気心の知れた仲間との楽しいひとときも、時が過ぎて終わりを迎え… やがて、新しい始まりの朝を迎えた… 昨日同様に支度を済ませてコロシアムへと向かうりしゃこ達… 昨日と違ったのは、街を歩いていると、すれ違う人々がりしゃこ達を見て立ち止まったり、指を差したりするようになったのだ… 「…なんか、ウチらもちょっとした有名人になったみたいだね…!」 と、ミヤビが嬉しそうにメンバーに言うと、みんなが黙って頷く… 「…ワタシも、昨日のことがね…未だに信じられないんだよね…」 「…でも、夢じゃないんだよね!」 ユリーナとチナリも昨日のことを思い出して、興奮気味に話す… そんな会話を続けながらコロシアムへの道中を進んでいくと、ミキ帝達と出くわしてしまった…! 思わず身構えてしまうりしゃこ達…! だが、ミキ帝達は何のアクションを起こす訳でもなく、ただ通り過ぎていった…だが、それがかえって不気味だ… 一抹の不安を感じながら、コロシアム入りをするりしゃこ達… 入ってすぐに、りしゃこ達は見覚えのある人影が… りしゃこ達は目を疑った… その人影は、昨日、行方不明になったマイミン達…!すぐさま、りしゃこ達は後を追った…! 試合会場のコロシアムでりしゃこ達は見覚えのある人影を目撃する… その人影は、昨日、行方不明になったマイミン達…! すぐさま、りしゃこ達は後を追った…! 「…マイミン!?…エリカン!?」 しばらくは四方八方に散って二人の行方を追ってみたが、結局、見つけることは出来なかった… 「…みんな…特に今日、試合に出るメンバー…いい?…マイミンを捜すのはワタシ達がするから、あなた達は試合に集中して!」 と、メーグルが言った… メーグルが言うのも一理ある…マイミン達のことに気を取られて試合に集中出来ずに敗退したら、それこそ本末転倒だ… りしゃこ達はメーグルに後のことを任せてコロシアムに入った… 控え室は昨日と同じ場所だった… しかし、そこには昨日は居た『二人』がいない… いなくなって…改めて寂しさに気付く… しかし、今は感傷に浸っている時ではない… そのことを自覚したキャプテンのサキがみんなに声を掛ける… 「…いい?りしゃこ!ミヤビ!ユリーナ!チナリ!…今はとにかく試合に集中して…! 段々、相手のレベルは高くなってきてるから…!…特に、あの4人とぶつからないとは限らないから…!」 試合に出る4人は黙って頷いた… マイミン達がいなくなって寂しさを感じるりしゃこ達…だが、今は感傷に浸っている時ではない… 試合に出る4人は気持ちを切り替え、ただ、出番を待つ… …そして、待つことかれこれ30分…未だに呼ばれない… 手持ち無沙汰だったので、りしゃこ達は闘技場の傍まで試合を見に行った… ちょうどこれから試合が始まろうとしていたところだ… 片方の入場口には、りしゃこ達にとっての最大の難敵・ミキ帝とアヤヤが… そして、もう片方の入場口には、昨日、試合を沸かせた『女流怨鬼念火』のシバチャンとサイトー=サンが… 闘技場で対峙している両チームの間には、なんとも言えない重い空気が流れていた… 特に、『女流怨鬼念火』なんかは、昨日のおちゃらけ振りがすっかり陰を潜めているようだ… 「…『女流怨』の先輩…悪いんですが、次の試合の切符…頂きます…!」 と言うアヤヤに対して、 「…こらっ!…少しは先輩を敬いなさい!年寄りは大事にしなきゃ…!」 「…そうそう!…お年寄りは大事にしなきゃ…ってアタシのことかいっ!」 と、茶化して返すシバチャンとサイトー=サン… おちゃらけ振りは相変わらずだった… 「…『女流怨』の先輩…悪いんですが、次の試合の切符…頂きます…!」 と言うアヤヤに対して、のらりくらりとはぐらかす『女流怨』のシバチャンとサイトー=サン… ただ、それ以上にゴタゴタにはならず、淡々と試合に向けての段取りが進められていく… そして、審判・ヤススの号令とともに試合が始まった…! まずは、いつものお約束のように闘技場が変化する…すでに昨日の試合で体験済みの両チームは特に慌てることもなく、事の成り行きを見守っている… やがて、変化が収まった後には、闘技場の中に幾つかの柱が出現していた… 「…さぁ〜て!