「まだだ・・・まだだ!!」 突然、闘技場に絶叫が鳴り響いた 「返せよ・・・アタシのもの、返せっ!」 その絶叫の直後、蹲っていたヤススの背中に鈍痛が走った 何者かがヤススを踏み台にしたのだ 「ぐえっ!?」 踏み潰されたヤススは思わずカエルのような声をあげてしまう 絶望に打ち拉がれてヤススではあったが、“異変”に気付き、顔をあげた 「!!」 ヤススの視界に映ったのは、ユーコと同化したマヤザックに迫るミキ帝の姿であった 「うおおおおおおおーっ!!」 ヤススを踏み台にして空高く跳躍したミキ帝はマヤザックに得物・トンファーブレードを振り下ろした! だが・・・ ガキィィィン!! 「ちいぃぃぃ!」 マヤザックの頭蓋骨を叩き割るハズであった刃はもうあと少しというところでアヤヤの棍に阻まれてしまった 『ほう・・・まだそんな元気があったのか・・・』 あわや、という場面の直後だというのにマヤザックは余裕顔であった しかし、ミキ帝の意外な言葉に突如顔色が変わってしまった 「黙れ!よくも・・・よくも母さんを・・・!」 『ほほう!よく気付いたな・・・』 「黙れっ!母さんを・・・里のみんなを皆殺しにしたお前だけは・・・許さないっ!」 一瞬の隙をついてアヤヤのガードを振り切ったミキ帝は、マヤザックの喉笛を掻っ切らんとばかりにトンファーブレードを水平に薙いだ! チュィィィィン!! 「くっ!?」 『甘い・・・甘いんだよ!』 ミキ帝の怨恨の刃はマヤザックの刀に阻まれ、お返しに腹部に痛烈な蹴りをもらってしまった 「ぐふっ!?」 大きく後方へ吹っ飛ぶミキ帝・・・ そのまま闘技場の果てまで飛んでいくところだった あと少しでミキ帝は壁面に激突するところだった それを二人の“乱入者”が未然に防いだのだ 「ふう・・・間一髪、だべさ!」 「油断大敵だぞ・・・あの化け物が本気だったなら身体を真っ二つにされてたとこだぞ」 「アベさん・・・ゴッつぁん・・・」 思いがけないかつての戦友の“救いの手”に、険しかったミキ帝の顔も少し綻ぶ 今までマヤザックの手先だったミキ帝が正気に戻り、アベナッチとゴトーが立ち上がった そのことで観客の沈痛な雰囲気が少しずつではあるが和らぎ始める それは観客だけではなかった 「ナッチ・・・ゴッちん・・・」 ユーコとかつての戦友を奪われ失意に打ち拉がれていたヤススの目にも、再び光が灯り出した 「ケイちゃん、ウチらの合い言葉は『やられたらやり返せ!』だべ?」 「そうそう・・・いつものケイちゃんらしくないよ」 「・・・そうだね!」 ヤススは二人の問いかけに力強く頷いた マヤザックとミキ帝達、彼我の戦力差は7対4・・・頭数だけでいえば圧倒的に不利なのは違いない だが、対峙している当の本人達は、なぜかしらそんなに悲観的な気がしない・・・ いや、むしろ、このメンバーならなんとかなる・・・そんな感覚を感じていた そんな矢先、マヤザックがミキ帝達を皮肉る 『ほほう・・・すっかりワタシに勝つつもりでいるようだな・・・』 マヤザックには、ミキ帝達の立ち直る姿が目障りなのだろう 今までならマヤザックの重圧に気圧されていたミキ帝達だったが、すっかり吹っ切れたのか、 「『勝つつもり』じゃない・・・『勝つ』んだ!アタシ達が!」 