りしゃこ達『ベリーズ』が医務室で和んでいる同じ頃… 

途方に暮れている女達がいた… 

そう、彼女達の名は…『女流怨鬼念火(めろんきねんび)』… 

どういう運命の悪戯かはわからないが、トーナメントの抽選の結果、最後の試合は彼女同士の間で争うことになった… 

「…あーあ…ウチらツイてないよねー…ウチら同士でやり合うなんて…」 
…そうこぼしたのは、4人の中のエース格・シバチャン=リア=ルガチャピン… 
「…でもですよ?…あたし達はどちらかが必ず、次の試合に進めるんですよ?…これって、ある意味ラッキーなのでは?」 
と、クレバーな分析をするのは、眼鏡っ子・ムラターメ=ラ=ゾーク… 

「…でも、仲間内でやるのって、何だかやりにくくない?」 
と、異論を唱えたのは、売れ残りのカラーヒヨコ・マサエ=マサヲ… 

「…ま、腹括って、ウチらで最後をサイコーの舞台にするんだよ!」 
そうみんなに喝を入れたのが、4人のリーダー・サイトー=サン… 

…彼女達は今までそこそこの実力がありながら、なかなかチャンスが掴めずにいた… 
それが突然、『魔導大会』のメインを任されたのだ… 
緊張しない方が無理、というものだ…



女流怨鬼念火… 
…彼女達は今までそこそこの実力がありながら、なかなかチャンスが掴めずにいた… 
それが突然、『魔導大会』のメインを任されたのだ…緊張しない方が無理、というものだ… 

「…ねぇ?あたし達…戦わなくちゃいけないんだよね…どうしよう?」 
「…どうする?」 
「…どうする?」 
「…どうする?」 
「…どうする?」 
「…どうする?」 
「…どうする?」 
「…どうする?」 
「…どうする?」 

「…この先どうする〜♪…って、試合するに決まってるでしょ!?」 
と、ついついノセられ歌ったものの、しっかり締めるところは締めたボスのサイトー=サン… 

「…いいこと?…確かにお客さんはウチらより『暁の乙女』目当てで来てると思うけど…ウチらが食ってやろうよ!」 
「…遠慮はナシよ!?」 
「…さぁ〜盛り上がっていきましょうか〜!」 
「…デインジャ〜!」 

『女流怨鬼念火』の4人がいよいよ闘技場へと向かう… 

そして、4人の顔前に広がる光景は…



毎度のことながら、試合前に地形が変化を始めた…!そして、現われたのは…なんと!有刺鉄線…! 
それに対して、 
「あ、ゴメンゴメン…間違っちゃった…!」 

ヤススにツッコミを入れる4人… 
すると、いつもと違う様子に帰り支度をしていたお客さんの足が止まる… 

4人の目の輝きが変わった… 
(…よし!…これはイケる!) 

そして、おもむろにヤススの方を見た4人… 
すると、ヤススが目配せをしている…! 

「…!」 

…どうやら、(好きなようにやれ)ということらしい… 
このGOサインに4人はほくそ笑む… 
(…じゃあ、好き勝手にやらせてもらいますか…!) 

…そして、伝説は生まれた… 

互いに手の内を知った者同士だから、いくら魔法を放ったところで当たらない上に、無気力ファイトをやってのけた… 

最初は戸惑いを感じていた観衆も、『女流怨鬼念火』の繰り出すド派手な魔法と、軽快且つお下品なトークの数々に笑いが起きた… 

今までの殺伐とした試合の中の、一服の清涼飲料水…その役割を『女流怨鬼念火』が見事に果たしたのだ… 
そして…



…そして、伝説は生まれた… 
『女流怨鬼念火』の繰り出すド派手な魔法と、軽快且つお下品なトークの数々… 
今までの殺伐とした試合の中の、一服の清涼飲料水…その役割を『女流怨鬼念火』が見事に果たしたのだ… 
結局… 
最後まで勝負がつかず、審判のヤススの提案により、ジャンケンの結果、シバチャン・サイトー組が勝ち上がることとなった… 