いっちょやってやりますかぁ〜?」 と、『女流怨』のボス・サイトー=サンが気合いを入れる! ミキ帝もアヤヤも、昔、新入りだった頃に『女流怨』の実力を間近で見てきただけに油断をしている様子はない… 「…アタシ達の成長した姿を見てもらいます!」 昔、『女流怨』に可愛がってもらっていたアヤヤが言い放った… 「…道を違えたかも知れないけど…ここは戦場…正義は勝者のみ!…遠慮はナシよ…!」 サイトー=サンの言葉とともに、戦いの火蓋が切って落とされた…! 「…ここは戦場…正義は勝者のみ!…遠慮はナシよ…!」 サイトー=サンの言葉とともに、戦いの火蓋が切って落とされた…! …と、その前に、ミキ帝とアヤヤが『女流怨』の二人が持ち込んだ大きな『匣』に目がいった… 「…あの、これは…?」 アヤヤが尋ねると、二人の返事は、 「…ああ、コレ?…コレはアタシ達の『武器』、だよ!」 「…ちょっと待って!…いくらなんでも、コレはデカ過ぎでしょ!?…ちょっと、審判!審判!」 必死になってヤススに抗議するミキ帝… だが、ヤススは首を横に振る…大きな『匣』を武器として認めたのだ…! 「…ちっ!…バーカバーカ!」 ついエキサイトしたミキ帝がヤススに向かって悪態をつく…! その瞬間だ…!ヤススがポケットをごそごそと探り、一枚の黄色い紙を取り出し、ミキ帝に向かって突き付けた! 「…ハァ!?何だよ?…こんな紙切れがなんだって言うんだよ!」 手にしたトンファー・ブレードで紙切れを瞬時に真っ二つにした…! すると、ヤススは今度は赤い紙を取り出し、再びミキ帝の前に突き付け、こう言った… 「…ミキ帝選手…審判侮辱により、退場!」 ついエキサイトしたミキ帝がヤススに向かって悪態をつく…! その代償は高くついた… 「…ミキ帝選手…審判侮辱により、退場!」 突然の事態に観衆がどよめく… 「…ちょっと…審判!…いくらなんでもひどいんじゃ…」 「…異議は受け付けません…!」 アヤヤの抗議にもヤススは素っ気ない…いや、むしろ、高圧的な態度だ… アヤヤは瞬時に考えた…もし今、ここで強く抗議でもしようものなら、きっとミキ帝の二の舞になるのは目に見えている… アヤヤはこれ以上抗議することなく、素直に引き下がった… アヤヤ一人と『女流怨』の二人とのハンディキャップマッチが始まった…! アヤヤは『女流怨』のコンビネーションを警戒し、そこでとった策は…先手必勝の奇襲攻撃! 羽織ったマントをバッと空けると、両の手には発煙筒が…! 「…一人いないんだから、これくらいのハンデはもらいますよ!」 そう言い放つと、二人に向かって発煙筒を投げつけた…! あっという間の出来事だったので、『女流怨』の二人は咄嗟に身を庇うことで精一杯だった… その間に、アヤヤは作戦を組み立てる…! そこで、『女流怨』の二人の内、いかにも耐久力がありそうなサイトー=サンを避けて、シバチャンに狙いを定めた…! ミキ帝が審判・ヤススに『退場』を命じられ、ハンディキャップマッチを余儀なくされたアヤヤ…! そこで奇襲攻撃に打って出た…! まずは『女流怨』の二人に向かって発煙筒を投げつけ、分断を図り、二人の内、シバチャンに狙いを定めた…! 「…はあぁぁぁーっ!」 二人に急接近し、あと10mくらいの地点から跳躍する! と、同時に今まで身に纏っていたマントを脱ぎ捨て、シバチャンに向かって投げつけた…! 「…!」 発煙筒の煙で視界が狭まっている上、マントで塞がれたらたまったものではない…! 回避が遅れて、すっぽりとマントを被ってしまったシバチャンに、手にした棍で痛撃をお見舞いする…! ガキィィン!! 「…!?」 手応えがおかしい…!肉を叩いたのではなく、明らかに金属を叩いた感触だ…! 「…多分、そうくると思ったよ!」 マントの中から、シバチャンの声がする… 「…だから、こっちも『切り札』を出させてもらったよ…!」 