りしゃこ達がハロモニアの街に着いた頃には、もうすっかり日も暮れていた そして、ヤグーの館へ戻ると、りしゃこ達の帰りをサキ達のグループ、ユリーナ達のグループが待っていた… 「…りしゃこ、お帰り!」「…お疲れさま!」 そういって、みんなが出迎えてくれた… りしゃこ達は、何故、こんなに大人数がりしゃこ達の帰りを待ちわびていたかがわからなかった… 「…ねぇ…どうしたの、みんな…?」 ミヤビが不思議に思って疑問を口にする… 「…それがさ、」 「…明日から大一番なんで…」 「…アリさんが、ごちそうしてくれるの!」 「…腹ペコだとゆいたい」 …どうやら、さしずめ、『最後の晩餐』と、いったところか… 「…行ってきなよ♪…今日はいろいろあったけど、最後くらいは楽しまなきゃ!ね♪」 と、ヤグーがりしゃこ達の背中を後押しする… 「…でも、ヤグーさんは…?」 「…いいの、いいの♪…実はオイラもこれからひと仕事があるから♪…みんなと一緒出来なくてゴメンね!」 と、気をつかってくれた… 「…その代わり、ちゃんと帰ってくるんだよ♪」 と、ヤグーの問いかけに、みんなで、 「ハイ!」 と、元気よく答えた… 明日からの大一番を控えて、富豪・アリ氏の粋な計らいで、みんなで『最後の晩餐』をすることになった… そのため、みんながりしゃこ達の帰りを待ちわびていたのだ… そして、全員集合したところで、アリ氏の別荘に向かった… ここで意外な事実が… 今まで傍若無人な振る舞いだった悪魔の双子が、戻ってくるなり急に、おとなしくなっていた… 「…お帰り…待ってたよ…♪」 声の主は、アリ氏の娘、カンニャである… その言葉にビクッ!とする双子… 「…あ、あは…」 「…た、ただいま…」 カンニャの顔色を伺いながら、返事をする双子… 明らかによそよそしい…というか変だ… 「…二人とも…ワタシにナイショでどこ行ってたの…?」 「…あ、あの…パパのおつかいで…」 「…ち、ちょっと遠出を…」 「…ズルい!…なんでワタシも連れてってくれなかったの!?」 「…え、えーと…」 「…き、急にパパに言われて…慌ててたから…」 「…やだ!…ワタシにナイショなんて!」 …ちょっとした痴話喧嘩が始まった… アイリーナ&アイリーネが、ナイショでカンニャを置いてきぼりにしたことで痴話喧嘩が始まった… …と、いうか、一方的に追い詰められている… 「…何でワタシを置いてきぼりにしたの!?」 「…あ、あの…」 「…え、えーと…」 言葉に詰まる双子に、次第に涙目になるカンニャ… 「…どうして!?…ワタシ…アイリちゃん達のこと、好きなのに!」 みんなの視線が双子に集中する… みんなの前で、カンニャに涙目になられるわ、『好き!』と言われるわ、で、明らかに動揺し始める双子… 「…わ、わ!」 「…な、泣かないで!」 「「…ワタシ達が悪かったから…ごめんなさい…」」 と、ミョーにしおらしく謝る双子… 「…じゃあ…一緒に…おフロに入ってくれる?」 「「…うっ!」」 …不覚にも、呻いてしまう双子… 「…イヤなんだ…?」 伏し目がちに、寂しそうな顔をするカンニャ… 「…う、ううん!」 「…そ、そんなことない、そんなことない!」 …つい、カンニャに優しくしてしまう双子… 「え!ホント!」 双子の言葉を聞いた瞬間、パァァァ!と明るくなるカンニャ… どうやら、双子はカンニャにハメられたようだ… 悪魔の双子の『弱点』が、カンニャだとわかって、思わずニヤリとなった一同… それはさておいて… 実のところ、りしゃこ達を除くみんなは、夕方前には用事を済ませていたから、『晩餐』の準備はバッチリだった… 後は主役の帰りを待ってただけ、である… そしていよいよ、『晩餐』の始まりだ… みんなを代表して、タニマチの富豪・アリ氏が挨拶をする… 「…みんな、お疲れさま!明日から大一番が始まるけど、とにかく一生懸命頑張って、世界を護ろう! …それでは…乾杯!」 アリ氏の乾杯の音頭ともに、りしゃこ達が思いっ切りはっちゃける! とにかく、目の前に飛び込んでくるものを片っ端から頬張るのだ! そんな折、料理を美味しそうに食べるユリーナ達に、ナッキーが声をかけた… 「…どう?美味しい?」 ちょっと、不安げに聞くナッキーに、 「…うん!とっても美味しいよ!」 「…ホント!けっこうイケるじゃん!」 「…おかわり!と、ゆいたい…」 と、口を揃えて料理を絶賛するユリーナ達… 『晩餐』が、乾杯の音頭とともに始まった… りしゃこ達は思いっ切りはっちゃける… 目に飛び込んでくるものを、片っ端から頬張った… そんな折、ナッキーがユリーナ達に、今日の料理について尋ねた… ユリーナ達の料理の評価は上々だった… その答えに、ホッと胸を撫で下ろすナッキー… その様子を見て、 「…ねぇ?