マァとマイハ、ヨッシーノとリカサークが闘技場中央で対峙する… 経験豊富なリカ・ヨシに対して、マァ、マイハはやや気負っている… 試合前に、ヨッシーノが 「…まぁ、『仲間同士』だから、正直言ってやりにくいけど…『仲間同士』だからって、手加減は無しだYo!」 と、真っ向勝負を宣言した… その言葉に、 「…望むところだ!とゆいたい…!」 と、受けて立つ構えのマァ… そして二人は無言のまま、拳をゴツンとぶつけ合う… 一方、リカサークはマイハを見て、 「…あら〜!とっても可愛〜い♪」 と、すっかりお気に入りのようだ… しかし、マイハは 「…ちょっと…怖いの…」 と、リカサークを警戒している発言をする… その言葉がいたく気に入らなかったリカサークは 「…あら?随分ね…!」 と、言った後、あの伝説の名台詞が… 「…お前も『美勇団』に入れてやろうか!?」 マイハはただ黙って首を横に振るばかりだった… そして、試合は始まる… マァ、マイハと、ヨッシーノ、リカサークの第7試合が始まる… いつもながらの審判のヤススによるチェックが済み、いよいよ号令待ちとなった… 「…それでは…始め!」 その合図とともに闘技場が変化を始める…! …そして数秒後には、闘技場には透明の硝子とおぼしき天井が出来て、半円形の『ドーム』になった… この変化が、両チームの戦略を左右するのか…? この環境変化に喜んでいるのがヨッシーノ… 「…これなら、全力が出せそうだな…!」 と言って、脇に抱えた『ある物』を取り出し、地面に置いた… その『ある物』に、唖然とするマァとマイハ… 二人が驚いたのは、こんな物が『武器』だなんて思わなかったからだ… 何故なら、ヨッシーノの持ってきた『ある物』とは…『ボール』だった… だが、驚く二人に、意にも介さずボールを足で器用に操るヨッシーノ… そして突然、唖然としたままの二人に向かってボールを蹴り込む! ビュン!! 二人の間を高速ですり抜けていった… 「…試合が始まってるぜ!早くかかってきなYo!」 マァ達とヨッシーノ達との試合が始まった… 開始早々、いきなり武器のボールをマァ達に向かって蹴り飛ばすヨッシーノ… 彼女なりの、全力を尽くす意思表示なのだろう… その思いに共鳴するかのように意気込むマァ…ゆっくりと、武器の『筋属バット1号』を取り出す… が… ドカァ!! 『何か』がマァの背後を急襲した…! 「…大丈夫?」 すぐさまマイハが駆け寄る… 「…な、何だ?とゆいたい…」 と、何が起こったのか、理解出来ていないマァ… そのマァの傍らに、先程ヨッシーノが蹴り飛ばしたと思われるボールが転がっていた…! 「…油断大敵だYo!」 と、キメてみせたヨッシーノ… 大観衆はヨッシーノのプレーに拍手喝采だ… 当然、マァとしては気分が悪いことこの上ない… そこで、おもむろにボールを拾い上げて、ノックの要領でボールを弾き飛ばした…! ビュン!! ボールはヨッシーノに向かって一直線に! 一瞬の隙を突かれて先制攻撃を許してしまったマァ… その悔しさのあまり、ヨッシーノのボールを棍棒・『筋属バット1号』弾き飛ばした…! ビュン!! ボールはヨッシーノに向かって一直線に! しかし、ヨッシーノは一歩も動かない! 「…ヨッシー!危ない!」 リカサークが叫ぶが、それでも動こうとしない… 恐怖で動けないのか、それとも…? 「…ハッ!」 なんと!ヨッシーノは、飛んできたボールを足の裏で受け止めてみせた…! ヨッシーノの足の裏で勢いの落ちたボールは、そのまま地面にポトリと落ちた… 「…ま、こんなモンでしょ!?」 と、再度キメてみせたヨッシーノ… そして、ボールを足で踏んづけた… その途端、 「…うぎゃあ〜っ!」 場内に響くヨッシーノの叫び声… そのまま、足の裏を手で抑えてうずくまる… どうやら、マァの打球が強すぎて、ヨッシーノの足を傷めつけたらしい… その様子を見て、観衆はどよめき…それがやがて、拍手に変わった… ここまで、今のところ五分五分である… 足を傷めたヨッシーノを 「…カッコつけるからよ…!」 