〜三の塔【Sloth】〜 美しき王都・ハロモニア ハロモニアの民なら誰もが愛してやまないその美しいが、無惨な姿に変わりつつあった 邪神・マヤザックの復活とともに蒼空には暗雲が立ち込め、綺麗な街並みは壊され、街を彩る草花は踏みにじられた 人々はこのまま美しき王都が失われていく様をただ指を加えて見ている他ないのか? 「あれぇ〜?ここってどこだろ?」 荒廃した街中にポツンと一人佇む少女がいた 全身をピンクの装束を纏っていて、廃墟となった灰色の街では目立つことこの上なかった 「おかしいなぁ・・・この辺だと思うのに・・・みんなどこにいるんだろ?」 手にした羊皮紙の地図を何度も眺め、首を捻る 少女はどうやら人を待っているようだ と、同時にこの街には不案内であることも窺い知れた 「はぁ・・・どうしよ・・・」 不安になっておろおろする少女 そこに駆け寄ってくる人影があった 「あっ!みんな!こっちこっち!」 どうやら少女にとっての待ち人が来たようである だが・・・ 「おらーっ!退け退け退けぇー!」 「ちょっとぉー!急ぎすぎだよ!」 駆けてくる人影を見た少女は呆然となった 「あ・・・れ?」 「ハァ・・・ハァ・・・マイミン、ちょっと飛ばしすぎだってば!」 「ハァ?それはエリーが『アタシ達がマヤザックを倒したら一躍ヒロインだよねー♪ テンション上がるわねー♪』って言ったから急いでるワケじゃん?」 「まぁ、そりゃそうだけど・・・でも、メーグルとかと一緒に行動しなくても良かったの?」 「いいんだよ。アイツは小姑みたく口うるさいからさー」 言い争いをしながら我が道を暴走機関車のように突っ走る2人組 その2人の目の前に、ピンク装束の少女の姿が目に入る その途端、2人のテンションは俄然、急上昇した 「あっ!モモ!」 「おっ!ホントだ!」 一方、人違いで呆然としていた少女であったが、突如2人組が自分に向かってきてることに気付き驚く 「えっ?えっ?」 2人組のあまりのスピードに、つい棒立ちになってしまう少女 その棒立ちの少女を2人組はすれ違いざまにかっさらって行ったのだ 「おい!モモ!行くぞオラッ!」 「わっ!?」 「ほら!急ぐわよ!急ぐわよぉー!」 「ま・・・待ってください!人違いですよぉ!」 「おだまり!さぁ行くわよ!ついて来なさい!」 それから数分後― 「ふぃ〜・・・ようやく着いたな、この塔に」 例の2人組とさらわれた少女がマヤザックが居ると思われる塔の前に到着した 「さてと、さっさと片付けてしまおうか!」 たった今走ってきたばかりなのに、2人組の片割れ・マイミンは相方をよそにウォーミングアップを始め出す それに対し、体力絶倫女・マイミンの殺人的ペースにすっかり巻き込まれてしまった相方・エリカンは愚痴をこぼす 「ゼィゼィ・・・ちょっとマイミン!少しはアタシのことも考えてよね! まだ着いたばっかじゃない!?」 息を切らせて話す相方の体力のなさを嘆くマイミンは逆にエリカンに苦言を呈した 「何言ってんの?こういうのは先手必勝なんだ!グズグズしてるヒマなんかない! それにコッチはモモを抱えながら走ってきたんだぜ?おい?なんか言ってやれよモモ!」 相方の不甲斐なさを叱責してもらおうと、マイミンは連れてきた少女・モモに言葉を振った しかし・・・ 「あのー・・・」 話を振られた少女・モモは言葉に詰まり、明らかに戸惑っている そこでようやくマイミンとエリカンは異変に気付いたのだった・・・ 「ちょ!?だ、誰だお前!?」 「えっ!?えっ!?」 少女がモモではないことに気付いたマイミンは明らかに狼狽える 少女も少女で何故自分がマイミンに問い詰められてるかわからずにさらに狼狽える 「ちょっとマイミン!人違いの!?これじゃ誘拐犯じゃない!誘・拐・犯!」 エリカンもエリカンでパニックになりとんでもないことを口走る 「何言ってんだよ!