

ゴーレムの特性をそのままに、しかも小回りが利く点では、ゴーレムよりも厄介だ… 

ヤグーの魔法の蔦による締め付けも、ミヤビの魔法の炎にもびくともしなかった… 


そのマネキン達が、魔法の蔦が焼けたことによって、身体の自由を取り戻したのだ! 

再度、襲いかかるマネキン! 

だが、予想に反して、マネキンはヤグーを素通りしていった… 

「!」 

ヤグーも、ミヤビもやっと気がついた… 
マネキン達の狙いは、ヤグーではなく、りしゃこだったのだ! 


「…不味い!」 
慌ててヤグーとミヤビがマネキン達の後を追いかける!



ヤグー達を無視して、りしゃこの元へ向かうマネキン達! 

「…迂闊だった!…不味い!」 
と、口に出してしまうヤグー… 
それほどまでに、手痛いミスだった… 

だが、嘆いているヒマはない! 
りしゃこは今、お絵描きに没頭しているから、マネキン達の格好の餌食だ… 

なんとかして追いつかないと…りしゃこが殺される! 

マネキン達の後を追いかけるヤグー達… 
少し小高い斜面を駆け上がると、馬車から少し離れたところで、呑気にお絵描き中のりしゃこが見えた! 

「…りしゃこ!…早く…逃げてー!」 
りしゃこに向かってミヤビがありったけの声を振り絞って叫んだ! 

だが、りしゃこの耳に届いている様子が全くない! 

「…りしゃこー!…逃げてー!」 
再度、腹の底から声を振り絞って叫ぶミヤビ… 

だが、無情にも、ミヤビの声はりしゃこに届かなかった… 

ヤグー達の前を行くマネキン達との差は縮まらず、マネキン達は、あと50mのところまで迫っていた… 

(…神様!…お願い!…なんとかりしゃこを護って下さい!) 

果たして、ミヤビの祈りは神様に通じるのか!?



りしゃこに向かって、迫りくる危機を必死に叫ぶミヤビ… 
しかし、その叫びはりしゃこに届かなかった… 


マネキン達をなんとか止めようにも、ミヤビ達は追走しながら魔法を使うことは出来ない… 
加えて、ミヤビ達を出し抜いたマネキン達は、より早く、りしゃこの元へたどり着くだろう… 

…正に、絶体絶命! 


ミヤビは必死に祈った… 
(…神様!…お願い!…りしゃこを護って下さい!) 
…だが、神は舞い降りなかった… 
代わりに舞い降りたのは、悪魔! 
りしゃこに襲いかかろうとするマネキン達に立ち塞がった双子の天才魔術師達… 

「…よくわかんないけど…悪いヤツみたいだね!」 
「…そうだね!…悪いヤツみたいだね!」 
「…どうしよっか?」 
「…やっちゃおうか!」 

すぐさま、作戦会議が終了し、呪文を高速詠唱し始める… 

マネキン達が目の前まで迫ってきた時、呪文の詠唱を終えた双子達が、魔法をぶっ放す!



ミヤビの必死の想いが通じたのか、突然馬車からアイリーナ&アイリーネ…双子の天才魔術師達が出てきた! 

(何故、馬車から!?) 
という無粋なことはともかく、思わぬ援軍に喜びを隠せないミヤビ… 
「…二人とも!…お願い!…りしゃこを護って!そいつらをぶっ倒して!」 
祈るような気持ちで双子に叫ぶミヤビ 

「…わかったよ!…でも!」 
「…高くつくよ!」 
と、言いながらも、本気モードの双子… 

既に詠唱し終えた魔法をぶっ放す! 
「…あなた達に構ってるヒマはないの!」 
「…さよなら…『高速水流撃(ジェットストリームアタック)』」 
妙なネーミングだが、双子が重ねあわせた杖からすごい勢いで水流が噴射された! 
放った双子も反動で後ろに吹っ飛ぶくらいだ… 

だが、それ以上に吹っ飛んだのは、暗殺者・マネキン達の方であった 
予期せぬ伏兵に気付かず、水撃を真正面から受けた結果、5mくらいは後方へ吹っ飛んでしまう! 
マネキン達も、一体何が起きたか理解出来ていない様子だ… 

