そして一方、ハロモニア城内のある一室では―

コンコン・・・

「いいよ。入って」
「失礼します」

「スミマセン、もうおやすみされる前に・・・」
「いいのよ。誰だって知りたいことはあるわけだし・・・」
「ホントに、ありがとうございます」
会話の主はヤススとアイオーラであった
ユーコの、ハロモニア救済のための『打開策』を聞きにヤススの部屋を訪れたのだ

「じゃあ早速、ユーちゃんの言ってた『打開策』のことなんだけど・・・」
「ハイッ!」
「実は・・・」
「えっ!?・・・」
「これはね・・・そして・・・」
「そうなんですか・・・じゃあこれは・・・」
そんな二人のやりとりが約30分くらい続いた
その後、ヤススの回答に満足したアイオーラは
「ありがとうございました!では、また明日・・・」
と言い残し、ヤススの部屋を後にした

バタン・・・

「・・・ユーちゃん、どう思う?」
「・・・『クロ』やな」
「えっ!?」
「なんかウチらのことを嗅ぎ回ってるみたいや・・・それに、朝も様子がおかしかったし・・・
要注意、やな」

アイオーラが退室した後、室内の片隅に身を潜めていたユーコがスッと姿を現した
「考えたくはないけど、やっぱりアイちゃんはウチらの行動を探っとるとしか思えんな・・・」
「考え過ぎ、ってことはないの?」
「いや、『打開策』っちゅう“餌”にこれだけ食い付いてくるんやし・・・
あの子、何か隠してることあるできっと・・・」
「・・・じゃあ、明日の『作戦会議』は?」
「悪いけど、『作戦』についてはケイちゃんからみんなに伝えといてくれる?」
「うん、いいけど・・・ユーちゃんはどうするの?」
「明日、アイちゃんを問い詰める!」
「えっ!?」
「アイちゃんを問い詰めて、隠してること全部、洗い浚い喋ってもらう!
取り返しがつかんようになる前に、な・・・」


そして、退室したアイオーラはというと、城内の“ある場所”へと足早に歩を進めていた
そこへ、思いもかけぬ人物と鉢合わせになった

「あっ!」
「あれっ?アイちゃん・・・」
「アベさん、ゴトーさん・・・どうしたんですか、こんな時間に?」
「ああ、ちょっとヤボ用があってね・・・」

深夜の城内でアイオーラとばったり出くわしたアベナッチ、ゴトー
お互い思いもよらない時間帯での鉢合わせに、つい様子を探ってしまう

「で、アイちゃんもこんな時間に何してたの?」
アベナッチからの何気ない問いかけに、アイオーラは若干戸惑いながら
「えっ!?・・・あ、あの、お手洗いに・・・」
と答えた
それを聞いたアベナッチ達だったが、自分達もアイオーラに余計な詮索をされたくなかったのか、
「あ、そうなの?じゃあ、また明日ね」
とだけ言い残し、その場を立ち去っていった

(ふう・・・)
アベナッチ達が立ち去っていく後ろ姿を見ながら、アイオーラはホッと胸を撫で下ろした
それもそのはず、実はアイオーラには、まだ“一仕事”が残されていたのだ
もし、二人に捕まっていたら、その仕事を達成出来なくなる恐れがあった
それゆえ、二人がすんなりと立ち去ってくれたのは、アイオーラにとってあまりにも好都合だった

(・・・よし!)
気を取り直して、アイオーラは城内にある“目的地”へと慎重に向かっていく
城内の長い回廊を最短コースで潜り抜け、長い階段を極力音を立てずに下っていく―

やがて―

長い回廊と階段を歩き終えたアイオーラの前に、年季の入った、古ぼけた分厚い鉄製の扉が行く手を阻んでいた
その扉の所々には刃物か何かによってつけられたと思われる傷痕が見受けられる
そう、ここはハロモニア城地下にある牢獄―
アイオーラには、この牢獄に“用事”があったのだ

