ミヤビVSミッツーのバトルが始まった! 弱った身体にムチを打って、ミッツーに襲いかかるミヤビ! 「…でやぁぁぁー!」 鋭い踏み込みで、ミッツーに詰め寄る! ミッツーは丸腰のままだ…! 隙だらけのミッツーに対して、遠慮なく大上段からの斬撃をお見舞いする…! ガキィィィン!! 「…!?」 ミヤビの斬撃が、何かによって、ミッツーに止められてしまった…! よく見ると、ミッツーの手には、鎖のようなものが…!…それは、数珠! 「…この数珠は、ワタシが念を込めて作ったもの…そう簡単には切れないわよ!」 自分の身長くらいはある長い数珠で、ミヤビの『キラーソー』を絡め取り、動きを封じる…! そして、数珠を引っ張り、ミヤビの体勢を崩しておいて、蹴りをお見舞いする! 「…くはっ!」 腹部に激痛が襲う…! と、同時に、杖から手が放してしまった! 絡め取った杖を手にしたミッツー… そして、その杖を無造作に投げ捨てた! 「…!!」 「…何すんのよ!」 形見の杖を投げ捨てられ、我を忘れて杖の元に走るミヤビ…! その、隙だらけの背中に数珠のよる一撃を見舞うミッツー…! 形見の杖を投げ捨てられ、急いで取りに行くミヤビ… だが、隙だらけの背中をミッツーが数珠で痛撃する! 「…うっ!…くはっ!…うぅぅ…!」 全身に激痛が走り、声にならない声で悲鳴をあげるミヤビ… 思わずその場にうずくまってしまう! 「…さぁ!さっきの威勢はどこにいったの!…ほら!…ほら!」 うずくまったミヤビに、情け容赦なく数珠で打ち据えるミッツー…さながら、別人格のようだ…! 「…あぁ!…うっ!」 数珠が肉を叩く異様な音に気付いたりしゃこが、キラリちゃんからミヤビの方へ視線を移す… 「…ミヤ!?」 りしゃこに動揺が走る!…その隙をキラリちゃんは見逃さなかった…! 「…可愛いキラリちゃんから目を逸らすなんて…許さない!…いけ!『きらりん☆彡シューティングスター』!」 星形の光球が、まるで彗星のように尾を引きながら、高速でりしゃこめがけて飛んでいく! 「…ぐわっ!」 流星は見事にりしゃこの腹部を撃ち抜いた! …そしてりしゃこも激痛のあまり、その場に崩れ落ちた…! 「…ずいぶん呆気なかったわね!」 ミヤビも、りしゃこもコハ・ミツの前にひれ伏してしまった… 「…ずいぶん呆気なかったわね!」 淡々と喋るキラリちゃん… 「…さぁ!止めよ!」 そうキラリちゃんが宣告した瞬間、異変が起きた! 「Boooo!! Boooo!!」 なんと!静かに戦局を見守っていた大観衆が、コハ・ミツの非情なまでの攻撃行為に対して、ブーイングを浴びせたのだ…! まさかの出来事にパニックになるコハ・ミツ… 「…そ、そんな…ワタシ達が…正義の味方なのに…!…ハロモニアの守護神『暁の乙女』なのに…」 二人のテンションが乱されてしまう… そして、会場から、 「…りしゃこー!」 と、一際大きな叫び声が会場にこだまする…! 腹部を押さえてうずくまるりしゃこが振り返ると、そこには、オ・カール姉妹が…! 「…りしゃこー!…お前の『夢』はそんなもんか!?…歯ぁくいしばれ!」 「…お兄ちゃん!…言葉遣いが下品!」 「お・姉・ちゃ・ん!」 「…ハイ…」 観客のやりとりを聞いた大観衆が、口々にりしゃこの事を噂し始める… そして、出た結論が… 「…り・しゃ・こ!り・しゃ・こ!」 「…り・しゃ・こ!り・しゃ・こ!」 りしゃこ達のピンチにチッサーが叱咤激励する…! すると、コロシアムの観客が、それまで劣勢だったりしゃこ達に声援を送り始めた! 「…り・しゃ・こ!り・しゃ・こ!」 「…り・しゃ・こ!り・しゃ・こ!」 