その間に、ミヤビ達がマネキン達に追いつこうとしていた…




アイリーナ&アイリーネの援護により、マネキン達に追いつくことが出来たミヤビ達… 


息を切らせながら、それでも呪文を詠唱するミヤビとヤグー… 
双子も起き上がって警戒を怠らない… 

一方のマネキン達は、まだ起き上がることすらままならない状態だ… 

まずは、動きを止めることが肝心…ヤグーが再度、魔法の蔦でマネキン達を拘束する… 
そして、傀儡の弱点である『核』を叩き壊すだけだ… 

マネキンをよく観察すると、ちょうど額の辺りに『核』が埋め込まれていた… 

「…あなた達に罪はないけど…」 
「…ゴメンね…」 
そう言って双子が額の『核』に杖による一撃を与えると… 

マネキン達は動かなくなった…



ヤグーの魔法で動けなくなったマネキン達を、『核』を破壊することで、ただの『傀儡』に戻したヤグー達と双子… 

一方、呪文を詠唱しながら使う機会のなかったミヤビを見て、一同がプッと吹き出す… 
「…な、何よ!?…ウチだって…必死だったんだから!」 
と、ムキになる… 

「…ゴメン、ゴメン!…ミヤビちゃんはホント頑張ったと思うよオイラ」 
と、すねそうなミヤビに詫びるヤグー… 
それと同時に、 
「…で、ところでコチラ様はどなた様で!?」 
と、ミヤビに尋ねる… 

「…あ、この二人は…」 
と言いかけたところで、双子が割って入る… 
「…よくぞ聞いて下さいました!私達、宮廷魔術師・トール・B・ウッドベルの娘、アイリーナ!」 
「…同じく、アイリーネ!以後、お見知り置きを…」 
と、格好つけて自己紹介をする… 

「…へぇ〜!あの、トールさんの娘さんなんだぁ〜!」 
「ハイ!」 
「そうなんです!」 

一見和やかな挨拶風景だが、ミヤビは 
(…何、ネコ被っちゃってるの!?) 
と、こぼしていた…



暗殺者撃破後、初対面のヤグーと双子が挨拶を交わしている… 

その間に、ミヤビはりしゃこの様子を見に行った… 


じっと微動だにしないりしゃこ… 
きっと、スゴい集中力で絵を描いているのか…それとも… 

…案の定、スゴい集中力を発揮していた… 
睡眠の方で… 

りしゃこが寝ている間に、どんだけみんなが大変だったか?を小一時間ぐらい説教してやりたい気分だったが… 
あまりにも気持ち良さそうな寝顔に、つい、『許してしまってもいいかな?』と、思った… 


…が、世の中そんなに甘くない… 
ぐっすり熟睡しているりしゃこに対し、なんと、双子がデコピン、梅干しをしているではないか! 

「…ちょっと!何やってんの!?」 
と、ミヤビが叱りつけるが、 
「…だって…私達が一生懸命戦ってたのに!」 
「…戦ってたのに!」 
「…寝てたんだって!」 
「…ムカつくー!」 

と言って、お仕置きを止めない… 
それを、また叱りつけるミヤビ… 

そんな子供っぽいやりとりを遠い目をしながら眺めてるヤグーがいた…



戦闘中、ずっと寝ていたりしゃこにお仕置きをする双子… 
と、それを叱りつけるミヤビ… 


「…ちょっと、あなた達!いい加減にしなさい!」 と、大声で双子を怒鳴り付けるミヤビだったが… 
「…あら、いいの?」 
「…ホントにいいの?」 
「…私達、神様なのよ?」 
「…ミヤビちゃんの願い事を叶えた、ステキな女神様なのよ?」 

突然の切り返しに絶句するミヤビ… 

「…だって、ミヤビちゃん言ってたじゃない?」 
「…『神様助けて!』って…」 
「…で、私達が助けたから…」 
「…私達が『神様』って訳ね!」 
と、よく分からない論理を展開する双子… 

「…とゆう訳で…」 
「…ミヤビちゃんは私達の下僕だね♪」 
と、ジャイアニズム爆発の双子に、 
「…な、何バカなこと…!それに…あなた達にはお願いしてないわよ!」 
と反論するミヤビだが、歩が悪い… 