まず、辺りに人がいないことを確認する
ここに来るまで歩いてきた回廊を見渡してみる
長く一直線に伸びた薄暗い回廊を松明の灯りが照らしつけている
が、その先には人影は見当たらない
誰もいないことを確認したアイオーラは、続けて頑強な扉に耳をあててみた
すると、扉の向こう側から、微かながら何者かの声が聞こえる―


「あ〜退屈やなぁ〜
なぁ、エロちゃんもそう思うやろ?」
「『エロちゃん』言うな!
それと、ウチらは今、重要な任務を遂行中なんだからもうちょっとシャキッとしないと!」
「へいへい・・・
でも、あんま気張りすぎてもしゃあないやん」
「ま、そりゃそうだけど・・・」
「ハァ・・・でも退屈やなぁ・・・」

(エローカさんとユイヤンさんか・・・ごめんなさいっ!)
意を決したアイオーラはゆっくりと、そして静かに呪文の詠唱を始めた

「なぁ・・・エロちゃん?」
「だからエロちゃん言うなっ!」
「いやいや、そんなんやなくて!」
「じゃあ何よ?」
「何か人の声が聞こえへん?」
「人の声!?」
「うん・・・」

偶然なのか、ユイヤンが扉の向こう側のアイオーラの詠唱を感じ、エローカに注意を促した
すると、エローカも慌てて口をつぐみ、外の気配を室内から感じ取ろうとする
「・・・どう?」
「・・・わかんない」
「じゃあ、見に行こ?」
室内から人の気配を感じ取ることが出来なかった二人は、気配がする扉の方へゆっくりと歩いていく

カツコツカツコツ・・・

(ヤバッ!)
二人の足音が扉の方へ向かってくることにアイオーラは慌てた
しかし、いまさら呪文の詠唱を止めるワケにはいかない
今、詠唱中の呪文で二人を仕留めなければ・・・
外に出られて助けを呼びに行かれるかも知れない
となれば、扉の向こう側の“仲間”を助け出すのが困難になってしまう
そうなる前に・・・

しかし、ここで急に二人の足音がピタリと止まった

二人の足音が扉を前にしてピタリと止まった
考えられるのは、扉に到達して今まさにドアノブに手をかけようとしているところ・・・

(マズイ!・・・ええい!ままよ!)
ちょうど詠唱を終えたアイオーラが扉の鍵穴部分に手をあて、呪文をぶっ放した
「逝けっ!『七色の風・猛毒の黄』っ!!」
その声とともに、鍵穴から扉の向こう側に向けて“黄色い空気”を送り込んだ

その扉の向こう側―
エローカとユイヤンはアイオーラの予想通り、ドアノブに手をかけて、まさに扉を開けようとしているところだった
ところが、突如、鍵穴から送り込まれた“黄色い空気”をモロに吸い込んでしまう
「ん!?・・・むぐっ!?」
バタンッ!!

突然倒れたエローカの傍にユイヤンが駆け寄る
「エロちゃん!?どないしたん!?しっかりしぃ!!」
しかし、“黄色い空気”を思い切り吸い込んだエローカはもはや白目を剥いて気を失っている
「エロちゃん!?エロちゃん!?」
ユイヤンがいくら強く揺さ振ってもエローカが目を覚ますことはなかった
「早よ助けに行かへんと!」
そう思い、ドアノブに手をかけるユイヤンだったが、エローカ同様、扉周辺に充満していた
“黄色い空気”をモロに吸ってしまい、そのまま床に突っ伏した

バタンッ!!

「エロちゃん!?どないしたん!?しっかりしぃ!!」

扉の向こう側から聞こえてくる叫び声に、アイオーラは少しホッとした
とりあえず、“外に行かれる”前の足止めをすることが出来たのだ
しかし、ふと、ある重大な“見落とし”に気付き、アイオーラは思わず頭を抱え込んでしまう
(あっ!アタシ“鍵”、持ってないんだっけ!?)