すると、うずくまっていたりしゃこが徐々に立ち上がり始めた…! その様子を苦々しい思いで見つめるコハ・ミツ… これが、『判官贔屓』というものなのだろうか… 立ち上がったりしゃこの次は、まだうずくまっているミヤビにも声援が… 「…アゴゲルゲ!アゴゲルゲ!」 「…アゴゲルゲ!アゴゲルゲ!」 「…うっさいわ!…誰が“アゴゲルゲ”やねん!」 “アゴゲルゲ”コールが耳障りだったらしく、観客に向かって絶叫するミヤビ…! だが、ふらふらだった足元がシャンとしている…! これが、声援の魔力…というものなのだろうか… 立ち上がった二人に惜しみない拍手が… そして、また一方で異変が起きた! 観客が劣勢のりしゃこ達に声援を送る…! その声援に後押しされるように立ち上がった二人… その姿には拍手が… コロシアムの声援は、りしゃこ達へ傾きかけた… 『ホーム』にも関わらず、声援の集まらない現状に苛立ち始めるコハ・ミツ… そんな中… 「…コハねーちゃん!…がんばれー!」 「…怪人なんて、やっつけちゃえー!」 「…コハねーちゃんがいちばん強いんだよ!」 コロシアムの小さな一角から、コハの声援が…! …コハには、見なくったってわかる…どんなことがあっても、一番自分を信じてくれている…最強の応援団… 孤児院の弟、妹達… 最初の内は、ただ、子供達が喚いているだけ…と、煙たがったり、しかめっ面をしていた大人達も、 声を枯らして一生懸命に声援を送る『小さな応援団』に心を打たれ始める… そしていつしか、コロシアム内は、 「…り・しゃ・こ!…り・しゃ・こ!」 「…キラリ!・チャ・チャ・チャ!…キラリ!チャ・チャ・チャ!」 という声援に二分された…! …そして、ごく一部では、『アゴゲルゲ』コールも続いていたことも付け加えておこう… 思わぬ形で試合が中断してしまったが、コロシアム内の熱気は醒めやらない… 再び対峙する両チーム… そして、場内の熱気が最高潮に達した時…両チームが一気に弾けるように飛び出した…! りしゃことキラリちゃんが、ミヤビとミッツーが激しくぶつかり合う…! 「…手ぶらとはいえ、容赦はしませんよ!」 数珠を手に取り、ミヤビに襲いかかるミッツー! 対するミヤビは形見の杖を失っている上、疲労困憊だ… ミッツーを撃破するためには、ミヤビの魔力を増幅させる、あの杖が必要なのだ…! 当然、ミッツーも、それは百も承知だ…常に杖の前に立ちはだかるようにポジションを取っている…! 正に、計算し尽くされた戦い方…理詰めの戦法…まるで、堅固な要塞だ… で、あれば、力と力のぶつかり合いで叩き潰すか、それとも、奇襲によって切り崩すか…? だが、ミヤビには選択肢はただ一つしかなかった… 迫りくるミッツーを前に、じっと目を閉じ、仁王立ちで待ち構えるミヤビ… ミヤビに、何か秘策はあるのか…!? 目を閉じて、仁王立ちでミッツーを待つミヤビ… 何か秘策はあるのか!? 数秒後、それが明らかになる… 「…もう、おしまいです…!」 そう言いながら、手にした数珠を振り下ろすミッツー! …だが、その数珠がミヤビに命中することはなかった…! ―ミヤビが目を閉じていたには二つの理由があった 一つ目は、近づいてくるミッツーを油断させるため…そして、もう一つが… (…よし、今だっ!) そう判断したミヤビが、事前に詠唱済みの大きな火の玉を、目の前で炸裂させる…! すると、夜で暗いステージが、一瞬パァァァ!と明るくなった! 「…きゃっ!」 …そう、目眩ましだ… 人間の目は急激な明暗の変化に慣れるまでに時間を要する… ミヤビは、それを作為的に作り出して、ミッツーの監視の目をすり抜けることにしたのだ… もちろん、狙いはただ一つ…ミッツーの後ろにある『真紅の杖』! 「…な、何!?」 