自分だって『あっ!モモ!』とか言ってたクセによ! エリーがモモなんて口走らなけりゃオレだって間違わねーよ!」 「あーっ!何よその責任転嫁!ひどいわね!信じらんない!」 突然降って涌いたマイミンとエリカンの口論に少女はおろおろするばかり・・・ と、そこへ“渦中の人物”が現れた 「あら?2人とも何やってんのよぉ?」 聞き覚えのある声・・・もしや?と思い、マイミンとエリカンはすぐさま振り返った するとそこには、2人がさらってきたハズの仲間・モモが立っていた 「「モモ!?」」 びっくりするあまり、2人の叫び声がつい裏返ってしまった 「何そんなにびっくりしてるのよぉ?ついさっきまで一緒だったじゃない?」 “本物”のモモを目の前にして、マイミンとエリカンは返事に困ってしまう まさか、モモと間違って他所の女の子を“誘拐”してきたとあっては末代までの恥・・・ モモに限ってメーグルみたくネチネチとお説教することはないだろうが、当分の間気まずくのは必至― そのため2人は無い頭をフル回転させ、その場を凌ぐ妙案を模索していた だが、そんな2人の虚しい努力も水泡に帰してしまう 「あっ!モモ様!」 突然、少女がモモの姿を確認するなり、その場にひざまづき頭を下げた 少女に名指しされたモモは、というと、初めはややびっくりした顔つきだったがやがて知った顔だと気付くと改めて少女の名を呼んだ 「あら?ユウカリンじゃないの?どしたの?」 戸惑ったのはモモと少女・ユウカリンのやりとりを傍観していたマイミンとエリカン 一体、2人はどういう関係なのか?それが気になって仕方がなかった まず2人の様子を見る限り、モモと少女・ユウカリンは互いに面識があるどころか、明らかに主従関係に近いものを感じさせた あと若干気になったのは、2人ともわりと似たような背格好で同じような顔のつくり、同じような高い声・・・ 同じ格好をして2人並んでみると、まあまあ似てなくもない・・・ 「ねぇ・・・これってどういうこと?」 「わかんねーよ!オレに聞かれても」 モモとユウカリン。2人の関係がどうしても気になって気になって仕方のないマイミンとエリカン そんな2人の様子に気付いたのか、不意にモモがマイミン達を手招きして呼び寄せる そして・・・ 「マイミン、エリカン、紹介するね。この娘はアタシの可愛い子分のユウカリンよ♪」 モモはニコニコしながら2人にユウカリンを紹介する ・・・が、ここでユウカリンが突如、とんでもないことを口走った 「モ、モモ様!ワタクシなんかになんてもったいないお言葉・・・」 マイミンとエリカンはポカーンと口を開ける他なかった 2人にはユウカリンがやたらとモモにへりくだった態度で接してることが驚きだったのだ (なぁ?ひょっとしてさ、モモってどっかのお嬢なんかじゃねーの?) (そう・・・かもね) ここにきてマイミンとエリカンの2人の頭の中に、もしかしてモモは良いとこのお嬢様では?という疑念が広がっていく だが、事実は2人の想像の遥か斜め上をいっていた・・・ 「モモ様は姫君なんですからワタクシのことは子分ではなく家来として扱っていただかないと・・・」 「なぁんだ、姫君か・・・ってオイッ!?」 とんでもない事実発覚にマイミンが思わずツッコミを入れてしまう だが、少女・ユウカリンは至って真顔で 「いえ、ホントなんですっ!」 と少し顔を紅潮させながら言った モモがお姫様・・・信じられない事実が受け入れ難いエリカンはエリカンで 「でも、ウソ・・・なんだよ?」 と、モモに尋ねてみる きっとモモなら、 「ウフフ・・・実は、ドッキリでしたぁ〜♪」 と、答えるに違いない・・・ そう思っていたエリカンであったが、その期待?は淡くも消えてしまう・・・ 「ちょっと、ユウカ!それは秘密にしてって言ってたでしょ?」 「あっ!モモ様、申し訳ありませんっ!」 