…そして、舞台は変わって 


「…さてと…そろそろウチらも準備しますか!」 
「…そうね…試合には来るかも知れないし…」 
2回戦最後の試合の準備に取り掛かっているヨッシーノとリカサークがいた… 
ここで、ヨッシーノ達が言う 
『…試合には来るかも知れない』 
というのは、勿論、昨日から失踪したマイミン・エリカンの二人を差す 

「…とりあえず、無事ならいいんだけど…」 
と、リカサークが呟いたところで 
「…ヨッシーノ選手、リカサーク選手、出番です!…試合開始まで、あと15分ですのでよろしくお願いします!」 
と、大会運営スタッフが呼び出しに来た 

「…とりあえずは無事…みたいね…」 
「…ああ、後は変な事になってなければいいんだけど…な」 
自分達に呼び出しがあるのはマイミン達も闘技場に到着している証拠… 
そう判断したヨッシーノ達は最悪の事態だけは避けられた…と思い、ホッと胸を撫で下ろす… 
そして再び、試合の準備に取り掛かった…



…昨日の失踪からようやくマイミン達が姿を現した… 
…しかし、生気のない目にヨッシーノ達は背筋に冷たいものを感じた… 


「…ねぇ…ヨッちゃん…あの娘達…」 
「…あぁ…信じたくないけど…そうらしいな…!」 
不安気に尋ねるリカサークに、苦虫を噛み潰したような表情でヨッシーノが答えた… 
「…あれは…『フレッシュゴーレム(屍体傀儡)…!」 

「…ま、まさか…?」 
ヨッシーノの言葉に、思わずよろめくリカサーク 
「…でも、それしか考えられないんだYo…」 
動揺を押し殺して、毅然とヨッシーノは言う… 

「…どうやら、本気でぶつからないといけないかも…Yo?…リカちゃん…覚悟決めな!」 
ヨッシーノの力強い言葉に、 
「…わかった…でも、なるべく二人を傷つけないにするわ!」 
と、リカサークも覚悟を決めた



審判・ヤススのチェックが進む中、ヨッシーノ達はマイミン達と目を合わせなかった 
あの眼光の凶々しさに引き込まれてはいけない…と本能的に感じとったからだ… 
ヤススがヨッシーノ達のボディチェックに来た時、ヨッシーノがヤススにこっそり耳打ちする… 
「…ケイちゃん…もし、オレがこの二人に負けたら…女王に言って欲しいことがある…それは………」 
ヨッシーノの言葉にヤススの動作が一瞬、ピタリと止まった 
「…頼むよケイちゃん…感付かれないように…ね!」 
ヨッシーノの願い事を聞いて、ヤススは誰にも気づかれないように、小さく頷いた… 

ヤススはヨッシーノの言葉に動揺しながらも、それを悟られないように、いつも通り審判の役を演じ切った… 

「…それでは…始め!」



「…何なんだYo?これ…」 
頭を抱え込むヨッシーノとは対照的に、 
「けっこう面白そうね!…ワタシの魔法が上手く使えそうだわ!」 
と、リカサークは試合前から意気込む 

しかし、悠長なことを言っている暇はなかった…! 
突然、二人の視界にマイミンが現れた! 

「…ハッ!」 
マイミンが掌打を繰り出す… 
すかさず反応して、ヨッシーノ達は最小限の動きでそれを躱そうとする… 
…が、ヨッシーノがただの掌打ではないことに気付く… 
「…リカちゃん!すぐガードして!」 
「…えっ?」 
一瞬、テンポが遅れたリカサークをマイミンの掌打が擦る… 
すると、擦っただけなのにリカサークは大きく吹き飛んでしまった!
…マイミン達の危険度を察知したヨッシーノはヤススに伝言を託し、試合に臨む… 