それがどうかしたの!?」 と、ユリーナが尋ねた 「…うん…ねぇ、ワタシ、みんなに『魔法』が使える…って言ってたじゃない!?」 ナッキーの問いかけに、 「…うん!言ったよ!」 と、返すユリーナ… 「…そうだよね!…実は、ワタシの『魔法』は、今、みんなが食べてる料理なの!」 と、ナッキーは言った… よくわからない様子のユリーナ達に、 「…みんなの食べてる料理はワタシの手作りなんだけど…『みんなを幸せな気分にする』魔法ってこと!」 一瞬、その場が凍りついた… その後は当然、ユリーナ達がナッキーに 「クサい台詞禁止〜!」 と言って襲いかかった… 『晩餐』が続く中、ミヤビは一通り食事を済ませて一息ついていた… すると、何やら袖口が引っ張られる感覚がする… ふと、そこに目をやると、双子が袖口を引っ張っていたのだ… そこでミヤビは思い出した…双子がわざわざ遠出してまで、ミヤビを呼びにきた理由を… (…そういえば、トールさんが、今晩『会いたい』って言ってたっけ?) それを思い出したミヤビは、双子に導かれるまま、トールの元にたどり着く… アリ氏の屋敷から少し離れたところにトールが待っていた… 「…やぁ…せっかくの楽しいひとときを邪魔して済まなかったね…」 と、呼び出したことを素直に詫びるトール… そして続けて、 「…実は、これを手渡したかったんだ…」 と言いつつ、何やら布に包まれた棒状のものをミヤビに手渡す… 「…これは!?」 と、訝しがるミヤビに、 「…開けてごらん…」 と、開封を促すトール… 言われるがままに、棒状のものを包んでいる布を解いていく… そして、開封し終えて出てきたものを見て、ミヤビはあっ!と驚く… 突然、双子のパパ・トールから呼び出されたミヤビ… そして、布に包まれた棒状のものを受け取り、布を解いていく… そこから出てきたものを見て、あっ!と驚くミヤビ… 中から出てきたものは、鮮やかな緋色の『魔法使いの杖』だ… 初めて見るハズなのに…でも、どこか懐かしい気がする… 何故か、胸に熱いものが込み上げてきて…胸が締め付けられるような気がして…いつしか、ミヤビの頬には涙がつたう… 「…そうか…わかるんだね…これが…」 と、トールが呟く… ミヤビにはわかっていた…直感していた… 「…これは…お父さん、お母さんの…」 黙ってトールが頷く… そして、ゆっくりと語り出す… 「…この杖はね…この世界を不安定にさせた『時空の歪み』を調査しに行く前に、キミのご両親が、僕に託したものなんだ…」 そして、ミヤビの手をとって、形見の杖を握りしめるように、と手を添える… 涙が止まらないミヤビだが、しっかりと杖を握りしめる… 何故だか、暖かい温もりを感じる…安らぎを感じる… 「…キミのご両親はまだ捜索中だけど…その杖に温もりがあるうちは…きっと大丈夫だよ…!」 「…きっと、キミのご両親も見守ってくれているよ…だから大丈夫だよ…」 と、トールに励まされ、頬をつたう涙を拭うミヤビ… 「…さぁ、みんなのところへ戻って楽しんで来なさい…」 と、言われて、双子と一緒にアリ氏の屋敷に戻っていったミヤビ… 手に形見の杖を、慈しみを込めて握りしめながら… 帰る途中、ミヤビはどこか双子の様子がおかしいことに気がついた… 「…ねぇ、二人とも…どうかしたの?」 と、ミヤビが尋ねるが、 「…ううん…」 「…何でもないよ…」 と、あっさり答える… しかし、ミヤビにはわかっていた 双子が涙声であったこと…おそらく、ミヤビの身の上話を聞いて同情したのだろう… そのことには一切気付かなかったフリをして、屋敷へと向かった… ちょうどミヤビ達が帰ってきた頃には、すっかり宴もたけなわになっていた… みんな満足そうな顔色をしている… そこで、アリ氏の締めの挨拶にて『晩餐』は終了した… そして、りしゃこ達は今日の出来事を振り返りながら、ヤグーの待つ館へと戻っていった… 『晩餐』を終えて、みんなはヤグーの館へと戻った… だが、主の姿は無く、代わりに書き置きがしてあった… 『ちょっと所用で出掛けます。明日の朝には戻ってますので安心して下さい ―ヤグー』 「…変ねぇ…ヤグーさん、今日は出掛けるなんて、一言も言ってなかったのに…」 と、メーグルが小首を傾げる… 「…まぁ、気にしすぎじゃねーの?」 「…そうそう!あの人のことだから、また、ヒョコっと帰ってくるわよ…」 と、心配性のメーグルをマイミン・エリカンが気を紛らわせる… 「…何もなければいいんだけれど…」 と、メーグルは独り言を呟きながら、部屋へと戻っていく… その前に一言、 「…みんな、明日は頑張ろうね!」 