コロシアム― 


「ねえ、ミヤー?ヨッシーノさん達、大丈夫かなぁ・・・?」 
「・・・」 

今日、試合のないりしゃことミヤビは、ヨッシーノ達の応援をしようとコロシアムに駆けつけていた 

ところが、ヨッシーノ達四人の“私闘”は教会の中、という“密室”で繰り広げられており、 
りしゃこもミヤビも、密室の中の様子を外から窺い知ることは殆んど不可能であった 

ただ、時折教会の中から洩れてくる物音や、窓から見える人影の動きだけが、密室の中の様子を知る微かな手がかりだった 


「・・・・・・」 

いつもは大歓声を巻き起こす観衆も、今日ばかりは静かに闇夜に浮かび上がった教会を眺める他なかった・・・ 


静まり返った会場・・・ 
そんな中、ミヤビは神経を研ぎ澄まし、わずかな手がかりから試合の流れを把握しようとしていた 
ただ、りしゃこは・・・というと、 
「ねえ、ミヤー?ヨッシーノさん達、大丈夫かなぁ・・・?」 
中の様子がわからず、徐々に不安にかられて、つい試合に集中しているミヤビに尋ねてしまう 


「ねえ、ミヤってば!」 
「あ・・・ああ、うん。大丈夫だよ、きっと・・・」 



『大丈夫だよ』 
ミヤビは不安がるりしゃこにそう答えた 

しかし、ミヤビにはわかっていた・・・ 
ヨッシーノとリカサークの二人はりしゃこ達に“勝利”を託して、 
ミキ帝達と“相討ち”する覚悟で試合に挑んでいることを・・・ 

きっと無傷では済まないだろう 
だが、二人には無事でいて欲しい・・・ 
それがたとえ無理な願いとはわかってはいても、ミヤビはそう願った・・・ 


静まり返った会場内 
その静寂を、獣の雄叫びにも似た咆哮が切り裂いた! 
突然の動きに色めき立つ場内・・・ 
そして、まるでその咆哮が合図だったかのように雲が晴れていき、妖しい満月が顔を覗かせた 

(キレイ・・・) 
その幻想的な美しさにミヤビも一瞬、心を奪われてしまった・・・ 
しかし、それも束の間、すぐさま現実に引き戻されてしまう 

「・・・ミ、ミヤ・・・」 
りしゃこがミヤビの服を引っ張り、怯えた声で教会の中を指差しているのだ 
「何?」 

ミヤビもりしゃこに言われるまま目を移す 
雲が晴れて、月明かりが教会を照らすことで中の様子が少しわかるようになったのだ 
そして、りしゃこが指差す方を見ると、そこには異形の化け物の姿が・・・! 



「ば、化け物っ!?」 

突然現れた異形の生物に、ミヤビはりしゃこ同様、思わず声をあげてしまった 


「えっ!?何っ!?」 
「化け物だって!?」 

そしてミヤビがその言葉を発した途端、会場内が俄かに騒つき始めた 

・・・が、しかし、月明かりが教会を照らしていたのはほんの束の間、 
雲が満月を覆い隠し、教会の中は再び闇に包まれてしまった・・・ 


「・・・何だったんだろ?」 
ミヤビはさっきの出来事を振り返ってみた 

あの時見たのは確かに化け物だった 
もちろん、隣にいるりしゃこも目撃している 
見間違えるハズはない 

そうなると、教会内の四人の内の誰かが“召喚”したのか、もしくは“変化”したのか・・・ 

だが、ミヤビが知る限りでは、ヨッシーノ達は化け物を召喚する魔法を使えるとは聞いていない 

だとすれば、あの化け物はミキ帝達の仲間・・・!? 

(大丈夫・・・大丈夫、だよね・・・!?) 
妙な胸騒ぎを覚える中、願いにも似た気持ちでミヤビは二人の無事を祈った 



あの衝撃的な目撃の後― 

満月が雲に隠れたことで、教会は再び夜の闇に溶け込んでいった 

再び、教会の様子を探る手がかりは、室内の灯に照らされて動く人影と、時折洩れ伝わってくる物音のみとなった 

限られた情報しか入ってこないもどかしさやじれったさが会場内に漂い、それが不気味な沈黙を生み出している 

その重苦しい、嫌な雰囲気がいつ、終わるのだろう?と、誰もが思い始めた時だ 
突然、教会内からまばゆいばかりの光が溢れ出した! 
(!!) 
ミヤビ達は直感した・・・ 
あれは、ヨッシーノが以前に放った魔法、『スピリッツ・オブ・ガッタス』の光だと・・・ 
その真っ昼間の太陽のような光がミヤビ達には希望の光に見えた 
切り札とも言うべき『魔法』を繰り出してきた、ということは、少なからず勝敗が決する瞬間が近づいて来ていることを意味する 

ミヤビは神に祈った 
(神様、お願いです・・・ヨッシーノさん達を、勝たせて下さいっ!) 

