そして、『予選会』の集合点呼が始まった… 
メーグル、という、ある種の頭脳的存在を欠くことによって、焦燥感を募らせるりしゃこ達… 

だが、その状態でも、予選を勝ち抜かなくてはならない… 


そして、大会運営スタッフに誘導されて、ハロモニア城の中庭に案内される… 

実は、ハロモニア城は特殊な造りで、中庭を少し進むと、すり鉢状に窪んだ巨大広場がある… 

そう、『コロシアム』… 

ある時は戦いの場として、またある時は国民の憩いの場として使われる広場… 

今回の予選、決勝トーナメントもここで行うのだ… 

そこに、『足切り』による『狭き門』をくぐり抜けたもの達が集まった… 


大会運営スタッフから、『予選』に関する発表が行われた… 

現在、総勢108名残っている参加者を、12チーム・24名までに絞り込む…ということだ… 

そして、選別方法は…バトルロワイヤル!! 

ルールはシンプル…。リングから相手を突き落としていき、最後の12チーム・24名まで生き残った時点で終了だ… 
また、ギブアップも認められている… 

生き残りを賭けて、りしゃこ達がリングに登る… 



今、生き残りを賭けて、リングに上がるりしゃこ達… 
先程まではさほど緊張してしてはいなかったが、いざ、リングに上がった途端、突然、緊張感が襲いかかってきた… 

参加者達の緊張の昂ぶりが、このリングを支配しているのだろう…それが、五感以外の感覚でビンビンに伝わってくる… 
言うならば、この狂った磁場が『魔物』と言うものだろうか… 
まるで、濁流のように、その場にいる全員を翻弄する… 

この重圧に打ち克つものしか、次の決勝トーナメントには進めないのだ… 
いや、むしろ、このくらいの重圧を乗り越えられないと、話にならない…という訳だ… 


まず、ぐるりと周囲を見渡す… 
りしゃこ達のグループ…ヨッシーノ達のグループは多数派で固まっているが、他はまばらだ… 

あまりマークされる行動をとるのはよろしくないが、背に腹は替えられない… 
こっそりサキとヨッシーノ…キャプテンとリーダー同士がアイ・コンタクトで『共同戦線』を確認し合った… 

「…では、そろそろ始めまーす!」 
大会運営スタッフから合図があった… 

たかなる緊張と鼓動… 

「…では、予選…開始!」 
今、ゴングが鳴らされ、戦いの火蓋が切って落とされた!



「…では、予選…開始!」 
大会運営スタッフの号令で戦いの火蓋が切って落とされた! 

まずは、中央に集まっていた集団がばらけて距離を置き、そして互いに様子見、牽制し合う… 

アイ・コンタクトで共同戦線を約束していたりしゃこ達とヨッシーノ達は、それとなく接近して固まり始める… 

そして、衝撃が起きた! 


りしゃこ達とヨッシーノ達が、群れから離れた瞬間に、突然、一陣の風がりしゃこ達の目の前を猛烈なスピードで通過していった! 

思わず、その突風の勢いの凄さで、りしゃこ達も吹き飛んでしまいそうなくらいだった… 

そして、突風の通過した先に目をやると… 

信じられないことに、参加者の大半が突風により、リングの外へ弾き出されていたのだ! 

今度は突風が発生した先を見てみると…あの、黒いフードを纏った4人組が! 

…そう、あの4人組が突風を放って参加者の『間引き』を行ったに違いない…! 
戦慄を感じるりしゃこ達…



予選が始まり、参加者の間で様子見、牽制がある中、突如として襲った衝撃… 

参加者の大半が、一陣の強風によって吹き飛んでしまったのだ! 