「…それでは…始め!」 
ヤススの号令とともに試合が始まった… 
まず、闘技場が変化していく… 

その間も、ヨッシーノ達は目を伏して闘技場の変化が終わるのを待った… 
(…殺るか殺られるか…なんとかして無傷で済まさないと…) 
ヨッシーノ達はそのことばかりを考えていた… 

何者かに操られていることは確かでも、傀儡化したかはまだ、憶測の段階に過ぎない… 
それを確かめるためにも、マイミン達を、なんとか無傷に近い状態で押さえたいのだ… 

そして… 
ヨッシーノ達が思案を巡らせている間に、闘技場の変化が終わった 

「…なんだこりゃ?」 
ヨッシーノがそう言ったのも仕方がない… 
出来上がったのは、『鳥かご』だった… 
しかも、お誂え向きに、餌やり場や水浴び場、ブランコ、止まり木まである…



「…何なんだYo?これ…」 
頭を抱え込むヨッシーノとは対照的に、 
「けっこう面白そうね!…ワタシの魔法が上手く使えそうだわ!」 
と、リカサークは試合前から意気込む 

しかし、悠長なことを言っている暇はなかった…! 
突然、二人の視界にマイミンが現れた! 

「…ハッ!」 
マイミンが掌打を繰り出す… 
すかさず反応して、ヨッシーノ達は最小限の動きでそれを躱そうとする… 
…が、ヨッシーノがただの掌打ではないことに気付く… 
「…リカちゃん!すぐガードして!」 
「…えっ?」 
一瞬、テンポが遅れたリカサークをマイミンの掌打が擦る… 
すると、擦っただけなのにリカサークは大きく吹き飛んでしまった!



ヨッシーノ達が様子見しているところに突然、マイミンが急襲し、 
僅かにガードの遅れたリカサークがマイミンの掌打を受けて吹っ飛んでしまった! 

「…リカちゃん!?」 
ヨッシーノがリカサークに向かって叫ぶ… 
が、更にマイミンが勢いに乗ってヨッシーノにも攻撃を繰り出す…! 

「…フッ!ホッ!…ハッ!」 
次から次へと鋭い突きと蹴りがヨッシーノに襲いかかる! 
(…やべぇ!…昨日よりもパワーアップしてやがる!…さては…?) 

ヨッシーノが攻撃を避けながらも考えたのが、マイミン達の“操者”がマイミンのリミッターを外したのでは?ということ… 
でなければ、急激に強くなる訳がない… 

(…マズいな…加減を知らないから無茶してくるんだろうな…) 
ヨッシーノとしては、このまま試合が長引くと、マイミン達が傷つく恐れがあるので早くケリをつけたいところだ…



しかしながら、ヨッシーノは窮地に立たされたまま… 
こうなると、頼りになるのがリカサークだが、そのリカサークの様子を見てみると、エリカンの猛攻を受けている最中! 
「…きゃあぁぁ!」 
次々と降り注ぐ雹の雨を、植物で盾を作って辛うじて防いでる状況だ… 

ヨッシーノがリカサークの様子に気をとられている内に、恐れていたマイミンの打撃がヨッシーノにクリーンヒットした! 
「…ぐはっ!?」 
身体がくの字に折れ曲がってしまう…! 
それでも容赦無しにマイミンの攻撃は続いていくが、何とか躱し切って、追加攻撃を食らわずに済んだ… 

すると、マイミンもヨッシーノから一旦距離を取って、呼吸を整え始める… 

(…マジかよ!?…こりゃ相当やべぇ!…早いトコ何とかしないと…!)



リミッターを外したマイミンの猛攻の前に、ピンチが続くヨッシーノ… 
しかも、相方のリカサークもエリカンに追い詰められている… 

何か策はないものか?と、頭をフル回転させる… 
…が、その考えがまとまりきらない内に、再びマイミンが襲いかかる! 