その祈りが通じたのかはわからないが、教会が轟音とともに大きく揺れた・・・ 
『スピリッツ・オブ・ガッタス』が命中したのか、それとも・・・ 



ヨッシーノの『スピリッツ・オブ・ガッタス』が教会を大きく揺るがしたその後― 

教会からは何の変化も動きも見られず、暗闇と静寂が辺りを覆い尽くしていた・・・ 


(大丈夫・・・だよね?)ヨッシーノ達の無事を祈っているミヤビ達にしてみれば、この長く続く静寂が苦痛であった 
震動が収まってからの僅か数秒間が、まるで数分、数十分のように感じられた 

二人の無事をいち早く確認したい・・・ 
ミヤビ達の切なる想いがピークに達しようかというその時、教会の重厚な扉が軋む音を立てて、ゆっくりと開き始めた・・・ 

そして、その扉の奧から人影が現れた・・・ 


「「!!」」 
りしゃことミヤビには一目見ただけですぐにわかった 
あの姿こそ、待ちわびていたヨッシーノだと・・・ 
二人は思わず喜びのあまり、声をあげてしまいそうになった 
周りの観衆もヨッシーノとわかり始めたのか、俄かに騒つき出す 

だが、次の瞬間、大観衆は目の前で起きた悲劇に、歓声があげるどころか、声を失った・・・ 


ドサッ・・・ 

ヨッシーノは扉から出た途端、まるで繰り糸が切れた操り人形のように力なく地面に突っ伏した・・・ 



地面に突っ伏したまま、ピクリとも動かないヨッシーノ・・・ 
その変わり果てた無惨な姿に場内の誰もが瞬時に悟った・・・勝者は誰なのかを・・・ 


それから間もなく、真の“勝者”が扉の奧からゆっくりと姿を現した 

「「!!」」 

はじめに姿を現したのは返り血を浴びたミキ帝 
そして、リカサークを抱えたアヤヤがその後を追った 

場内が色めきたつ 
観衆は、勝者の二人が決勝戦に向けて何らかのパフォーマンスをするものと思っていたからだ 


しかし・・・ 
二人は突っ伏したヨッシーノの傍にリカサークを寝かせると、そのまま無言で闘技場を後にした・・・ 

「「!?」」 
場内が騒つき始めた・・・ 
勝ち名乗りをあげることなく退場した勝者に、戸惑いを隠せなかった・・・ 
二人の取った行動は、ともすれば“試合放棄”と受け取れなくもないからだ 


場内の観衆に波紋が動揺の広がっていく・・・ 
一体、この試合の“勝者”は誰なのか・・・? 


そこへ混乱を収めるべく、審判・ヤススがすかさず宣告を下した 
「そこまでっ!・・・勝者、ミキ帝・アヤヤ!」 






闘技場から控え室へと続く通路― 


「お二人さん、ご苦労様でぇす!」 
通路から引き上げてくるミキ帝達にコンが声をかけた 
しかし、二人はコンに一瞥をくれただけで俯いたままスタスタと足早に立ち去っていった・・・ 