瞬間的に目が見えなくなったミッツーの傍を通り抜け、杖の元へ足元がもつれながらも走っていくミヤビ…! ミッツーの目を盗んで、杖の元へ一目散に走っていくミヤビ…! 足がもつれながらも、少しずつ、少しずつ杖に近づいていく…! しかし、それを見逃す程、ミッツーもお人好しではない… 「…そうは…させませんよ…!」 ミッツーが手に持った数珠でミヤビめがけて投げつけた…! 視力が一時的に奪われたとはいえ、ミッツーもミヤビの狙いはわかっている… その方向へ数珠を投げつけるだけ… 「…捕まえなさい!…『ノズチ』!」 ミッツーが念を込めると、ただの数珠が、まるで生き物のように蠢いて、ミヤビを追いかける! そのことには気付かず、ただひたすら杖に向かって走るミヤビ…! …しかし、 「…うわっ!?」 バタンッ!! 何かに足を取られてしまい、転倒してしまった! 足元を見るミヤビ…そこには数珠が絡みついていた…! しかも、意思を持っているかの如く、みるみる間にミヤビの両足にきつく食い込んでいく…! (…杖まで…後少しなのに…!…離せ!…離せ!) 杖に向かって走っていくミヤビ…それを阻止せんと、数珠を放ったミッツー… その数珠はまるで生き物のようにミヤビの足元に絡み付き…ミヤビは転倒してしまった! (…もう少しだったのに…!…離せ!…離せ) その願いも虚しく、いち早く杖にたどり着いたのは…ミッツー… 「…残念ですね…あと少しでしたのに…」 と、ミヤビに言って聞かせるミッツー… ミッツーの言葉に、唇を噛んで悔しがるミヤビ… 感情を押し殺して、 「…残念ですけど…アイオーラ隊長、ガキシャン副隊長が敗退してしまった今…ワタシ達も、負けられないんです…! 『暁の乙女』の一員として…!…そのためならば…ワタシは…鬼になります!」 「…!」 ミッツーの、表情の裏に隠された決心…『暁の乙女』を愛するが故の非情な攻撃…譲れない想い… それを目の当たりにして、ミヤビの頭に動揺が走った…! (…あの子は…揺るぎない決意を持っている…!…だけど…アタシは…アタシは…!) (あの子は…揺るぎない決意を持っている…だけど…アタシは…アタシは!) ミッツーの、揺るぎない決意に心をかき乱されるミヤビ…心の中に、迷いが生じる… だが、その迷いが吹き飛ぶ瞬間がやってきた… ミッツーが、ミヤビの杖を手にしたのだ…! 「…!」 「…先程も言いました通り、ワタシは負けられない…だから、あなたにとっての大事な杖…壊させて頂きます!! …どれだけ、あなたから恨まれても構いません…!…例え、外道と呼ばれても…!」 そう言うと、ミッツーは杖を頭上高く持ち上げた! …どうやら、そのまま膝でへし折るつもりなのだろう… …しかし、 ミヤビも決心がついた… 母の形見の杖を見てから… ミヤビの願い…想い…それは、まだ会ったことのない両親に会うこと…それだけは、やっぱり誰にも譲れない… その願い、想いがこみ上げてきた…! だから、ミヤビは必死に立ち上がった…! 両親とミヤビを繋ぐ、数少ない『絆』…それを壊させは…しない…! 気力、体力を超越した『何か』が、ミヤビを突き動かす…! 「…てやぁぁぁーっ!」 気力、体力を超越して、ミヤビがミッツーに向かって突進する…! 「…!」 ミッツーが、ミヤビの身体の異変に気付く…! いつの間にか、ミヤビの身体中を、真紅の、炎のオーラが包み込んでいた…! それが原因なのか、ミヤビの足に絡み付いていたハズの数珠が、外れたのだ…! 自由になったその足で、一歩、また一歩とミッツーの蛮行を阻止せんと、接近する…! 揺るぎない決意を持ったハズのミッツーに、迷いが生じた…! 必死な形相で、止めにかかるミヤビ… 心が揺らいでしまう…! その迷いを振り切るように、ミッツーが手にした杖を振り下ろそうとした瞬間…! ボッ!! ミヤビの杖が、真っ赤に燃え上がった…! 