と、ミキ帝がマヤザックに面と向かって力強く言い放った そして、その言葉にアベナッチも、ゴトーも、ヤススも同調して頷いた そうなると、面白くないのはマヤザックだ 『友情ゴッコか・・・虫酸が走る』 俄かに不機嫌な顔つきになって、今にも襲いかからんとしてきた マヤザックの攻撃態勢に、ミキ帝達も迎撃の構えをみせる 高まる一触即発のムード・・・重苦しい空気・・・静まりかえる闘技場・・・ その静寂の中、不意に時計台の鐘の音が鳴り響いた カーン・・・カーン・・・カーン・・・ すると突然、マヤザックは攻撃態勢を解き、そして呟いた 『そうだ・・・すっかり忘れていた・・・』 マヤザックの不可解な攻撃解除に、ミキ帝達も訝しがる そこへマヤザックがミキ帝達に吐き捨てるように言った 『フン!命拾いをしたな! ワタシには大事な用事が出来た・・・お前達の相手をしてるヒマなどない!』 「な・・・何だとっ!?」 マヤザックの鼻持ちならない態度に怒るミキ帝 だが、そんなミキ帝に構うことなくマヤザックは背後に控えていた六人の“分身”に命を下した 『いいかお前達、手筈通り封印されし我が“肉体”を奪い取ってこい!』 すると、六人の“分身”は命が下った瞬間、その場から煙のように消え去ってしまった・・・ マヤザックの発した“肉体”という言葉・・・そして消え去った六人の“分身”・・・ “肉体”というものは目の前にいるミキ帝達の始末を差し置いてまで優先すべき大事なものなのか? ミキ帝達はますます混乱する・・・ そんなミキ帝達を尻目に、マヤザックは踵を返し闘技場から立ち去ろうとするではないか? 「おい!?待て!手前っ!!」 マヤザックに縋るように飛び掛かるミキ帝 だが・・・ 「なにぃぃぃっ!?」 ミキ帝より一足早くマヤザックの姿は跡形もなく消え去ってしまった・・・ 「くそっ!」 宿敵をあと少しのところで取り逃がし、悔しさのあまり拳を地面に打ちつけるミキ帝 「ミキちゃん、落ち着いて!」 取り乱すミキ帝をアベナッチが宥める 「そうだよ、早くアイツの後を追わなきゃ!」 「でも、どうやって?」 「!!」 ミキ帝の指摘にアベナッチ達はハッと気付かされた 姿を消したマヤザックの後を追おうにも、果たしてどこへ向かったのか、その手掛かりが全くないのだ 「くっ・・・!」 悔しさに唇を噛むミキ帝達 と、そこへミキ帝達に近づく者がいた 「アイツらの行き先なら見当ついてる」 「!!」 突然聞こえてきた意外な言葉に、ミキ帝達全員が即座に振り返った その視線の先にいたのはユーコのお庭番・アツコであった 「アッちゃん!?」 アツコがマヤザックの行き先を知ってることに半信半疑のミキ帝達 そんなミキ帝達の心境を察してか、アツコは結論を切り出した 「アイツらが向かってる先は“七つの塔”や」 「七つの・・・塔?」 聞き慣れぬ言葉にミキ帝達は困惑する・・・が、ユーコの側近であったヤススはすぐ気が付いた 「えっ!?あそこ?」 驚くヤススにミキ帝達が質問する 「何なの?その“七つの塔”って?ねえ、教えて!」 せっつくミキ帝達にヤススがある場所を指差す 「ホラ!アレよ、アレ!」 ヤススが指し示した先には王都・ハロモニアの外壁の周囲に立つ“物見櫓”があった 「アレ?ホントにあんなところに行ったっていうの!?」 ミキ帝が訝しがるのも当然である アツコの言う物見櫓は実際にミキ帝も行ったことがあるのだが、何の変哲もない、ただの見張り台なのだ しかし、アツコははっきりと告げた 「いや、アイツらの狙いはあそこに封印されたマヤザックの本当の“肉体”・・・」 「「!!!」」 