あまりにも迂闊なケアレスミスを悔いるアイオーラであったが、もう賽は投げられた
後戻りなんかは出来ない
後は運を天に任せるのみ・・・
“奇跡”を信じてアイオーラはしばし待った
もちろん、いざという時にはユイヤンと一戦交える覚悟はある
固唾を呑んで、じっと待った―

すると、

カチャリ・・・

扉の“鍵”が外れた音がした・・・
考えられるのは、中にいるユイヤンが、扉の“鍵”を外して部屋の外へ出ようとしていることであろう
部屋の外に出られてしまったら、助けを呼びに行かれるリスクも、顔を見られるリスクもある・・・・
アイオーラは覚悟を決めた
丸腰ではあるが、心の準備、戦闘準備が出来てる分、ユイヤンに遅れを取ることはないだろう

次の瞬間を待つアイオーラ
すると、“奇跡”は起きた―
バタンッ!!

またまた人が倒れた音が扉の向こう側から聞こえてきた
(えっ!?・・・もしかして!?)
瞬時に、それがユイヤンが倒れた音と気付いたアイオーラではあったが、油断大敵、念には念を入れて、しばらく待ってみることにした

数秒後―
倒れた音がしたっきり、中から音が聞こえなくなった
考えられるのは、二人がアイオーラの魔法によって完全に気を失っている状態だということ―
物音がしなくなったことで、アイオーラは自信を持って部屋の中に突入する覚悟を決めた

まずは口元にハンカチをあてながら、頑強な鉄の扉をゆっくりと開けてみる・・・
口元にハンカチをあてているのは、先程アイオーラが放った“猛毒の黄”のガスが扉の周囲に滞留していた場合、
いくら使用者のアイオーラといえど、ガスを吸い込めば卒倒してしまうからだ
慎重にゆっくりと扉を引いていく・・・

ギィィィ・・・

軋む音をたてながら、扉がゆっくりと開く
そしてまず、視界に飛び込んできたのは、突っ伏して倒れているエローカとユイヤンの姿・・・
動く気配がないことに、アイオーラはひとまず胸を撫で下ろした

門番の二人が完全に気絶していることを確認したアイオーラは、おもむろに二人の身体から“あるもの”を探り始める
そう、この回廊の奥の牢獄に囚われている“仲間”を解放するための“鍵”だ
気絶している二人を起こさないような、慎重に探る

そして―
「・・・あった!」
思いの外、“鍵”はいとも簡単にエローカのポケットの中から見つかった
(よし、行こう!)
まだぐったりしている二人を横目に見ながら、アイオーラはその場から回廊の奥にある牢獄に向かって歩き出す
気絶している二人の様子を常に窺いながら、ゆっくりと、慎重に忍び足で歩を進めていく

しばらくして―
「着いた・・・」
アイオーラは目的地である牢獄へと辿り着いた
ひとつの目的を達成し、ホッと一息つく
しかし、ここからが本番だ
牢獄に囚われている“仲間”の救出が残っている
(よしっ!)
両の手で両の頬をパチンッ!と叩いて喝を入れて、アイオーラは鍵穴に鍵を入れて扉を開ける作業に取り組み始める

すると―

カチンッ!!
僅か数秒で扉の鍵が開いた

牢獄の鍵を開けることに成功したアイオーラは、すぐさま中へと侵入する
すると、長い回廊の両側にいくつもの頑強そうな鉄製の扉がズラリと並んでいる

(えっ!?うそっ・・・!?)
あまりの扉の数の多さに、アイオーラはため息をつき、その場にへたり込んでしまう
(カンベンしてよぉ〜、もうっ!)
そう独り言を呟くと思わず天を仰いだ
ボーッとすること数秒・・・しばらくしてアイオーラは自分の“使命”をハッと思い出し、再び両の手で両の頬をパチンッ!と叩いて喝を入れ直す
(早くしないと・・・気付かれちゃう!早くしなきゃ!)

