シバチャン等6人がアングリ相手に奮闘している一方、ゴトー等5人はハングリと対峙していた 両者とも睨み合ったまま、動かない。いや、正確には動けないでいたのだ それは、ゴトー等5人がハングリの『愛の装甲機神』の特性を知っているからに他ならない ハングリの『愛の装甲機神・ゴッドハンド』― その恐るべき特性とは、両手に装着された籠手であらゆるものを弾き返す、というとんでもない代物なのだ そのことは既に先程ゴトーが放った真空波を受け止め、軌道を逸らしてみせたことで証明されている 迂闊に攻めかかるのは徒労にしかならない かと言って、このまま睨み合いを続けている訳にもいかない そこでゴトーは、両脇に控える4人に小声で指示を伝えた 「いい?アタシが合図したらみんな四方に散って。そして四方から一気に最大限の魔法を放つの さすがのハングリも四方から攻撃されれば打つ手がないハズだから」 「了解です」 ゴトーの指示に4人が静かに頷くと、ゴトーからの合図を待った 否が応にも高まっていく緊張・・・そんな中、不意にゴトーが動いた 「せいっ!」 抜き身の剣を水平に薙ぎ、真空の刃をハングリに向けて飛ばしたのだ そして同時に4人に向かって叫ぶ 「今よ!散って!」 ゴトーの号令を受け、ユリーナ達4人は四方へ飛び散り、魔法の集中砲火を行った 「せーの!『の〜にゅ』!」 「貫け!『ピリリ』!」 「消し飛べ!『ドゥワドゥエ』!」 「凍てつくの!『フローズンヨーグルト』!」 タイミングは完璧である ゴトーの攻撃をハングリが受け止めれば、即ちハングリは両手が塞がり4人の魔法の直撃を受けるであろう もし万が一、ゴトーの攻撃を躱すことが出来たとしても、最悪でも一発くらいはハングリに手傷を負わせることが出来るハズ・・・ これがゴトーが頭に思い描いていた青写真である だが、敵もさるもの、ハングリの凄まじさはゴトーの予想以上であった 『うおぉぉぉーっ!』 眼前に迫るゴトーの真空波を両手で受け止めたハングリは、それを両手で引き千切り、左右へ弾き飛ばす ドゥン!! ドゥン!! 「うわっ!?」 「ウソッ!?」 放った魔法が相殺され、ユリーナとチナリは目を白黒させる しかし、驚きはそれだけではなかった ユリーナとチナリの魔法は消し飛んだものの、残るマァとマイハの魔法はハングリに向かって真っ直ぐ突き進んでいる 「よし!」 だが、次の瞬間、目を疑う光景が飛び込んできた 『フゥゥゥー・・・そりゃあ!』 今度はマァとマイハの魔法を一度に蹴り飛ばしてしまったのだ! 「うわっ!?」 「きゃっ!?」 自らが放った魔法が弾き返され、マァとマイハは呆然となってしまう と、その虚を突いて今度はハングリが体格で劣るマイハに狙いをつけて飛び込んでいった 「うぅ・・・」 危機を察知し、素早く逃げようと試みるマイハであったが、追撃するハングリはそれ以上に速かった 『まずは、一人!』 殺人スライディングを彷彿させる蹴りでマイハを蹴り殺そうとするハングリ しかし、その足がマイハに届くことはなかった 「そうは・・・」 「させるか・・・!」 ガシィィィン!! 鈍い金属音が交錯するのが聞こえてきた マイハが恐る恐る振り返ってみると、そこには頼れる2人の仲間がハングリの足をブロックしていたのだ 「ユリ、チー!」 「ここはウチらに任せて!早く逃げて!」 チナリに言われ、小さく頷くと、マイハはマァの元へと駆けていった そしてハングリの動きを封じているユリーナとチナリの元へはゴトーが駆けていく 『クソッ!邪魔をするな!』 邪魔されたのを腹立たしく思ったハングリは、ユリーナとチナリをまとめて蹴り飛ばす 「ぎゃっ!?」 「イテッ!?」 そしてハングリは次に襲いかかるゴトーの迎撃の体勢に入る 駆けてきたゴトーはそのスピードに乗じてその場から跳躍し、頭上からハングリに襲いかからんとした 「うおぉぉぉーっ!」 宙を舞ったゴトーが大上段から剣を一気に振り下ろす『兜割り』をハングリに向けて放った! 『剣聖』の異名を持つゴトーの腕であれば、大抵の者なら一刀に臥すことも出来たであろう だが、相手も尋常ならざる“化け物”、なんとその必殺の斬撃を『ゴッドハンド』の力で以て防いだのだ 『だあっ!』 