最高速度でキャメ・サユの間をすり抜けていったミキ帝… 

しばらくして、キャメ・サユは…力無く、崩れ落ちた…! 

その一部始終を見ていた審判のヤススが試合を止めた… 
「…そ、そこまで!…勝者、ミキ帝…!」 
試合終了が宣告された… 


…ミキ帝の、その圧倒的な戦闘能力に、大観衆は絶句した…! 
静けさが闘技場内を支配する… 

そんなことはお構い無しに、ミキ帝はキャメ・サユの元に歩いていく… 
「…ち、ちょっと!待ちなさい!…とっくに勝負は…!」 
「…わかってるよ!…別に命まで取りはしねーよ!」 
審判・ヤススを一喝して、先へと進んでいく… 

そして、まずはキャメイを抱え起こす… 

大観衆は、ミキ帝の意外な行動に、固唾を呑んで見守っている… 

「…オラ、起きろ!」 
ミキ帝がキャメイを介抱してるではないか…! 

その行為に、大観衆の中から、自然発生的に拍手が起こる… 

だが、拍手が悲鳴に変わるのは、その次の瞬間だった…



「…オラ、起きろ!」 
キャメイを介抱するミキ帝… 
その行為は、大観衆には、「口は悪いが、スポーツマンシップに則った行為」と映ったらしく、場内から、自然発生的に、拍手が起きた… 

だが、次の瞬間には、拍手が悲鳴に変わった…! 


「…さぁ、お仕置きの時間だ…よっと!」 
突然、ミキ帝は、キャメイのパンツ(ズボン)の両脇を掴んで、グイッ!と力一杯引っ張り上げた…! 

「…イヤッ…!…あ、あん!」 
不覚にも、艶っぽい声を出してしまったキャメイ…! 
それがミキ帝のサドっ気をいたく刺激したらしく、 
「…お!…いやらしい声で鳴きやがるよ、この、メス豚がっ!」 
と、言って、更にキャメイを責め立てる… 

「…あ、あぁ!…ダ、ダメですぅ〜!…や、やめ…やめて…下さい…」 
すっかり弱ってしまったキャメイ…そして、ぐったりして、動かなくなってしまった… 

「…へっ!…ホントはもっとして欲しいクセによ!…あ、そうだ…!」 
キャメイに飽きたミキ帝が、次の標的・サユミンに目をやる… 

「…や、やなの!やなの!やなの!」 
すっかり怯えきってるサユミンだったが、ミキ帝は容赦しない…



キャメイを『お仕置き』して、それでもなお、『獲物』を狙い続ける『肉食獣』ミキ帝… 
次の獲物は、サユミン! 

「…さあ、『狩りの時間』だ…!」 
猟奇的な笑みを浮かべるミキ帝… 
怯えきった表情のサユミン…! 
…そこへ、思わぬ『救世主』が現われた! 

「…ちょっと!…もうよしなさい!」 
可愛い『後輩』のピンチに、審判役のヤススが止めに入った…! 

と、同時に『邪魔』も入った…! 
「…!」 
無言のまま、ヤススの行く手を遮る黒装束の女… 

「…ちょっと、あんた退きなさい!」 
いつもは温厚なヤススが、黒装束の女を乱暴に突き飛ばした…! 

その時、女の顔を覆っていたフードが取れた… 

その素顔を目撃した大観衆が、悲鳴をあげた後、絶句した… 


「…あ、あなた…!」 
突き飛ばしたヤススが、一番驚いたに違いない… 

その人物こそ、『一騎当千』とも謳われる、『ハロモニアの女傑』・アヤヤだった…! 
ミキ帝の『失踪』と前後して、姿を消してしまっていたが、誰もが『魔導大会』に姿を現わすとは思ってもいなかったのだ…!



黒装束の女・最後の一人が、『ハロモニアの女傑』・アヤヤと判明した… 

静まりかえる場内… 
茫然自失のヤスス… 

そんなこととはお構い無しに、『肉食獣』ミキ帝がサユミンに襲いかかった…! 
「…ホレ!…ええんか?ココがええんのんか!?」 
と、『肉食獣』というより、『スケベ親父』と化したミキ帝… 
サユミンの豊満な胸を堪能する…! 

「…あ、あ、あ!…やなの…やなの…」 
抵抗を試みるも虚しく、すっかりミキ帝のテクニックの前に陥落寸前のサユミン…! 


…が、事態は一変! 
「…ちょっと、タン!何やってんのよ!?」 
アヤヤがミキ帝を咎めたのだ…! 

「…な、何って…?この娘達に『お仕置き』を…」 
「…こらっ!…その『手癖の悪さ』で『暁の乙女』を『追放』になったんでしょ!?」 
「…!!…アヤちゃん…それはナイショ…」 
「…いいの!…さ、帰るわよっ!」 
と言って、ミキ帝の首根っこをムンズと掴んで引き摺って退場するアヤヤとミキ帝… 

…その嵐のような一部始終に、大観衆はただ、ただ見ているしかなかった…



一方、その頃りしゃこ達は… 
控え室にて、中継用の水晶玉でミキ帝の『暴挙』を見ていた… 
あまりの残酷さに、一同の大半が絶句した… 

しかし、りしゃこはミキ帝の『暴挙』が理解できてなかったので、 
「…ねぇ、ミヤー!…何であの人、喜んでるの?」 
と、ミヤビに質問する… 

ミヤビは、ミキ帝の『暴挙』が少し理解できていた…が、口に出して言うのはとても恥ずかしいし、はしたない… 
だから、 
「…いいの、いいの!りしゃこは知らなくったって…!」 
と、突き放した言い方をして、りしゃこの質問を拒否した… 

「…ゆー…」 
ミヤビの態度が気に食わないりしゃこ… 
…そこで、りしゃこの頭にピコーン!と閃きものが…! 