「ハッ!…ハッ!…フンッ!」 
日々の鍛練に裏打ちされた正確無比な打撃が、ヨッシーノの身体を破壊せんと繰り出されるが、紙一重で避け続ける… 

ヨッシーノは攻撃を躱しながらも、再度、リカサークの様子を窺った… 
だが、リカサークが足を止めて防戦一方の状況に変化はない 

(…そうか…!) 
何か閃いたヨッシーノ… 
早速、それを行動に移す…



一方のリカサークは、エリカンの繰り出す雹の雨を、植物の盾で防ぐので精一杯だ 
魔法で反撃したいが、攻撃が途切れないのでそれも出来ない 

そこへ、ヨッシーノとマイミンが傾れ込んできた! 
「…!」 
エリカンにも、敵味方の識別能力は残っていたのか、マイミンを巻き添えにしないように攻撃を止めた… 

(…しめた!) 
今まで攻守逆転のきっかけを狙っていたリカサークが、ここぞとばかりに鞭を取り出してエリカンを打った! 

「…痛っ!」 
リカサークの鞭がヒットして、エリカンが堪らず呻き声をあげてしまった… 

「?」 
その様子にリカサークは違和感を感じたが、今は互いのピンチ脱出が先決だ… 

うずくまっているエリカンを無視して、ヨッシーノからマイミンを引き剥がしにかかる 

周りを見回して、リカサークが何かを発見した…! 
(…これって…使えるかも…!)



ヨッシーノの手助けによって、ピンチから脱出したリカサーク 

次は劣勢のヨッシーノを、マイミンから引き剥がさなくてはならない 
そこへ、リカサークの目に、ある物が止まった… 


一方、まだヨッシーノは、マイミンの攻撃に防戦一方だった 
リミッターが外されているせいか、持久力までパワーアップしているため、攻撃が止むことがない… 
ヨッシーノとしても、攻守を逆転しないことには、このままなぶり殺しにあってしまう… 

そこへ不意に、 
「…ヨッちゃん!…避けて!」 
と、背後から声がした… 

「…はいYo!」 
声に反応して、ヨッシーノが大きく身を翻す…! 

シュババババッ…!! 

ちょうど先程までヨッシーノが立っていた場所に、何かが飛んできた…! 
それが相対していたマイミンに直撃する!



「…!」 

マイミンも素早くガードして、大きなダメージは受けなかったものの、壁際まで追いやられ、ヨッシーノとの距離が開いてしまった… 
それこそが、リカサークの“狙い”だった 

「…行けっ!…『グリーン・プリズン』!」 
その掛け声から、マイミンの身体を直撃した“何か”が蠢き始めた! 
それがあっという間にマイミンの身体に絡みつき、“鳥かご”の外壁に巻き付いたのだ…! 

「…リカちゃん…これは…?」 
「…“鳥の餌”よ!」 

そう…リカサークは餌やり場の大量の種子をさながらマシンガンのように乱射して、種子が付着したところで植物を急成長させたのだ…! 

「…でも、これはあくまでも一時凌ぎだから、早くエリカンをやっつけましょ!」



リカサークの機転で、マイミンを『植物の牢獄』に閉じ込めることができた… 
その間に、ヨッシーノ達はエリカンを仕留めにかかる! 

「…行くわよっ!」 
リカサークが鞭でエリカンを打つ…! 

「…!」 

先程リカサークに鞭で打たれてうずくまっていたエリカンも、リカサークのラッシュを察知して、痛む箇所を押さえながら逃げ回る… 
そこへ、 
「…ちーとばっか痛いけど…悪く思わないで…Yo!」 
エリカンの動きを予測して、ヨッシーノが鋭いシュートを打ち込んだ! 
エリカンの顔前にボールが急接近する…が、 

バシッ!! 

信じられないことに、ヨッシーノのシュートを楽々受け止めたエリカン… 

「…お、おい?マジかYo!?…オレのシュートをあんな簡単に受け止めれないだYo!?」 
ヨッシーノがひどく動揺するが、目の前で起きていることは、悲しいかな、事実であった…



ワンハンドで受け止めたボールを、今度はエリカンが蹴飛ばした…! 

