薄暗い礼拝堂に忍び込むサキ達 

木製のドアがギィ…と軋む音を立てる… 

物音を立てないように静かに礼拝堂の中を進んで行く 
視界の都合もあり、サキ、モモ、チナリ、ユリーナと背の低い者順に並ぶ 

礼拝堂自体に人気が無く、奥の控え室に歩を進めようとしたその時! 

ユリーナ、チナリが 
「危ない!!」 
と言って、サキとモモを押し倒す… 

カッ…!! 

控え室のドアに矢が突き刺さっていた― 

もし、そのまま進んでたとすれば… 

いや、それよりも、敵がサキ達の先手を取ったのだ… 
背中に冷たいものを感じるサキ達―



サキ達は矢が飛んできたと思われる方向を振り向く… 
すると、その瞬間にも、一斉に矢がサキ達に降り注ぐ!! 

明らかに敵意と悪意を感じる… 

ここで、負けじとチナリが何かぶつぶつ言い始めた… 
(この期に及んで一発ギャグか!?)と呆れるサキとモモ… 

だが、何かがおかしい… 

スックと立ち上がると、矢が飛んできた方向に 


从´∇`从<布団が吹っ飛んだ!! 


呪文はともかく、衝撃波が見えない敵に襲い掛かる!! 

「きゃあ〜〜〜〜!!」 

見えない敵が叫び声を上げる!! 

手応えはあった― 

ヨロヨロと力なく立ち上がる敵… 

その姿を見て、サキ達は驚愕する…



ヨロヨロと力なく立ち上がる敵の姿… 

それは、とても礼拝堂に似付かわしくないものだった 
それは、修道服ではなく… 
メイド服だった… 


「…あ、あなた!?」 

サキが言いかけたが、また別方向からも矢が飛んできた!! 

まさかの襲撃でまたも体勢を崩されるサキ達… 

すると、メイド服がメイド服を支えながら、奥の部屋に入っていく。撤退だ― 

だが、サキ達の背後から、黒い影がメイド服達に襲い掛かる!! 

「きゃあ〜〜〜〜!!」 

またも、悲鳴を上げるメイド服達… 

サキ達はチャンスと受け止め、一気にメイド服との間合いを詰める― 

メイド服達はボウガンを構えていたが、動揺しているせいか、発射出来ない! 

一番先に接近したチナリがメイド服達に飛びかかろうとする― 

が、それを飛び付いて押さえるユリーナ… 

すると、先程までチナリがいた場所に、無数のナイフが飛んできた…



間一髪、難を逃れたチナリとユリーナ… 

だが、サキ、モモ達とは分断されてしまった… 

そこに一息ついたメイド服達が再び、ボウガンによる矢の雨を降らせた 

矢が邪魔で中に入れないユリーナ達 

一方、ナイフを投げつけた方向へ向き直るサキ達だが、やはり、ナイフが邪魔で懐に潜り込めない… 


表のりしゃこ達は、礼拝堂から物音がしたので賊との接触があった、と確認し、4人の無事を祈った―




ユリーナとチナリはボウガンの矢が邪魔で近寄れず 

サキとモモもナイフが邪魔で近寄れなかった… 

だが、その膠着状態も不意に終わりを迎える… 

メイド服達が一瞬の隙をついて、奥の部屋に逃げることに成功… 

ナイフを投げつけていた敵も隙をみて別の出入口から奥の部屋に避難することに成功する… 

必死に後を追う4人… 

だが、それは罠だった―



二人のメイド服を追ったユリーナとチナリ 

とにかく追いつくことに必死で、二人が入った部屋の扉に飛び蹴りをかまして勢いよく飛び込む― 

ハズだった… 


从´∇`从<イテ! 