ハングリは『ゴッドハンド』の目には見えぬ結界の力で防いだ剣を後方へと突き返した 「おおっと!」 目に見えぬ力で弾き返されたゴトーは宙で身を翻し着地し、事なきを得る 『ムダだよムダ。オレにはそんな生半可な攻撃は通用しない!』 ゴトーの仕掛けた波状攻撃をことごとく“セーブ”してきたハングリは自信たっぷりに言ってのける さらに余程己に自信があるのか、こんなことまで語り出した 『先に言っておくが、オレの『ゴッドハンド』は“手”だけじゃないんだぜ・・・“足”もだ』 「!?」 ハングリの突然のカミングアウトにゴトーも動揺する 確かにハングリはマァとマイハの魔法を手ではなく、足で弾いてみせた それは確かに合点がいく。だが、何故そんな秘密をわざわざ敵に洩らすというのか? 『ま、それだけオレが余裕ってことだ!これからお前らにいいもの見せてやるよ!』 そう言うと、ハングリは次の瞬間、にわかには信じ難いことをやってのけたのだ 『はあっ!』 かけ声とともにハングリが地を蹴り、宙を舞う ただそれだけのことなのに、ゴトー達5人は絶句してしまう その訳は、ハングリの跳躍力にあった 軽く跳んだようにみえて、実のところおよそ20m近くは跳んだであろうか そんなパフォーマンスをやってのけたのだ しかし、驚きはそれだけではない “空中散歩”を楽しんできたハングリがゆっくりと着地すると、再び目の前で信じ難い現象が起きていた 「浮いてる・・・」 そう、着地したようで着地していない。地面からほんの数十センチ上をフワフワと浮いているのだ これも『愛の装甲機神・ゴッドハンド』の為せる業か? 呆然とする5人に対し、ハングリは自慢気に語る 『見たか?これが『ゴッドハンド』の力だ! この“反発する力”を利用すれば、こんなことは朝飯前なんだぜ! そして・・・こんなこともな!』 そう言うと、ハングリはおもむろに足元に散らばっている瓦礫の小さな破片を拾い上げ、手のひらに乗せる すると、手のひらの破片がハングリの身体同様、フワフワと浮き始めるではないか? そして今度はそれをゴトー達の方へ向けると、ハングリはニヤリと笑った その瞬間 ビュン!! ビシィィィ!! 「痛っ!」 破片が石礫となってゴトーの顔面を直撃したのだ! 『オイオイ?いつまで呆けてるんだよゴトーさんよお!』 そう言うなり、ハングリは弾かれたようにゴトーへ飛びかかっていった! 『オラァ!』 右腕を大きく引き絞ったハングリはその拳を弓から放たれた矢の如くゴトーめがけて振り下ろす! ブオンッ!! 拳が唸りを立ててゴトーの顔面を捕らえた・・・かに見えたが、ハングリ同様ゴトーにも『愛の装甲機神』がある ガキィィィィィン!! 『チッ!』 ゴトーの顔面をメチャクチャに出来ず、ハングリは舌打ちをする そして一発でダメなら、といわんばかりに二発目、三発目・・・と矢継ぎ早に拳を撃ち込んでいく だが、 「目覚めよ!『愛の装甲機神・噂のセクシー鎧(ガイ)』!」 ハングリの振り下ろす拳はゴトーの『噂のセクシー鎧』の前に次々と阻まれていく しかし、防がれているにも関わらず、ハングリは未だに拳を振り下ろし続ける 防がれているのに、だ 何故、ハングリはこんな無駄な努力をしているのか・・・その謎はすぐに解けた 「ウソ・・・!?」 今まで涼しい顔をしていたゴトーの表情に焦りの色が見え始める その理由は、ハングリの拳の乱打のゴリ押しが奏功し、ガードの上からでも振動によるダメージをゴトーに与えていたのだ 「くっ・・・ヤバい!」 「ゴトーさん!」 ゴトーの形勢が不利とみるや、ユリーナとチナリが加勢に入る 「でやあっ!」 ガスッ!! ハングリの死角からチナリの飛び蹴りが入ったことで、ゴトーとハングリは引き離される格好となった 「ふぅ・・・」 「ゴトーさん、大丈夫ですか?」 ハングリのラッシュに押されていたゴトーをユリーナ、チナリが気遣う するとゴトーは珍しく弱音を吐いた 「あまり大丈夫じゃないね・・・このままだとマズイわ」 『暁の乙女』最強と名高いゴトーにここまで言わしめるハングリにユリーナもチナリも背筋に寒気が走った ユリーナとチナリがゴトーを気遣っている一方、迫り来るハングリをマァとマイハが迎撃していた 「フンッ!」 