3人の大騒ぎに、ようやくりしゃこが目を覚ました…



ミヤビと双子の大騒ぎに、ようやく目を覚ましたりしゃこ… 

「…ん…ふぁ〜あ…」 
と、気の抜けた欠伸をする… 

それを見た双子が、 
「…今、欠伸をしたのは…!」 
「…この口かぁぁ!この口かぁぁ!」 
と、りしゃこの頬っぺたをつねり上げる… 

「…や?…いひゃい!いひゃいもん!」 
と、双子の突然の行動に戸惑いつつ、痛がるりしゃこ… 

「…こら!もう、よしなさいってば!」 
と、ヤグーが止めに入ると、みんなピタリと動作を止めた… 

「…ほら!みんな仲良く仲良く!」 
と、背中を押すヤグーに、渋々従った格好だ… 


ヤグーの一言で、事態が収拾した後、ミヤビが双子に尋ねる… 
「…でさ、どうして二人がここにいるのよ!?」 

「…実は…」 
「…馬車の中に隠れてました!」 

「…わかってるわよ…そんなこと…じゃなくて、何でここに来たの?」 
再度、聞き直す… 

「…実はパパは…」 
「…ミヤビちゃんに用事があるんだって!」 
と、答える双子…



双子がここまで来た理由は、双子のパパ、トールさんがミヤビに用事がある…という伝言を伝えにきたのだ… 

(…なんだろう…?ウチに用事…って…) 
ほとんど接点がないので、とても気になって仕方がないミヤビ… 


それとは別に、ヤグーはりしゃこに質問をしていた… 
「…ねぇ!…スッゴい寝てたけど…何か良い夢でも見てたの?…それとも…悪い夢?」 
実のところ、ヤグーも何故、こんな間抜けな質問をしたのか、わからなかった… 
「…うん…。何かよくわからない夢…」 
ヤグーが続ける… 
「よくわからない夢?」 
「…うん。…誰か知らない人が、りーちゃんの頭をナデナデするの…」 
「…そりゃ〜、変な夢だね!」 
「…でも、その人にナデナデされると…何だか懐かしいの…」 
「…へぇ〜!じゃ、その人がりーちゃんのパパじゃない?」 
「…ううん…違うと思う…なんとなく…」 
「…でさ、どんな人なの?」



何だか、よくわからない夢を見た…と言うりしゃこに、ヤグーが質問をする… 

りしゃこが言うには、『懐かしい感じがする…』と… 
「…でさ、どんな人なの?」 
「…よくわからないけど…フツーの人…」 
「…それじゃあ、わかんないよ…もう、ちょっと!思い出してごらん?」 
「…うん…」 


「…何か思い出せた?」 
「…うん!あの人、メガネかけてた…色付きの…」 
「…へぇ〜!けっこう珍しい格好してるじゃん!」 
「…それと…何か楽器を持ってた…」 
「…楽器ねぇ…で、どんなの?」 
「…んーとね…」 
「…わかった!オカリナでしょ?…リ〇クさん!」 
「…違うと思う…でも、何か…惜しいような気がするもん…リ〇ク…」 

「…で、その人は、最後に何て言ってたの?」 
「…りーちゃんがね、もし困ったら…『いつでもオレを呼べや!』って…『助けたるっちゅうねん!』って…」 
「…何でそこで訛るんだよ!」 
「…だって!ホントに言ってたもん!ウソじゃないもん!」 
「…なるほどね…こんな人、ホントに居たら、変人だわね…」 

ヤグーの質問が終わった…



最後の休息…せっかくの憩いのひとときも、突然の暗殺者によって、台無しになるところだった… 
だが、その暗殺者騒動もヤグーや援軍の双子の働きもあって、事無きを得た… 

生命を狙われていたりしゃこを巡って、少しドタバタもあったが… 


その後のみんなは…というと、 

みんな仲良くお昼ご飯をたべて、ご飯を終えると、 
りしゃこはひたすら絵を描き続け、 
ミヤビはヤグーに魔法の稽古をつけてもらい、 
それを見て、双子が冷やかす… 

と、いった具合であった… 

やがて…楽しかった一日も、夕暮れとともに終わりを迎えようとしていた… 

高台から見下ろす景色が、とても美しい… 
また、山の陰へ消えゆこうとする夕日も、とても美しい… 

「…綺麗だね…」 
ミヤビが、ふと呟く… 

皆も口には出さないものの、同じ気持ちだったに違いない… 

出来れば、もっと眺めていたかっただろうけど、明日には大仕事が控えている… 
「…じゃあ…名残惜しいけど、そろそろ帰ろっか?」と言うヤグーの号令により、一同は馬車に乗り込み、家路を急いだ…