いつになく真顔でユウカリンを叱るモモと、叱られてしょんぼりするユウカリン・・・ その様子から、2人が冗談でやりとりしてる訳じゃないことが窺い知れた 「あ〜あ、バレちゃったかぁか・・・」 少しバツの悪そうな面持ちでモモが呟く そんなモモに、マイミンとエリカンがふと疑問を抱き、尋ねてみた 「なぁ、モモ?お前ホントに“お姫様”なのか? じゃあ、なんでお前はオレ達に自分が“お姫様”って隠してたんだ?」 「隠してなんかないよ。聞かれなかったから、言わなかっただけ」 マイミンの質問にモモはあっけらかんと答えた 「ただ、そんな重い肩書きなんて背負いたくなかったのは事実ね」 そう言ったモモの表情が少し曇ったようにも見えた 「変に肩書きを背負ってるとね、いろんなしがらみとかやっかみとかものしかかってくるからヤなの」 「なるほど、ね。だからモモは故郷を離れた、ってワケね」 傍で話を聞いていたエリカンが相槌を打つ 「そう・・・だからアタシは自分の力で生きていけるように『EXーZYX』に入ったの そしたらアタシの肩書きなんて要らないから」 そう話すモモに、突然マイミンが痛烈な一言を放った 「だけどそれってさ・・・モモが逃げてるだけじゃねーか?」 その一言にモモの表情が一変し、青ざめた 「ちょっと、マイミン!?」 モモの表情の変化を見て取ったエリカンがマイミンを牽制する しかし、マイミンは言葉を続けた 「だんだんわかってきたよ。お姫様のモモが自分の肩書きにプレッシャーを感じてたまらずに故郷から逃げ出した そしてここにいる女の子はモモの跡を追いかけてきた追っ手・・・な?そうだろ?」 マイミンに水を向けられ、しばらく沈黙していたユウカリンであったが、やがてゆっくりと頷いた 悲しげな顔で黙って頷く少女・ユウカリンの姿を見て、マイミンはモモを苦言を呈した 「なぁ、モモ・・・お前がどんなに綺麗事を言ったって、結局お前は現実から逃げ回ってるだけだよ 現実から逃げたってなんにも始まらないぜ?人生いつかどこかで大きな壁にぶち当たるんだから そんな時にこそこそ逃げ回っていたら一生負け犬だ なぁ、モモ?お前は負け犬なのか?」 実直かつ痛烈なマイミンの言葉のひとつひとつがモモの耳に、心に突き刺さる モモは返す言葉もなく、ただうなだれるだけ そんなモモを見かねて、ユウカリンが叫んだ 「モモ様!しっかりしてくださいっ!」 そして返す刀でマイミンに突っかかる 「マイミンさん!モモ様を苦しめるおつもりなら、ワタシはあなたを許しません!」 「苦しめる?オレは本当のことを素直に言っただけだ」 「ならばそんなにきつく言わなくても、もっと他に言い方があるじゃないですか!? モモ様だって・・・人には言えない辛い思いをいっぱいしてきてるんですから!」 「だからって甘やかしても仕方ねーだろ!?」 いつしかお互い言われっ放しではいられないマイミンとユウカリンがムキになって口論し始めた モモを巡って烈火の如く言い争うマイミンとユウカリン・・・ 互いに主張することはあながち的外れではないので、エリカンも仲裁に入っていいものか躊躇ってしまう そんな時だ 「もう、いいよ」 今までうなだれていたモモがいつの間にか顔をあげていた そして、マイミンとユウカリンの顔を交互に見ながらこう言った 「ありがとう、マイミン。おかげで吹っ切れた 今までウジウジしてた自分がバカみたい 逃げ回ってるなんて、アタシらしくないよね! ありがとう、ユウカ。アタシのためにこんなに一生懸命になってくれて・・・ アタシはユウカのような子分を持って、ホント幸せだよ」 そう言うと、モモは照れくさそうにはにかんだ笑顔を浮かべた 「モモ・・・」 「モモ様・・・」 今まで言い争っていたマイミンとユウカリンもモモの言葉を聞き入る 「アタシなら、もう大丈夫♪だから2人とも、もう口ゲンカはもうやめてね」 モモに言われて2人は口論を止めた そして、年少のユウカリンがマイミンに詫びる 「マイミンさん、ごめんなさいっ!