ビュン!! 

ヨッシーノの顔のすぐ横をかすめてかごの外壁に当たった… 

「…この野郎…!」 
挑発されたことで、ヨッシーノの頭に血が登る…! 
それを、 
「…ちょっと待って!」 
と、リカサークが呼び止めた… 

「…何だYo!?」 
攻撃前に呼び止められたことで苛立つヨッシーノに、リカサークが無理矢理引き寄せて何かを耳打ちする… 
「…お、おい?…ホントかYo!?」 
耳打ちに愕然とするヨッシーノに、 
「…残念だけど…恐らくそうね…」 
と、辛そうな表情をするリカサーク… 

「…待てよ?…じゃあ、アイツは裏切り者…ってことか!?」 
ヨッシーノがそう言い終わったと同時に、背後からイヤな音が聞こえてきた…



ヨッシーノの背後からイヤな音が聞こえてきた… 

ミシミシッ!! 
バキッ!! 

今まで『植物の牢獄』に閉じ込めていたマイミンが脱出したのだ…! 

「…ちぃぃ…!」 
歯噛みするヨッシーノ… 
すぐさま、牽制にシュートを打ち込んだ…! 

「…フンッ!」 
何と、驚くべきことに、ヨッシーノのシュートをダイレクトボレーで弾き返したマイミン…! 

「…え゛っ!?…マジで!?」 
ヨッシーノは思わず絶叫した…そして、ほんの数秒後… 

バコォォォン!! 

マイミンの放ったシュートはヨッシーノの顔面を打ち抜いた…! 
シュートを食らった勢いで、ヨッシーノの身体が宙に浮いて、そして地面に叩きつけられた…! 

「…ヨッちゃん!?」 

リカサークがヨッシーノに呼びかける… 
だが、返事が返ってこない…



そうこうしている間に、リカサークの前後をマイミンとエリカンが挟み込んだ 

「…!」 
即座に危機を悟ったリカサークは、この状況からの脱出を瞬時に考え始めた… 
しかし、マイミン達は、その猶予を与えるつもりもなく、リカサークとの距離をじわじわと縮めてきた… 

(…そうだ!) 
また、何かを閃いた様子のリカサークが、挟み撃ちの状況から、手に持った鞭を一回転フルスイングさせた…! 

「…!」 

マイミン、エリカンともにリカサークの攻撃を避け、ダッシュして間合いを詰めて攻めに転じた…! 

…が、リカサークはマイミン達の目の前でフワリと浮いた… 

「…!?」 

呆気にとられているマイミンを蹴飛ばし、勢いをつけてからリカサークは頭上にあるブランコに飛び乗った…! 
そう…頭上のブランコに鞭を引っかけていたのだ 

(…ヨッちゃんが回復するまで…アタシが引き付けておかないと…)



鞭を利用して、頭上のブランコに移動したリカサーク… 
ヨッシーノが回復するまではマイミン達二人を一人で相手しなくてはならない… 
(…何とか時間を稼がないと…そうだ!) 
リカサークの頭を名案がよぎる 
(…本家には劣るけど…仕方ない…) 


リカサークが魔法の詠唱を始めると、そうはさせじ、と、マイミンとエリカンが潰しにかかる… 
マイミンが鳥かごの檻を駆け登り、リカサークに接近してきた…! 
「…させないよ!」 
リカサークが鳥かごの檻を鞭で強打する! 