「あーっ!もう!待ってくださいよぉ・・・」 
無言で先を急ぐ二人の後をコンも急ぎ足で追いかけた― 


一方、闘技場では・・・ 

「スタッフ〜ッ!スタッフ〜ッ!」 

ヤススが大会スタッフを呼びつけて、担架の用意を急がせていた 


「りしゃこ、行こうっ!」 
「うんっ!」 

ミヤビがりしゃこに目で合図を送ると、りしゃこもすぐさま反応し、二人して観客席から控え室へと走り出した 


そして、控え室までの通路― 
観客席から控え室までの道のりは意外と長く、二人がたどり着くまで少し時間を要した 

「ほら、りしゃこ、急いで!」 
「ちょっと待って・・・ミヤ、走るの早いよ〜!」 
りしゃこは前をひた走るミヤビについて行くのが精一杯だった 

そこへ突然、りしゃこの前を走っていたミヤビが立ち止まった 



「・・・どうしたの、ミヤ?」 
急に立ち止まったミヤビにりしゃこが肩で息をしながら尋ねる 

しかし、ミヤビは無言のまま・・・ 

「ねえ!ミヤってば・・・!?」 
文句を言いかけたりしゃこだったが、すぐにミヤビの取った謎の行動のワケが理解出来た・・・ 


「!!」 

偶然の悪戯か、ミヤビ達の目の前には闘技場から引き上げてきたばかりのミキ帝達の姿があった 
今の二人にしてみれば、ミキ帝達は憎むべき敵にして、最も危険な存在・・・ 

そして好戦的なミキ帝の性格からすれば、この場で一戦交えることも十分考えられる 


(りしゃこ!) 
(うんっ!) 
二人は咄嗟に身構え、臨戦体勢を取った 
もし、向こうがその気なら、今ここでやり合ってもいい・・・ 
二人はそのくらいの肚を決めていた 

ところが・・・ 
ミキ帝達はミヤビ達の存在に気付くと、しばらく凝視した後、何事もなかったかのように傍を通り過ぎていった・・・ 
そのすれ違い際、 
「・・・行ってやんな」 
の一言を残して・・・ 



「ふぅ・・・」 
何事もなかったかのように立ち去っていったミキ帝達を見届け、ミヤビは緊張状態を解いた 

それでもなお、ミヤビの身体にはミキ帝達とすれ違った時に感じた“重圧”の余韻が残っている・・・ 

(あの二人、化け物だ・・・!) 
ミヤビの本能が、そう告げていた 

そして、ふと、ミヤビの頭を過ったのが、『果たして、あの二人に勝てるのか!?』という疑念・・・ 
ミヤビ達も今までハードな特訓や修行をしてきたつもりだった 
実際、その成果があって、大会にて“強敵”達を打ち破ってきたし、“自信”もついた 
その“自信”が根幹から揺らいでしまうくらいの重圧をミキ帝達から感じたのだ 

(・・・ダメだ・・・あの二人には・・・) 
ミヤビがマイナス思考に陥ろうとしていたその時だ 

「勝とうね、絶対・・・!」 
いつになく真剣な面持ちのりしゃこが、静かに、それでいて力強く言った 

(!!) 
ハッと我にかえったミヤビは自らを恥じた 
まだ戦ってもいない内から負けることを考えてしまった自分を・・・ 

そして同時に、それを気付かせてくれた年下のりしゃこが誇らしく思えた・・・ 



りしゃこの一言に救われたミヤビは、すぅ・・・っとひとつ深呼吸をし、 
「さ、行こっか?」 
と言って、りしゃこの手を引っ張り、また歩き出した 

そして、控え室― 

ミヤビ達が控え室に入ると、そこにはベッドの上に横たわって眠っているヨッシーノ達の姿があった 
その顔つきからは、深手の怪我を負っているのか、生気が感じられなかったのが気がかりだった 

ミヤビ達は心配そうにヨッシーノ達の顔を覗き込んでみた 
すると、眠っているとばかり思っていたヨッシーノが目を覚ました 

「・・・だ、大丈夫ですか!?」 
ミヤビが驚きながらも声をかけた 

「・・・まあ、ね」 
言葉少なにヨッシーノが呟く 
ミヤビ達はヨッシーノと出会って半年くらい経つが、こんなに元気のないヨッシーノを見るのは初めてだった 

試合に負けたこと、大怪我を負ったことを考えれば、これ以上質問するのが憚られた 
だが、逆にヨッシーノが口を開き始めた 

「ゴメンな・・・楽をさせられなくて・・・」 
その一言に悔しさと無念さが滲み出ていた 
だから、ミヤビ達の心にズシンと響いた 



押し黙るミヤビ達を見て、ヨッシーノは再び口を開いた 
「なぁ・・・聞いてほしいことがあるんだ・・・」 

その表情はいつになく真剣そのもので、ミヤビ達も身を乗り出して話を聞く態勢を取った 


すると、その直後、急に控え室の扉が開いた 
「「リーダー!?」」 
中にぞろぞろと入ってきたのは『輝く女神』のメンバー達・・・ 

そして、 
「大丈夫ですか!?」 
朝から行方がわからなくなってたサキ達・・・ 
控え室が人の輪でいっぱいになった 


「お、お前達・・・」 
ヨッシーノは思わず感極まり、絶句した 
集まった一同は何も言わずヨッシーノが語り出すのを待っていた 


しばらくして・・・ 
気持ちの整理がついたヨッシーノがゆっくりと語り出した 
試合中で起きたこと、ミキ帝の『復讐』の一部始終、そして・・・ 
ミキ帝、いや、ミキはもう道を違えて自分達の元には帰ってこないこと・・・ 

