「お見舞いに行くんだもん?」 「そう、だけど・・・何か?」 異様に瞳をキラキラと輝かせているりしゃこを見て、コハは不吉な予感がした (もしかして・・・余計なコト、言っちゃった☆カナ?) そして、それは現実となった 「行く!」 「『行く!』・・・って、どこに?」 「お見舞いに、だもん!」 繁リ;o´ゥ`リ (マ、マズい☆カナ?・・・センパイのお見舞いに“問題児”を連れて行ったら・・・大変だ〜!) 「ア、アハ・・・で、でもぉ、お見舞いってぇ〜案外たいくつで面白くないかも〜?」 そう言うことによって、なんとかりしゃこをお見舞いから遠ざけようとしたコハ だが、りしゃこの“嗅覚”はコハの“嘘”の匂いを嗅ぎ分けた 「やだ!りーちゃんも行く!」 「ねーちゃん!りーちゃんもいっしょでいージャン?」 「そーだよ!いージャン?」 「いージャン?いージャン?スゲージャン!?」 弟妹達もりーちゃんの“同行”を後押しした (ハァ・・・) 心の中でため息をひとつついたコハは、英断?を下した 「・・・わかったよ。いっしょに行く☆カナ?」 「行く〜!」 大多数の軽やかな足取りと、一人の重たい足取りが入り混じりながら、ハロモニア城までの道のりを進んでいく (なんで・・・こうなっちゃったの☆カナ?) つい、口が滑ったことを後悔しながら歩を進めるコハ コハとりしゃこ・・・ 二人は『魔導大会』で初めて出会ったのだが、コハの、りしゃこに対する第一印象は、 “大きな子供”という言葉がピッタリの“わがままっ子”であった それが、再会していきなり『お見舞いに行く!』と駄々をこねた時点で見事に立証された訳であり、 これでは、『暁の乙女』見たさに『お見舞いに行く!』と駄々をこねた弟妹達と精神年齢が何ら変わりはないことになる コハが (先が思いやられるよお〜!) と、軽く凹んでしまうのも仕方のない話だ しかし、無情にも、コハ達はハロモニア城に到達してしまう (ハァ・・・みんな・・・センパイ達に失礼を働かない☆カナ・・・?) 城門に入る前に、コハはまたしてもため息をひとつついたのだった コハが城門をくぐり抜けると、門番の衛兵に許可をもらって、りしゃこ達を招き入れた 「いい、みんな?センパイ達・・・『暁の乙女』のおねえちゃん達はケガしてるから、 あまり騒いだり暴れたりしちゃダメよ?」 城門をくぐり抜け、場内の地下室へと一行は向かった 「ねぇー?マダー?」 「つかれたよー!」 「もお〜・・・もう少しだからガマンしてよ〜!」 愚痴る弟妹達をなだめながらコハが地下室の通路を道先案内する 「ホラ、みんな!ココだよ、ココ!」 コハが歩みを止めた場所は、重厚な扉の前であった 「いい?くれぐれもセンパイ達の迷惑にならないように、ね?」 「「うん!」」 弟妹達に混じってりしゃこも頷いた コンコン!! 「失礼しまぁ・・・!?」 バタンッ!! 中を覗いたコハが突然、踵を返して弟妹達の方を向き直った 「ねぇー?どーしたのー?」 「おねえちゃーん?アタシ、お姉さんたちに早く会いたーい!」 「・・・あ、あの、ちょっと・・・今はダメ☆カナ?」 コハは弟妹達の催促を何とか躱そうとするが、けっこう長い時間歩き詰めの弟妹達の不満を解消できそうにない そこへ、突然、 「失礼しまぁ〜す!」 「あっ!らめぇ〜!」 隙を突いて、りしゃこが“実力行使”に打って出た ところが・・・ バタンッ!! りしゃこもコハ同様の行動をとってしまった 「ねぇねぇ?どーしたの?」 「え?べ、別に・・・どうもこうもないないない・・・」 弟妹達の問いかけに必死に弁明するコハ 「とにかく・・・今はダメ、なのよ!」 「えーっ!?」 「いージャン、別に!」 「行こ行こ!」 「あっ!こらっ!」 コハの制止を振り切って、数に優る弟妹達が医務室に“突入”する 「失礼しまぁ〜す!」 ガチャッ!! 部屋に入って弟妹達が見たものは・・・ 「ガキさんガキさん!・・・キャメが痛いところを擦ってあげます!」 「コ、コラー!?・・・そこはダメだって!」 「いいじゃないですか〜♪減るもんじゃないですし〜♪」 「・・・やっ!ダ、ダメ・・・」 「ヘッヘッヘッ・・・口ではそうは言ってても、カラダは正直だな♪」 「アイちゃん・・・サユミンのカラダの火照りを冷ましてぇ〜ん♪」 「ケガしてるんだからカラダが火照るのは当たり前やよ! さ、早くベッドから出るんやよ!」 