「…!」 
バランスを崩し、マイミンは再び床に逆戻りした…



鞭を利用して、頭上のブランコに移動したリカサーク… 
ヨッシーノが回復するまではマイミン達二人を一人で相手しなくてはならない… 
(…何とか時間を稼がないと…そうだ!) 
リカサークの頭を名案がよぎる 
(…本家には劣るけど…仕方ない…) 


リカサークが魔法の詠唱を始めると、そうはさせじ、と、マイミンとエリカンが潰しにかかる… 
マイミンが鳥かごの檻を駆け登り、リカサークに接近してきた…! 
「…させないよ!」 
リカサークが鳥かごの檻を鞭で強打する! 

「…!」 
バランスを崩し、マイミンは再び床に逆戻りした…



リカサークが発動させた魔法『タンポポ』… 
ゆっくりと地面に降りていくだけの綿毛の様子に痺れを切らしたマイミン達が、リカサークに再度向かっていく…! 


「…はあぁぁぁーっ!」 
再びマイミンは鳥かごの檻を駆け登り始めた… 
…が、そこで異変が起きる 
次第に、マイミンの動きが鈍っていったのだ 
失速したマイミンは、途中で外壁を登り切れず、床へと逆戻りした… 

不審に思ったエリカンがマイミンの様子を見てみると、いつの間にかマイミンの身体中に綿毛が張りついていた…! 
(…上手くいった!) 
リカサークは作戦の成功にホッとする… 
(…その綿毛は、絡みついたらなかなか離れないわよ…) 

リカサークの放った『タンポポ』とは、ダメージこそ無いものの、付着すると動き辛くなる代物だったのだ 
魔法の道理がわかったところでフワフワと宙に舞う綿毛を払い落とすのは困難だ… 
そこでエリカンも策を打った…



リカサークの『タンポポ』によって、マイミン達は下手に動けなくなった 
下手に動けば、綿毛に絡め取られて動作が鈍くなってしまうのはマイミンで実証済みだ… 

だが、エリカンは思い切った策に出た 

綿毛がまだ、鳥かごの上空に滞留していることを確認して、素早く“あるもの”に向かって駆け出す… 
エリカンの目指した先…それは、『水浴び場』! 

(…何するつもり!?) 
エリカンの不可解な行動にリカサークは眉をひそめる… 

すると、エリカンが“水浴び場”を背に、呪文を詠唱し始めた… 
様子を見ていると、どうもそこから動く気配はないらしい… 
そのことは、ヨッシーノの回復を待つ時間稼ぎをしたかったリカサークにとっては好都合だった… 
あわよくば、エリカンのとった行動が失敗して、マイミン同様動作が鈍れば…とも思っていた 

が、そう都合がいいことが続くものではなかった…



呪文の詠唱を終えたエリカンが魔法を発動させた… 
すると突如、背後にあった『水浴び場』の水が、水飛沫と化して鳥かごの上空をを舞った 
それが雨のように床に降り注ぐかと思われたが、降下する途中で白いものに変化した… 

リカサークは目を疑った… 
(…まさか…『雪』!?) 

どうやらエリカンの狙いは、綿毛を『雪』に変えてしまうことだったようだ… 
綿毛が『雪』になれば、絡みつくこともなくなる… 

リカサークのせっかくの時間稼ぎが、エリカンの機転によって無駄になってしまった 

(…そんな…!) 
リカサークは身体から力が抜けていきそうだった… 

いよいよ2対1の戦いになるかと誰もが思ったその時…!



リカサークのせっかくの時間稼ぎが、エリカンの機転によって無駄になってしまった 
そして、いよいよ2対1の戦いになるかと誰もが思ったその時…! 