マァが棍棒を振るい地面を叩くと、瓦礫が間欠泉のように不規則に吹き上がる だが、それらの攻撃をハングリは易々とクリアしていく 「・・・来ないで!」 必死の形相でマイハが氷の礫をハングリに向けて乱射するも足止めにしかならない それどころか氷の礫をいくつか受け止めると、それをマイハに向かって弾き返した ガッ!! 「きゃあっ!」 「マイハ!?」 どうやら礫の一つがマイハに直撃したらしく、マイハはその場にうずくまる それを心配して駆け寄る無防備なマァをハングリが見逃すハズがない 『甘いんだよ!』 マァのガラ空きの背中に蹴りをブチ込み、ゴトーの元へ2人まとめて叩き返したのだ 「マァ!?マイハ!?」 突然飛び込んできた2人に驚くゴトー達を、ハングリは冷笑するのだった 『オイオイ・・・弱すぎて話になんねぇよ!』 ゴトー達に歯応えがなくて物足りなかったのか、ハングリは呆れ返った素振りを見せる 確かにここまでの小競り合いではハングリの方が優位。そのことはハングリに言われるまでもない、自分達がよく知っている そうなだけにゴトー達はハングリの言葉を苦々しく感じていた だが、ハングリの『ゴッドハンド』の前に、ひとつも有効打を浴びせていないのだ それが5人にとって大きな重圧となってのしかかってくる そんな5人の焦りを読み取ったのか、早くもハングリがトドメを刺さんと仕掛けた 懐からなにやら小袋を取り出したハングリはそれを宙高く放り投げ、それが頂点に達したところで呪文を叫んだ 『出でよ!闘球結界『スフィアリーグ』!』 すると、小袋の中から小さな球体が打ち上げ花火のように円形に飛び散り、 それが地面にめり込むと瞬く間に高さ2mはあろうかという支柱がにょきにょきと生えてきたではないか? 「な・・・なんだ?」 突然のハングリの行動にゴトー達が即座に警戒する “結界”というからには何かを仕掛けたに違いない・・・そう判断した5人はひとたび結界から逃れんと支柱の外に向かって駆け出した だが、そこから先へ行こうとしても、見えない壁に阻まれ、先へ進むことが出来ない! 『オイオイ、ムダだよ。完成したこの結界からはもう逃れられないぜ』 逃亡を試みた5人にハングリが素っ気なく言う 「そうみたいね・・・」 その言葉を聞き、逃げ場がないとわかったゴトー達5人はハングリの方へ向き直り、素早く身構えた 退路を断たれ、いつになく険しい顔つきになった5人にハングリは満足気に笑みを浮かべ、そして静かに言った 『安心しろ。この結界に別に特殊な仕掛けはねぇ。ただお前らが逃げられないようにしただけだ』 「それは・・・ホントなの?」 ゴトーの脇からユリーナが尋ねる 敵の言うことは鵜呑みには出来ない、そういう警戒の表れであろう しかし、ハングリはあっさりと言い切った 『ねぇよ!そんなめんどくさいことしなくったってお前らくらいなら勝てるからな!』 罠が仕掛けられてないという確信を得た反面、ハングリの挑発的なセリフは5人をカチン!とさせた 「そのセリフ・・・後悔しないことね!」 いつになく凄んでみせるゴトー 『なら力ずくでオレを後悔させてみな!』 そう言うが早いか、ハングリは手元で火球を錬成させ、それをゴトー達に向けて思い切り蹴り飛ばした! バシュッ!! ゴオオオオウン!! ハングリから放たれた火球は唸りをあげ、一直線にゴトー達に襲いかかる 「避けろ!」 そう言うが早いか、ゴトーは火球を横っ飛びで躱す それに倣ってユリーナ達4人も左右に分かれて躱していく すると、火球は5人のすぐそばを通過していった なんとか危機を回避した、と5人が一息つこうとした瞬間、外へ飛び出していったと思われた火球が、再び5人のすぐそばを横切ったではないか? そう、火球もまた逃亡を図ったゴトー達同様、行き先を見えない壁に阻まれ、元の場所へと戻っていったのだ と、いうことは、火球は元の持ち主のところに戻ったことになる 『よく躱したな』 そう言ってハングリがニヤリと笑った ハングリには火球を躱されたことでのショックは全く感じられなかった いや、むしろ躱されたことによる喜びの方が大きかったようだ 『ま、アレでやられてもらっちゃ楽しみがないからな』 そう言いつつ、ハングリは再び火球を錬成するではないか? つまり、先程のと合わせて火球は2つになった格好だ それはハングリの攻撃回数が二回に殖えたにほぼ等しい 『さあ!