言葉が過ぎました。どうか許してください」 素直に頭を垂れるユウカリンに、マイミンはこう言った 「いいんだよ。オレの方こそ熱くなりすぎた。反省するよ」 そんな様子に仲裁を躊躇っていたエリカンもホッと胸を撫で下ろす 雨降って地固まる・・・そんな言葉がビタリと当てはまるような和解劇 誰もが胸にわだかまりもつかえもなくスッキリしていた ほのぼのとした心地よい時間・・・ だが― 「あっ!」 モモが突然大声をあげた 「ユウカ!まさか“あの娘”を連れてきてないわよね?」 モモの言葉に、それまで顔をほころばせていたユウカリンの表情が急に強ばっていく・・・ その有り様にモモは何かを悟ったようだ 「ねぇ・・・来てるの?」 モモの問いかけにユウカリンは顔を強ばらせたまま、ゆっくりと頷いた その動作を見た瞬間、モモは思わず天を仰いだ 「ねぇ?どうかしたの?」 モモの落胆ぶりが気になったエリカンがそっと尋ねる するとモモは、あり得ないことを口走った 「ゴメン。ちょっと逃げる!」 さっきは「嫌なことから逃げない」と言っていたばかりなのにこの態度の急変ぶり・・・ マイミンもエリカンもただただ小首を傾げる と、そこへ突然、大声が聞こえてきた 「モモ様〜♪見つけましたわ〜♪」 その大声を聞いた途端、モモの顔色がみるみるうちに青ざめていく そしてモモが後ろを恐る恐る振り返った瞬間、ピンク色の物体がモモに覆い被さった! 「ぎゃああああーっ!」 ピンク色の物体にのしかかられ、悲鳴をあげるモモ 「なんだ?」 珍しく悲鳴をあげるモモにマイミンもエリカンも驚く すると、すかさずユウカリンがピンク色の物体をモモから引き剥がしにかかった 「ちょっとモリティ!?落ち着いて!離れてってば!」 ユウカリンの慌てぶりから異常事態であることがマイミンとエリカンにも推測できた と、そこへ、またしても違うピンク色の物体が飛んでくるではないか? 「ハァハァ・・・モリティ!待つでふ!止めるでふぅ!」 そして到着するなりユウカリンと一緒にモモに貼りついているピンク色の物体を引き剥がしにかかった 「なぁ?エリー・・・」 「ん?何?」 モモを巡るピンク色の集団のひと悶着を傍観していたマイミンが思わず呟いた 「面白そうだな、オイ」 「・・・」 暢気極まりないマイミンの呟きにさすがにエリカンも閉口してしまう 数分後― 「ハァハァハァ・・・」 「助かった・・・」 「モリティ・・・落ち着くでふ・・・」 「あぁ・・・モモ様ぁ・・・!」 ピンク色の2人がピンク色のモモから一際大きいピンク色をようやく引き剥がすことに成功した その一部始終を見ていたマイミンが 「オイオイオイ?wこれは・・・wどういう・・・こと、なんだ?プッw」 と、モモに向かって先程のひと悶着について問い詰める・・・ だが、その声は明らかに笑いで微かに震えていた 「そうよ!ちゃんと説明・・・ププッ!」 エリカンもモモに問い詰めようとするが、先程のモモが必死に抵抗する姿があまりにも可笑しくて、 気取って問い詰めようにもそれが頭にちらついて、つい、思い出し笑いをしてしまう 「なによぉ!そんなに笑わなくてもいいじゃない!?」 思い出し笑いをするマイミンとエリカンに頬を膨らませ、ぷりぷりと怒るモモ 「だってさ、あんな必死なモモなんて見たことないぜ?」 「それにさ、さっきまで『もう逃げない!』とか言ってて舌の根も渇かないうちに『逃げる!』って言うんだもん!」 怒るモモに、つい笑ってしまったマイミンとエリカンは冗談まじりでやり返す 「もういいわ・・・とりあえずこの話はもうおしまい!」 先程のドタバタ劇をなかったことにしたいモモはそう言ってプイッ!とそっぽを向いてしまった そんなモモから何も聞けない、と思ったマイミンとエリカンはピンク軍団(仮)に話を振ってみた 「ねぇ、お嬢ちゃん?