「…きゃあっ!!」 あまりの熱さに、つい、杖を放り投げてしまったミッツー… だが、その投げつけた先には…ミヤビがいた! ミッツーの手放した杖をいとおしく拾い上げるミヤビ… すると、先程まで燃え盛っていたハズの炎がウソのように消えていった… その代わり、ミヤビの身体中を包み込んでいたオーラが、一段と輝きを増す…! 元の持ち主の手に戻った『真紅の杖』…その途端、燃え盛っていた杖の炎が消えて、代わりに、ミヤビの炎のオーラが輝きを増した…! 暗い星空のステージに仄かに光り輝く姿…それは、まるで『女神』か『天使』のようであった… その光景に、コロシアム内が大いにどよめく… まさかの展開に、悔しそうな表情を浮かべるミッツー…だが、彼女は己の信念を貫くべく、行動に出た…! 法衣の懐から、何やらこけしみたいなものを取り出した…『三鈷杵』だ… それに念を込めると、たちどころにその端から刃が飛び出した…! そして、もう片方の手には数珠を持って… その姿は、まるで『不動明王』のようでもあった…! 「…今度こそ…討ち取らせて頂きます!」 「…アタシだって…譲れない『想い』がある…それは邪魔させない…例え、それが神様であっても…仏様であっても…!」 互いの気持ちと気持ちがぶつかり合う…そして、どちらからともなく、最後の激突に出た! 「…やあぁぁぁーっ!」 「…はあぁぁぁーっ!」 ついに、最後の激突を迎えたミヤビとミッツー… 『真紅の杖』で再びパワーアップしたとはいえ、すでに精神的、肉体的にも限界を迎えていた… 対するミッツーは、手堅い戦い方で、これまでほぼノーダメージと言っていい… ミヤビに残された勝機は…一発逆転の大技を命中させるのみ…! 何か物思いをした後、目をカッと見開いたミヤビが果敢に飛び出した! (…彼女の守りはほぼ完璧…!まるで、隙は無い…とすれば、長期戦は圧倒的に不利…身体が動くうちに…ケリをつける…!) その思いに共鳴するかのように、激しく燃え盛る『真紅の杖』…! 瞬く間に、炎の刃『キラーソー』へと変化した… 「…はあぁぁぁーっ!」 ミヤビが『キラーソー』を横一文字に振り抜く…! 一瞬、手にした『三鈷杵』で『キラーソー』を受け止めようとしたミッツーだが、第六感が働きバックステップで躱した… …その判断は…正しかった…『キラーソー』を振り抜いた後には、残像のように炎が襲いかかってきたのだ… もし、『三鈷杵』で受け止めようものなら、その後の炎によって、焼き尽くされただろう… ここにきて、背筋の凍るようなプレッシャーに見舞われるミッツー… 『キラーソー』の驚異に恐怖するミッツー… それを見て、最後の力を振り絞るかのように攻め込むミヤビ… とにかく、一発でもミッツーに当てれば、それが致命傷になる可能性が高い…! (…とにかく当てる…!)…その事だけに集中して、ミヤビは『キラーソー』を振り回す…! 一方のミッツーは、何とかミヤビの猛攻を凌がなければならない… 選択肢は二つ… 一つ目は、絶対防御壁『アンチンキヨヒメ』でもって、ミヤビの攻撃を完封すること… これなら、ミヤビの攻撃は防げるが、ミッツー自身は動けないし、何よりその隙に、二人がかりでコハを攻められたら形勢が逆転してしまう…! もう一つは、何とか逃げ回ること… 幸いなことに、ミヤビはもう限界に達しようとしている…さながら、燃え尽きる前に燃え盛る、蝋燭の灯火のような状態だ… (…ここを逃げ切りさえすれば、後はどうにでもなる…!) そう考えたミッツーは『キラーソー』よりリーチの長い数珠を振りかざして距離を取る作戦に出た…! …そして、その作戦が思わぬ結果を招いた…! 