激闘が終わり… 

いつの間にか、ベッドに横たわっていたコハ… 
孤児院の弟や妹達が、コハの元気な姿に涙した… 
そして、ハロモニア女王・ユーコまでもが見舞いに訪れていたのだ…! 

突然のことに、全く思考が追い付かない状態だ… 


「…あの…ワタシ…一体…!?」 
コハがユーコに尋ねる… 

ユーコは、 
「…そっか…やっぱり覚えてないんやな…」 
と、呟いた… 

その時、ふと、コハは勝負の結果の行方が気になった… 

「…あの…ワタシ…負けたんですか…!?」 
と、ユーコに恐る恐る尋ねてみる… 

ユーコから返ってきた答えは意外なものだった… 
「…ああ…あれは…『引き分け』や…!」 
その答えに、一瞬、頭の中が真っ白になった… 

ぼーっとしているコハに、ユーコが解説した… 
「…あんたが放った魔法と、りしゃこが放った魔法は、最初、真ん中でぶつかり合うてたんやけど… 
途中で急にズレてしもうて、真っ直ぐ飛んでいったんや…! 
で、あんたもりしゃこも魔法を食らって吹っ飛んだ…っちゅうワケや!」 

意外な真相に驚くコハ…



コハとりしゃこの『奥義対決』は、意外なことに、『痛み分け』であった… 

…しかし、肝心の勝敗は、それとはまた、別物だ… 

「…あの…女王様…!…試合は…どうなったのですか…?」 
口には出したものの、コハの胸中は、結果を知りたい…けど、知りたくない…という複雑な気持ちだった… 
その表情を見てとったユーコは、一瞬、躊躇いながらも、コハにハッキリと告げた… 

「…惜しかったな…」 
その、たった一言だった… 
それで全てを悟ったコハ… 
そして、間を置いて、コハの身体中を駆け巡った感情は『悔しさ』だった… 
…もう少しで勝てるところだったのに…そう考えると、いつしか、頬を大粒の涙が伝っていた… 
とめどもなく、ぽろぽろと、涙がこぼれ落ちた… 

そして、慟哭… 
感情をありのままにぶちまけたコハを、ユーコが優しく抱き締める… 
コハが泣き止むまで、ユーコは何も言わずに、優しく受け止めた… 


そして、しばらくして… 

泣き止んだコハが、弟や妹達に、 
「…ゴメンね…お姉ちゃん…みんなとの約束…守れなくて…」 
と、謝った…



自分が敗北したことを知ったコハ… 
と、同時に、『魔導大会』で優勝して、孤児たちを悲しませないような孤児院を作る…というコハとみんなの『夢』も潰えてしまったのだ… 

泣き止んだコハが、弟や妹達に詫びる… 
「…ゴメンね…お姉ちゃん…負けちゃった…みんなの夢…叶えられなかった…」 
それを聞いたユーコが怪訝な顔をする… 
「…なぁ、コハ…何言うてるんや!?」 
逆にキョトンとした顔をしてるのは、コハの方だった… 

「…実は、ウチがここに来たんは、コハ…あんたの治療もそやけど…ちょっとした『お知らせ』があったんでな…」 
と言うユーコ… 
「…『お知らせ』…って?」 
唐突に言われて、頭が混乱しているコハ… 

「…あのな…あんたの試合を見て…『是非、孤児院作りに協力したい!』っちゅう人が、ようけ出てきたんや!」 
「…あ、あの…それって…!?」 
「…ま、そうゆうこっちゃ!…勝負に負けても、『幸せの女神様』は、いつでも頑張ってる子の味方、ってことやね!」 

…次の瞬間、コハの目にはまた、涙が…悔し泣きじゃない、嬉し涙が…キラキラと、こぼれ落ちていた…!



一方…りしゃこ達は… 


「…?…ここは…?」 
気が付いたら、ベッドの上だった… 

「…り、りしゃこ!?…大丈夫?」 
真っ先に視界に飛び込んできたのは、ミヤビ…と言いたいところだが、メーグルだった… 

「…りーちゃん…どうなったんだもん?」 
と、メーグルに問いかけた… 

りしゃこの意識がハッキリしていることを確認したメーグルが、顔をほころばせ、りしゃこに告げた… 
「…おめでとう!…二人の勝利よ!」 

その言葉を聞いた途端、りしゃこの表情がパアッと明るくなる… 
が、次の瞬間には、りしゃこはメーグルに、気になることを質問した… 
「…あの…ミヤは…?」 

その質問にも、メーグルはにっこりと答える… 
「…大丈夫…無事よ…!…ただ…」 
「…ただ?」 
「…最後にムチャをしたせいで、今はサキの治療を受けているわ…」 

メーグルの言葉を聞いて、飛び起きたりしゃこ… 
そして、ミヤビの姿を目で追う… 

すると、少し離れたところのベッドで、サキに包帯でぐるぐる巻きにされたミヤビの姿が…! 