「アイちゃん・・・サユミンのコト、キライなんですか・・・?」 「別に・・・好きも嫌いも・・・」 「やなのやなの!サユミンやなの!・・・『好き』って言ってくれなきゃやなの!」 「・・・知らないわよ!」 コハの弟妹達の目の前で繰り広げられてたのは『暁の乙女』の“裏側”であった・・・ まさか、年頃の乙女達がベッドの上でちちくりあっているとは思ってもみなかったので、 コハとりしゃこはつい、その場を離れてしまったのだ 「不潔・・・!」 「だもん・・・!」 しかし、乙女達が何をしているのかわからない弟妹達は、しばし、その場で硬直したまま一連のやりとりをポカーンと眺めていた そして、コハとりしゃこの方を向き直り、 「ねぇ?お姉さんたちってすごく仲良しなんだね!」 「ホントだー!」 「いいなぁー!アタシもいっしょのベッドで寝たい!」 と、のたまった コハとりしゃこは弟妹達の勘違いにホッと胸を撫で下ろした あれが“痴情”であることに気付かれずに済んだ・・・と しかし、それも束の間、 「アラ?あなた達は・・・?」 小さな“侵入者”達に隊長のアイオーラが気付いた 「あわわ・・・ス、スミマセンッ!・・・この子達、アタシの弟妹達なんです!」 コハはすごい勢いでアイオーラの元へ行くと、大きく頭を下げて、いきさつを話し始めた 「へぇ〜!そうなんだ!みんなでお見舞いに来てくれたのね!」 突然、何の許可もなしにお見舞いに訪れたことで、てっきり大目玉を食らうかと思っていたコハにとって いつもは真面目で規律にはうるさいアイオーラの、今回の反応は意外だった それどころか、 「せっかくだから、みんなで遊びましょっか!?」 と、嬉しそうに言った その言葉に、弟妹達は大いに沸き返った 「えーっ!?ホント!?」 「わーい!やったぁ!」 「遊ぼ!遊ぼ!」 「・・・ちぇっ。もっとガキさんとイチャイチャしたかったのになぁ〜・・・残念!」 「コラー!文句を言わない!・・・さ、早くどいたどいた!」 「ハイハ〜イ!」 「隊長・・・ホントにスミマセンッ!」 「いいんやよ。あっしは子供達は好きだし・・・それに・・・」 「・・・それに?」 「子供達との遊びは、女王様に治して頂いた身体のリハビリにもなるし・・・ね!」 「・・・!ありがとうございますっ!」 「じゃあ、みんな!これから子供達と中庭で遊びに行くやよ!」 「「ハーイ!」」 隊長の“命令”に従って、乙女達はいそいそと身支度を始めた 「じゃあね、みんな!何して遊ぼ?」 中庭に到着するなり、隊長のアイオーラが子供達に質問する 「鬼ごっこ〜!」 「かくれんぼ〜!」 「なわとび〜!」 子供達も、めいめい好きな遊びをあげていく 「じゃあ、最初は鬼ごっこね〜!」 「「ハーイ!」」 かくして、『暁の乙女』達と子供達によるリハビリを兼ねた遊びが始まった 「ほーら♪つっかまえたー♪」 「きゃあ!」 「ホラホラホラ!つかまえちゃうぞ〜♪」 「ガキさんガキさん!とってもお似合いです♪」 「コラー!キャメ!なんてことゆーの!」 「隙あり!」 「ぐぎゃあ!」 「ちょっと、あんた達!お姉さんにカンチョーしちゃダメ☆カナ?」 「・・・コハ、アンタでしょ!?子供達にカンチョーを教えたのは・・・!」 「え?いや、あの・・・アタシじゃない☆カナ?」 「ウソおっしゃい!」 「そうですよ、コハ先輩。ウソは良くないですよ」 「あ!ミッツー!告げ口したわね!」 「えーっ!?そんなことしてませんよー?」 あっという間に大人も子供も関係なく、思い切りはしゃぎ回ったのだった そして、その様子をずっと見ていた“影”の存在が・・・ 『暁の乙女』達と子供達が無邪気に遊び回っている中、その様子をずっと見ていた“影”の存在が・・・ 「ハァ・・・キラリちゃんに会いたいニャア・・・」 物陰から、一人ため息をついていたのはレイニャだった 「『魔導大会』は惜しかったけど、とってもカッコよかったニャア! 『最大奥義!きらりん☆彡レボリューション!』 ・・・なんちゃって♪」 手にした鉤爪を魔法の杖に見立てて軽やかに振り回す・・・ どうやらレイニャはキラリちゃんがすっかりお気に入りのようだ 「それにしても、あのフリフリの衣装・・・とっても可愛かったニャア・・・!」 