『キラーソー』に対抗して、リーチに勝る数珠で攻撃するミッツー… その選択が、思わぬ結果を招いた…! 振り回した数珠が偶然にもミヤビの手に当たったのだ! 「…痛っ!」 思わず、ミヤビの手から『キラーソー』がこぼれ落ちる… (…チャンス!) そう感じたミッツーは、数珠を操り、ミヤビの腕を絡め取った…! そして、グイッと引っ張り、手元に引き寄せる…! そうすることによって、ミヤビに『キラーソー』を拾わせず、且つ、もう片方に持った『三鈷杵』でミヤビを串刺しに出来る…! 「…あなたはよくやりました…強敵だったと認めます…ですが…もう、お別れです…!…さよなら…!」 最後の仕上げに、数珠でミヤビを引っ張り、『三鈷杵』で強烈な突きを放つ! …が、 その『三鈷杵』の突きが、ミヤビの身体を貫くことはなかった… 数珠でミヤビを引っ張ったつもりが、実はミヤビが自らミッツーの懐へ飛び込んだのだ…! そのため、ミッツーの突きのタイミングが狂ってしまい、空を切った…! 逆にミヤビは、ミッツーにガッチリとしがみつく…と、同時に呪文の詠唱を始めた…! みるみるうちに、顔が青ざめるミッツー… 自らミッツーの懐に飛び込んだミヤビ…そして、ミッツーにガッチリとしがみつき、同時に呪文を詠唱し始めた…! みるみるうちに、顔が青ざめていくミッツー… ミヤビの狙いは、ただ一つ…大技を命中させることのみ! とすると、至近距離であればあるほど命中率は格段に高くなる…! そのための『誘い水』として、“わざと”『キラーソー』を落としたのだ…! きっと、ミッツーは油断するだろう… 『キラーソー』の驚異が無くなれば、確実にミヤビを仕留めるために、近づいてくるに違いない…そこが最大の勝機…!と、ミヤビは読んでいた… その計算通りにミッツーは動いた…その結果、最後の“読み”はミヤビがミッツーを上回ったのだ! 「…ち、ちょっと!…離しなさい!」 うわずった声をあげるミッツー…そこには、『沈着冷静な戦略家』の姿は…もう、なかった…只の少女に戻っていた… 「…りしゃこ…後は頼んだわよ!…燃え尽きろ!『ほのまら』!」 ミヤビがそう叫んだ瞬間、ミヤビとミッツーが炎の渦に包み込まれた…! 「…きゃあぁぁー!」 コロシアム内に、ミッツーの悲痛な叫び声がこだました… ミヤビとミッツーが炎に包まれる中、一方のりしゃことキラリちゃんも激しいせめぎ合いを演じていた… 「…いくよ!『きらりん☆彡シューティングスター』!」 「…いっけぇ〜!『フェニックス・フェザー』!」 魔法と魔法が正面衝突する! 星明かりだけの暗いステージに、光と光が弾け合い、まるで花火のように煌めく… だが、戦っている当の本人達は激しい光の明滅に、集中力を保つのに必死だ… 互いに一撃必殺の威力を持つ魔法の応酬に、ミスは許されない… そんな中、試合中に響き渡ったミッツーの叫び声… 「…ミッツー!?」 キラリちゃんの集中力がミッツーの方へ向いてしまった…! その隙をりしゃこは見逃さなかった…! 「…はあぁぁぁー!『フェニックス・ウィング』!」 フェニックスを形取った炎の塊がキラリちゃんめがけて一直線に飛んでいく! 「…きゃあぁぁー!」 炎の塊がキラリちゃんの肩口に命中した…! 威力抜群の魔法を受けて、もんどりうって倒れてしまう…! …激痛で意識が遠退いていく中、キラリちゃんことコハの脳裏に、弟や妹達のことがよぎった… (…ゴメン…お姉ちゃん…みんなとの約束…守れそうにないや…ホントにゴメンね…) りしゃこの魔法を肩口に受けて、もんどりうって倒れてしまったキラリちゃん… その薄れゆく意識の中、去来するのは、一生懸命に応援をしてくれた弟や妹達… (…みんな…ゴメンね…お姉ちゃん…約束…守れそうにないや…ホントにゴメンね…) …しかし、 「……………って!」 