ミキ帝達は唖然となった そんな話は初耳だからだ 加えて、そんな重要なものを特別な警護もしていないなんて・・・ 「極秘やからこそ、何もしなかったんや」 アツコは言う 「もし、大袈裟に警護なんかしてみ?“お宝”の在処が一発でわかってまうやん?」 アツコの言葉にミキ帝達は頷く 「それやったら人目につかず、且つ誰にも怪しまれずに警護出来る場所に封印した方がいい・・・ そう言うてユーちゃんがマヤザックの“肉体”を七つに分けて、そこに封印したんや」 「じゃあ、急ごう!」 ゴトーが言う 「うん!」 「そうしよう!」 アベナッチもヤススも同意する だが、今までマヤザック追撃にはやっていたミキ帝は別の一点を凝視していた・・・ 「ねえミキちゃん?どうした・・・の?」 一点を凝視するミキ帝に気付いたゴトーの見つめる先を追いかける そして自分達の重大な過ちに気付かされた 「ミヤッ!ミヤッ!しっかりしてっ!」 「ねぇ起きて!目を開けて!」 「やだ・・・なんだか冷たくなってきてる・・・」 「サキ!なんとかならないの!?」 「わかってるっ!アタシだって精一杯なんだからっ!」 「モモ!落ち着きなよ!」 そこには、ミキ帝の凶刃に倒れたミヤビの姿と、懸命に蘇生を行ってるりしゃこ達の姿があった 「しまった・・・」 そう、ミキ帝達は今までマヤザックにばかり気を取られていて、致命傷を負ったミヤビのことまで気が回らなかったのだ 「マズイ・・・どうにかしなきゃ・・・」 ゴトーがそう思った時だ ゴトーの傍にいたミキ帝がミヤビのところまで一気に駆け寄っていったのだ 「ミキちゃん!?」 ミキ帝の突飛な行動にゴトー達も慌てて後を追った あっという間にミヤビの元へ駆け寄ったミキ すると、ミヤビを取り囲んでいるりしゃこ達に向かって 「おい、お前ら!そこを退け!」 と威圧するではないか!? ミキ帝の怒鳴り声にりしゃこ達は一斉に振り返る 「な、なんですか!?」 懸命の治療を行ってる最中に割って入ろうとする“加害者”ミキ帝に、りしゃこ達は驚く 「いいから!早く退け!手遅れになってもいいのか!?」 いつにないミキ帝の剣幕に気圧され、治療に当たっているサキを除くりしゃこ達はミヤビから離れていく 目を閉じたまま横たわるミヤビ 多量の出血ですっかり血の気が失せ、生気がまるで感じられない そんなミヤビの姿にミキ帝は一言、 「ゴメンね・・・」 と、呟いた いつもより鼻にかかった声だったのは、泣いているせいなのか・・・ しばらくして、ミキ帝は突然腰に帯びたトンファーブレードを手に取る そして 「今すぐ・・・楽にしてあげるから」 と言ってトンファーブレードを頭上に持っていった 「!!」 りしゃこ達は凍りついた まさか・・・その刃をミヤビに振り下ろすのか!? 生命を断つことでミヤビを苦痛から解放しようというつもりなのか!? 「やめてっ!」 凍りついて身体が動かないりしゃこ達は叫ぶのが精一杯だった しかし、ミキ帝の刃は躊躇うことなく、そのまま振り下ろされた 「うっ!」 微かに、呻き声がした その後、りしゃこ達はミキ帝の肩越しから鮮血が飛び散るのが見えた 「いやぁーっ!!」 絶叫し、その場に崩れ落ちるりしゃこ 同様に周りのメンバーもミヤビが刺されたことのショックで身体が硬直したままだった だが・・・ 「おい!この娘の口を開けて!早く!」 ミキ帝が振り返り、りしゃこ達にそう告げた ミキ帝の言う『この娘』とは一体・・・? 困惑し立ち尽くすりしゃこ達にミキ帝が急かすように怒鳴りつける 「もう何やってんの!?