そう決心した後のアイオーラの行動は素早かった
まず、回廊の一番奥まで早足で駆け抜ける
そして一番奥に到達すると、そこから一つ一つ牢屋の扉の覗き窓から人がいるかいないかチェックしていく・・・

すると幸運の為せる業か、一番最初に覗いた部屋に、お目当ての“仲間”が閉じ込められていたのだ

「コンちゃんっ!」
喜びのあまり、つい叫んでしまう
そしてハッと我に返って口を閉じ、手に持った鍵の束を鍵穴に突っ込み、解錠作業に取り組み始めた

そして同時刻・深夜―
ミキ帝のアジト―

カチャッ・・・
(もうそろそろ、時間ね・・・)
パチンッ!!

手にした懐中時計を閉じると、コンはおもむろにベッドから起き上がった
その後、ベッドの縁に腰を掛け、ゆっくりと伸びをして身体の筋肉をほぐす
(さて・・・ここからが本番ね・・・
トゥンク様・・・どうか力をお貸し下さい・・・)
胸にぶら下げたペンダントをギュッと握りしめ、英雄神・トゥンクにしばしの間、祈りを捧げる
そして、両の手で両の頬を叩いて、気合いを入れる
(よしっ!)

ギィィィ・・・

部屋の戸をゆっくり開けて、周囲を見回してみる

・・・・・・

静まり返ったアジト内の様子にホッとしたコンは、そのままアジト内を忍び足で物音を立てぬよう、慎重に歩いていく
目指すところは地下室!

(この図面でいくと、長官のいる部屋はこの階段を下ったところにあるみたいね・・・)
ランプの灯りしかない薄暗いアジト内で、目を凝らして見取り図を凝視する
(こっちか?)
見取り図の指し示す方向を確認すると、コンは再び歩き始めた

ギシッ・・・ギシッ・・・
軋む廊下を疎ましく思いながら、コンは見取り図の通り慎重に歩を進めていく

やがて見取り図が指し示す地点に到達したコンは、息を潜めて再度周囲の気配を確認する

・・・・・・

依然、アジト内は静まり返ったままだ
(よかった・・・)
コンは胸を撫で下ろした
そして、地下室の階段の位置を探り始める
(確か・・・この辺だと・・・)
コンが不用意に床に手を付いた途端、

ガコンッ!!
「ひぃっ!?」
付いた手が沈んでしまい、慌ててコンは手を引っ込めた
と同時に、迂闊にも声をあげてしまった口を手で塞いだ
今の物音と声で二人が目を覚ましてしまったんじゃないか?
そう思ったコンは改めて息を潜め、気配を探ってみる・・・

・・・・・・

(助かった・・・!)
二人が起きた気配を感じなかったコンは胸を撫で下ろし、再び任務に取り組み始めた
先程手を付いた地点に目をやる
すると、沈んだ床の部分の反対側が見事にせり上がっている
けっこう大きい・・・

(もしかして!?)
せり上がった部分に手をかけ、ゆっくりと持ち上げてみる
すると、
(BINGOっ!)
床の下から、地下に続く階段が顔を覗かせていた

(よし・・・行くか!)
地下室へと続く階段を目の当たりにして、コンは気合いを入れ直す

地下室からややひんやりとした空気が流れてくる
その空気がアジト内の薄暗さと相まってより一層おどろおどろしさを醸し出す
しかし・・・
(待ってて下さい、長官っ!)
そんな雰囲気はお構い無しに、コンは地下へと降りていった

しばらくして―
地下室に到達したコンは、薄暗い通路を見渡すべく魔法で光を灯す
幸い、通路は奥行きがあまりなく、僅か20m程で行き止まりになっていた
その奥に頑強そうな鉄製の扉が一つ、目についた
(あそこかっ!?)
逸る高鳴りを抑え切れず、コンは駆け出した

カツカツカツカツ・・・

「ハァ・・・ハァ・・・」
息を切らして扉に辿り着いたコンは、扉の向こう側にいると思われるヤグーに向かって叫んだ
「長官っ!?・・・長官っ!?」
すると、扉の向こう側から微かに声が聞こえてきた
「・・・うぅ」
その呻き声にコンの抑え込んでいた感情が爆発した
「長官っ!アタシですっ!メーグルですっ!
・・・待ってて下さい!すぐ、助け出します!」