ヨッシーノが語っている途中、言葉を失う者もいれば、涙ぐむ者もいた 
しかし、一番つらいハズのヨッシーノが感情を押し殺して語る姿に、誰もが心を打たれた・・・ 


そして、ひとしきり語り終えると、ヨッシーノがある“決心”を告げた 



「もう、オレ達の知ってる“仲間”のミキはもういない・・・ 
今、オレ達の目の前に立ちはだかっているのは、“復讐者”のミキ帝・・・ 
オレ達はアイツの“復讐劇”をどんなことをしてでも絶対、止めなきゃなんないんだ! 
アイツのためにも・・・この世界のためにも・・・!」 

ヨッシーノがぶちまけた、内に秘めた熱い“想い”にその場にいた誰もが賛同する 

「・・・じゃあ、まずは奴らのアジトに殴り込みでもかけるか!」 
そう言ったのはマイミン 
しかし、 
「そうしたいのはヤマヤマだけど・・・あんた、アジトの場所、知ってるの?」 
と、『輝く女神』きっての頭脳派・ムラターメからツッコミが入る 
「うっ!?」 
「そうよね。マイミンが方向音痴だからアジトの場所が特定出来なくなっちゃったんだよね」 
と、さりげなくモモも追い討ちをかける 

「ホラ、やめなさい。マイミンも脱出するのに精一杯だったんだから・・・」 
マイミンを庇ったのは、先程まで寝ていたハズのリカサーク 

「それにね・・・もうアジトなら特定出来たわよ! 
・・・ね。そうでしょ?」 



「何とか・・・」 
「特定出来たよ・・・」 

リカサークの問いかけに答えたのは、ヨッシーノからアジト探索を依頼されてたア・ヤーカとサトタ 

「ホントにっ!?」 
嬉しさのあまり、つい声が上ずってしまったヨッシーノ 
「え、ええ・・・」 
「け、けっこう手こずったけど・・・」 
ヨッシーノの上ずった声に吹き出すのを我慢しながら二人は答えた 

「よし!これで希望が見えてきたな!」 
「そうね・・・あとはどういう作戦で行こうか?ってトコね!」 
怪我を負ってるのも構わず熱くなるヨッシーノとリカサーク 

「ホラホラ!リーダーとリカちゃんは怪我人なんだから休んでないと!」 
というシバチャンの忠告もどこ吹く風、すっかり話に熱中してしまっている・・・ 
「仕方、ないね・・・」 
「無理ないか。待ちに待ってた吉報だもんね」 
サイトーさんもマサエも呆れながらも二人の様子に目を細めた 

と、そこへ、 
「邪魔するでぇ〜!」 
と、独特の口調が控え室の扉から聞こえてきた 

その途端、全員が起立して姿勢を正す 
「「女王様っ!?」」 



「ええよ、そんなに畏まらんでも」 

そう言いながら、女王・ユーコはベッドに臥しているヨッシーノ達の傍に行き、二人に労いの言葉をかけた 

「ヨッちゃん、リカちゃん・・・ホンマ、ゴメンな・・・ 
ウチがあんな“注文”を言うたばかりに・・・ 
あそこまでムチャせんでもよかったのにな・・・」 
そう言うと、二人の頭を優しく撫でた 
しかし、その行動とは裏腹に、二人を見つめるユーコの表情は、部下を生命の危険にさらした後悔からか、曇って見えた 

が、ヨッシーノはそんなユーコを気遣い、 
「仕方ないですよ。女王様の命令ですから」 
と、実にあっけらかんと笑ってみせた 

そのヨッシーノの笑顔に、曇っていたユーコの表情に笑みがこぼれ出す 
「そっか・・・ありがとう、ヨッちゃん!」 


心温まるやりとりの後、ヨッシーノがユーコに向かって切り出した 
「・・・女王様、ホントはウチらの見舞い以外に、何か用事があって来たんですよね?」 
その言葉にユーコは深く頷く 
「そや、ヨッちゃん!ミキ帝達のアジトを見つけたんやてな?」 



ユーコの言葉に、ヨッシーノは驚いてしまう 

「どうして・・・それを?」 
「ん・・・ウチらも独自でアジト探索をしてたんや。“お庭番”を使ってな 
そしたらウチのアッちゃんと、ヨッちゃんとこのア・ヤーカとサトタとばったり出くわした・・・ってワケやねん」 
そう言うと、ユーコは悪戯っぽく微笑んだ 