この娘が死んでもいいの!?」 死ぬ・・・? その言葉にりしゃこ達は再度耳を疑った そして改めてミヤビの亡骸を覗き込んだ すると、ミヤビの身体には刺し傷ひとつついてなかった では、りしゃこ達の見た、あの鮮血は一体・・・? その答えはすぐにわかった 滴り落ちる鮮血の跡を辿ると、そこはミキ帝の左腕だった ミキ帝が刺し貫いたのはミヤビの身体ではなく、己の左腕だったのだ では何故? 「ミキちゃん、これでいい?」 呆然とするりしゃこ達を見兼ねたヤススがいつの間にかミヤビの口を開けていた 「ありがと!しばらくそのままにしといて!」 そう言うと、ミキ帝は鮮血の滴り落ちる左腕をミヤビの口元へと持っていった と、次の瞬間、ヤススが絶叫する 「ちょっとミキちゃん!?何してるの!!」 ヤススが慌てたのも無理はない ミキ帝はヤススが開けさせたミヤビの口に自分の鮮血を飲ませているではないか? 慌てるヤススにミキ帝は平然と答えた 「この娘にアタシの血を飲ませてるの」 「それは見ればわかるわよ!そんなもの飲ませて大丈夫なの!?」 ミキ帝の行為の意図がわからないヤススはやや乱暴に問いかける 「きっとなんとかなる」 ミキ帝ははっきりと答えた 「でも・・・」 ミキ帝の自信の根拠がわからないヤススは食い下がる 「アタシ・・・調べたんだ」 少し悲しげな表情でミキ帝は呟いた 「何故、アタシ達『狼族』が人間の標的にされてたのか?って・・・」 半獣人としてのミキ帝のその言葉が、人間であるりしゃこ達の胸を締め付けた ミキ帝は構わず続ける 「そのワケはね、アタシ達『狼族』の生き血を飲むと『不老長寿』になる、って言い伝えが残されてたの・・・ もちろん、そんなことはデタラメなんだけどね・・・でも・・・」 「でも・・・?」 「アタシ達『狼族』の生き血は他の生物の生命力を高める効果があるの」 初耳であった・・・ 『狼族』が人間達に狩られた理由もさることながら、『狼族』の生き血にそのような秘密があったとは・・・ 「じゃあ・・・ミヤビちゃんは助かるの?」 ヤススがその場にいるみんなの気持ちを代弁するかのように尋ねた 「助かる・・・ううん、助ける!」 ミキ帝が力強く言い切った、その時だ 「ケホッ!・・・ケホッケホッ!」 か細い咳払いがした ミヤビだ! 見ると蒼白だった顔色に僅かながら赤みを帯びてきた 「ミヤッ!」 ミヤビの奇跡的な回復に、真っ先にりしゃこが飛びついた 「やった!」 「よかった・・・」 りしゃこに遅れて周りも喜びの声をあげる 「助かったわ。ミキちゃん、ありがとう」 ミヤビの生命を救ったミキ帝にヤススが労いの声をかけ、ポン!と肩を叩いた すると、緊張の糸が切れたのか、突然ミキ帝はミヤビに縋るように抱きつき、そして、嗚咽した 「ごめんね・・・アタシのせいで・・・痛かったでしょ?」 それだけを言葉にするのがやっとで、後の言葉はすすり泣きで言葉にならなかった だが、ミキ帝の精一杯の贖罪の言葉だというのは心から伝わってきた そして、奇跡的な生還を果たしたミヤビは、突然のミキ帝の抱擁に戸惑っていた だが、やがて意識が徐々にはっきりしてくると、自分がりしゃこを庇ってミキ帝の爪に貫かれたのを思い出したのだ 途端、ミヤビの身体に電流が走る 自分に瀕死の重傷を負わせた相手が目の前にいるのだから当然のことだ しかし、抱擁から伝わってくるミキ帝の優しい温もりが、ミヤビの恐怖心をゆっくりと拭い去っていき、 そしてミヤビの口からありのままの感情の言葉が不意にこぼれた 「あったかい・・・」 「・・・!」 