独り言を呟いているレイニャの瞳はうっとりとしていた 「でも、キラリちゃんが出てくるのは、いっつもコハの側からなんだニャア・・・ 不思議なんだニャア」 レイニャはコハとキラリちゃんが同一人物だと気付いていないらしい・・・ 「あぁ・・・キラリちゃんに会いたいニャアー!」 今度は絶叫とともに、キラリちゃんに会えないじれったさから床の上をゴロゴロと転げ回り始めた 傍から見れば、明らかにイタイ子である・・・ 「コラー!何やってんの!?」 「フニャア!」 見境なしにゴロゴロと床を転げ回ったせいでレイニャはガキシャンに見つかってしまった・・・ 「レイニャ!あんたは場内の見回り当番でしょ!?」 「ハイニャ・・・」 「いい?場内の見回りも『暁の乙女』の大事な仕事なのよ?」 「ううう・・・」 「まあまあ♪あまり怒りすぎると小ジワが増えますよ・・・女王様みたいに♪」 レイニャを叱りつけていたガキシャンをキャメイがなだめる ・・・が、 「ほほう♪」 キャメイの背後から不気味な笑い声がする・・・ しかも、その声はちっとも笑っていなかった・・・ 「誰が『小ジワだらけのババァ』やて!?」 声の主はキャメイの首根っこをムンズと掴んだ 「・・・えーと、誰でしたっけ?アハハ・・・」 引きつった笑顔を浮かべながら、キャメイは恐る恐るゆっくりと後ろを振り返った もちろん、背後にいたのは女王・ユーコその人だった 「ほほう♪陰口を叩くのは、この口か?この口か?」 「・・・ごめんなひゃい!いひゃい、いひゃいでひゅ!」 「女王様!今日は何の御用で?・・・事前におっしゃってたらワタシが伺いましたのに」 「ん?アイちゃん、そんな畏まらんでええよ。今日はこの娘に用事があったんや」 そう言って、キャメイの頬っぺたをつねっていた手を離し、代わりにりしゃこの腕を掴んだ 「え?」 「悪いけど、ちょっと借りるで!」 「「どーぞどーぞ!」」 「「おねえちゃんいってらっしゃーい!」」 「あ、ちょっと待つもん!」 「ええからええから♪」 たじろいでいるりしゃこをよそに、ユーコは腕を引っ張り、とある場内の一室に連れ込んだ 「お待たせ〜♪」 バタンッ!! 図らずもりしゃこは密室に連れ込まれてしまった 「ど、どういうつもりだもん!?」 「どうもこうも・・・りしゃこ、あんたと二人っきりになりたかったんや」 ユーコはそう告げると、今度はおもむろに着ていた服を脱ぎ始めた 「・・・へ、変態!やだ!やだもん!」 りしゃこは狭い密室の中を逃げ回ろうとした しかし、部屋の扉はユーコの背後にあり、ユーコを“攻略”しなければ脱出するのは不可能だ りしゃこの抵抗などお構い無しに、半裸になったユーコがゆっくりと、りしゃこに近づいていく 「やだやだ〜!来ないで〜!」 無我夢中で喚き叫ぶりしゃこ しかし、ユーコはりしゃこの顔を両手をしっかりと押さえつけながら語った 「ゴメンな・・・でも、りしゃこ・・・あんたに知って欲しいことがあるんや」 そう言って、りしゃこの目の前に、肌が露になった姿を曝け出す 「・・・!」 ユーコの姿を間近で見たりしゃこは声を失った 最初はパニック状態ではっきりとユーコの身体を見ていなかったが、今、落ち着いて見てみると、 ユーコの身体の至るところには、どす黒い紋様が凶々しく浮かび上がっていたのだ 「これはな・・・ウチの“魔力”を奪っていく“呪いの印”なんや」 静かにユーコが語り出した 「今から1年前ぐらいからやな・・・初めてコイツが身体に現れたんは 最初は、なんか痣ぐらいにしか思てなかったけど、 それが日を追うごとに増えていって・・・今じゃ身体全体に広がってしもたわ」 何故、ユーコはこんなことを自分に語りかけるのか、りしゃこにはさっぱりわからなかった だが、ユーコの一言でそれが理解出来た 「こんなヤツに“魔力”を奪い取られる前に・・・りしゃこ、あんたにウチの“魔力”を託す!」 「アタシに・・・“魔力”を・・・!?」 りしゃこは、以前から自分が、女王の“魔力”を受け継ぐべき“器”であることをヤグーやメーグルから聞かされてはいたが、 いざ、改めてその“魔力”を受け継ぐこととなった今、その心の準備が出来ないでいる 「あの・・・ワタシ・・・」 ユーコに何かを言おうとして、それが言葉に出来ず戸惑っているりしゃこ 「わかってるよ・・・ゴメンな!