残念ながら扉は引いて開けるタイプだったので、チナリは足に大ダメージを負う… 

そんなチナリを尻目に一人で部屋に入るユリーナ―



「アァ〜〜〜ン!ユリー、待ってぇ〜〜!!」 

チナリの魂の叫びも虚しく先へ先へ進むユリーナ 

しばらくして広間に到着する… 

チナリの無鉄砲ぶりから一転、暗やみの中を慎重に歩を進めるユリーナ 

すると前方に二つの人影が姿を現す… 

その正体にうすうす感付いてはいた… 

キャメイとサユミン… 

チナリの衝撃波を食らってフラフラのサユミンとはいえ、数の論理で言えば、1対2でユリーナの方が分が悪い… 

キャメイが剣を、サユミンが鎖ムチに武器を変えてユリーナにじわじわとにじり寄る… 

一瞬の隙が命取りだ… 

その時!! 

背後のドアが開いてチナリが入ってくる… 

反射的に振り向くユリーナに隙が出来た― 

一斉に襲い掛かるメイドたち…!!



ユリーナが扉の方へ振り向いた瞬間、隙が出来てしまった― 

サユミンが鎖ムチをユリーナめがけて振るう… 

ヒュン!! 

だが、幸いにもユリーナは間一髪躱すことが出来た… 
そして腰に着けた細身剣(レイピア)を抜き、迎撃体勢を整える 

が、それより素早くキャメイが間合いを詰めてきた! 
それに反応して加速しての斬撃を見舞うつもりのユリーナ 

しかし、行動に移る前に剣を持つ右腕が動かない!! 
ユリーナの右腕の自由はサユミンの鎖ムチによって奪い取られていた!! 

前からはキャメイがもう目の前に迫ってきている… 

「残念だったわね!!」 
キャメイは跳躍して手に持つ剣を大上段から振り下ろした!! 

一瞬の出来事だったが、自分が部屋に入ったことにより、ピンチを招いたことに気付くチナリ… 

キャメイの斬撃の瞬間、思わずチナリは目を背けてしまう…!!



キャメイから振り下ろされた斬撃!! 

カシィィン!! 

鈍い金属音が部屋中にこだまする… 


目を背けてしまったチナリが恐る恐るユリーナの方へ向き直ると… 

レイピアと鎖ムチでキャメイの斬撃を辛うじて防いだユリーナの姿が視界に飛び込んできた― 

思わずへたりこむチナリ… 
だが、ユリーナは圧倒的にピンチだ… 

キャメイの剣を食い止めるのが精一杯… 

両腕は封じられ、反撃が出来ない! 
しかも、もし、少しでもバランスを崩されたら、あっという間にやられてしまう… 

助けに入ろうにも、チナリの衝撃波の魔法ではユリーナを巻き添えにしてしまう― 

ユリーナの絶体絶命のピンチは続いている… 

ただ、 

そんなピンチなのにユリーナは不敵な笑みを浮かべている…



不敵な笑みを浮かべているユリーナ 

キャメイとサユミンには、その意味がわからないでいる… 

そして、ユリーナが二人に対して語りかける― 

「冥土(メイド)の土産(みやげ)に教えてやろう…。ウチの真の名は…」 
「『ユリーナ=トゥエル=ウル=ピリリ』!!エルフ王家・ピリリの血筋の物なり!!」 

と、言い終わるが早いか、『ピリリ!!』 
と呪文を発する!! 

まばゆい光が部屋全体を包み込む! 

そして、次の瞬間には 
キャメイとサユミンが、まるで糸が切れたマリオネットのように、力なく地面に突っ伏した― 

二人の身体からバチバチと放電が起きている… 

スックと立ち上がったユリーナが一言、 


ヽ川*^∇^)|ノ<これがホントの『メイドのみやげ』!! 

…誰がうまいこと言え、と言った!?