はらりとマントが落ちて、そこで目の当たりにした光景にアヤヤは驚愕する…! シバチャンに不意討ちを食らわせたアヤヤだが、明らかに手応えがおかしい…! 「…多分、そうくると思ったよ!…だから、こっちも『切り札』を出させてもらったよ…!」 はらりとマントが落ちて、そこで目の当たりにした光景にアヤヤは驚愕する…! マントの下から出てきたのは腕組みしているシバチャンと…シバチャンを守る二体の『人形』…! その二体の『人形』が、アヤヤの打撃からシバチャンを守っていたのだ…! 「…アヤヤ…あんたもあれから強くなったと思うけど…ウチらだって何もしてこなかったワケじゃないんだよ…!」 サイトー=サンが誇らし気に言う… 続けてシバチャンが二体の『人形』に命令した…! 「…行け…!『ムラタメ』!『マサヲ』!」 その命令に従って、二体の『人形』が、アヤヤに飛びかかった…! 『人形』は腰に帯びた短剣を抜き放ち、アヤヤ目がけて突きを繰り出す…! 正確、且つ速度のある突きの連続攻撃に、アヤヤも思わず後退りしてしまったくらいだ… 「…おいおい…背中がお留守だ…ぜっ!」 背後から声がしたかと思うと、サイトー=サンが巨大な戦斧を振り下ろす…! シバチャン、サイトー=サン、『人形』の『ムラタメ』と『マサヲ』による正確無比なコンビネーション… 『人形』二体の攻撃に後退りしたアヤヤの背後を狙ってサイトー=サンが戦斧を振り下ろす…! ブゥン!! …巨大な戦斧が凄まじい風切り音をたてて空を切った…! 一撃でも当たれば致命傷になりかねない強打…一瞬も気を抜けないアヤヤ…! そして、サイトー=サンの戦斧を躱した先にはシバチャンの槍が待っていた…!「…くっ!」 槍の穂先を棍で弾いてなんとか反らす…!そして、返す刀で円を描いてシバチャンの肩口を狙い、棍を振り下ろす…! …が、しかし、同じ形状の得物を使う者同士、敵の狙いは容易に読める… せっかくのアヤヤの反撃も、シバチャンには読まれてしまい、ステップアウトされてしまった… シバチャンが距離を置いたので、アヤヤも一旦距離を取ることにした… アヤヤは素早く、そして冷静に考えた… こちらは一人、向こうは四人…数の上では圧倒的に不利… その数の不利を覆すためには、『人形』の謎を解くこと… しかし、考える間もなく、再び四人が襲いかかってきた…! アヤヤは考えた…この数的不利を覆すには…? だが、それを考える間もなく、四人が襲いかかってきた! 「…オラオラ!…どしたどした〜!」 まずはリーチのあるシバチャンから切り込む… 巧みにフェイントを織り交ぜながら、アヤヤを受けに回らせる…それがシバチャンの役割だ… そしてアヤヤがシバチャンの攻撃を防がざるを得なくなった時に『人形』の『ムラタメ』、『マサヲ』が側面から同時に斬りつける…! あわよくば…で攻撃を繰り出すのが二人の役割だ… そして、体勢を崩したところで、サイトー=サンが渾身の一撃を打ち込む…! ひたすら、このルーティンを繰り返し、疲れ果てた相手を仕留める作戦…一度入れば出られぬ蟻地獄…その地獄にアヤヤは足を踏み入れたのだ! 『女流怨鬼念火』の合体奥義…人呼んで、『Death is 運命』! この熾烈な攻撃に加え、 「…どうする?」 「…どうする?」 「…どうする?」 「…どうする?」 と、“口”撃することで、相手の精神も身体もズタズタにすることが出来るのだ…! 次第に追い詰められていくアヤヤ…が、しかし、その両目に宿った闘志の炎は消えてなかった! 『女流怨鬼念火』の陣形『Death is 運命』に捕まってしまったアヤヤ… 数的に不利なため、逃げようにも回り込まれてしまい、なかなか蟻地獄から逃れられない…! しかし、幸いなことに、向こうも長時間は攻め続けられないことらしい…攻撃が終わると、一度体勢を立て直すのだ…! そこにアヤヤは違和感を感じた…! 人間のシバチャンやサイトー=サンならいざ知らず、『人形』の『ムラタメ』や『マサヲ』にインターバルなんて必要なのか!? 本当にアヤヤを倒したいのであれば、二体の『人形』を攻め続けさせればよいのだ…だが、それをしない… 「…!」 