「…ミヤーッ!」 
たまらずミヤビの元へ走っていくりしゃこ…



試合に勝利したのと、ミヤビの無事の確認…二重の喜びに包まれるりしゃこ… 

そして、サキに包帯でぐるぐる巻きにされたミヤビを見つけて、たまらずミヤビに飛び付いた…! 
「…ミヤーッ!」 

りしゃこの存在に気付いたミヤビ…だが、次の瞬間には、身体中を激痛が襲った… 
りしゃこが身体ごとぶつかってきたのだ…しかも、全速力で… 

「…ぎゃあぁぁー!!」 
医務室でミヤビの絶叫がこだました… 


しばらくして… 
落ち着きを取り戻したりしゃこが、ミヤビの傍らにちょこんと座って、嬉しそうにしている… 
時にはジーッと見つめたり、時にはしなだれかかったり… 
ただ、されてるミヤビは渋い表情だったが… 


試合を見ていたサキが、最後の結末を語り出した… 

「…ミヤがミッツーと『心中』して…りしゃことキラリちゃんが相討ちになって…闘技場には、誰も戦える選手がいなくなったの… 
そこで、審判の大臣さんが、『先に立ち上がった方の勝ち!』というルールにしたの… 
そしたら、ミヤが先に立ち上がって、ファイティングポーズを取ったの!」 
と、興奮気味に語るサキ… 
ファイティングポーズはダテじゃなかったワケだ…



意外と呆気ない幕切れにガッカリしたりしゃこだが、それでも、勝てたことは素直に嬉しい… 

りしゃことミヤビ、サキで喜びを分かち合っている時に、不意に、医務室の扉が勢いよく開いた! 


「…りしゃこー!」 
ズカズカと乱入してきたのは、意外にも、コハとミッツーの二人だった… 

「…よくもワタシに勝ってくれたわね〜!」 
と、すごい剣幕でりしゃこに詰め寄るコハ… 
あまりにもすごい剣幕だったので、つい、身構えてしまったりしゃこ… 

だが… 
「…ワタシに勝ったからには、絶対に優勝してよ!…絶対に、だから!…ぜ〜ったい!」 
と、言って、ニコッと笑ってみせたコハ… 

ミッツーも、 
「…もし…優勝出来なかったら…化けて出ますからね〜!」 
と、念を押す… 

そのミッツーの迫真の演技?に、つい吹き出してしまった一同… 

「…ちょっとぉ〜!…皆さんヒドイですよぉ〜!」 
と、すっかりイジケてしまったミッツー… 

お互いに打ち解けて、意気投合するりしゃこ達とコハ達… 

そして…



りしゃこ達の勝利を、ちょっと曲がった表現で讃えたコハとミッツー… 

そして… 

「…ハイ!…これ…!」 
と、コハがりしゃこに手を差し出す… 

その差し出した手には…木の実で出来た、素朴な人形だった… 

「…これ…は…?」 
と、コハに尋ねるりしゃこ… 

「…これはね…ワタシのお守り!…実はねー、弟や妹達が…作ってくれたんだ!…『大会』で、優勝出来ますように…って!」 
と、嬉しそうに話すコハ… 
だが、 
「…でも、負けちゃったから…」 
と、口にした時、ふと一瞬、寂しそうな表情を浮かべた…が、気を取り直して、 
「…だから、『この子』も連れてってあげて!」 
と、言った… 

黙って『人形』を受け取り、うん、と頷くりしゃこ… 
その様子を見守ったコハは、満足そうに、 
「…じゃあ、ヨロシクね!」 
と、言うなり、あっという間に部屋から出ていった… 

再び、医務室に静けさが訪れ、まったりとした空気が漂う…かと思われたが… 

ガラッ!! 

「…でも、優勝したら…返してね!」 
と、わざわざ戻ってきて、釘を刺していった…