何気ない一言だった。だが、ミヤビを傷つけたことに自らを責めるミキ帝にとっては“赦し”の言葉に聞こえたのだ ゆっくりと顔をあげ、ミキ帝はミヤビを見つめて震える声で言った 「ゴメンね、痛かったよね・・・」 そんなミキ帝に、ミヤビは慈しむように言った 「元に戻ったんですね?・・・よかった・・・」 ミヤビの優しい言葉に戸惑いながら、ミキ帝は恐る恐るミヤビに尋ねた 「じゃあ・・・赦してくれるの?」 いつものミキ帝らしからぬしおらしい態度に少し戸惑いつつも、ミヤビはしっかりと答えた 「・・・ハイ」 「よかった・・・」 奇跡の生還を喜び、幸せそうに抱き合うミキ帝とミヤビに、りしゃこ達もヤスス達も心から喜んだ だが、そんな至福の時を打ち壊す事件が起きた ボンッ!! 突然、闘技場の外から大きな炸裂音がした 観客もりしゃこ達も炸裂音がした方へ一斉に振り向いた そして、目撃した光景に思わず悲鳴をあげ始めた 「そんな・・・!?」 皆が目撃したもの、それはあの『物見の塔』が爆発し、火の手が上がっている光景だった 皆、思いもよらぬ出来事に騒然となりパニック状態に陥った しかし、『物見の塔』の爆発はひとつだけでは終わらなかった ボンッ!! ボンッ!!ボンッ!! まるで仕掛け花火のように、『物見の塔』が次々と爆発していく・・・ 「ウソ・・・!?」 りしゃこ達もミキ帝達も、その様子を闘技場で呆然と眺めている他なかった そして・・・ ボンッ!! 最後のひとつがあっけなく爆発したところでようやく連鎖爆発が止んだ しかし、りしゃこ達やミキ帝達にとってショッキングだったのは、『物見の塔』が全て爆発したことで アツコの言っていた『物見の塔』に『マヤザックの肉体』が封印されていることが確かになったことだ 「しもた・・・」 アツコが思わず天を仰ぎ呻いた 完全復活を狙うマヤザックによる塔の爆発を予測しながらも、それを未然に防げなかった己の不甲斐なさを恥じるようにも聞こえた 「アッちゃん・・・」 肩を落とすアツコを見て、ヤススも不安気に呟いた だが、時間は感傷に浸る猶予すら与えてはくれなかった ボンッ!! ボンッ!! ボンッ!! ハロモニア城の外から大きな爆発音が立て続けに聞こえてきた 「!!」 それからほどなくして、あちこちから悲鳴も聞こえてきた 不審な爆発と悲鳴・・・それがマヤザックの仕業というのは容易に想像できた 「あの野郎っ!」 ミキ帝が怒りを露に吐き捨て、未だ肩を落とすアツコに向かって叫んだ 「おいっ!早くアイツらを止めに行くぞ!」 ミキ帝の檄にアツコは我に返る 落ち込んでいる暇などない・・・早く止めに行かないと世界が完全にマヤザックに支配されてしまう・・・ そう思うと、自然と言葉が出た 「みんな!今からアイツらをシバキに行くでっ!」 すると間髪入れずに 「オーッ!」 という返事が返ってきた 見ると、ミキ帝のみならずみんなの顔つきがいつになく闘志に満ち溢れているではないか 改めて気を引き締めたアツコはみんなに向かって叫んだ 「今からみんなで手分けしてアイツらを捕まえるで!」 アツコの号令の下、メンバー達が次々と集まってきた そして・・・ 「みんなええか?今からアイツらの後を至急追いかける!」 アツコの言葉に全員が頷く そこで改めてみんなの意思を確認したアツコは再びメンバー全員に呼びかけた 「目標は『マヤザック』の身柄の確保! 