続けてユーコは語り出す 
「そこでや。ミキ帝達のアジトにいつ、殴り込みをかけようか?っちゅう話やねん」 

アジトの発覚した時点で、ユーコがこう言ってくるのはヨッシーノも感じてはいた 
そこで、ヨッシーノは自分の意見を述べ始めた 
「明日、実行すべきだと思います」 

その一言に、先程まで賑わいでいた控え室内がシーンと静まりかえった 
それだけヨッシーノの“答え”は、その場に居合わせた一同にとっては意外だったからだ 

しかし、そんな中、ユーコだけはニヤッと笑顔を浮かべた 
「流石はヨッちゃんやな!ええとこ突いてるわ!」 

返ってきたユーコの“答え”も意外だったので、一同は唖然としてしまう 



「ホナ、早速、作戦会議でもしよか!」 
「ち、ちょっと待ってくださいっ!」 

すっかりノリ気のユーコを制するようにメーグルが口を挟む 
「どしたん?」 
「あ、あの・・・ちょっと性急すぎないかと・・・」 
「そやな、確かに性急や。せやけど、作戦決行は明日が一番ベスト、っちゅうのをあんたもわかってるやろ?」 
「・・・ハイ」 
「じゃあ、異論は無いな?」 

「・・・あのぉ〜」 
ユーコが決を採ろうとした間際、アジトを探し当てたサトタから声が上がった 
「女王様・・・あの、“明日”って理由、教えて頂けますか?」 
その質問は誰もが聞きたかったことだ 

その答えを事も無げにユーコが言い放った 
「ええか、サトタ。明日が“大会”の準決勝ってのはわかってるやんな?」 
「・・・ハイ」 
「で、もし明日、ゴッちんやナッチがりしゃこ達に勝てば事実上、優勝は確定するわな?」 
「・・・ハイ」 
「・・・ってコトは、ミキ帝達は明日、ゴッちん達の勝利のバックアップのためにこの闘技場に来ることが考えられるわな?」 
「・・・ハイ、そうですが・・・!!」 

「・・・わかったか?」 
サトタの驚く顔を見て、ユーコは満足気に微笑んだ 



「そや!ミキ帝達が明日の準決勝でアジトを留守にしてる内に襲撃・・・ってコトや!」 
そう言って、ユーコはニヤッと笑った 

その場に居た一同もユーコの意図に気付き、笑顔がこぼれる 
「じゃあ、これから作戦会議しよか?」 
「「ハイッ!」」 

ユーコの号令の下、全メンバーによる作戦会議が行われた 





二時間後― 

「じゃあ、明日はこの段取りで動くからな? 
・・・りしゃこ達は試合に専念するために控え室で待機」 
「「ハイッ!」」 
「『輝く女神』の所属メンバーはウチが陣頭指揮をとるから、準決勝前、ミキ帝達のアジト近くの現地集合な!?」 
「「ハイッ!」」 
「マイミンとエリカンは逃走ルートで待機しといてちょうだい?」 
「「ハイッ!」」 
「それと・・・伝達係として、ア・ヤーカはアジトに、サトタは場内に待機しといて!」 
「「ハイッ!」」 

「ホナ、解散!っちゅうことで!明日、頑張ろうな!」 
「「「ハイッ!」」」 






「ただいま戻りましたぁ〜!」 
「お!ご苦労さま〜!」 
「何か収穫はあった?」 
「もお、大アリですよぉ〜!あのですねえ〜・・・」 
「「ええ〜!!」」 
「そうなんですよぉ〜!まさか女王様が明日、このアジトを襲撃するなんて!」 
「ねえ、どうするアヤちゃん・・・?」 
「どうもこうもないっすよミキティ!・・・やってやろうじゃん!?」 
「“やってやる”って!?」 
「決まってるじゃん!?こっちが迎撃するんだよ!」 
「マジで!?」 
「そうだよ!向こうがアジトを襲撃するなら、こっちは罠を張って一網打尽にすればいいんだよ!」 
「そうだね!ババア・・・みてろよ、ミッキミキにしてやんよ!」 
「よし!その意気その意気!」 

「じゃあさ、明日はコンちゃん一人だけになるけど・・・いい?」 
「え・・・ええ」 
「あとさ、早速作戦を考えよっか?」 
「あと、罠もね!」