コン・・・いや、コンに扮したメーグルの叫び声が通路にこだまする

その悲痛な叫び声が届いたのか、扉の向こう側から微かに声が聞こえてきた
「・・・メグ?・・・メグかい?」
弱々しいが、確かにヤグーの声だ・・・
「長官っ!」
鉄製の扉に手をついて、向こう側のヤグーに呼び掛ける
「メグ・・・」
「長官っ!・・・長官っ!・・・」
たった一週間だけなのに・・・その声がとても愛しい・・・
ヤグーの懐かしい声にメーグルは嗚咽してしまい、しばらく話す言葉が言葉にならなかった

しかし、二人の固い絆も非情な“運命”の前にズタズタに切り裂かれてしまう
「長官っ!今、助けに行きますっ!」
「くるなっ!」
「えっ・・・!?」
メーグルは我が耳を疑った
救出に来たメーグルを追い返すヤグーの意図がわからなかった・・・
もう一度尋ね返す
「アタシ・・・長官を助けに・・・」
「ダメだよっ!入ってきちゃ!」
メーグルの言葉を遮ってヤグーが怒鳴った

・・・・・・
通路内が再び静寂に包まれていく
茫然自失のメーグルの気配を感じ取ったのか、ヤグーが振り絞るような声で、こう告げた
「悪い・・・しくじっちゃったよ・・・
もう・・・手遅れなんだ・・・」

「そんな・・・」
今にも消え入りそうなヤグーの言葉を聞き、メーグルは言葉を失くした

「どうして!?・・・どうしてなんですか!?」
鉄製の扉に縋りつきながらメーグルはヤグーに向かって必死に問いかける

すると弱々しい声で、ヤグーはメーグルに言った
「もう・・・オイラの身体は・・・『アイツ』に・・・支配されそうなんだ・・・」
もう喋ることすら辛いのか、ゆっくりと、途切れ途切れの返答だった
しかし、それでも諦め切れないメーグルが
「・・・長官っ!今、ここを開けますから・・・一緒に、脱出しましょう!」
と言うなり、突如立ち上がって扉をこじ開けようとする

・・・が、
「開けないでっ!」
今までにない強い口調で、ヤグーがメーグルを制する
そして、悲しそうに言った
「メグには・・・メグには・・・見られたくないんだ・・・
オイラが・・・化け物になった・・・姿を・・・」
ヤグーが失踪してからの一週間・・・メーグルはヤグーを必死に捜し続けた
そして、ようやく巡り合えた
しかし、ヤグーの一言で張り詰めた感情の糸が切れたのか、メーグルはその場に崩れ落ちてしまった

静まりかえった通路内でメーグルのすすり泣く声が反響する
深い悲しみに襲われたメーグルは床に突っ伏したままだ・・・

泣き止まないメーグルに、ヤグーが優しく語りかけた
「メグ・・・あんたはまだ・・・やらなきゃいけないことが・・・あるだろ?」
「!?」
ヤグーの語りかけにメーグルのすすり泣きが止んだ
「あんたは・・・早く戻って・・・りしゃこ達を・・・支えて・・・あげなきゃ・・・」
「!!」
ヤグーの言葉にメーグルは己が使命を思い起こされた
その言葉を聞いたメーグルは床に突っ伏したままの体勢から扉を支えにして立ち上がり、涙を拭って顔を上げた
そして両の瞳には、再び強い意思の光が宿っていた

「長官・・・待ってて下さい!・・・明日の試合が終わったら・・・
きっと・・・きっと・・・助けに来ますっ!」
そう言い残し、メーグルはヤグーの扉を背にして立ち去っていった・・・振り返ることなく・・・

立ち去っていくメーグルの足音に、ヤグーは安心したのかゆっくりと目を閉じ、疲れはてた身体を休め、そのまま眠りについた
(頼んだよ・・・メグ・・・)