発見次第速やかに行動せよ! もし攻撃してきた場合は応戦もやむ無し!」 アツコの言葉にメンバー全員が再度頷いた そして、いよいよ行動開始の時がきた 「今からチームを組んで行動する!チームリーダーを決めてまとまって行動するように!」 アツコの声が闘技場にこだまする すると、真っ先にミキ帝の手が挙がった 「アツコさん・・・悪いけどアタシは一人で行動させてもらいます」 ミキ帝の申し出にアツコは戸惑ってしまう 「ミキちゃん!?どうして?」 「訳があるんです・・・」「訳・・・って?」 「多分、今のアヤちゃんを救えるのはアタシしかいない・・・って、そんな気がするんです だから、アタシ一人でアヤちゃんのところに行かせて下さい!」 真剣そのもののミキ帝の眼差しに、アツコは決心した 「わかった・・・せやけど絶対ムチャせえへんと約束してや」 「・・・約束します!」 そう言い残して、ミキ帝は闘技場を去って行った (頼んだで・・・ミキちゃん!) 通路の闇に溶け込んで消えたミキ帝の後ろ姿を見送ったアツコは、メンバー全員に何か告げようと向き直った と、その時 ドゴォォォン!! ゴゴゴ・・・ 大きな爆発音とともに、激しい地鳴りがした そしてその直後、闘技場の向こう側の至るところから悲鳴が聞こえてきた 何事か!?そう思ったアツコは急いでメンバー全員に指示を出した 「ちょっとみんな!急いで外へ行くで!」 それから数分後― 闘技場の外に出たアツコ達メンバー全員の目に映ったのは、爆発によって破壊された街並みと、逃げ惑う人々の姿・・・そして グオォォォォーッ!! 唸り声をあげて人々に襲いかかる“人間ならざる者”ゴーレムの姿であった 「くそっ!こんな大事な時に・・・!」 アツコは思わず歯噛みした 完全復活を遂げようとするマヤザックの後を追わねばならない時に、思わぬ横槍が入った格好だ しかし、マヤザック追撃もさることながら、ハロモニアの民を救うこともアツコ達の責務なのだ 一体、どうすればいい・・・? アツコは苦渋の決断を迫られた そして、その末出した答えは・・・ 「ええかっ?今から二手に別れる! 『マヤザック』を討伐する部隊と・・・市民を救助する部隊や!」 これが女王・ユーコの代わりにアツコが出した、苦渋の決断であった ホントはなにがなんでも『マヤザック』を止めに向かいたい・・・しかし、市民を護らずして、何が『ハロモニアの守護神』か? そう自問自答した末に出した“ギリギリの選択”だったのだ 「討伐部隊は最速で目的地・『物見の塔』に到着するように!・・・但し、市民が敵襲を受けてる場合は救助を優先せよ! 救助部隊は市民を速やかにここ、闘技場まで誘導し避難させるように! 闘技場ならケイちゃんの“魔法障壁”が最大限に利用できるから安心や! ・・・これでいく!」 アツコの指示にメンバー全員が頷いた 「じゃあ、救助チームのメンバーはウチとケイちゃんを中心にやっていく! ケイちゃんとサトやん、アヤカは闘技場待機で“魔法障壁”による結界の準備! あと・・・りしゃことミヤビは体力回復に専念すること!ええか?」 「ハイッ!」 「次に、市街地巡回メンバーはウチとレイニャ、キャメイにサユミン、女流怨鬼念火のみんな!」 「ラジャー!」 「呼ばれなかった者が討伐メンバー!絶対に『マヤザック』を捕まえるで!」 「おーっ!!」 こうして、りしゃこ達と邪神・マヤザックの『最終決戦』が始まった―