お楽しみはこれからだ!』 そう言うと、ハングリはまず手元の火球を蹴り飛ばし、続けて足元の火球をも蹴り飛ばした バシュッ!! バシュッ!! ハングリが続けざまに放った火球は左右に別れたゴトー達に再び襲いかかる! 「チィィ!」 「うわっ!」 「きゃっ!?」 触れればただでは済まない火球を、ゴトー達は分散して逃げることで、辛うじて回避することが出来た だが、それも全てはハングリの緻密な計算の内だったのだ 計算通りにゴトー達が動いたのを確認すると、ハングリは内心ほくそ笑んだ そしてそれを悟られぬようゴトー達を挑発する 『よく躱せたな。ま、当然か。エースの称号はダテじゃない、と言ったとこか・・・』 無論、そんな安っぽい挑発に乗るゴトーではない ただ無言でハングリを鋭い目付きで睨みつけた 挑発に乗ってくれたらめっけもの、まず十中八九挑発には乗ってこないだろう・・・ ゴトーのクールな態度もハングリには計算済みだったらしい そしてハングリは遂に行動に出た 『じゃあ・・・これは躱せるかな?』 足元に戻ってきた2つの火球を一度にゴトーひとりに向けて蹴り飛ばした それぞれ2つの火球はゴトーめがけて飛んでいるが、奇妙なのは火球の軌道がちょうどゴトーの両サイドを挟むような飛んでいるのだ そう、まるでゴトーが左右に逃げられないように 「!!」 そのことに気付いたゴトーは咄嗟に防御体勢に入るが、時すでに遅し・・・ 『爆ぜろっ!』 ハングリのかけ声とともに、2つの火球はショットガンの弾の如く広範囲に弾け飛んだ! 「うわあっ!?」 左右から広範囲に弾け飛ぶ炎を散弾を放たれては、さすがのゴトーも逃げ場なく、なす術がなかった 火の粉が身体の至るところに付着し、メラメラと燃えている 『ハハッ!さすがの『愛の装甲機神』も火は消せないみたいだな! これでまずは一人・・・!』 計画通りに司令塔・ゴトーを消したことでハングリは意気軒昂となる しかし、そんなハングリにとって気に食わない存在が現れた 「マイハ!火を消して!急いで!」 「う、うん!」 ゴトーとともに火球から逃げていたマイハがゴトーの身体に広がっている火の粉の“消火活動”をしようというのだ もちろん、せっかくのチャンスをみすみす無駄にするのを傍観している訳にはいかない ハングリはすぐさま新しい火球を錬成し、マイハに放とうとする 『チィィ!邪魔をすんなあああっ!』 バシュッ!! ゴオオオオウン!! 唸りをあげて、火球がマイハを呑み込まんとする 『2人まとめて丸焦げになりやがれぇ!』 「マイハ!?危ない!」 迫り来る危機にマァが叫ぶも間に合わない! 目の前に迫る恐怖に足がすくんで動けないのだ 『ビンゴ!』 2人の消去を確信したハングリは狂喜の絶叫をあげる だが、着弾するかに思われた火球は突如何かにかき消されてしまった 『クソッ!誰だっ!』 あと少しで邪魔者を排除できる、というところを邪魔され怒り心頭のハングリは素早く辺りを見渡した その刹那、ハングリの目の前で閃光が光った。そう思った次の瞬間には全身に電流が駆け巡った 『はうぅぅぅっ!?』 悶絶しながら、地面に膝をつき、崩れ落ちるハングリ その地を這った視界に映ったのはハングリ同様、『愛の装甲機神』を纏った2人の戦士の姿だった ハングリは衝撃を受けた。『愛の装甲機神』をその身に纏えるのは『暁の乙女』のみ。なのに、何故この2人はそれを纏っているのか? あり得ない・・・そう感じたハングリは2人に尋ねる 『お前ら・・・何故それを持っているのだ!?何故それを纏えるのだ!?』 すると、2人は静かに答えた 「この『愛の装甲機神』はアタシ達の“師匠”がアタシ達への餞別にくれたもの・・・」 「誰よりもこの世界を愛していた“師匠”のために・・・ハングリ、お前を討つ!