「………………から!」 何かが聞こえてくる…! 意識を保って、耳を澄ますと、ハッキリと聞こえてくる…! 「…コハおねえちゃん、がんばって!」 「…おねえちゃんは、せかいいちつよいんだから!」 弟や妹達の必死な声援だ… ありったけの声を振り絞って、叫んでいる…! (…まだ…負けられない…!…頑張らなきゃ…!) 激痛を堪え、必死に立ち上がったキラリちゃん…! その姿に、場内は大いにどよめき…そして、拍手が起きた…! そして更に、「キラリ」コールの発生…! 例え不恰好でも、必死になって立ち上がるキラリちゃんに、場内の観客が共感したのだ…! (…不思議と力が漲ってくる…身体は正直、限界を迎えている…だけど、このままじゃ終われない…) 立ち上がったキラリちゃんが、最後の攻撃に打って出た…! りしゃこの魔法を受けて、深手を負ったキラリちゃん… 薄れゆく意識の中で、キラリちゃんの耳に入ってきたのは…弟や妹達の、一途なまでの声援… そして、コロシアム内の熱い声援…! 折れかけた心に、傷ついた身体に…力が漲ってくる…! (…このままじゃ終われない…!…アタシの…全身全霊の力を…ぶつける…!) よろよろと、不恰好ながら立ち上がったキラリちゃんが、目を閉じ、呪文を詠唱する…! その姿を見たりしゃこも、受けて立つ構えを見せた… 同じ、『譲れない想い』を背負った者同士として… 互いに呪文の詠唱は終えた…後は『想い』を魔法に代えてぶつけるのみ… 「…いくよ!最大奥義!『きらりん☆彡レボリューション』!!」 「…燃え上がれ!『フェニックス・エクスプロージョン』!!」 二人の魔法が、闘技場の中央で激しくぶつかり合う…! 夜のステージだというのに、まるで昼間のような明るさだ… まばゆい光の攻防は10秒くらい続いただろうか… …そして、終結を迎えた… (…アタシ…勝ったの☆カナ?…それとも…負けちゃったの☆カナ…) ぼんやりとする意識の中で、キラリちゃんことコハは考えを巡らせていた… 闘技場での、今までにない激しい戦い…初めて出会った『強敵(ライバル)』の存在…そして、勝負の行方… それよりも、今は、とても心地いい気分だ…何も考えずに、ずっと、このままでいたいような…そんな心地… しかし、それは長く続かなかった… 「…ちゃん!……ねーちゃん!」 「…て!……きて!」 耳元で、叫び声が聞こえる… 聞き覚えのある声…弟や妹達だ…もう、ちょっと…寝かしてほしいのに… その弟や妹達の声が、だんだんハッキリと聞こえるようになる… 「…コハねーちゃん!…起きて!」 「…やだ〜!…コハねーちゃん!…死んじゃ…やだ…」 …! コハは思わず飛び起きた! (…冗談じゃない…!) 弟や妹達の叫び声に、思わず飛び起きたコハ… (…夢!?) だが、夢ではなかった… コハの周りには、孤児院の弟や妹達が、心配そうにコハを覗き込んでいた… そして、コハが目を覚ますなり、 「…コハねーちゃん…」 「…おねーちゃん!」 「…お、おねーちゃん…」 と、一斉に嗚咽とむせび泣きが始まった… 「…ち、ちょっと!…あんた達…大袈裟だよ…!」 と、コハはたしなめるが、一向に泣き止む気配はない… そんな折、 「…よう!…無事やったか!?」 と、コハの背後から声がした… ふと、振り返ると、そこにはハロモニア女王・ユーコが立っていた…! 「…じょ、女王様…!」 素早く姿勢を正し、敬礼するコハ… 「…そんな堅苦しいことはええんよ…!…それよか、どっか痛いトコあらへん!?」 と、尋ねてくる… 「…いえ…特に…」 と、コハは答えた…