と、冷ややかな目で見つめるリカサーク… 「…さあ、次はワタシの番よ!」 と、気持ちを切り替えて、勢いよく飛び出す… 「…負けません…」 リカサークに呼応するように、マイハが飛び出した! そこで、急に何を思ったか、リカサークが腰に巻いていたベルトを外した… その拍子でリカサークの衣装ははだけてしまった… 「…オォォ…!」 場内から野太い歓声があがる… そして、はだけた衣装の下から出てきたのは、黒革のボディースーツ…! ほどいたベルトは鞭に早変わりだ…! 「…ウオォォォー!」 場内の野太い歓声がひときわ大きくなった…! 歓声の大きさに満足しているリカサーク だが、身内のハズのヨッシーノから 「…リカちゃん…その衣装って…なんかド〇ンジョ様みたいだな…」 という発言が… …もちろん、その後、リカサークが踵を返してヨッシーノを『お仕置き』したのは言うまでもない… 「…さ、やり直し!やり直し!」 鞭による『お仕置き』でボロ雑巾のようになったヨッシーノを放置して、再度、仕切り直しを図るリカサーク… そしてマイハは、というと、一部始終が終わるまでの間、律儀に待っていた… そんな律儀なマイハに 「…あら?あなた、礼儀正しいのね?…ありがとう!…でも、これと勝負は別物だからね!」 と、お礼を言いつつ、接近していくリカサーク…! 「…お姉さん…ごめんなさい…」 マイハがポツリと呟いた… 「…?…あなた、何言ってんの?」 マイハの突然の独白に、さっぱり理解が出来ないリカサーク…だったが、ものの数秒後に、その意味を身を以て知ることとなった… 「…突然謝られても、困るんだけど!?」 と、リカサークがマイハに向かって一直線に突き進んでいく…! が、油断大敵! 「…きゃあ〜!」 ドスン!! 足元が滑ってしまい、豪快に尻もちをついてしまったリカサーク… 場内からは失笑が洩れる… 「…な、何がおかしいのよ!?」 と、リカサークは観衆に向かって怒鳴り散らす… しかし、その直後、リカサークの頭部を痛烈な痛みが襲いかかった…! マイハに向かって一直線に突き進んでいったリカサークだったが、足元が滑って転倒してしまう… そしてその直後、リカサークの頭部に痛烈な痛みが走った…! ガシャァァン!! 硝子か何かが砕ける音だ… 「…痛っ!」 思わず、頭を押さえてのたうち回るリカサーク… そして、手をやった頭部が冷たく濡れているのを感じた… (…もしかして!?) すぐさま、頭上を見上げるリカサーク… すると、再度、キラリと光る『何か』が頭上から降りかかってきた! (…危ない!) 素早く転がって回避するリカサーク… そして、先程までリカサークの居た場所には、次から次へと『何か』が落ちて、硝子のように砕け散っていった…! その『破片』が飛び散り、リカサークの顔にも当たる… ようやくリカサークは『何か』が何なのかを理解した…! 「…『氷』!?」 リカサークがマイハに視線を向けると、マイハは黙って頷いた… そう…先程ヨッシーノとリカサークが揉めている間、マイハは『律儀に待っていた』のではなく、『罠を仕掛けていた』のだ…! ヨッシーノとリカサークが揉めている隙に、罠を仕掛けていたマイハ… もちろん、恥をかかされたリカサークとしては面白くない… 「…よくもやったわね…!」 周囲に『罠』がないか警戒しながら、リカサークが近づいていく… この展開は、マイハにとって願ってもないことだ… 相手の頭の中に『罠』の存在を植え付けたことにより、集中力を削ぐことが出来るからだ… 加えて、相手の警戒心により、行動動作を鈍らせることも出来る… 心理面で優位に立つ…それがマイハの『戦術』だ… 一方のヨッシーノ達にしてみれば、まさか心理面で勝負してこられるとは思ってもみなかった… 「…ねぇ、ヨッちゃん…どうしよ?」 リカサークが先程の『お仕置き』でフラフラのヨッシーノに尋ねた… ヨッシーノの答えは意外なものだった… 「…どうしようも何も…突っ込むだけだよ!」 先程の苦い経験から、 「…でも…あの子は『罠』を仕掛けて…」 と、リカサークが忠言するが、その言葉を遮り、 「…いや、これでいいんだ…!」 