どういうことか説明してもらいたいんだけど・・・いいかしら?」 エリカンはピンク軍団(仮)の中でも幼そうな少女に尋ねてみた すると、エリカンに指名された少女は突然、 「い、イヤでふよぉ〜♪そんな、“お嬢ちゃん”だなんて・・・♪」 と、照れまくるではないか? 少女の照れまくる理由がわからずマイミンとエリカンが小首を傾げていると、ユウカリンがクスクス笑いながら言った 「あの〜、こう見えてもノッチはもう二十歳を過ぎてるんですよ〜♪」 「「え゙っ!?」」 エリカンが指名した少女・ノッチがまさか自分達よりずっと年上だったなんて・・・これにはさすがにエリカンも面食らってしまった その後もしきりに照れ笑いするノッチに質問するのは難しい、と判断したマイミンは質問の矛先をユウカリンに変えた 「えーと・・・まず、“あの娘”について説明してくれないかな?」 そう言ってマイミンが指差したのは、先程モモに飛びついた、モリティと呼ばれた少女だ 再びモモに襲いかからないように、今は縄で縛られている 「わかりました。まず、ワタクシ達とモモ様のことからお話させていただきます」 そう前置きして、ユウカリンが語り出した 「ワタシとここにいるノッチ、モリティはモモ様専属のお側役・『ともいき組』です モモ様とともに一生を過ごす、という意味で名付けられました そして、ここハロモニアまで来たのはモモ様に近々控えてます“頭領襲名”の式典に出席いただくためなんです」 「なにその“頭領襲名”・・・ってのは?」 耳慣れない言葉に、エリカンが尋ねてみた 「あっ、“頭領”ってワタシ達“モモチ流”の忍の一番偉い人の呼び名です」 「ふーん・・・」 「“モモチ流”では古来より嫡子が齢18歳を迎えると、後継者継承の式典を執り行うしきたりなんです」 「・・・ってことはさ、モモがもうそろそろ18歳になるから連れ戻しに来た、ってことだな?」 「ハイ・・・」 「なるほど、ね」 ユウカリンの話から、ユウカリンら3人はモモを襲名式に出席するために連れ戻しに来た・・・ということが明らかになった 「だいたいわかったわ。でさ、この娘のことなんだけど・・・」 「え、ええと・・・このモリティはモモ様の熱狂的な信者、といいますか・・・“モモ様命”なんです 特にモリティには不思議な能力があって・・・モモ様の居場所がなんとなくわかる、というものなんです」 「へぇ〜!じゃああなた達3人がモモの居場所を突き止めたのはこの娘のおかげ、ってワケね」 「ハイ」 「ふーん・・・モモも人知れず重たいものを背負ってるんだね」 ユウカリンから一通り話を聞いた後、マイミンとエリカンはポツリと呟いた すると、今までそっぽを向いていたモモがくるりと振り返り、 「でしょー?ちょっとはアタシも大変だってやっと気付いてくれた?」 と、胸を張る しかし、マイミンに 「確かに重たいもの背負ってるよな・・・ストーカーとかさ♪」 と、チクリとやられてまたもや顔色が青ざめていく 「もおーっ!せっかく忘れていたのにーっ!」 ムキになってぷりぷりと怒るモモに、戦場らしからぬ笑い声がどっと洩れた だが、その笑い声につられて“招かれざる客”、いや、モモやマイミン達にとっては“待ち望んでいた客”がやってきた 『あれ?こんなとこで何してんの?』 モモやマイミン達にとって懐かしい声・・・振り返ると、そこには・・・ 「長官・・・?」 一同の背後に立っていたのは『魔導大会』前日に姿を消して、そして今日、マヤザックに取り込まれてしまったヤグーだった 『そっか・・・みんなはオイラを迎えに来てくれたんだね』 そう言ってヤグーはマイミン達の前にスッと手を差し出す だが、その次に出てきた言葉はかつての“部下”達との別れの言葉だった 『そういうの・・・余計なお世話なんだよ!』