その強風を放ったのが、例の黒いフードを被った4人組… 

そして、大胆不敵なことに、りしゃこ達、ヨッシーノ達を手招きして挑発してくる… 

「…!」 

挑発に思わずムッとしたヨッシーノだが、そのあたりはうまくこらえた… 
りしゃこ達もヨッシーノに倣い、平静を保った… 

それよりは、目の前の課題・予選突破が大事だ… 
厄介そうな4人組をりしゃこ達、ヨッシーノ達の力を合わせて葬るのも一つの手だが、 
ただ、返り討ちにあった場合を考えると、リスクが大き過ぎる… 

再度、ヨッシーノとサキがアイ・コンタクトで『予選突破の優先』の方向を意志確認した… 

並み居る予選参加者を『数の論理』で排除していく… 
参加者には、まだ小さな子供もいた… 
きっと、この日を楽しみにしていたんだろう…と、考えると、胸が痛かった… 
思わず、熱いものがこみあげてくる…それをこらえながら、ライバルを排除していった…



予選で驚異的な力を見せつけた黒いフードの4人組… 
なんと、予選参加者の大半を、たった一撃でリタイア(場外失格)に追いやったのだ… 

りしゃこ達やヨッシーノ達は、目の前の脅威を取り除くかどうかの難しい決断を迫られたが、結局、予選突破を選択した… 


そして… 

「…そこまで!」 
大会運営スタッフから、終了の号令がかかった… 

結果は…非情な『数の論理』で挑んだりしゃこ達とヨッシーノ達の計9チーム、黒いフードの4人組の2チーム、そして… 
「…こんなところで魔力を使うのはおバカさんだよねー♪」 
「…そうだよねー♪」 

「…あ、あんた達!今まで何処にいたの!?」 

アイリーナ&アイリーネの双子の天才魔術師…の1チームで計12チームに決定した… 


「…以上で『予選会』を終了します!…明日からの決勝トーナメントは9時集合でお願いします!今日はお疲れ様でした!」 

『予選会』が終わって、拘束から解き放たれたりしゃこ達が、ホッと一息をつく…



『予選会』終了後、拘束から解き放たれて、ホッと一息をつくりしゃこ達… 

「…Yo!よく頑張ったな!前に見た時より、随分強くなったんじゃないの?」 
「…みんなお疲れ様〜♪明日もこの調子でやってこうね!」 
と、ヨッシーノ、リカサークが声をかけてきた… 

「…ええ、お陰様で…」 
と、ちょっと照れ笑いしながら答えるサキ… 


「…そういや、あのメーグルって娘、だっけ?まだ、ヤグっさんの居場所を捜して回ってんの?」 
と、ヨッシーノが尋ねると… 
「…ええ。どうしても、ってことで…」 
と、サキが少し困惑しながら答えた… 
「…そうか…」 
と、ヨッシーノが呟く… 
「…だけどさ、あの黒いフードの4人組って、すっごく怪しくない?」 
と、リカサークがポツリと洩らす… 

「「…あーっ!!」」 
…不覚だった…。あの4人組はあからさまに怪しかった… 
すぐさまその場にいる全員が、怪しい4人組の姿を捜し出す… 
…が、結局、見つけられなかった… 

「…あーあ、明日に持ち越しかYo…?」 
ヨッシーノが残念がる… 
「…ま、とにかく明日のトーナメントで、怪しい4人組に当たった人は正体を暴くように!」 
という、ヨッシーノの言葉で締めくくられた…



決勝トーナメント進出を決めたものの、ヤグー失踪の手掛かりとなりそうな怪しい4人組をうっかり見落としたりしゃこ達… 

メーグルも戻って来なかったので、とりあえず、ヤグーの館へ帰ることにした… 

その道中、一行はメーグルとばったり出くわした… 

「…どうだった?」 
マイミンが、開口一番メーグルに尋ねるが、メーグルは黙って、首を横に振る… 
その後は、誰も何も言わずに館へと歩いていく… 
メーグルの気持ちが痛い程わかるため、何も言わなかった…いや、何も言えなかった… 
今、ここでメーグルに何を言ったところで何の慰めにもならないことはわかっている… 
だから、そっとしておいた… 


そして、主のいないヤグーの館に到着した… 

メーグルがゆっくりと玄関の扉を開ける… 
すると、誰もいないハズの館の中から光が洩れている… 
「…どういうこと!?」 
メーグルは、一瞬、目の前の光景を見間違いかと疑った… 