ホッと一息つくユリーナ 

と、そこへ 

「ユリー!!」 
ユリーナの無事を確認して嬉しさのあまり、猛ダッシュで駆け寄るチナリ― 

そして抱きつく― 

「もぉ!心配したんだから!!」 
とユリーナの胸に顔を埋める… 

チナリの姿を見て 
「あれ?チー?…何か黒いし、髪が変になってるけど…。ウチの魔法で感電したの?」と絶妙のボケをかますユリーナ 

「もぉ!!ユリーのバカ!!」と頬っぺたを膨らませて、拗ねてみせるチナリ… 
拗ねるチナリに、やれやれ…といった感じで優しく頭を撫でてやるユリーナ 

しばらくは感電して動けないであろうキャメイとサユミンを、チナリと二人でボディチェックをした後、がっちりと縛り上げる… 

ふと、そこへユリーナの足元に何か小さな気配を感じる…



ユリーナとチナリの足元に小さな生き物の気配を感じる… 

二人が視線を足元に落とすと… 


クゥーン… 

マイハだ… 

そういえば、部屋に突入する前に、『黒い影』がサユミンに向かって飛びかかっていった…その『黒い影』がマイハだったのだ― 

ユリーナはマイハを抱き上げ、 
「よしよし、偉いぞマイハ!」と頭をナデナデする… 
そんなマイハに嫉妬するチナリ… 

「ねーねー!ユリー!チーもナデナデして〜〜〜!」 
聞かなかったフリをするユリーナ 



一方、もう一つの部屋に入ったサキとモモ… 

ユリ・チーと違って、慎重に中を進んでいく… 

中は、脇に部屋の扉が幾つかある廊下だった… 
その廊下の奥には頑丈そうな大きな扉が見える… 

(…どうやら、あそこみたいね…)(…そのようね!)と、サキとモモは小声で話す 

廊下をつたって奥の部屋まで進んでいく… 

が、廊下の半分まで来た時だった―



ちょうど廊下の半分まで来たところだった… 

突然、後ろの扉が勢いよく開き、そこから人影が躍り出る!! 

不意をつかれた格好のサキとモモ… 

人影が猛然とダッシュして襲いかかってくる!! 

すかさず攻撃を回避しようとするサキ・モモだが、狭い廊下では隠れる場所も逃げ場も無い!! 

すれ違いざまに斬りかかる人影とサキ・モモが交錯する…!! 

その刹那、モモはサキを押さえつけ、伏せた― 


シュッ!!シュッ!! 

人影の武器はサキ・モモを捉えることなく、空を切った… 


勢い余って、人影は奥の扉前までオーバーランしてしまう… 

そして、月明かりに照らされて、サキ・モモは人影の正体を知ることとなる―



月明かりに照らされた人影の正体― 

小柄だが、やや筋肉質で頭に耳があり、猫目の少女― 

その少女が初めて口を開いた… 

「よくぞ今の攻撃を躱したニャ!!」 

… 

(…ちょ、今の!!)(「ニャ」って言ったわよね!!) 

違った意味で、動揺を隠せない二人… 

思わず吹き出してしまった… 

「何がおかしいニャ!!お前等を、この『猫目のレイニャ』様が切り刻んでやるニャ!!」 

みるみるうちに顔を紅潮させるレイニャ… 

そして、再びサキ・モモに襲いかかる!! 

不意をつかれた先程と違い、迎撃体勢は整っている… 
アイ・コンタクトでサキ・モモが迎え撃つ



直進してくるレイニャ 

それに対してギリギリまで引き付けるサキ・モモ… 

目前まで迫ってきたレイニャ… 

だが、その視界は急に真っ白になる― 

モモが用意した煙幕だ― 

「ニャ!?」 

視界を奪われ、たじろぐレイニャ 

そこへ秘かに呪文を詠唱していたサキが魔法をぶっ放つ!! 
風の刃がレイニャを切り刻む!! 