アヤヤは何か閃いた!まだ、漠然としたものだが、『女流怨』の、あの陣形に秘密が、そして“欠点”があることを… 早速、それを実証すべく、アヤヤはある行動に打って出た… 何故か攻め続けず、インターバルを取る『女流怨鬼念火』…そこにアヤヤは違和感を感じ、そして、閃いた! (…もし、アタシの仮説が当たってたら…十分勝機は…ある!) …意を決したアヤヤは早速、行動に打って出た…! と、同時に『女流怨』もインターバルを終えて、再度アヤヤに襲いかかってきた! 「…今度こそ、仕留めるわよ…!」 機は熟した…と判断したサイトー=サンの号令の下、今までと違ったスピードでアヤヤに急接近する…! しかし、アヤヤは動かない…! それでもお構い無しに 「…そりゃあぁぁ!」 と、一番手のシバチャンがアヤヤに槍を突き出す…! その瞬間、アヤヤが密かに詠唱していた呪文を放った…! ドォーン!! 目の前に、突然火柱が立った! 「…ぎゃあぁぁーっ!」 絶叫するシバチャン!全身に火が回った! 「…シバチャン!?」 火だるまになったシバチャンに、慌ててサイトー=サンと『人形』が駆け寄った! その様子に、アヤヤは静かに嗤った…! 「…ぎゃあぁぁーっ!」 火だるまになって絶叫するシバチャンに、慌ててサイトー=サンと『人形』が駆け寄った! その様子を見て、静かに嗤うアヤヤ…! なおものたうち回るシバチャンを嗤うアヤヤに、サイトー=サンが怒声を浴びせる…! 「…アヤヤ!あんたどんな神経してんの!?…人が、人が焼けているのよ!?」 しかし、アヤヤはとぼけたように言い放った… 「…おかしいですねぇ〜?誰も燃えてませんけどぉ〜?」 とぼけたアヤヤに、サイトー=サンが、 「…何言ってるんだ!?…見ろ!」 と、シバチャンを指差す! 指を差された方を見てアヤヤが 「…シバさん、燃えてませんけど?」 と冷静に言った… 「…バカ!シバチャンが燃えて…?…あれ!?」 サイトー=サンがシバチャンの方を見ると、丸焼けだったハズのシバチャンには火傷ひとつない… 「…あれは『幻覚の炎』だったんですよ…!アタシも恩のある先輩を丸焼きにする程、恩知らずじゃないんで!」 アヤヤがさらりとタネ明かしをする… ホッと胸を撫で下ろすサイトー=サン達だったが、 「…アヤヤ、あんたタネ明かしをしても平気なの…?」 と、問いかけた… 「…あれは『幻覚の炎』だったんですよ…」 アヤヤが、シバチャンを丸焼きにした『炎』のタネ明かしをした… そのタネ明かしにサイトー=サンが、 「…アヤヤ、あんたタネ明かしをしても平気なの…?」 と、問いかけた… 「…別にいいですよ。先輩達の、素晴らし〜い『手品』のタネ明かしもしますから!」 と、自信たっぷりに言い放つアヤヤ… 先程までの焦りはなく、いつもの、やや高飛車な態度が戻ってきた…! 「…言ってくれるわねぇ〜!…じゃあ、正確とやらを聞いてみようじゃないか…あんたの身体で!」 アヤヤに一杯食わされたシバチャンが先頭に立って、『Death is 運命!』の体勢に入った…! だが、今度はアヤヤが先手を取る! 「…こっちも少し魔法を使わせてもらいます!“…i.夢.../”!…Yeah〜!『楽園的休日』!」 アヤヤが奇妙な踊りを終えると、突然、闘技場内がむわ〜っ!とした空気に包まれた…! 「…暑いっ!」 暑さに弱そうなサイトー=サンがつい、口にした… そして、気温は闘技場の床から陽炎が見えるくらいにどんどん上昇していく…! その内、奇妙な行動が発生した! サイトー=サンやシバチャン同様に、『人形』達も、僅かながらピクピクと動いているのだ…! アヤヤの魔法によって、突然、闘技場内の気温が急上昇し始めた…! そして、異変が起きた! サイトー=サンやシバチャン同様に、『人形』達も、僅かながらピクピクと動いているのだ…! アヤヤは確信した…! そして、『女流怨』が動く前にさらなる行動を起こす…! 再度、魔法を解き放ったのだ! 「…!」 驚いたのは、『女流怨』の面々…目の前のアヤヤが、四体に分身したのだ…! 