と声をかける… 「…うん!」 「…頑張ろう!」 「…任せなさい!」 と、みんなから思い思いの返事が返ってくる… とてもいいムードだ… (…これなら、きっとうまくいく!) と、思いながら、メーグルは部屋へと消えた… 「…じゃあ、ウチらも…」「…撤収しますか!」 マイミン・エリカンの言葉を合図に、みんながそれぞれの部屋に帰っていく… マイミン・エリカンの合図をきっかけに、それぞれのメンバーが部屋へと戻っていく… そして、りしゃこ達は様々な思いを胸に、休憩に入ろうとしていた… 「…いよいよ、明日だよね…」 「…そうだね…もう、明日なんだね…」 「…早いよね…」 「…うん。…ねぇ、チーは不安じゃないの?」 「…すっごーく!不安だよ!…だって、あと一週間もしたら、世界が滅亡するかも知れないんだよ? …アタシだって、まだまだやりたいコト、い〜っぱい!あるのに!」 「…そうだよね…。決勝戦には、この世界の運命が決まっちゃうんだよね…」 「…ねぇ、ユリー!」 「…わ、わ、わ?何すんのよ!?」 「…ねぇ、今日だけでいいの…一緒のお布団で寝ても…いい?」 「…って、もう潜り込んでるじゃん!?」 「…だって…不安なんだもん!…でもね、アタシ…ユリーと一緒にいると、すごく落ち着くの…」 「…だからって…?」 「…ねぇ、いつだって…安心したいのよ…ユリー」 そう言うと、あっという間に、チナリは夢の中へと旅立ってしまった… 一人になったユリーナは、やれやれ…といった感じでチナリと一緒に眠りについた… そして、サキとモモは、二人して明日の打ち合わせをしていた… 「…ねぇ、モモ…。明日なんだけどさ…?」 「…明日が、どうかしたの?」 「…うん。…ワタシ達、りしゃこを優勝させてさ、ヤグーさんの計画を止める…ってのが最大目標、だよね?」 「…何を今さら…」 「…でね、アタシが『白魔法の書』を預かったのは…話したっけ?」 「…聞いてるよ…今日も特訓したじゃん?」 「…でさ、今回の『大会』は一週間かかる長丁場になると思うの…」 「…誰だって、そう思うわよ、フツー…」 「…で、アタシの考えなんだけど…予選は突破するけど…決勝トーナメントは早くリタイアしよう、って思うの…」 「…サキらしいよね…」 「…あれ?驚かないの?」 「…いかにも、サキが考えそうなことじゃん!?…わかってるわよ。…欲を捨てて、裏方に回ろう、ってワケでしょ?」 「…そうなんだけど…」 「…わかってるわよ!…キャプテンの言う通りにするわ!」 「…モモ!」 「…サキが疲れてると、りしゃこを回復してあげる人がいないもんね…!」 「…モモ!…ありがとう…」 そしてそして、マァとマイハは、いつも通りのマイペースでくつろいでいた… 「…いよいよ明日か…とゆいたい…」 「…そうだよね…」 「…楽しかったな…とゆいたい…」 「…うん…」 「?…マイハ…寂しいのか?とゆいたい…」 「…うん。…せっかく、出会えたのに…あと一週間もしたら、お別れなんだよね…」 「…マイハ…」 「…?」 「…必ずしも、『お別れ』じゃない、とゆいたい」 「…一緒に旅をしてわかった…ウチらは強い『運命の絆』で結ばれてるんだ…とゆいたい!」 「…マァ…」 「…あっ!…つい興奮してしまった、とゆいたい」 「…ふふ…」 「…何がおかしい、とゆいたい!」 「…だって…あんな人間嫌いだったマァが…人間を受け入れてるから…」 「…りしゃこのせいだ…とゆいたい…」 「…そうだね…」 そう言うと、二人は互いの顔を見て、クスッと笑った… 「…へぶしっ!」 「…ち、ちょっと、りしゃこ!…何、豪快なくしゃみしてんのよ!?」 「…ずび…。…きっと、誰かがりーちゃんのこと…ウワサしてるもん…」 「…あのね…風邪ひいた…とか、そっちの可能性は考えないワケ?」 「…それなら大丈夫だもん!」 「…何がよ?」 「…だって、『頭の悪い子は風邪はひかない』って、モモが言ってたもん!」 「…はぁ…」 「…どうしたんだもん?」 「…確かにさ、諺に『バカは風邪ひかない』ってのはあるけど…」 「…それがどうしたんだもん?」 「…いい?りしゃこ。りしゃこは『バカ』じゃなくて、『アフォ』なのよ!」 拍B*‘ -‘リ 「…じゃあ…りーちゃん、風邪ひいたの?」 「…さぁね?…だから早く寝るのよ!」 「…じゃあ、ミヤ!いっしょに寝るもん!」 「…は?」 「…風邪を直すのは、添い寝してもらうとすぐ治るって、マイミンが言ってたもん!」 「…な、何言ってんの!?」 「…いっしょに、寝る!」 …こうして、りしゃこ達の夜が更けていく…