「ニャ〜〜〜〜〜!!」 

悲鳴を上げるレイニャ… 


やがて、ゆっくりと煙がはれてゆく… 

「!!」 

サキ・モモは目を疑った… 
この狭い廊下では逃げ場が無いはず… 

だが、目の前には何も無い… 
魔法を食らって動けないレイニャがいるはずなのに… 
サキ・モモは動揺する―



サキの放った魔法によって、レイニャが倒れているはずだった… 

そのレイニャの姿が無い… 
そんなはずは…口には出さないが、狼狽するサキ・モモ… 

少しよろけて、サキが廊下の壁に手をついた時― 

バンッ!! 

勢いよく扉が開き、サキの顔面を直撃する― 

扉の向こう側の部屋に潜んでいたレイニャが飛び出し、サキに目を奪われているモモに飛び蹴りをお見舞いする!! 

そして、顔面を押さえているサキに、無慈悲な鉄の鉤爪による一撃を振り下ろす!! 

ガキィィィン!! 

なんとかレイニャの攻撃を木製の杖で防いだサキ… 

だが、木製の杖に、レイニャの鉤爪が食い込む… 
このままでは、サキの肉に食い込むのは時間の問題だ… 

そして、遂に杖に亀裂が入り、真っ二つに折れてしまった!!



サキを護っていた木製の杖に亀裂が入り、真っ二つに折れてしまう!! 

レイニャの鉤爪がサキを捉える 

―かに見えた…が、しかし、杖は折れたが鉤爪はサキには届いていない! 

その折れた部分から、鎖が伸びている― 
カラクリ仕掛けの杖だ― 

焦ったのはレイニャの方だ…。仕留め損なったショックは大きい… 

レイニャの鉤爪の力が弛んだ…。その瞬間をサキは見逃さなかった!! 

鎖を鉤爪に絡めて抜けなくする…。 

その間に、モモが体勢を立て直し、レイニャに突進する!! 

そして跳躍し前宙!! 

レイニャに向かって 
「食らえ!!ダイビング・ピーチ・ボンバ〜〜〜〜〜!!」 

呆気にとられているレイニャの顔面をモモの『桃尻』が直撃する!! 

派手に吹っ飛ぶレイニャ!!悲鳴を上げる暇も無い… 
立ち上がるのが精一杯のレイニャ―



モモの大技、ダイビング・ピーチ・ボンバーをモロに食らい、力なく立ち上がるレイニャ… 

「よくも、よくもやったニャ〜〜!」と吠えてみせるが、虚勢を張っているのがわかる… 

壁伝いに少しずつ、奥の大きな扉の方へ後退りする… 
すると、急に、後ろの扉がひとりでに開いていく― 

そして、中から浅黒い肌をした少女が出てきた… 


「レイニャ…!もういいの…。もう…やめて…」 
と言うと、フラフラのレイニャの身体を支える… 

浅黒い肌…。どこかで見たような…? 
戦いの後、ということもあり、思考力がまとまらないサキ・モモ 

「!!」 

やっとのことで思い出した… 

アリ氏の娘だ!! 

サキ・モモはまず、少女にアリ氏の娘かどうか?を尋ねた… 

少女ははっきりとした口調で答えた 

「…ハイ。アリの娘、カンニャです」



アリ氏の娘・カンニャが姿をあらわした… 

サキ・モモはメンバーを招集して、アリ氏に同席してもらった上での事情聴取をすることにした― 


30分後― 

関係者が全員揃った 
やがて、アリ氏もやって来た― 

親子の再会なのに、後ろめたいことがあるのか、うつむいたままのカンニャ 

カンニャを見るなり、一直線にツカツカと歩いていくアリ氏…険しい表情だ… 

そして、カンニャの目の前に立って、アリ氏が言う― 
「変わってないな、カンニャ…。お前は昔から、後ろめたいことがあると、うつむいて黙り込む癖があるな…」 

「馬鹿者!!」 
アリ氏が一喝する!! 
予想通りの展開だ 

だが― 

「…馬鹿者…。お前が居なければ…、ワシは…ワシは何を生き甲斐にすればいい…カンニャ…。もう、どこへも行くな…!!」 
そう言って、力いっぱいカンニャを抱きしめ、嗚咽するアリ氏… 