「…何も“分身”が使えるのは、先輩達だけじゃないんですよ!」 そう言い放って、アヤヤが手招きをする…明らかな挑発行為だ…! 「…へっ!舐められたモンだねウチらも…みんな!やるよ!」 サイトー=サンの号令の下、四体のアヤヤに一斉突撃を開始した! 一人一殺! そのつもりで四方に散った『女流怨』達…! ところがアヤヤは『女流怨』が急接近してきたと見るや、突然、背を向け、逃走し始めた! 「…あ、あんた!卑怯じゃない!?」 シバチャンが逃走するアヤヤに向かって吠えた! しかし、意に介さず、アヤヤは闘技場内の、幾つかの柱の陰に隠れてしまった! アヤヤの行為の真意が読めず、戸惑う『女流怨』達… 『女流怨』が急接近してきたと見るや突然、背を向け、逃走し始めたアヤヤ! そして、闘技場内の幾つかの柱の陰に身を隠してしまう… アヤヤの突然の行動に戸惑う『女流怨』… 「…そっちがその気なら…とことん付き合ってやるぜ…!」 『一人一殺』の姿勢を崩さず、『女流怨』はアヤヤに向かっていくことに… 四人がばらけて行動し始めてしばらく経った… シバチャンもサイトー=サンも、なかなかアヤヤを見つけられずイライラしていた… まず、柱の陰に隠れたアヤヤを慎重に探すのはかなりの集中力を要する… 加えて、闘技場内の気温はアヤヤの魔法で上昇していく一方… シバチャンやサイトー=サンのイライラはピークに達しようとしていた…! すると、突然、審判・ヤススの声が闘技場内に響いた… 「…そこまで!…只今の勝負、勝者…アヤヤ!」 そのアナウンスにシバチャンやサイトー=サンが愕然とする… 自分達は傷一つ負ってないのに敗北だなんて…きっとそんな心境だったろう… だが、闘技場内が元に戻るにつれて、その“理由”が明らかになった… 「…そこまで!…只今の勝負、勝者…アヤヤ!」 そのアナウンスにシバチャンやサイトー=サンが愕然とする… だが、闘技場が元に戻るにつれて、その理由が明らかになった… アヤヤの傍らには、縛り上げられた『人形』の姿が… 「…タネがバレちまったのか…」 苦笑いしながら、サイトー=サンが呟く… 「…ええ、あんなに息ピッタリのコンビネーションは『人形』なんかじゃムリですから…」 さらりとアヤヤが答える… 「…先輩達のコンビネーションが完璧すぎたからバレたんですよ!」 とフォローしたアヤヤに 「…ふん!勝負には負けたんだから、そんな褒め言葉なんか嬉しくないよ!」 と言いながらも、笑顔を見せたシバチャン… 「…ちょっとぉ〜!?和むのはいいけど、早くこのロープをほどいてよ〜!」 そう、『人形』の正体は、何のことはない…ムラターメとマサオだったのだ… 『人形』としてなら、『武器』として闘技場に潜り込める…というルールの盲点を突いたアイディア… しかし、正体がバレて、人数オーバーで反則負けになってしまった…というワケだ… 勝負は決した… 勝者は残り、敗者はただ立ち去るのみ… その敗者の『女流怨鬼念火』が去り際にアヤヤに声をかけた… 「…アヤヤ…あんたはウチらにとっては、出来すぎの、可愛い後輩だ…ウチらだってアヤヤ、お前のことがキライじゃない…好きだよ…」 「…でも、アヤヤ…お前達がこの世界を壊そうとしてるのは知ってるよ…だとしたら、ウチらとお前は敵同士だ…!」 「…理由は聞かないけど、この世界を壊すというなら、ウチらはお前を力ずくでも止める…!それでもやろうって言うのかい!?」 そこには、先程までの笑顔は無かった…戦士の顔つきだ… 「…これだけは…譲れません…!」 ただ一言、アヤヤは強い意志のこもった口調で答えた… 闘技場の中心で睨み合う両者… しばらくして、『女流怨』の面々の口元が緩んだ… 「…頑固なのは、昔っから変わらないな…!…お前はお前の“道”を行け…!ウチらはウチらの信じる“道”を行くよ…」 サイトー=サンがそう言うと、アヤヤの肩をポーンと叩いて退場した… 他のメンバーも、それに倣ってアヤヤの肩を叩いて退場していった… ズルはしたが、誇りある“敗者”に、アヤヤは姿が見えなくなるまで頭を下げていた…