だが、その結果に、観衆から不満を言うものはなかった…みな、エンターテイメントとして、『女流怨鬼念火』の試合を満喫したのだ… 

最後に四方に礼をして去っていく4人…彼女達は試合の中で、密かに二つの重要なことをやってのけた… 

一つ目は、観衆を楽しませること… 
そして、もう一つは…自らの手の内を明かさなかったこと… 

そもそも、『女流怨鬼念火』は『輝く女神』の一員として、りしゃこ達をサポートするために参加したのだ… 
特に、このトーナメントで、ミキ帝、アヤヤ、アベナッチ、ゴトーといった怪しい奴らを消さなければならない… 
そのためには、手の内を明かすのは愚の骨頂だ… 

…一仕事を終えて満足気に引き上げる彼女達の顔は、どこか誇らし気だった…



全試合が終わって…コロシアムから観衆が次々と帰路につき始める… 

振り返れば、今日一日は様々なサプライズがあった… 
黒装束の4人組の正体…『暁の乙女』が一回戦で全滅…マイハの暴走… 

だが、それだけでは終わらなかった… 


りしゃこ達が医務室で『チーム名』決定記念パーティーをしている中、『チーム解散』の危機に瀕している二人組が… 

マイミンとエリカン…磐石の絆で結ばれたハズの二人の仲がピンチなのだ… 

原因はマイミンの手癖…というか、女癖の悪さ… 

今回のサキ・モモとの試合中でもそうだったが、大会前のサキとの練習試合でも、どさくさ紛れのセクハラを行ったこと…らしい… 

…それは、エリカンが最近、あまり相手してもらえてないことにも繋がるが… 

とにかく、二人の仲は、一回戦が終了しても、険悪だった… 


一回戦突破という好事に魔多し…そこに不幸か訪れた…



「…何なのよ!?試合中に他の女にあんないやらしいコトばっかりして!」 
「…違うって!…あれは真剣勝負の場でのハプニングなんだよっ!」 
「…嘘!…今までそういう手口で散々いやらしいコトをしてきたの…ワタシ知ってるんだから!」 
「…じゃあ…誰にそんないやらしいコトしたんだ?…いつ?どこで?何時何分何秒?」 

マイミンに証拠を示せ、と言われ、言葉に詰まるエリカン… 

「…ほら?だからオレはそんなやましいコトはしてないんだよ!」 
と、勝ち誇るマイミン…もっとも、言ってることは子供の口喧嘩レベルだが… 

「…何よっ!…マイミンのバカ!」 
そう言うと、エリカンはマイミンの横っ面を思いっ切り平手打ちを食らわせ、部屋の外へ飛び出していった… 


(…何よっ!…マイミンのバカ!…バカ…!) 
コロシアムから外に出る通路を駆け抜ける… 
走るエリカンの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる… 

こんなに一途に愛しているのに、わかってくれないもどかしさ、悔しさ…でも、今まで愛してくれたいとおしさ… 
そんな複雑な感情が、エリカンの頭の中でぐるぐる駆け巡る… 

…そして、走り疲れたエリカンが、気が付いた時には市街地の知らない場所へきていた…



一方、りしゃこ達は祝杯をあげていたが、せっかくだから…と、予選突破したマイミン達を誘おうとする… 
「…じゃあ、呼びに行ってくるね!」 
と、EXーZYX時代の仲間として、サキとモモが行くことになった… 


医務室を出て、マイミン達のいる控え室まで向かった… 

「…でもさ、マイミンってホント!エロいよね?」 
「…全く、ウチなんか二回目だよ?二回目!」 
「…お陰で大観衆の前で恥かいちゃったじゃない?」 
…などと愚痴りながら二人が通路を歩いていると、ものすごいスピードで走ってきた誰かとすれ違った… 

「…ねぇ、サキ…?あれって…エリカンじゃなかった?」 
「…そう…みたいだったよね?」 
「…!…ちょっと急ごうか?…何か、嫌な予感がするよ!」 

歩くのをやめ、走り出したサキとモモ… 

そして、たどり着いた控え室には…



サキとモモの二人が愚痴りながら通路を歩いていると、ものすごいスピードで走ってきた誰かとすれ違った… 
二人には、それがエリカンと気付いた… 

急いで向かった控え室には… 
不貞腐れたマイミンが酒?をあおっていた… 

「…マイミン!あなた何やってんのよ!?」 
とサキが叫ぶ… 
「…見りゃわかんだろ?…呑んでるんだよ!」 
そう言ってマイミンはジョッキに入った白濁色の酒?をまた、あおる… 