「ぎゃあああ〜!」 
闘技場内をつんざくような悲鳴が響き渡った 

「…寒ーんだよ、この野郎!」 
マイミンのボレーシュートを食らってノビていたヨッシーノだ… 
「…せっかくいい気持ちで寝てたのに…チキショー!」 
明らかに人格が変化した様子に見える… 

「…マ、マズいわ!」 
ヨッシーノの様子が変わったのを見たリカサークの顔から、サーッと血の気が引いていく… 

そして、ヨッシーノの傍まで駆け寄って 
「…ダメよヨッちゃん!落ち着いて……ね!」 
と声をかけ、何とかなだめようとする…が、 

「…バカ野郎っ!」 
と、長年連れ添ってきた相方のリカサークを突き飛ばす! 
この行動には、場内の観衆からざわめきが起きる… 



突然、荒れ狂ったヨッシーノ…止めに入ったリカサークまでも突き飛ばす! 
その光景に、場内がざわめき出す 

突き飛ばされたリカサークは、ガックリと肩を落としてうなだれている… 
そしてポツリと 
「…あぁ…もうダメだわ…」 
と、暗い声で呟いた 

一体、何が起きたか誰にもわからない状態で、ヨッシーノが今までと違った動きに出た! 


「…オレに布団をかけなかったのは、お前か〜!オレが風邪をひいたら、どうするんだ〜!」 
と、怒鳴り散らしながら、マイミン達にノーガードでツカツカと歩み寄っていく 
マイミン達は、ノーガードで向かってくるヨッシーノの常軌を逸した行動に思考が停止してしまい、 
ただ茫然と見ているだけだった 

そこへ、ヨッシーノから 
「…このぉ…大バカ野郎っ!」 
と、痛烈なビンタが飛んできた! 



突然、人格が豹変したヨッシーノ 
いきなりマイミン達に強烈なビンタをお見舞いした! 
ビターン!! 

ビンタを食らったマイミンがあり得ないくらい吹っ飛んだ… 

その吹っ飛び具合と手に残った感触に満足気な笑みを浮かべたヨッシーノは、次の獲物・エリカンに視線を向けた… 

(…!?) 
急に視線を向けられたエリカンは自分が危機に陥っていることにようやく気付く… 
そして、不味いことに目と目が合った…! 

「…次〜は〜お〜前〜だ〜〜〜!」 
いきなり猛ダッシュするヨッシーノに対して、萎縮していたエリカンは反応が遅れてしまった…! 

すぐさま逃げ出したが、敢えなくヨッシーノに確保されてしまう… 

「…逃がさんぞ…この、大バカ野郎がっ!」 

ビターン!! 
「…ぶべらっ!」 

マイミンの時と違って、エリカンは錐揉みしながら吹っ飛んでいった! 
そして地面を二度三度とバウンドし、鳥かごの外壁に激突してようやく止まった… 



ヨッシーノのビンタを食らったエリカンは、鳥かごの外壁に激突した…! 
その後ピクリとも動かないマイミンとエリカン… 

目の前で起きた壮絶な光景に、場内の観衆は声を失った… 

と、同時に、誰もが固唾を呑んで、吹っ飛んだ二人の安否を気遣っている… 

しばらくして、目を覚ましたのはエリカンだった… 
「…イタタ…!」 
強かに外壁に打ち付けた後頭部を押さえながら、ふらふらとした足取りで立ち上がる… 

その時だ…場内から一斉に悲鳴が上がった! 
観衆だけではない…対戦相手のリカサーク、そして、鬼の形相をしたヨッシーノまでもが悲鳴を上げた! 

エリカンは自分の身に、一体何が起きたのかを理解出来ていなかった… 
だが、観衆の一人が叫んだ言葉がエリカンの耳に、鋭く突き刺さった… 

「…ば、ば、化け物っ!」 
その言葉で、エリカンは自分の顔をぺたぺたと触る… 
すると、ぐにゃりと嫌な感触がした… 



「…ば、ば、化け物っ!」 
観衆からの一言で、エリカンは自分の顔を触ると、ぐにゃりと嫌な感触がした… 
(…不味い…!変装が!) 
何とか元通りにならないかと、エリカンは顔を手でいじってみたが、元には戻らず、場内からの悲鳴は増すばかり… 