とまで言い切ったヨッシーノ… そして、リカサークの腕を掴み、 「…それじゃあリカちゃん…いってらっしゃい!」 と、強制的にマイハに“突撃”させた…! 『お仕置き』された恨みか、『罠』に怯えて尻込みするリカサークをマイハに向かってブン投げたヨッシーノ… 「…ちょっと!…や、やだぁ〜!」 勢いがついてしまい、急に止まれないリカサークが、氷結してツルツル滑る床を必死になって走る… リカサークが近づくに従って、マイハは次々と『罠』を発動させていく! 硝子のような天井にカモフラージュされた『氷』がリカサークに降り注ぐ! …が、幸運の為せる業か、リカサークは頭上の『氷』を次々と回避していく…! それに対して慌てたのはマイハ…まさか、『罠』を次々と回避されるとは思ってもみなかったからだ…! 「…こ、来ないで…!」 今度は『罠』ではなく、直接魔法攻撃を狙ったマイハ… 無数の氷のつぶてがリカサークに向けて発射される! 氷のつぶてを浴びたリカサークは…無事だった… 「…あぁん!…もう痛〜い!」 …何の事はないこと…ただ、リカサークが滑って転んだ拍子に、マイハの氷のつぶてが頭上を通過しただけなのだ… しかし、一度のみならず二度までも赤っ恥をかいたのだから、リカサークの怒りは最高潮に達していた…! 幸運にも、マイハの『罠』と攻撃、二つ同時に回避することが出来たリカサーク… しかし、一度のみならず二度までも赤っ恥をかいたのだから、怒りは最高潮に達していた…! 「…さあ、恥をかかせてくれたお礼を、た〜っぷりさせてもらうわよ!」 と言って、鞭をしごくリカサーク… 「…さ、オレもそろそろ攻撃に参加させてもらいます…Yo!」 と、リカサークが『罠』をくぐり抜けた後を、ヒョコヒョコとやってくるヨッシーノ… 「…ちょっとヨッちゃん!ズルいじゃない!…自分だけ安全な道を通って!」 と憤るリカサークに 「…まぁまぁ、これも『チームプレー』だから!」 と、どこ吹く風のヨッシーノ… ヨッシーノが追いついたことで、マイハ達の旗色が悪くなった… 確かにマイハの『罠』は巧妙で効果的だったが、その持ち味が活かされるのは『待ち伏せ』している時… 接近しての混戦であれば、味方にも『誤爆』してしまう恐れがある… 図らずも、ヨッシーノの取った行動は、自分達を優位に持っていったのだ…! 自分の『間合い』が潰され、明らかに動揺が見られるマイハ… その隙を、ヨッシーノ達は見逃さなかった…! 『罠』を掻い潜られ、自分の『間合い』で戦えなくなり動揺するマイハ… その隙をヨッシーノ達は見逃さなかった…! 「…悪く思わないで…Yo!」 ヨッシーノが、マイハめがけてボールを蹴り上げ直撃させようとする…! 「…きゃあ!」 マイハが恐がってオーバーに避けてしまう…! …その避け方にヨッシーノ達は、マイハが戦闘に『不慣れ』ということを見抜いた…! そこで、マイハ達の『弱点』を突いて、一気に切り崩しにかかる…! 「…さっきのお返しよ!」 リカサークがマイハに向かって鞭を振り下ろす! 「…きゃあ〜!…い、いや〜!」 と言いながら逃げ惑うマイハ… しかし、よろけた拍子に躓いて転んでしまう…! そこに遠慮なくリカサークの鞭が飛んでくる…! バシッ!! …手応えはあった…!しかし、そのまま、リカサークは鞭を引っ張られてしまう…! 「…や、やだぁ〜!」 悲鳴を上げるリカサーク… それもそのハズ…リカサークが鞭でひっ叩いたのは、マイハではなくマァだった…! 「…マイハをいじめる奴は許さない!とゆいたい!」 リカサークの鞭を引っ張った挙げ句、そのままの勢いでカウンターのラリアットをお見舞いした…! マイハのピンチに割って入ったのは…マァ! リカサークの鞭を引っ張って手繰り寄せ、そのままカウンターのラリアットをお見舞いした…! 「…ぐえっ!」 身体が宙に浮いて、更に一回転した…! …そして、ゆっくりと地面に落下した… この様子に、開いた口が塞がらないヨッシーノ… 一方、鞭を恐れて目を閉じて震えていたマイハの頭を撫でて、 「…大丈夫か?