「…ミヤー!」 
ミヤビの背後を取ったりしゃこが、急にミヤビのパンツ(ズボン)を、ミキ帝を真似て、グイッ!と引っ張り上げた…! 

りしゃこの『奇襲』に、 
「…あっ!…やっ!」 
と、艶っぽい呻き声を上げてしまったミヤビ…! 

ピコーン!とようやくミヤビの『喜び』を理解したりしゃこが、再度ミヤビのパンツをグイッ!と引っ張り上げた…! 

「…こ、こらっ!馬鹿!…よ、よしなさいっ!」 
と、怒り出すミヤビ…!



ようやく、ミキ帝の『喜び』をなんとなく理解したりしゃこが、ミヤビのパンツを再度、グイッ!と引っ張り上げた…! 

「…こ、こらっ!馬鹿!…よ、よしなさいっ!」 
と、怒り出すミヤビに聞く耳を持たずに引っ張り上げたままのりしゃこ… 

一同は不覚にも、りしゃことミヤビのやりとりに吹き出してしまった… 

…そんな中、間の悪いことに… 

「マァ選手、マイハ選手、出番です…よ?」 
なんと!大会運営スタッフが控え室の扉を開けて、二人のやりとりを目撃してしまったのだ…! 

「…し、失礼しましたっ!…ご、ごゆっくり…」 
と言って、扉を閉めてしまった… 

更に、そのスタッフの行動に、大爆笑してしまった一同… 

すると、ミヤビの顔が恥ずかしさからみるみる間に紅潮していった…! 

(…ヤ、ヤバイ…!) 
気難しいお年頃のミヤビの怒りが最高潮に達したのに気付いたメンバーが、必死にミヤビをなだめようとした…! 

…が、時、すでに遅し… 

ボカーンッ!! 

ミヤビの魔法で、轟音とともに、控え室が大爆発してしまった…!



りしゃこの執拗な悪戯に、ミヤビの怒りが大爆発した…! 

「…ふう…」 
全ての怒りをぶちまけたせいか、スッキリとした気分のミヤビ… 

…だが、何か大事なことを忘れている気がしてならない… 
もどかしさと戦いながらも、必死に思い出そうとする… 

「…あっ!」 
ミヤビは思い出した…そう、次はマァとマイハの試合だったのだ…! 

先程まで紅潮していた顔が、みるみる内に、蒼ざめていく…! 


「…マァ!?…マイハ…!?」 
祈るような気持ちで二人の名前を叫ぶミヤビ… 
すると、思いの外、返事は早く帰ってきた… 

「…いきなりだったから、大変だったの…」 
「…危なかった…とゆいたい…」 

「…マァ!…マイハ!」 
ミヤビが声のする方へ振り向くと、そこには二人の無事な姿が… 
そう、爆発の中、マイハが咄嗟に、ミキ帝がそうしたように、『氷の壁』を作って爆風を防いだのだ…! 

ほぼ、ノーモーションで『防御壁』を作り出したマイハ… 
その実力が、遂にヴェールを脱ぐ…!


「…では、行ってくる…とゆいたい…」 
「…頑張るの…」 
と言って、二人が控え室を後にする… 

「…大丈夫…かな?」 
ミヤビが呟く… 

「…大丈夫だよ!」 
ミヤビの後ろからユリーナが答えた… 
「…何てったって、妖精の村一の力持ちと物知りが、コンビを組んでるんだもんにー!」 
ユリーナと同じく、チナリも答える… 

「…だったらいいん…だっ!?」 
ユリ・チナに向かって返事をしようとしたミヤビが言葉に詰まる… 

「…ねぇ、どうしたの、ミヤビー?」 
と、チナリが質問するが、崩れ落ちてしまい、話しにならない… 

「…ミヤビって、どうしたんだろーね、ユリー?」 
と、ユリーナに質問を振るチナリ… 

「…いや、ウチにも…ウプッ!?」 
…ミヤビに続き、ユリーナまでもが撃沈してしまった…! 

「…ちょっとぉ〜?何なのよ〜?…失礼しちゃう!」 
そう言って、ユリーナに詰め寄るチナリに対して、 
「…や、やめ!…うひっ…!…やだ…やめて…!」 
お腹を抱えて息切れするほど爆笑しているユリーナ…! 

そんなチナリの目に、鏡が目に入った… 

そこには…爆風から逃げ遅れたせいで、頭がアフロヘアーになったチナリが映っていた…



控え室を後にして、マァとマイハの二人が闘技場へと歩を進める… 

静まりかえった長い通路をくぐり抜けた先には、大観衆による大歓声が待ち構えていた… 

それも無理はない…二人の大戦相手は、元『暁の乙女』の親衛隊長とエース… 
そして、現『輝く女神』のリーダーとサブリーダーのヨッシーノとリカサークだったからだ… 

この二人は『暁の乙女』を退いた後も、ハロモニア市民から根強い人気がある… 
その二人に挑む『勇者』として、マァ達は大観衆に迎え入れられたのだ… 

しかし、喜んでばかりはいられない… 
それは、裏を返せば弱い方に肩入れする『判官贔屓』と同じことを意味する… 

大観衆は、マァ達の『大健闘』を期待しているだろうが、『大金星』までは考えていない様子だ… 

「…食ってやる!…とゆいたい!」 
「…でも、ホントに齧ったらダメなの…」 
「…」 

…マァとマイハの『挑戦』が始まる…