この『ロボキッス』で!」 そう言うや否や、2人の戦士、ユリーナとチナリはまだ地べたに這いつくばっているハングリに容赦なく襲いかかった! 「その身を雷に撃たれるがいい!轟け!『ピリリ』!」 「吹けよ風!呼べよ嵐!疾風となりて敵を穿て!『の〜にゅ』!」 地べたに這いつくばったハングリに、容赦なく雷の雨が降り注ぐ 『うわっ!?ちょ、待てっ!』 次々と降り注ぐ雷を辛うじて躱したハングリに、今度は横殴りの突風が襲いかかった それが起き上がり端のハングリの上体にヒットし、突風はそのままハングリの身体を持っていき、結界の柱に激突させた ゴンッ!! 『ヴッ!?』 背中と後頭部を強かに打ちつけたハングリはすぐに立ち上がれないでいた その間隙を縫って、ユリーナとチナリがハングリに急接近する (速いっ!) このままではあっという間に2人の勢いに呑み込まれてしまう・・・ そう直感したハングリは背中や後頭部の鈍い痛みをこらえつつ、なんとか立ち上がった (お前らの攻撃なんぞ、『ゴッドハンド』で凌ぎ切ってやる!) 意を決したハングリは支柱を背に、仁王立ちになる 『オラァ!かかってこいやぁ!』 烈帛の気迫を纏ったハングリに、ユリーナとチナリの足が襲いかかる 「「うおぉぉぉぉーっ!」」 2人同時に突き出した足を、ハングリは己が両手でがっしりと受け止めてみせた 『甘ぇ!甘ぇんだよ!』 2人の攻撃を受け止めたハングリはいざ反撃に転じようとする が、しかし、いざ反撃に転じようにもどちらに的を絞るべきか躊躇ってしまった その隙を2人に突かれてしまう 「「発動!『愛の装甲機神・ロボキッス』!!」」 ユリーナとチナリ、2人が起動の合言葉を告げるや否や、2人同時にハングリに向かって拳を撃ち込んだ 『かはっ・・・!?』 2人の放った拳はハングリの鳩尾に命中し、ハングリをぐらつかせた 「いくよ!」 「うん!」 そして2人がかけ声を交わすと、ハングリに向かって次々と拳と脚をお見舞いしていく 『なっ!?・・・ぶはっ!?』 左右同時に襲いかかる拳と脚の“暴風雨圏”に突入してしまったハングリは為す術もなく顔や身体に打撃を受けてしまう (ちくしょう!何なんだよコイツら・・・何で『愛の装甲機神』なんか持ってるんだよ!?) 無数の打撃を受けながらハングリは2人の持つ『愛の装甲機神』を忌々しく思った 確かに『愛の装甲機神』はちょっとやそっとの攻撃ではダメージを受けたりはしない だが、“並大抵ではない”攻撃ならどうだろうか? 例えばそう、同じ『愛の装甲機神』による攻撃なら・・・? その答えはもう既に解答済みだ ハングリがゴトーを圧倒したように、今度はユリーナとチナリがハングリを圧倒しているのだ そしてハングリがそう思考を巡らせている間にも、拳と脚の“暴風雨”がハングリの身体を浸食し、穿っていく・・・! ユリーナとチナリが2人がかりでハングリを圧倒している頃― ハングリの火球を受けて炎上していたゴトーの消火活動がマイハの手によって終了していた 「あの・・・大丈夫ですか?」 「ああ、なんとかね・・・ありがと」 マイハの呼びかけにゴトーはしっかりと無事を告げる と、同時にゴトーは傍らにいたマァとマイハに今の現状を尋ねる 「ところで、今どうなってんだ?」 「それなら大丈夫です。あの2人がハングリを追い詰めてますので」 マァにそう言われ、ゴトーも痛む身体をおして2人の戦いに目を移す 「・・・!」 2人の姿を見たゴトーの表情が俄に険しくなった 「不味い・・・」 「?」 ゴトーの言葉に、マァとマイハは首を傾げる ユリーナとチナリがやられているならともかく、逆に2人がハングリを圧倒しているのだ 見るところ、幾つかクリーンヒットも入れている それの、どこが不味いのだろうか? そんなマァとマイハにゴトーが檄を飛ばす 「ついて来い・・・あの2人の加勢にいくぞ!」 「でも、あの2人が・・・」 「いいから早くしろ!“主人”でない奴が『愛の装甲機神』を使ったとしたら、必ずいつかは息切れする! そして息切れした瞬間、その反動でしばらく動けなくなるんだ!」 「!!」 ゴトーの言葉に、マァとマイハの顔がみるみると強張っていく