外見からは想像もつかない出来事だ… 
無表情だったカンニャの目から涙が頬を伝う… 

そして…堰を切ったかのように泣き出した―



親子の感激の再開シーン… 
結構、みんなもらい泣き… 
そして、真相究明へ― 


今回のカンニャの失踪は「家出」だった― 

きっかけはカンニャと半獣人のレイニャが、この街外れの礼拝堂で出会ったこと― 

独りぼっちで寂しそうなカンニャに、天涯孤独のレイニャが声をかけたのだ… 

元々レイニャは、この礼拝堂で年老いたシスターと一緒に暮らしていた 

だが、ある時、町長が代ってから、街の中心部の移転があった(その代わった町長がアリ氏) 

シスターとレイニャは、街の人々の勧めに関わらず、この旧市街に住んでいた… 
やがて、時が過ぎ、この礼拝堂が忘れられていった… 
そして、シスターが亡くなった― 

『半獣人』に世間の偏見のあるこの世界で、レイニャはいわれの無い差別を受けていた… 
だが、そんなレイニャをシスターはずっと温かく護ってくれていた 

礼拝堂を動かなかったのも、レイニャを人々の好奇の目に晒したくなかったのだろう… 

そして、レイニャは独りぼっちになった―



一方のカンニャも、母親が小さな頃に亡くなっており、父親のアリ氏は宝石の貿易商として、世界中を飛び回っている― 

仕事が忙しい父親に、構ってもらいたくても構ってもらえない 
カンニャは頭の良い子だ…。自分が無いものねだりをしている事に気付いた… 
それから、次第にカンニャは、あまり笑わない子になった… 

そんな似たような境遇の二人だったから、急速に仲良くなっていった― 

メイドの目を盗んで、旧市街まで来ては二人で良く遊んだ… 
不審に思ったメイドコンビが後をつけて、礼拝堂にたむろしてるのに気付いた 

力ずくでカンニャを連れ戻そうにも、レイニャが邪魔をして阻止される…。 
諦めたメイドコンビが事情を聞いてみる 

メイドコンビも二人の生い立ちに同情して、手助けをすることを約束した― 


そして今回の『失踪』は、父親であるアリ氏の、カンニャに対する愛情を試すための『家出』だったのだ―



「ごめんなさい…パパ…」父親・アリ氏の胸に顔を埋めて嗚咽するカンニャ… 

黙ってそっと優しく娘の頭を撫でているアリ氏… 
「寂しい思いをさせて済まなかったな、カンニャ…」 

みんな、二人の愛情確認をじっと見ている… 

カンニャが落ち着いてから、アリ氏がみんなに言葉を述べていった… 

「まず、サキさん達…、娘の捜索に尽力してくれて、ありがとう…」と深々と頭を下げる― 
「ヤですよぉ〜〜〜!『困ったときはお互い様』ってゆうじゃないですかぁ〜〜!』とモモ― 

「キャメイとサユミン」 
「は、はい!」 
「カンニャを陰から護ってくれてたんだな」と、メイドコンビを褒めるアリ氏 

「でも…あの〜やっぱり…私たち、クビですよね…?」「…家出の手伝いもしましたし…」とメイドコンビは恐る恐る質問する… 

びくびくしている二人を笑い飛ばしたアリ氏は 
「これからも娘を頼むよ!!」と言って、二人の肩を叩いた… 

「は、はい!!」 
嬉しさのあまり、涙ぐむメイドコンビ―



「それからレイニャくん、だったっけ?」 

「…はい」 

「ワシが街を移転させたために、キミには寂しい思いをさせてしまった…済まない…」とレイニャにも深々と頭を下げて謝罪する― 

「…もういいニャ…済んだことだし…。これからカンニャを大事にしてくれるなら、もういいニャ…」とだけ言葉少なに言うレイニャ 
そんなレイニャに 
「ワシからの一つの提案だが…」と前置きし、 
「ワシのところでメイドとして働かないか?」 