「…ちょっと!これ以上呑んだら身体に毒よ!…これはよしなさい!」 
そう言って、マイミンから酒?を取り上げようとするサキ… 

「…こら!止めろ!…それはオレの楽しみなんだ…よ!」 
「…だからと言って身体に悪いモノを飲ませるワケにはいかないわ…!」 
「…バカ野郎!…これはオレにとっての『クスリ』なんだよ!」 
サキとマイミンの間で酒?の奪い合いが起きる… 

その間隙をついて、 
「…モモがいただき!」 
と、モモがジョッキを奪い取り、中身をイッキ呑みした… 
…が、口から白濁色の液体を垂らしてしまった… 

「…おい!こら!返せ、オレのスッペシャルブレンドのプロテイン!」



エリカンと喧嘩をして、不貞腐れているマイミン… 

ちょっと回り道をしてしまったが、マイミンにエリカンを追いかけるよう進言した… 

しかし、マイミンは 
「…ほっときゃいいよ…そのうち、戻ってくるだろ…」 
と、耳を貸さない… 

「…マイミン…エリカンはあなたの大事なパートナーじゃない?…エリカンがいなかったらこの先…」 
「…そうよ!今は喧嘩してる場合じゃ…」 
「…いいんだ!…ほっといてくれ!」 

マイミンの頑固さに呆れるサキとモモ… 

だが、その態度もすぐさま変化することになる… 


「…!」 

「…どうしたの、マイミン?」 
マイミンの突然の動作に二人が尋ねる… 

「…エリカン…?」 
エリカンの名前を呟くマイミン… 
「…エリカン!」 

そして、急に控え室を飛び出してしまった…! 

控え室の中にはサキとモモの二人が取り残された格好だ…




エリカンの身に何かが起きたのか?…突然、控え室を飛び出していったマイミン… 
結果、控え室にサキとモモが取り残された… 

その二人も、マイミンの尋常でない行動に、急いで医務室に戻ることにした… 


「…ちょっと、みんな!聞いて聞いて!」 
医務室に入るなり、メンバーに呼びかけるサキとモモ… 

「…キャプテン、どうしたの?」 
と、口々にメンバーが尋ねてくる… 
サキとモモは息を切らせながら、 
「…あ、あのね…マイミンとエリカンが喧嘩しちゃって…」 
「…エリカンが行方不明なの!」 

「…え〜〜〜っ!?」 
二人の爆弾発言に驚く一同…それはヨッシーノ達も同じだった 

「…あの二人、何かあったのかYo!?」 
「…それが…わかんないんです…マイミンが慌てて飛び出していったんで…」 

「…じゃあ、祝杯はお開き!…みんなで捜しにいくYo!」 
「「…ハイ!」」 

ヨッシーノが仕切る中、一同は喜びもそこそこにエリカン捜索に乗り出した…






一方その頃… 

マイミンとエリカンの喧嘩をこっそり覗いていたもの達がいた… 
ミキ帝を中心とした、反・王国同盟…だ 


「…うわー!派手にやっちゃったねぇー!」 
と、口笛を吹いてミキ帝がおどけてみせる… 
「…ねぇ、ミキタン?あの二人…けっこう使えるって思わない?」 
と、アヤヤが質問した… 

「…うーん…けっこうイイ線いってると思うけど…あの二人、ヤグー一派の『EXーZYX』出身なんでしょ?…仲間にするの、むずかしいんじゃない?」 
と、ミキ帝が返事する… 
「…通常なら…ね…」 
と、前置きしてから、 
「…でも、仲間割れしてる“今”なら付け入る隙はあるよ!」 
と、アヤヤが言った… 

しばらく沈黙した後、 
「…あ〜っ!それイイじゃん!」 
と、ミキ帝が思わず感嘆する… 

「…じゃあ、『現地調達・スカウト大作戦』と行こうか?」 
「…賛成!」 
と、ミキ帝とアヤヤで取り決めがなされた… 

二人は後ろを振り返り、 
「…じゃあ、コンちゃん!作戦ヨロシク!」 
と、参謀・コンに作戦を丸投げした…