(…あーもう!…これからって時に!) 
エリカンは心底悔しがった 
完璧だったハズの作戦が、脆くも音をたてて崩れていく… 
(…くそっ!…あなた達さえ…あなた達さえいなければ!) 
エリカンは、ヨッシーノ達を睨み付ける… 

が、しかし、エリカンにとって今、一番肝心なのは、自分の“正体”がバレないようにすること… 
もし、“変装”がバレて、身元を探られて捕まってしまっては、今まで遂行してきた『計画』がパァになる… 

目の前では、暴れ牛のようなヨッシーノをリカサークが何とか抑えている… 
エリカンの相方・マイミンはノビたままだ… 

エリカンは苦渋の決断を迫られ…そして… 



エリカンは苦渋の決断を迫られ…そして、両手を上げて、『降参』の意思表示をした… 

エリカンの意思表示と、ヨッシーノの暴れ具合を考慮したヤススが、止むなく断を下した 
「…それまで!…勝者、ヨッシーノ、リカサーク組!」 

唐突すぎる試合の結末に、観衆からは 
「…えぇーっ!?」 
「もう終わりなのー?」 
などと不満の声が洩れた… 
しかし、場内に不満の声が聞こえても、審判のジャッジは絶対である… 


コロシアムが依然として騒然とする中、ヤススは闘技場内の『結界』を解くとともに、ヨッシーノの制止に向かった 

「…コラ!いい加減にしなさいっ!」 
ヤススが怒鳴り付けて、ヨッシーノに平手打ちを食らわせる 
すると、今まで猛り狂っていたヨッシーノが、ハッと我にかえった…! 

「…あ、あれ?…オレ…?」 
キョトンとしているヨッシーノを、ヤススとリカサークが睨み付ける 

「…もう!しっかりしてよ!」 



ヤススの平手打ちですっかり我にかえったヨッシーノは、闘技場内でヤススとリカサークの二人がかりで説教を受けていた… 

「…もう!しっかりしてよ!…ワタシがいなかったらとんでもないコトになってたのよ!」 
「…全く、世話の焼ける…」 
そんな愚痴を延々と聞かされていた… 

その時、ふと、ヨッシーノが、 
「…ね、ねぇリカちゃん…」 
と、何かを話し掛けようとする 
しかし、日頃の鬱憤晴らしに出てきた愚痴は、とどまるところを知らない… 
「…!……!?」 
「……?………!」 

なかなか話が切り出せない中、イライラしてきたヨッシーノが 
「…うるせぇ!このメス豚共がーっ!」 
と、二人を一喝した! 

シーン… 

コロシアム内に、一瞬にして静寂が訪れた… 

「…ん、んんーっ!…ゴメン…言い過ぎた…」 
自分の行動の大人気なさを恥じたヨッシーノ 

だが、静かになったことで、言いたかったことを切り出すことが出来た 

「…マイミン達は、どこに行ったんだ!?」 



ヨッシーノが切り出した疑問、それは… 
「…マイミン達は、どこに行ったんだ!?」 

その疑問に、リカサークとヤススの二人もハッとした…! 
「…そ、そういえば…」 
ヨッシーノに言われて、周りを見回す二人… 

ところが、闘技場内には既に二人の姿はなかった… 

「…やられた…!」 
ヨッシーノが悔しそうにこぼす… 
恐らく、リカサークとヤススがヨッシーノに説教してる隙に行方を眩ましたのだろう… 

「おい、リカちゃん、ケイちゃん!…急いで後を追うんだ!」 
試合終了の勝ち名乗りもそこそこに、ダッシュで控え室に向かった… 


数分後…三人は控え室の前にたどり着いた… 
すると、部屋の前にはりしゃこ達の姿が… 

「おい、みんなしてどうしたんだYo?」 
ヨッシーノがりしゃこ達が集合している理由を問いただす 
「…マイミン達を…待ってたの…」 
りしゃこが重い口を開いて言った 
「…でも、ここには来なかったの…」