「…ひょっとしたら、ヤグーさんかも!?」 
と、楽観的なエリカンと 
「…いや、泥棒かも知れねぇ!」 
と、懐疑的なマイミンとで意見が分かれた… 

ともかく、一行は慎重に館の中へと進んでいく…



誰もいないハズの館から、光が洩れている… 
(…誰かが中に、いる!) 
そう判断したりしゃこ達は、慎重に、中へと進んでいく… 


ちょうど、りしゃこ達が食堂まで着いた時! 
「…予選突破!おめでとー!」 
と、歓声が上がった! 
周りを見てみると、そこにはナッキーやオ・カール姉妹、マイが待ち構えていた… 

目を白黒させるりしゃこ達… 
その慌てふためく様を見て、プッ!と吹き出すメーグル… 

「…ちょっとぉー!これってどーゆうことぉー!」 
と、プリプリ怒るモモ… 

「…どうもこうもないわよ。予選突破の後、この娘達とばったり出くわしたから、みんなで予選突破のお祝いしよう!って企画したの! 
…ホントに、みんなお疲れ様でした!」 
と、労を労うメーグル… 

だが…みんなの視線は冷ややかだ… 

「…あれ?みんな、どうしたの?…ねぇ!?」 
と、今度はメーグルが慌てふためき始めた… 

しばらく沈黙が続いた後、マイミンが、 
「…メーグル、お前!」 
と、肩をワナワナと震わせている… 

メーグル、絶体絶命!



実は、りしゃこ達にナイショで、予選突破の祝勝会を企画していたメーグル… 

さぞかし、みんなビックリした後、大いに喜んでもらえる…と思っていたのだが…みんなの視線は冷ややかだ… 

中でも、マイミンが、 
「…メーグル、お前!」 
と、肩をワナワナと震わせている… 

メーグル、絶体絶命! 

そして、マイミンの口から出てきた言葉は… 

「…メーグル!…お前は!…なんていいヤツなんだー!」 
と、聞いてる方が赤面するぐらい叫んだ… 

てっきり怒り心頭か?と思っていただけに、格好を崩されたメーグル… 

そして、マイミンがメーグルに近づくや否やガシッ!と抱き締め、熱〜いベーゼを交わす… 

「…ちょ!…やっ!…やめ!…やめてっ!」 
と必死に逃げようとするメーグルに、みんなが大笑いする 

その間にも、マイミンのベーゼがメーグルの顔めがけて降り注ぐ… 

「…もう!…何すんのよっ!」 
と、珍しく怒っているメーグルに、マイミンが一言



マイミンからの熱〜いベーゼに怒り出すメーグル… 

そんなメーグルに、マイミンが一言、 
「…これからも頼むぜ、リーダー!」 

面と向かって言われて、何だか気恥ずかしいメーグル… 
柄にもなく、やや赤面してしまった… 
それを、今まで冷ややかな視線で見ていたりしゃこ達が、一転してメーグルを冷やかす… 

が、冷静さを取り戻したメーグルが、 
「…今、冷やかした人は、後で呼び出しです!」 
と、冷たく言い放つと、あっという間にりしゃこ達は沈黙してしまった… 

… 

(…やばっ!) 
せっかくの良くなりかけた雰囲気がまた悪くなりそうだったので、 
「…ま、今日のところは見逃してあげるわ…」 
と、フォローをした 

すると、 
「…じゃあ、今日は『無礼講』ということで…カンパーイ!」 
と、モモが美味しいところをかっさらっていった… 

そして、楽しい宴がはじまった…



モモの音頭で乾杯を終えた後、楽しい宴が始まった… 
ナッキー達が手作りの料理でもてなせば、りしゃこ達は予選での裏話をいろいろと語る… 
気の置けない仲間達との楽しいひととき…時間が進むに連れて、みんなの大騒ぎはエスカレートしていった… 
ある者は歌い、ある者は踊り、そして、またある者は物真似をしたり、ダジャレを言ったり… 

しかし、その盛り上がった炎に油を注ぐ奴らが乱入してきた… 

「…たのもー!」 
食堂の入り口から声がするので、りしゃこ達が視線をやると、そこにはカンニャと双子達がいた… 
ただでさえ、ここに来ること自体がおかしいのだが、それに輪をかけて、カンニャ達の様子がおかしい… 