とゆいたい…」 と、優しく問いかけるマァ… 「…うん…」 小さく頷くマイハ… リカサークを戦闘不能に追い込んで逆転したマァ達… 一方のヨッシーノは、予想外…といった表情を浮かべていた… …が、しかし、『リーダー』としての責任感から、顔をパンッ!と叩いて気合いを入れ直す… 「…さあ、一人だろーが二人だろーがかかってきなYo!」 と、大見得を切ると同時に、再度、ボールを蹴り上げた…! ビュン!! 勢いよく、ボールはマイハに襲いかかった! …が、ヨッシーノの狙いを読んでいたマァは、『筋属バット1号』でそれを弾き返す…! ボールは『ピッチャー返し』の要領で、シュートを放ったヨッシーノに一直線! …と思いきや、一度向こうへ飛んでいったハズのボールが、また、マァの方へ、まるで『逆再生』のように戻っていくではないか! ヨッシーノがマイハめがけて放った『シュート』を、マァが『ピッチャー返し』で弾き返す… しかし、そのボールが、まるで『逆再生』のようにマァ達の方へ戻っていくではないか!? 「…危ない!」 身を挺してマイハを庇うマァ…! ドカッ!! 「…うぐっ!」 重く、鈍い痛みにマァが思わず呻き声をあげてうずくまってしまう… 「…そろそろ、こっちも『とっておき』を出していくぜ…」 足元に転がって戻ってきたボールを踏みつけ、ヨッシーノが言った… ? …よくみると、ヨッシーノの足元には、もう一つ、ボールが転がっているではないか!? 「…ボールは一つだけ…とは限らないYo!」 そう言うと、足元のボール、戻ってきたボールで連続してシュートを放つヨッシーノ…! 「…危ない!」 マァに庇われたままのマイハが叫び声をあげる…! ドスッ!! ドスッ!! 「…うっ!…ぐっ!」 マイハを庇い、ヨッシーノのシュートの直撃を二度も浴びて、苦悶の表情を浮かべるマァ… 立て続けにヨッシーノのシュートを食らい、苦悶の表情を浮かべるマァ… 「…マァ…大丈夫…?」 マイハが心配そうにマァの顔を覗き込む… 「…大丈夫…だと…ゆいたい…!」 平静を装うが、声が弱々しくなってあるマァ… 「…マァ…我慢しなくていい…」 「…大丈夫だ!…大丈夫だとゆいたい…」 不安がるマイハに、力強い返事をして心配がらせないようにマァは振る舞う… 「…もう、『あの頃』のウチとは違う…!必ず、マイハ…守ってやるとゆいたい…!」 「…マァ…!」 強い決意を内に秘め、尚もヨッシーノに立ち向かわんとするマァ… 「…♪〜!…さっきのシュート二連発には自信あったんだけどなぁ〜!…そっちがその気なら…こっちも手加減しないよ!」 と、打たれ強い『好敵手』の出現に胸を踊らせるヨッシーノ… 「…じゃあ…いくYo!」 と再び立て続けにシュートを放つヨッシーノ…! 「…フン!」 マイハから離れたマァが、バットでシュートをカットする…! だが、次に放ったシュートが直線に飛ばずに変化した…! 「…フハッ!」 空を切るバット…! そしてシュートはマイハを捕らえんとする…! 立て続けに放たれたヨッシーノのシュート… マァが一つは弾き返すものの、もう一つは軌道が変化し、打ち洩らしてしまった…! 「…いやぁ〜!」 絶叫するマイハ…! しかし、無情にもシュートはマイハを直撃してしまう… …バタッ!! 「…マイハッ!?」 マァが叫ぶ! そして、倒れたマイハのことが気になり、試合中にも関わらず背を向けて駆け寄った…! マァの尋常でない慌てぶりが気になったヨッシーノも、試合中にも関わらず攻撃の手を止めた… 「…マイハッ!…マイハッ!…しっかりしろ!…とゆいたい…!」 転倒して、気を失っているであろうマイハを抱き抱えるマァ… そこへ突然、異変が起きた! 「…いやぁ〜!」 気を失ったハズのマイハが目を覚まし、絶叫した! そして、次の瞬間、マイハを抱き抱えていたマァの身体が、突然宙に浮いてしまった! 場内の大観衆が声を失った… 何故なら、そこにはマイハを『核』にした、巨大な『氷の華』が出現し、マァの身体を吹き飛ばしたのだ…! 「…いや…いやだよぉ…!…止めて…お願い…止めてぇ…!」 巨大な『氷の華』が、更に肥大する…!