レイニャは一瞬、耳を疑った…。いつも差別と奇異の目で見られていた自分を『雇いたい』という人間があらわれたのだ― 

「でも、レイニャに半獣人だし…」 
レイニャの言葉を遮って、「そんなことはワシの『家族』に関係ない!どんな姿だって『家族』は『家族』だよ!!」 

アリ氏の優しい言葉に― 

レイニャは号泣した―



突然のアリ氏の申し出と優しい言葉に、レイニャは号泣した― 

あまりにも感激しているレイニャに少し申し訳なさそうに、アリ氏が一通の手紙を、スッと差し出す… 

涙を拭いて、レイニャが手紙に目を通す― 

手紙の主はレイニャの育ての親・シスターからだった― 

短い手紙だったが、『私が死んだら、“娘”のレイニャを頼みます』という内容だった― 

再び、堪え切れず号泣するレイニャ― 

「シスターの死を知ってから、約束を果たそうと思って、ずっとキミを探していたんだ…。おかえり…レイニャ」 

レイニャがアリ氏に駆け寄って、カンニャ同様、胸に顔を埋めて嗚咽した― 
思いっきり泣いた… 

感動的なシーンに、その場にいたみんなが泣いた― 



でも、何かを忘れてる気がする…



今回のカンニャの『失踪』は、大団円に終わろうとしていた… 

皆、涙をハンカチで拭いて笑顔になる― 

だが、突然、 
「アッ〜〜〜〜〜〜!!」と誰かが大声で叫ぶ… 

叫んでいたのはユリーナ… 
「ナッキー!!ナッキー!!」 

「!!」 

全員揃った、と思っていたが、メイドのナッキーのことをすっかり忘れていた… 
慌てて、ユリーナがレイニャ達にナッキーの居場所を聞く… 

「なんか抵抗したんで、地下室に入れたニャ」とレイニャが答える… 

「どこ?どこ?場所どこー?」と明らかにテンパってるユリーナ… 

「ほらほら落ち着いて〜」「別に拷問なんかしてないから大丈夫なの!」 
とメイドコンビに言われるが、気持ちが先走っているユリーナ 

そこでマァが 
「落ち着け、とゆいたい」といってチョップをかまし、我にかえるユリーナ



すっかりナッキーのことをを忘れていたみんな 

レイニャに導かれてユリーナが助けに行く… 

礼拝堂を出て裏手に地下室の入り口があった… 

「ここは『更正の部屋』なんだニャ」というレイニャの言葉も耳に入らず、部屋の扉を勢いよく開けるユリーナ 

ガチャ!! バンッ!! 

すると、部屋の隅で三角座りですすり泣くナッキーを発見した― 

扉が開いて、不意にユリーナが助けに来たことにテンパってるナッキー… 

「ゴメンね。遅れちゃったけど、もう大丈夫…」 
優しく語りかけるユリーナ 
「…う、うわぁぁ〜〜ん!!」緊張の糸が切れたのか、安心感がそうさせたのか、大声を上げてユリーナの胸に顔を埋めて嗚咽するナッキー 

何も言わず、ぎゅっと抱きしめるユリーナ 

地下室に入れたのはやりすぎだったかな?とバツの悪そうなレイニャ 

泣き止んだナッキーの手をしっかり握って先導するユリーナ 

やや、顔を赤らめながら、黙ってユリーナについて行くナッキー…



ユリーナに連れられて地下室から戻ってきたナッキー 
アリ氏も無事を喜んでくれた… 

そして何より印象的だったのは、ユリーナにぴったりと寄り添っていたこと― 

最悪の出会いから、救世主へとなったせいか、以前と比べて接し方が変わったような気がする… 

今回の件は大団円で幕を閉じた― 

そして翌日―