何だか酒くさい… 

気付いた時には遅かった… 
酒のせいで理性のぶっ飛んだカンニャが、次から次へとりしゃこ達にキスを迫ってきた! 
その様子を見て、ケラケラと笑っている双子達… 
だが、よくよく見てみると、双子の顔や首筋には、なにやらキスマークが… 
そう、双子達は、自分達だけが犠牲者…というのが許せなかったのだ… 

そして、楽しい宴はあっという間に修羅場と化した…



翌日― 

昨晩大騒ぎしたせいで、睡眠不足の中、眠い目をこすりながら会場へと向かうりしゃこ達… 
この事が決勝トーナメントに影響しなければよいのだが… 

そして、会場へと到着… 
すでに、ヨッシーノ達、『輝く女神』の面々はアップまで行っていた… 

「…Yo!おはYo!…何だか寝不足みてーだな!」 
「…お子ちゃまは夜更かしなんかしちゃダメよ!」 
と、会って早々、ヨッシーノ達にたしなめられるりしゃこ達… 
言ってることがいちいちごもっともだったので、耳が痛い… 

りしゃこ達が頭を抱えてると、今度は黒いフードを被った怪しい4人組がやってきた… 
りしゃこ達やヨッシーノ達に一瞥をくれただけで、別の離れた場所に陣取り、待機していた… 


そして、待つこと30分…大会運営スタッフがやってきて、会場内の控え室へと案内された… 
そこでも、りしゃこ達参加者は、会場前と同じ位置取りで待機を続けていた… 
待ち時間の間は、精神統一で集中力を研ぎ澄ます者、目を閉じて瞑想する者、リラックスしている者…と、各々自由な行動を取っていた…



控え室で待機すること15分… 

大会運営スタッフがやってきて、 
「…それでは、入場の準備が整いました!…出番15分前、よろしくお願いします!」 
と、言ってきた… 

いよいよ本番が始まる… 
待ちに待った瞬間だ… 
しかし、りしゃこ達にとって、これがゴールなんかじゃない… 
『魔導大会』で優勝する…そのゴールの通過点に過ぎない… 
感慨に耽っている場合じゃない…『夢』まで、後少しなのだ… 
そう、自分達に言い聞かせ、気分を引き締める… 


「…では、入場、お願いします!」 
スタッフの合図に従い、誘導されて、『コロシアム』までの通路を歩いていく… 
選ばれし者のみが歩くことを許される、重厚な石畳の通路… 
その静かな通路には、人の声などなく、反響する足音だけが響き渡る… 


そして、長い通路を抜けた先には…まばゆいばかりの光と…割れんばかりの大歓声… 

『コロシアム』の周囲は人、人、人… 
その光景は圧巻の一言に尽きる… 

遂にりしゃこ達は、ゴール目前まで、たどり着いた…



遂に、『夢』を叶えるための舞台・『コロシアム』へ、足を踏み入れたりしゃこ… 
割れんばかりの大歓声が、否が応にも気持ちを昂揚させる… 

「…ほら、ボーッとしない!」 
と、ミヤビに肩を叩かれ、我にかえった… 


係員に案内されて、『コロシアム』の上で、整列するりしゃこ達… 
何だか、慣れない場所で、地に足が着かなくて若干、居心地が悪い… 

しばらくして、司会進行役のキノコ頭がやってきた… 
彼こそが、迷司会者の『マコ=ドゥオーニモ』…あまりの迷司会ぶりに、「どーにもこーにもマコっちゃん」と、言われている… 

その、通称・マコっちゃんが、開口一番、 
「…みなさん!元気ですかー?」 
と、切り出す… 

大観衆が、 
(…わかっとるっちゅうねん!) 
と、心の中でツッコミながらも、大歓声で応える… 

耳に手を当てて、ウンウンと頷きながら、 
「…はぁーい!みなさん!お待たせしました!…只今より、ハロモニア一の大イベント・『魔導大会』を開催致します!」 
と、開会宣言を行った…