あんたに重い“荷物”を託してしまうけど・・・ 不安やねんな・・・ウチも先代から引き継いだ時はそうやったから」 ユーコはりしゃこの頭を優しく撫でて、軽く抱き寄せた 「でもな、ウチの“魔力”を託しているんはあんただけやないんやで!」 神妙な顔つきをしていたユーコの表情が少し綻ぶ 「ここだけの話やけど、『大会』でケガしたみんなの身体を治すフリして、少しずつ“お裾分け”はしてるんよ・・・こっそり、な! でも、残りの全部はりしゃこ・・・あんたに託す あんたは“特別な娘”やから・・・」 ひとしきり語り終えると、ユーコはりしゃこの両手をギュッと握りしめた 「ウチの“宝物”・・・受け取ってくれるな?」 「・・・うん!」 ユーコの問いかけに、りしゃこは力強く頷いた 「よしっ!ええ娘や!」 ユーコはりしゃこの両手を掴んで言った 「ええか?別にそんなキンチョーせえへんでええからな・・・ ウチが流す“魔力”を・・・う〜ん・・・どない言うたらええんやろ? ま、とにかく、大きく息をスーッと吸い込むイメージで受け止めたらええわ! ホナ、いくで!」 ユーコの合図に従って、りしゃこは目を閉じ集中し始めた するとやがて、ユーコが掴んだ両手の部分から温かいぬくもりを感じ始める きっとそれこそがユーコが女王となって以来護り続けてきた“魔力”なのだろう その“魔力”が、まるで磁石のように、自然とりしゃこに引き寄せられているのがわかった そして、流れ込んでくる“魔力”に、りしゃこは不思議な感覚を覚えた ―何故かとても心地よく、そして、懐かしい・・・ その感覚に身を任せていると、次第に何故か昔の色んな思い出がフラッシュバックしていく それと同時に意識は遠退いていき・・・ 気が付けば、りしゃこはユーコに抱き抱えられていた 「・・・ん」 「お!目ぇ覚ましたんか?・・・どや、気分は?」 「・・・よくわかんないもん」 「う〜ん、そうか・・・ウチの場合はけっこう気持ちよかったけどなぁ〜 で、なんか変わったことはなかったか?」 「・・・夢を見てた」 「・・・夢?」 「うん・・・なんか夢を見てた気がするもん・・・」 「・・・!やっぱり!」 「えっ?」 「いや、ウチもな、昔に“魔力”を引き継いだ時に昔の色んな記憶を思い出したんよ! もう、ずっと忘れてた子供の頃の記憶なんかまで、な」 ユーコの発言にりしゃこは違和感を感じた (・・・ない!・・・アタシには、ない!) ついさっきまでの記憶を辿ってみるが、それでもりしゃこには思い出せない 子供の頃の記憶が! りしゃこが覚えている子供の記憶は今から2〜3年くらい前まで・・・ そこから先は、いくら記憶の糸を辿っても思い出せないのだ! もし、ユーコが言うように、昔の記憶がフラッシュバックしていくのであれば、当然記憶しているハズなのに・・・ 「ん?どうかしたんか?」 「えっ!?・・・何でもないもん!」 ユーコの呼び掛けに、りしゃこは慌てて返事をした 「ホナ、みんなが待ってるやろから中庭へ戻ろか?」 「う、うん・・・」 またもユーコに引っ張られるように、部屋から連れ出されたりしゃこ 中庭までの道中、りしゃこの頭の中から『小さい頃の記憶がない』ことが離れることはなかった それどころか、自分の中に『小さい頃の記憶がない』ことこそが、 自分の出生の秘密ではないのか?とすら思い始めたのだ だが、そんな考えが逡巡している間にりしゃこは中庭に到着してしまった そして、中庭では・・・ 「わ〜い♪キラリちゃんだニャ〜♪ハニャ〜ン♪」 「レ、レイニャちゃん・・・い、いつも応援、ありがと〜・・・」 思わぬキラリちゃんの出現に慌てたユーコがキラリちゃん(=コハ)の腕を引っ張って柱の陰に隠れる (ち、ちょっとあんた!何やってんの!?病み上がりやねんで?) (・・・アタシも、ホントは変身したくなかったんです☆ケド・・・ レイニャさん、“キラリちゃんに会いたい!”ってずっとため息ついてて可哀想だったんで・・・) (ハァ・・・もうあの娘に正体バラしてもええやん!?) (・・・遠回しに言っても気付いてくれなくて・・・)